共和国の底力とキングの力8
時は少し遡り、夜が明ける前。
キングは港まで侵攻していた。
もちろんひとりきりだ。
ベントンは海の上で戦い、シリウス、ロキの2人を相手に戦っている。
他の黒死軍は後ろの砲台を守る形で陣を構えている。
しかしロキの弾は一発も当たらず、シリウスの剣は折れている。
ふたりとも息も切れ、すでに『死力』のリミットも過ぎている。
「おいおい、これが黒死軍の力か? それにロキは本当にべリオス家の者なのか?」
「あいにく俺は戦闘向けではなくてね」
冗談を言う余裕はまだ残っている。
「そうか、だが今の状況を見ているとお前が俺に勝たない限り希望は無いと思うが?」
「そんなことはない!!」
シリウスは剣を部下から投げてもらうと構える。
「人間ごときが俺様に敵うとでも? 恥を知れ!!」
キングが左手を前に出すとシリウスの体が宙に浮く。
そして握りしめる動作をするとシリウスは全身に押しつぶされそうな痛みを感じる。
「魔力はそんなにないはずだ!!」
ロキは言うがキングは笑っている。
「俺の魔力は無限大に等しい。 その辺の魔素を取り入れて使う魔女如きと一緒の扱いをされるのは心外だな」
キングは左手の握りしめる力を強める。
するとシリウスは痛みにうめき声をあげ、剣を落とす。
「剣士が剣を落としたらどうなる? ただの哀れな人間だ」
ロキは銃を構える。
「お前が撃つ前に隊長の体が潰れるぞ? 銃を捨てろ、そうしたら緩めてやる」
「捨てるな!! 撃て!!」
シリウスは叫ぶがロキは銃を投げ捨てる。
「それでいい」
シリウスは解放されるが身動きがとれない。
「隊長!!」
「あぁ、言い忘れてた。 君の隊長は俺の操り人形と化している……そうだな、銃を拾いロキを撃て」
「嫌だ」
シリウスはそう答えるが体が勝手に動く。
「魔機銃とは考えたな。 これならば神族にも効果があるだろう? その身で味わってみろ」
シリウスが銃を拾い構えるとロキめがけて、引き金を引く。
しかし弾は出ない。
「あーー、言い忘れていたけれども敵を設定しないと弾はでない。 それに指紋認証、網膜スキャンをしないとその銃はガラクタ同然さ」
「なるほど……考えてあるな、策士の才能がありそうだ。 ならば剣士らしく剣で突き刺してもらおうか」
シリウスは銃を投げ捨てると剣を拾い走り出す。
「ロキ、逃げろ!!」
シリウスは叫びながら突っ込んでくる。
しかしロキは少し体を動かして剣を避けるとシリウスの頭の上を飛び越える。
シリウスが振り向きざまに剣を横に振ると、ロキはしゃがんで避けて足払いでシリウスを倒す。
剣を蹴り飛ばすと黒死軍が走ってきてシリウスを縛り上げる。
「これで操れない」
ロキはそう言いながら銃を拾いに行く。
「だがお前を操れる」
ロキはその場から離れようとしたがすでに遅かった。
体の自由は奪われ、銃をシリウスに向けている。
「これならば撃てるんだろ?」
キングは勝利を確信した。
その時船が港に乗り上げてキングに突っ込む。
降りてきたのは見知らぬ青年とジョン=アルバートだった。
「おぉ、久しぶりだな。 俺の仲間にならないか? もう一度最強の帝国を創り上げようじゃないか」
「ワシにはごめんです。 彼の仲間としてあんたを殺しに来た」
「うーーん、無理だな」
キングはそういうとロキがジョンのほうを向き引き金を引く。
黄色い光の弾道が見えたと思ったらジョンの体に大きな穴が開いていた。
「痛みすら感じないだろう? それだけ大きい穴だ。 そのまま死ね」
次にハクに銃口が向けられる。
「貴様!!」
ハクは剣を抜くと前に出る。
「さよなら、名もなき青年」
銃口から光が見える。
しかしハクの体に穴が開くことはなく光が吸収されていく。
ただの銃の弾だけ残りハクは切り落とすと走り出す。
「なぜ吸収される!?」
キングが驚くのも無理はない。
魔法を吸収するなんてアイリス以外に存在しない。
しかし彼はそれをできている。
「魔女の男なんて聞いたことがないぞ!! もう一度撃て!!」
ロキの引き金が引かれるが結果は同じだった。
「ならば、俺が直々に相手してやるよ!!」
キングは剣を抜くとハクに向かう。
ハクが振り下ろした剣をいともたやすくキングは受け止める。
「弱いな」
しかし次の瞬間ハクは後ろに跳んだ。
「うん?」
そして爆発が起きると爆風でハクは更に距離をとる。
「いい考えだ。 並みの敵ならそれで殺せたな」
ハクの耳元でキングの声が聞こえる。
そして何も感じることなくハクは心臓を刺されていた。
「あっけない。 本当に人間はあっけない」
キングは剣を引き抜くと二人に興味を失い、シリウスの元へ歩き始める。
しかし背後から殺気を感じ振り返るとハクが立っていた。
「馬鹿な!! 心臓を突きぬいたんだぞ!?」
「それがどうした。 俺がそんなことで死ぬと思うか?」
「死ぬ!! 間違いなく死ぬ!!」
「ならばお前の腕が悪いんだろう。 それか幻影にでも刺したか?」
ハクはそう言いながら肉の塊をキングの前に投げる。
「貴様!!」
それは豚の皮を剥いだものだった。
「豚の心臓を刺したところで俺は死ぬはずがない。 それにジョンの腹に穴をあけた償いをさせてやる」
ハクは完全に怒りに満ちていた。
剣を胸の前に翳す。
「どうか彼に安らかな眠りを」
ジョンに向けたハクの行動だったのだが、キングには別の顔がちらつく。
「てめぇ、シルフの真似をしやがって!!」
キングは完全に我を失っている。
地面をひと蹴りするとすでにハクの前に来る。
そのままハクを貫こうとするがハクはそれを体をひねって躱し、そのまま回りながら剣を振る。
キングは素手でそれを右手で受け止める。
「これで逃がさない!!」
次こそはとキングは思い剣を突き刺す。
だがそれも阻止された。
「お前はこんなところで死んではいかん!! 船を海に戻した。 黒死軍を連れて逃げろ!! 時間は稼ぐ!!」
タロースがキングとハクの間に立っていた。
「タロース!! 貴様もか!!」
「行け!! 黒死軍も走れ!!」
ロキもキングの怒りにより自由の身となり走り出す。
ハクは躊躇したが走り出した。
タロースはキングを砲台の中に投げ飛ばす。
そして自分も中に入ると砲台の入り口を塞ぐ。
「ふざけるな!!」
キングに刺されるがタロースは気にしない。
「お前を道ずれにできるなら俺もジョンも本望さ!!」
船が出航の汽笛を鳴らし港を出ていくのがわかる。
その間も刺されてタロースは意識を保つので精いっぱいだった。
それでも最後の仕事をしなくてはいけない。
「俺はタロース=デーマン!! シルフの仲間で解放軍の仲間だ!!」
爆弾を取り出すとボタンを押す。
「さらば、シルフ、ハク」
その瞬間砲台の中で爆発が起き、それは核にも影響を与え大爆発となった。
大陸すべてが焦土と化しその日から1週間、黒い雨が降り続けた。
幸い、大陸に残っている人はおらず犠牲者は2人だけとなったが、しばらく大陸に立ち入ることも出来ない様な状況だった。
海の上で戦っていた帝国兵も、ベントンも爆発の瞬間戦うのを辞めてただ光と大きく空へと昇る雲をただただ眺めているだけだった。
その後高速船にベントンは合流し、帝国兵たちも撤退していった。
共和国と帝国の戦いはここで一度停戦になるが、共和国は人工島と巨人の島を残しただけ、帝国はネザイアスの一部を除いた大陸とムーリアス大陸、解放軍はドリアス大陸を占領して各国は追悼の意を表した。
ジョン、タロースの葬儀も行われ、解放軍も強い戦士を2人も失った。
しかしその代わり、キングという悪の根源を消し去ることができたので静かに祝杯もあげられた。
黒死軍はドリアスから人工島へ帰還した。
すべてが元通りになるまでまだ時間がかかるだろうが、今後解放軍と共和国と帝国での話し合いも決まった。
そんな中べリアス大陸。
「俺がだれか思い知らせてやる!!」
全身の皮膚はただれ落ち、半分骨が見えている人が独りさまよい歩いている。
そしてその人影はべリアス大陸の何もない大地の中に消えていった。
少しお休みします。
すいませんが少しだけ休憩ください。




