初出動2
よかったら読んでやってください。
シルフは剣と弓矢を持ち軍の最後尾を歩いていた。
「馬に乗ろうなんて100年早いな」
とハリスに言われたがシルフは歩くことは好きだった。
山が見えてくると山頂付近には見張り台らしき物見櫓がいくつも見えた。
篝火も多く、その山だけ別世界の様に感じる。
「朝までには落としたいな」
ハリスはタバコに火を着けると槍を構える。
「タバコ吸いながら行くのか?」
「罠があるとわかっているときはな。 煙でもいいがついでに吸えるだろ?」
ただ言い訳をつくっているだけのような気がするが確かに煙は役に立つ。
見えにくい糸なども煙はそこだけ避けるので気付くことが出来る。
「まぁ、言ってることは正しいが……」
シルフも煙の用意はしてきていた。
「それで? 5人2組でいいか?」
「いや、俺は1人でいい」
「じゃあ俺が9人連れて行く」
ハリスはあっさりとオッケーをだすと9人を連れて山の中に入っていく。
シルフも中に入るとすぐに異変に気が付く。
木の幹に明らかに最近の傷がある。
その近くを調べるとお手製の爆発物が見つかる。
そっと、取り出すと持ってきた袋に入れる。
更に先に進むと落とし穴が見つかる。
隠してある草や木をどかすと中には竹やりも用意されていた。
「毒付きか……」
かなり計算された作りになっている。
相手は手練れの猟師かもしれない。
シルフには探知魔法が視えないがありそうな場所はわかるのでなるべく避けて歩く。
その先には岩が積まれた関が見つかる。
手前の感知魔法を踏むとこれが作動するのかもしれない。
関は崩せそうにないのでそのままにして先に進む。
するとなぜか入り口に戻る。
「幻術か……」
下手に動けばトラップに引っかかる。
シルフは剣を抜くと足元を斬りつける。
魔法陣を傷つけて解除したのだ。
元の景色に戻るとすでに敵に囲まれていた。
「魔法陣を破るとはね……」
目の前の美女は魔女に違いない。
「私は幻術が得意なの」
指をパチンと鳴らすとシルフは砂漠の中に放り出される。
『今度は魔法陣ではないわよ』
声が反響してどこにいるのかわからない。
シルフは目を閉じるとわずかな殺気を感じる。
それを頼りに動くと矢が飛んでくる。
「なるほど、幻術と実際の攻撃のコラボか……でも弓矢はまずかったな」
シルフは弓矢を構えると何もないところへ射る。
するとひとり落ちてきた。
更に後ろの殺気を感じると剣で受け止める。
「相手も剣だな」
弾き返すと横に剣を振る。
すると腹の部分が切れた死体が倒れる。
「なるほどね……」
シルフは跳ぶと何もないはずのところを掴む。
「やっぱりな」
先程いたところの地形はすべて覚えている。
弓を引くと1人射抜き、剣で倒す。
更に木の上に飛び乗ると次の枝に飛び移り矢を射る。
『撤退しなさい』
魔女の声と共に殺気は消えたがここからどうでるかが謎だった。
その時昔母親が教えてくれたことを思い出した。
--いい、幻術は範囲が決まってるの。 だから範囲の端まで行って叩き壊せば大丈夫よ。
あの時は本当かどうかすら怪しかったが試してみる価値はある。
シルフが歩き始めると景色が変わり溶岩が流れる場になる。
しかし、シルフは無視して前に進む。
遂に壁にぶち当たると思いっきり殴ってみた。
するとガラスが割れるように幻術は壊れ元の世界に戻る。
「やってくれるわね!!」
魔女は炎を出すと丸い球となり徐々に大きくなる。
「消し炭になりな」
火の玉が飛んでくるがシルフは剣を構えると火の玉を斬り消す。
更に地面を蹴ると一瞬で間合いを詰め魔女を斬り殺す。
「どうか彼らに安らかな眠りを」
シルフは剣を胸の前にかざし呟くと先に進む。
そこからは物見櫓が点在しており、兵舎も点在している。
櫓に静かに登ると見張りを斬り殺し降りる。
兵舎は2人なので矢で射抜き寝静まった兵舎の中へ入ると次々静かに喉を切り裂いていく。
そこで見つけたナイフが役に立った。
更に次の兵舎に行くとすでに臨戦態勢が整っていた。
「魔法陣を踏んだのが間違いだな」
相手は20人ほどだろう。
シルフは剣を抜くと、ひとりを突き刺す。
矢が飛んでくるのでそのまま突き刺した奴を立てにして剣を抜くとナイフを投げる。
1人の眉間に突き刺さり倒れる。
「俺が相手だ!!」
1人が前に出てくる。
彼の槍には時折電気が見える。
「魔法付与か」
突きを躱すがシルフの体に電気が走り、一瞬体が硬直する。
その瞬間を逃さず矢が飛んでくるが少し遅かった。
剣で矢をすべて払い落とすと槍使いを一瞬で斬り前に進む。
「撤退だ!!」
逃げ出す奴らは無視して宿舎の中にある矢をいただく。
ついでにナイフも何本か頂戴した。
更に山頂に向かうとハリスたちも登ってきていた。
「どうだ?」
「岩の仕掛け以外は壊した」
「よし、木の上にいるはずだ、合図を送れ」
鳥の鳴き声に似た音を鳴らすとしばらくしてノークスたちがこちらに来た。
「あとはあそこだけだ」
そこはどう見ても砦でといった感じだった。
「魔女は1人倒した」
「魔女がいたのか……もしかしたらまだいるかもしれない。 魔女に遭遇したらすぐ撤退して報告してくれ」
門は開かれている。
「何か罠があるのかもしれない。 気を付けるように」
ノークスの指示に従いシルフは壁を蹴り上がるとロープを下ろす。
みんなはそれを登り侵入するがすでに敵が待ち構えていた。
「はるばる壁を登るとはな。 変わった奴らだな。 魔女はやられたみたいだしな」
人よりはるかに背の高く体つきも全身筋肉の様な男が一番前に現れる。
手には大斧を持っている。
「彼はドワーフ、巨人と人間のハーフだ」
「じゃあ強いんだな」
「強い」
シルフは剣を持つと前に出る。
「シルフ=ベルーサ」
「ジョージア=ザンザス」
名乗りを上げるということは一騎打ちを申し出たことになる。
「ドワーフ相手には人間100人は必要だぞ!!」
ハリスは声をあげるがシルフは聞かない。
「シルフ下がれ、命令だ」
ノークスも叫ぶがシルフは下がる気がない。
「お前は命令に背いてでも俺と戦うのか?」
「あぁ、他にもまだ何かいるんだろ? ならお前ごとき俺ひとりで戦うさ」
「成程……おい、出せ」
持ってこられたのはいかにもなロボットだった。
「機械兵の初期型だ。 プロトタイプ700だ」
「ノークス任せた。 こっちはなんとかする」
「わかった、負けるなよ」
ノークスはハリスに兵の指揮を任せ自らは機械兵の前に立つ。
ジョージアは大斧を振りかざしシルフを真っ二つ切ろうとするがシルフはそれを避ける。
しかしすでに次の攻撃がシルフを襲う。
剣でなんとか防ぐが体は吹き飛ぶ。
城壁に足を着けるとそのままジョージア目掛けて跳び込む。
最高のスピードの乗った突きを繰り出すがシルフが掴まれると投げ飛ばされる。
地面に2回ほど叩きつけられながら吹き飛びシルフは倒れる。
「クソが……」
何とか起き上がるとジョージアはシルフの事はもう見ていない。
「こっちを見やがれ」
「生きていたのか」
ジョージアは大斧をもう一振りもってこさせる。
「大斧での連撃でお前は形も残らん」
大斧による斬撃の嵐にシルフは剣で立ち向かう。
昔父親が言っていたことを思い出した。
「相手が大きくて早く斬りかかってきたらどうする?」
「避ける」
「まぁ、そうだな。 でも連続で斬られたら見てて避けれるか?」
「見えるわけないだろ?」
「そうだ、だから剣を見ても意味がない。 耳を使うんだ。 必ずどこからくるかわかるからな。 特訓だ!!」
その後ボコボコになるまで木の棒で殴られ続けたがおかげで聞き分けられるようにはなった。
思い出し剣を鞘に納めると、目を閉じる。
ジョージアの大斧は空を切る。
連撃が全く当たらない。
「なぜだ!?」
ジョージアは大斧を両方から挟み込むようにシルフを狙うが跳んで避けられる。
「なぜ避けれる!?」
「さぁな……そろそろ終わりにさせてもらう」
剣の柄に手をかける。
「居合をするつもりか!? そんな剣でか!?」
しかしシルフはやめようとはしない。
「来い!!」
ジョージアも受けて立つつもりだ。
「居合術型式壱、絶界」
シルフの姿が消えるとすでに胸の前に剣をかかげる。
「どうか彼に安らかな眠りを」
大斧が折れると、ジョージアの巨体は倒れる。
読んでいただきありがとうございます。