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シルフの書  作者: 松田 飛呂
第一章
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報告 初出動1

シルフは自宅に戻ると両親はパーティの準備をしていた。


「どうだった!? やっぱり兵士か!?」


「まぁ……白狼隊だあってさ。 ヒルキンってやつの私設部隊らしい」


「ヒルキンだと!? なんであんな奴の私設部隊なんだ!? 水晶は!?」


「何もならなかった」


「そっか……まぁ、気にするな!! ヒルキンは父さんも知ってるぞ!! あいつは強い!! 何より人情に厚いからな。 王子を守るために自ら単身敵陣まで突っ込み連れ帰ったんだ」


「そんな凄い人だったんだ」


「あぁ、だから気にするな」


「そうよ、王子の護衛を任された騎士が女の人にプロポーズしに行っちゃったから強い人がいなかったの」


「それって……」


「しょうがないだろ、俺にとっては人質なんかより母さんの方が何倍も大切だから」


「もう、あなたったら」


「軍人としてどうなんだよ……」


「馬鹿か!! 俺は軍人である前にひとりの男だ!! 俺は最愛の人を守りに行ったんだ」


「もういいよ……ヒルキンがまともな軍人だってことはわかったからさ」


「俺の方が強いがな」


「わかったよ。 飯食おうぜ」


ご飯を食べ終わるとシルフは自室で剣を磨く。


そこへ親父が入ってくる。


「なんだ、ちょっといいか?」


「あぁ」


珍しく真面目な顔をして壁に体を預ける。


「実はな、お前に知ってて欲しい話があるんだ」


「なんだ?」


「言いにくいんだが……お前は実は俺と母さんの子供じゃない」


「知ってる」


「そうだろ!? 驚くよな……え!? 知ってる!?」


「母さんに聞いた。 母さんの姉さんの子供なんだろ? その人は病気で死んだって聞いた」


「そうか……お父さん驚いて心臓飛び出るかと思ったぞ!! まぁ……知ってるならいいが」


「それだけか?」


「いや、少し昔話に付き合ってくれ」


「母さんの話なら聞かんぞ」


「違う。 これは真面目な話だ。 元々大陸にはいろんな種族が住んでいた。 神族をはじめ、巨人族、エルフ族、妖精族、獣人族だ」


「あぁ、知ってる」


「今はこの大陸は人間と神族がほとんどだ。 この意味がわかるか?」


「戦争になったんだろ?」


「神族が他の種族から一斉に攻撃を受けて止む無く反撃したんだろ?」


「いや……それは改ざんされた情報だ。 そもそも魔女の歴史を知っているか?」


「突然変異だろ?」


「いや、違う。 神族がエルフの女たちに産ませた子供が魔女だ。 なぜか魔力を膨大に持った綺麗な女の人しか産まれないんだ」


「そんな事……」


「そうだ、他にも巨人と人間の子供を産ませたり獣人と妖精のハーフを創ったり、めちゃくちゃなことをしたんだ」


「それでた負けて大陸を追われたのか?」


「あぁ、そうだ。 だから各島には他の種族の方が多い」


「ひどい話だ」


「酷いな。 でもな、神族のなかでも反対した家もあるんだ。 ムーリアス家がその筆頭だ。 他の家は潰されたがムーリアス家だけは残った」


「強かったのか?」


「彼らはエルフ、魔女、妖精と手を結び戦った。 その成果が東の大陸だ」


「じゃあ東の大陸にはいろんな種族がいるのか?」


「いや、彼らは去った。 いつの日か戻ることを約束してな」


「それはいつなんだ?」


「それがわからないんだ。 だからムーリアス家は大陸を自然豊かに保ち続けている。まぁ、それが昔話だ。 邪魔したな、明日から頑張れよ。 あと、国なんかより愛は大事だからな」


「あぁ……」


シルフは最後の方の言葉をあまり聞いてはいなかった。


部屋を出るとリビングに戻る。


「どうだった?」


「伝えたさ。 これでいいんだよな……」


2人は手を取り合い仲良く寝室へと消えた。



朝シルフは目覚めると荷物をまとめ走って隣町まで行くことにした。


今まで知っていた歴史とはかけ離れていたが、なぜ他の種族がほとんどいないかは理解できた。



ダラーの町へ着くと中に入る。


丘の上の屋敷に行くと門のところで止められる。


「誰だ?」


「シルフだ」


「新人か、入れ」


話は通っていたようですんなり中に入れた。


庭を通り抜けると玄関には執事と思わしき紳士な老人が立っていた。


「おはようございます。 ご主人様の元へ案内させていただきます」


玄関ホールの目の前の階段を上がり扉をいくつか超えたところの扉をノックする。


「入れ」


中からヒルキンの声がして執事が扉を開くとシルフは中に入る。


「よく来たな。 今日からここで働くわけだが、お前の為に凄い奴が上司になるぞ。 入ってくれ」


扉が開くと、長い金髪を結び、青い眼をした爽やかなイケメンが入って来た。


「ノークス=アレフドール。 アレフドール家の跡取りにしてこちら白狼隊の副隊長だ」


「よろしくお願いします」


ノークスは綺麗な所作でお辞儀をする。


「よろしくな」


シルフは軽く挨拶する。


「おい、アレフドール家だぞ? 知ってるのか?」


「知らん。 でも歳は近いだろ? 俺15歳になったばっかなんだ」


「私は16になりました」


「近いじゃねぇか、ダチになろうぜ!!」


「あのな、お前の家柄じゃアレフドール家とは釣り合わないんだよ」


ヒルキンは呆れながら言うがノークスは目を輝かせている。


「友達ですか!? ぜひお願いします」


「勘弁してくれ……」


ヒルキンは呆れ気味に言う。


「話を戻そう。 今からノークスは50名を連れて盗賊の討伐に行く。 そこに参加してほしい」


「了解」


「ちょっと待ってください、それはあまりにも危険では!?」


「そうか? シルフはノークスの指示に従うように」


「はいよ」


シルフは軽く返事をするとノークスの後に続いて退室する。


「それでどこに討伐に行くんだ?」


「ここから南の山にある盗賊のアジトだ。 山の中だから罠もあるだろう」


「山かぁ……」


シルフの頭の中で獣を捕らえる罠の数々が思い浮かぶ。


ノークスは1階に下りると大きな扉をあけて中に入る。


そこにはすでに50名の兵が集まっていた。


「彼も同行することになった。 自己紹介してくれ」


「シルフ=ベルーサです」


「ベルーサ? あのベルーサか?」


「いや、違うだろ? 滅んだはずだ」


「静かにしろ!! 作戦は今晩、山にはトラップが多数ある。 相手の人数は100人~300人の間。 攻め方は罠を解除しながら慎重に進む。 何か質問は?」


「副隊長、それじゃあ次の日の昼までかかるぜ」


後ろのほうから声が聞こえる。


「ハリス、なにか他に良い作戦でもあるのか?」


「えぇ、山を丸ごと焼き払えばいいんですよ」


確かにそれなら敵は火を消すか逃げるしかない。


ハリスと呼ばれた男は長い槍を持っているいかにもチャラそうな男だった。


「しかし、それではダラーの民が納得しない」


「それなら下から煙だけ送ればいいんじゃ?」


シルフは安全な策を提案する。


「煙だけなら意味がない。 お前なら逃げるか?」


「いや、火が見えなければ逃げない」


「そういうことだ。 罠は基本的に考えられるのは落とし穴、紐や網での捕獲、あとは酷いのは落石だね」


「地面に感知魔法もあるだろう」


「それなら木の上を跳んだらいいさ。 相手も木の上に待機してこちらを攻撃したり観察したりするはず」


「ナイス!! それがいいと思いますよ」


ハリスはすぐにシルフのアイディアに答える。


「後は陽動が欲しい。 10名ほどは地面を歩いてもらいたい。


「俺は入るとして、シルフも行くか?」


「あぁ、行く」


「他は誰でもいいさ」


「じゃあ他は適当に。 夕方には出発する。 必要なものがあれば用意するように」


「俺、弓矢が欲しいんだけど」


「わかった。 すぐに用意させる」


ノークスは作戦会議を終えるとすぐにシルフを連れて部屋を出る。


「隣の建物が宿舎だ、いまから案内する」


ノークスに連れられて隣の建物に入るとたくさんの扉があった。


「全員個室を与えている。 各部屋にシャワー、トイレ、キッチンが完備されている」


125号室に案内される。


「ここは最近できたばかりの部屋だからまだ誰も使っていないんだ」


中はキレイで少ない荷物をシルフは置くと剣を持って部屋を出る。


夕方前には弓矢を渡してもらえた。


「使えるのか?」


ハリスに聞かれたのでシルフは頷いた。



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