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君  パーティにふ  しいか    当てて聞いてみろ  ~勇者の都合が優先するとは限らない 勇者aide~

勇者 エクスsideです。相変わらずの展開が続きます。

俺は、あの日までは、確かにただの村人だった。

裁定の日も、父親や母親のクラスを受け継いでいくものだと思っていた。

もし、戦闘職ならみんなに自慢できると気楽に考えていた。


その瞬間までは・・・


「エクスこれより裁定の儀を始める」


俺は、神官の前に膝まづき、目を閉じた。そして、目を開いたときに、俺は、純白の謁見の間の中央に膝まづいた状態でいた。いきなりの光景に俺は面食らった。あたりを見回すと、白い一色の壁と床、天井に、荘厳なステンドグラスが飾られている。絵本や、領主さんの館でも、見たことのない空間がいきなり目の前に現れて、驚いた。


「どちら様?招待状は出していないはずだけど?」


眼前の玉座から、何とも言えない、鈴を鳴らすようなきれいな声が聞こえた。


「あの?ここはどこですか?僕は、フォールスの村にいたはずなんですけど」


不意に聞こえた声に、一抹の不安を感じた。それを、察したかのように、声が再び聞こえた。


「ふふ、ここは本物の謁見の間ではないわ。だから、無礼討ちなんてしなのよ。ここは、私の管理空間よ。あなたは管理者?異世界人?まさか、ただの人間?だとしたら、不思議な子ね。」


言っていることは理解できなかったが、珠を転がすような笑い声が聞こえた。玉座にいる人は、きれいな人なのだろう。


「管理空間に入ることができる人間が産まれるなんて思ってもみなかったわ。だとしたら興味深くて、面白いことね。誰の差し金かしら?」


ひとしきり興味深そうな声を上げ、ほんのわずかに静寂が訪れた。


「今日は、久しぶりの友人を迎える予定だったので、つい浮かれていたわ。でも、この空間にたどり着いたのがあなたでよかった。ここで私に出会えた幸運をあなたに与えましょう、そして、また会いましょう。これは、『約定』よ。」


後ろで扉が開く音が聞こえた、俺は、その音に気を取られた。その瞬間だった。


「エクス=ブレイサ」


名前を呼ぶ声が聞こえた。


目が開かれる。そこは、いつもの村の教会だった。


「?」


さっきの光景は何だったのだろうか?神官は、さっきの姿勢のまま、その場にいた。


「お前を、『勇者』と認定する」


ざわめきが、教会を覆った。俺は、ふと思いだした、これは夢だ。と。




「はぁ、はぁ!!」


背中に、びっしょりと汗をかき、俺は目を覚ました。寒々しい月が、天窓のガラスから、室内に光をくれている。


「くっ!!」


サイドテーブルに置いてある、水差しから直接に水を呷る。


「ふぅ」


一息つき、眠気が飛んでしまったことに少し後悔をする。


「全く、きちんと寝ておけ。と、皆には言うくせにな」


次はいい夢を見れたかもしれないが、と、内心で笑い、俺は、ベッドのそばに立てかけてある剣を手に取り、バルコニーに出る。


剣は、いい品質のものだが、ただの鉄の剣だ。ひんやりとした空気を受け、そのまま、剣を正眼に構え、素振りを始める。


祝福とともに村を出た俺が知ったのは、ただ、残酷な現実だけだった。


ほかの国の勇者はすべて、聖剣に認められて、勇者となる。少なくとも、帝国に2人いる勇者はそう認定されている。




帝国の勇者たちから、俺は、『聖剣無き勇者』と呼ばれている。聖剣もなく、勇者としてのスキルも持ち得ていない俺はそう見えても、仕方がないのかもしれない。


そんな汚名が、知れ渡ることのないように、俺は、必死に剣や魔導を修め、討伐を繰り返した。ダンジョンの防衛線で、前線、殿も積極的にやってきた。しかし・・・しかし、この5年間・・・何一つ得るものはなかった。


ひたすらに、励み、努めていけばいくほど、汚名は確実に広がりを見せていった。


今や、俺のことを、『勇者』エクスと素直に呼ぶ人間はいない。



『王都の聖剣無し』エクス。


この名が、俺が背負っている、十字架のようにのしかかってくる。


そんな折だった。討伐ギルドに、あいつがやってきたのは。


そいつは、俺の頭より一つ背の高い、大男を従え、討伐ギルドの扉をくぐってきた。


朱色のローブが目立つ、黒髪、黒眼の女性にしては、長身。それでありながら、隙がありそうで、飛び込んでくるのを待っているような、懐の大きさすら感じる。


「ここに、『勇者』さまがいらっしゃると聞いてまいりました。」


良く通る声だったが、俺はその時、一人で、討伐ギルドのカウンターで、書類を書いていた。勇者という呼称を聞いたのも久しぶりだったので、まさか自分のこととも思っていなかった。


「俺が『勇者』だ。ずいぶんときれいな姉ちゃんじゃねえか。俺のパーティに・・・いててっ」


お調子者が、その女性に伸ばした手を、大男が、ひねりあげた。そのまま。お調子者は、手を中心に宙づりのような状況になる。


「ここに、『勇者』さまがいらっしゃると聞いてまいりました。」


今までの喧騒を全く意に介さなかったように、再度女性が良く通る声を出した。


「いて~、おい、剣無し、早く返事をしてやれや。いてて、この野郎、少しは加減しやがれ!!」


良く通る声と、罵声にも似た声が混じることなく、ギルドのカウンターに響いた。

受付の小父をを見ると、早く助けてやれと、視線で訴えてくる。


『全く、メンバーに気を使わなくていいときくらいゆっくりとさせてくれ』


俺は、ペンをペン立てに立てかけて、ふぅっと一息つく。


自然と、俺に視線が集まっているのを感じる。


「すまない、少し集中していたところだ。俺が、『勇者』だが、何か用か?」


自然と警戒をする。どう見てもただのか弱い女性とは思えない、あふれ出るほどの威圧するような空気が、歴戦の猛者を彷彿とさせる。かといって、完全に武一辺ともいえない。不思議なことに女性としての魅力よりも、カリスマのようなものを感じる。


「あら、『勇者』さま、始めまして。」


しれっと、その女性は、ローブの裾をつまみすっと腰を落し礼をする。それが合図であったように、大男は、お調子者の手を放した。ちょうど、暴れて足を上げていたところだったので、お調子者は、腹から床に落ちる。


少しの間、哄笑がカウンターを中心に起こった。


「まったく、お前は、少し頭を冷やしに行くぞ」


受付の小父が、お調子者の肩をさすりながら、その場を後にする。まずあのくらいで音を上げるなと説教が待っているのだろう。そういえば散々に喰らったなとふと、思い出す。


「『勇者』さま?昔を懐かしんでいらっしゃるのですか?」


驚いたことに、あっという間にそいつには見抜かれてしまったらしい。俺は、内心冷や汗を流しながらそいつをにらみつけた。


「将兵の状況の把握には慣れていますから。特に、新兵には気を一倍使っております。」


「俺を新兵だと?」


「いえ、そういうわけではありません。ただ、まだ惜しいですね。」


何がどう惜しいのかもわからないが、俺はまだまだだとそいつから見られたらしい。


「今は、欲しいとも思いませんが、もし価値が本当なら・・・手にも入らなくなる・・・かの璧のように。それが、惜しい。そして、私の元で、価値を見出せないのも・・・」


「主殿」


大男が初めて、口を開いた。不思議と頼りになると思える声だった。


「おっと、失礼。さて、『勇者』様に、無礼を働いたことは、お詫びいたしましょう。」


そいつは、黙って再び頭少し下げた。


「この度は、あなたが『勇者』であろうとすることに、共感を抱いている方より、頼みごとを賜ってまいりました。」


すっと、手を差し出す。その手の甲の下に、見慣れたクエストカードがある。


「これを俺に?」


「ええ、さる方は、あなたの現状に苦慮しております。聞けば、あなたは、あるものを求めているとのこと。この依頼を受けると、求めているものに会えるだろうと、お言葉を賜っています。」


罠だと直感的に感じたが、手が、すでに動いていた。俺はその、手の下にあったクエストカードを受け取り確認する。




『勇者』エクス指名依頼


需給クエスト:『堕ちた獣』邪龍 レークメィードゥンの調伏または拿捕


調伏または拿捕対象:  0/1


報酬:


期限:受取時から1年以内




名前在り(ネームド)・・・」


本来固有名称を持たないはずの獣だが、その中には明らかに自らで自身の名を名乗るもいる。それは、名前在り(ネームド)と呼ばれている。当然名乗るからには強い。最上級と言える力を持っている。5年間討伐を行っているが、出会うことのない存在だ。しかし、最上級と言える相手を、討伐ではなく調伏?そもそも、調伏ってなんだ?拿捕?捕獲じゃなくて?俺は、その指令に頭を悩ませた。


「いかがでしょうか?荷が重ければほかに出しますが?」


その声を慌てて俺は遮った。聖剣を与えるというクエスト・・・そんなのを出せるのは二人しかいない。


そして、これを出したのは、おそらく、そのうちの一人だろう。


俺は一瞬で、腹をくくった。


「わかった、この依頼を受ける」


すっと、今まで開かれていた瞳が真一文字に、細められたのを感じる。そして、凍てつくような何とも言えない空気がそれから放たれる。その瞬間だった。


「承知いたしました。では、一つだけ・・・貴君の勇者としての器とは何か?応えられるものがあるか?」


女性の声?いや、もっと、低く問いかけている本質的な問い。


『俺が勇者である理由?ということか?』


俺は、ぐっとつばを飲んだ。目の前の女性を見極めようとするが・・・圧倒されてしまう。前にいる女性が、どう見ても同じ人間にも見えない。


「この王都にいるものを全て守りたいそれが俺の理由だ」


その瞳が、上弦の月を描き、逆に、唇が下弦を描く。


「何かおかしいのか?」


「いえ、いいのですよ。朱にもそれはできませんでしたから。」


すっと、クエストカードは、俺の手に渡った。その女性は、ローブの乱れを直し、ギルドの出口に向かっていく。


不幸中の幸いで、付近には誰もいない。


「さっきの問い、あれはどういう意味だ?」


女性は、少し馬鹿にするように肩をすくめた。


「どういう意味か?か?あのお方に、覚えめでたきお前が、ここまでおめでたいと、少し残念だ・・・と私なりに思っただけ。ああ、あのお方もそれは知っているだからこそ・・・」


首を右に傾けこちらを振り返る。上目に睨みつける様な、怒りに満ちた瞳が、俺を射抜いていく。


「お前は、何様のつもりだ?王族貴族のつもりか?それとも。自衛団か?犯罪者もお前のクラスやスキルでは救うことすらできない人まで救うのか?・・・かなうはずのない夢を胸に抱き死ぬのか?お前は狂人か?それとも、私も知らない聖というのか?」


冷たい言葉だった。その言葉に、俺は一瞬射抜かれる。


それが、夢であったかのように、顔を出口に向け、2歩進む。それは、俺に興味を亡くしたようにも見えた。


「しかし、それを・・・一人ででも、何者かを救えるというのなら・・・何もないお前ができるというのならば・・・」


首を左に振り、首をかしげる。そこには、慈愛と畏怖が同居しているような・・・そして、寂しい瞳だった。


「私は・・・それを見たくて、お前にあたっているだけかもしれない。その時は、迷うな・・・敵味方問わず、汝が信じるものをすべてを救え。それが、それだけが私の望み、そして、あのお方の御心。」


それだけを言い、その女性は、もう、振り向くことなく、ギルドから出ていく。


俺の手には、この半年以上、見続けているクエストカードだけが残った。




王族、貴族の推薦する、武人たちを、部下に、幾度か、邪龍 レークメィードゥンの住まう死火山へ攻勢を仕掛けた。しかし、いずれも、結果は散々だった。


邪龍の足元にたどり着くことすらできぬまま、戦闘不能者を抱え、下山することが当たり前だった。当然だ・・・。功績ののみを求め、叙勲される時のみを求め、仲間を信用せず、信頼もしない。勇者パーティと言えば、聞こえはいいが、今のパーティは、恐ろしくゆがんだものになっている。


これだけ歪な勇者パーティは他国にはいない。


それでも、俺に残された手段は少なかった。恥知らずかもしれないが、青田刈りに出た。いまだに、見出されていない、力を求めた。幸いにも、王国の杯と短剣の一人であるエイダ様が、武功を求めていることはわかっていたので、取り込むことは容易だった。


そして・・・予想だにしなかった収穫もあった。




「剣聖か・・・」


素振りを止めて、ふと東の空を見る。すでに、白くなり始めた空は、夜明けをまもなく告げるのだろう。


「もし、本物ならば・・・だが、・・・」


俺は、不安を払うようにもう一度剣を振る。大倭からの献上品で作られた鉄の剣は、そこら辺の量産品を軽く凌駕する性能だった。


力を込めた一振りから発生した風圧に、バルコニーにあった植物にかかっていた朝露が散り果てる。


「俺は、・・・許しはしない」


誰に言うでもなく、俺は、その場を後にする。ターニャからの連絡では、楽しいことになっているようだが、今欲しいのは、『剣聖』だ。クラウではない。

期限が迫っていた。あと、わずか4か月。一人前に育てる余裕などない。俺は、朝日に剣を立て誰に聞こえるでもなく、心の底から祈った。


「頼む、本物であってくれ・・・」

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