2.妖精少女は悪ガキに会う
箒で出せる最大の速度でアリラリラは空を駆けた。緊急事態に姫であるティティテアを城まで届けなくてはならない。すぐに木と朝露を固めてできた宝石で装飾された城が見えてきた。ティティテアは不安なのだろう腰に回された手は温度が低く微かにふるえている。慰めるように片手を彼女の手に添えるが気付いているのかさえ怪しい。一刻も早くと着地の体勢にはいる
「ティティテア姫様!また、そんな羽なしと遊んでいたのですか。今大変な時ですのに!」
「ばぁや私の友人をそんな風に呼ばないでください。それから大変なこともわかっています。この空のことでしょう?」
羽なしとは、差別用語で妖精の中でも羽が生まれつきないものや事故で失ってしまったものを指す。アリラリラもその一人だ。最初こそ悲しく思っていたものの今では慣れてしまった。それよりも今は混乱している城から去ったほうがいいだろう
「ティティテア、またね」
「ここまで乗せてくれたこと感謝するわアリラリラ。今度は秘密基地行きましょ」
「約束ね」
アリラリラは箒に飛び乗った。高く高く飛び上がる家に木の上のうちまでついた。妖精はたいてい木の上に住み地上に住むのは羽なしとまだ飛び方を知らない子供だけだ。彼女は箒で飛ぶことができたのが幸いで木の上に住み続けることができた。
「ただいま」
そう言ってみても返事する妖精はいない。親が彼女が羽なしになったことを知ったとき、居なくなってしまった。羽がなくなりしばらくの間地上にいたが、箒で空を飛べるようになってから帰ってみたもののがらんとした部屋があっただけだ。本当は住み続けることはできないがティティテアの父親つまり国王のおかげで今もここにいる。アリラリラは自室に飛び込んでバンダナとゴーグルをして布を口に当てる
「おい、羽なしねぇちゃん無事かってうおっ」
「なによ、カイタンタ。うおは失礼じゃない?」
「何してんだよ」
挨拶もなしに部屋に飛び込んできたのはカイタンタ。羽を失くした後隣に引っ越してきた悪ガキだ。暇なのか頻繁に遊びに来る。友達がいないのか不安になってくるが気にしても仕方のないことだろう。ティティテアであれば強引に友達になろうとするだろうが紹介する気はない。悪ガキにティティテアはもったいない
「空に行く準備をしているのよ」
「は?空ってあの雲までか?」
紅い霧は今もまだ空に居座り続けている。さっきはそれの上だったので霧だったが地上から見れば雲だ。飛ぶための空をあの不気味な色に染められるのは気持ちの良いものではない。原因がわかれば解決方法もわかるかもしれないそれならば行くしかないだろう
「そうだけど何か問題でもあるの?」
「どう考えても危ないだろ」
「別に私なら大丈夫。早く帰ったらどう」
カイタンタはぐっと顔をゆがめた。こぶしを握り締めると
「そう言って俺のことビビりのクソガキとかいうんだろ。いいさ俺もあそこまで一緒に行く」
「どうしてそうなるの。あれが本当に何なのかはわからない、そんなとこに飛び込まないほうがいい。子供じゃなくても危ない」
「じゃあ、何で行くんだよ」
「私がやるべきなの。羽も家族もない私が、あなたは羽も家族もあるのだから」
ぽつりとこぼした一言にカイタンタははっとすると家のドアから飛び出していった




