1.妖精少女アリラリラ
初投稿です。羽米と申しますよろしくお願いいたします。
迷いの森の奥深くには妖精の王国があった。その住人たちは人間とほぼ同じ大きさ姿をしているがその背に生えている羽根だけは彼らにはないものだ。大きく模様が複雑なほど美しいとほめたたえられるその羽を人間の貴族だけでなく魔術師と呼ばれる者たちも喉から手が出るほど欲しがっていた。しかしその森は迷いの森と言われるのも納得できるほど暗く複雑で地上を歩く人間が王国にたどり着くなど不可能に近いものだった
その王国に妖精の少女がいた。名前はアリラリラ、いつも片手に箒を持ちぼさぼさの髪を高く一つの束に縛っている。普通の妖精のようだがその背の羽根は無残にも破けている
「アリラリラ、おはよう」
「ティティテア!おはよう。今日はお城にいなくていいの?」
アリラリラの後ろからきれいな金の髪をボブにし、それ以上に美しく大きく蝶のような羽をもった少女が声をかけてきた。彼女こそこの王国の姫にしてアリラリラの親友のティティテアだ
「いいのよ、そんなことより箒に乗せてよ」
「その羽で飛べるでしょうが」
「羽では飛んでないわよ。羽根の魔力で飛ぶのつまり・・・」
「つまり?」
「疲れるのよ」
アリラリラはため息をついた。彼女は羽なしの妖精のため本来は空を飛ぶなんてできない。けれどどういうわけか箒をもつと空を飛ぶことができた。
「わがままなお姫様だなぁ。まあいっかほらのってよ」
「感謝するわアリラリラ」
「では、どちらまで?」
「そうね、秘密基地までお願いするわ」
アリラリラはひらりと箒にまたがりティティテアに手招きをする。彼女も嬉しそうに微笑み後ろに乗る。ぐっと足に力を籠め瞳を閉じて風をつかみ―――蹴った。地面から足が離れて体が宙に浮く、この瞬間が好きだ。暗い気持ちも全部おいていける、しがらみや苦しさからも逃れることができた。そして、目を開いたときに広い空が見えて心も浮き立つ。だが、アリラリラ期待して開いた目を驚愕の色に染めた
「空が」
「何あの血のような霧は」
アリラリラの目に飛び込んできたのは、どこまでも自由な空でない。血のような赤い霧に縛られた檻の空だった