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2.あたしの大好きなご主人様について

あたしはもう1度伸びをすると洗面台に行って顔を洗い、ブラシを掴んでご主人様のところへ行く。


ブラッシングは自分でもある程度できるけど、ご主人様にしてもらうのが好きなんだ。


居間の戸を開けると暖炉の前の揺り椅子で、ご主人様は新聞を読んでいた。


ご主人様があたしの毛皮を好きなのと同じくらい、あたしはご主人様のサッラサラのプラチナブロンドが大好き。光が当たるといろんな色を反射して、ついつい猫パンチしたくなっちゃう(ガマンガマン)。


「やぁおはよう。ブラッシングかい?」


ご主人様は新聞から顔を上げてあたしを真っ直ぐ見つめてにこっ、てした。眼鏡の奥の珊瑚礁みたいなグリーンの瞳はいつも優しくて、つい潜ってお魚とったりしてみたくなっちゃう。


あたしはご主人様の膝によじ登って、そのほっぺに頭をスリスリした。


「その前にチューにゃ」


「はいはい」


頭をかかえてキスされた。優しくて嬉しいけど、あたしは膨れてプイッと横を向いた。


「違ぁう!そこじゃないのークチにゃあ!」


「クチは法律すれすれだから、ダメだよ」


困ったみたいにご主人様が笑う。笑ってないでもっと困ればいいのに。


『獣人保護法 第3条 なんびとも獣人に性的またはそれに準ずる行為を行ってはならない』


ご主人様は法律家だから、そういう点には厳しいんだ。


「いやーにゃぁあ!ダーナにはするくせにぃ……ごめんなさい」


先に謝ったのは、ご主人様が怖いからじゃない。


あたしがこんなことを言うとご主人様はきっと真面目にこう説明してくれるはずだ――ダーナは僕の婚約者で人間だから、と。


そういうことってご主人様から聞きたくないんだよね。猫型獣人だって嫉妬はするんだにゃ。


「ねぇねぇ、ブラッシングして」


「はいはい」


ご主人様はブラシであたしの背を優しく撫でてくれる。気持ち良くてあたしは目を細め、ゴロゴロと喉を鳴らした。


「今日は朝から随分とご機嫌ななめだったね。怖い夢でも見たのかい?」


落ち着いた低い声って猫型獣人の波長に合うんだよね。聞いてるだけで幸せ。


「んー……忘れたにゃ」


そんな夢の話をするより、今はブラッシングを楽しみつつ喉を鳴らしていたい。


「終わったよ」


「もう1回にゃ」


あたしは猫の血が濃いから本来夜行性なんだけど、ご主人様に合わせて早寝早起きを頑張っている。だから朝はワガママタイムなのだ(と勝手に決めちゃったのにゃ)。


「困ったなぁ、早く朝食にしないと今日は約束があるんだよ」


と言いながら手早くもう1回ブラッシングしてくれた。優しくて大好き。


だけどあたしは不機嫌に尻尾をパタパタ振ってみせる。だってご主人様がオフの日に約束があるって言ったら、もう大体は決まっているんだから。


「物足りないにゃ。夜にもう1回してね?」


「わかったよ」


「ご主人様、大好き」


あたしは心を込めてご主人様のほっぺにキスをした。でもこの気持ち、絶対に通じていないと思うと……毎日のことながら、ちょっと切ないのにゃ。

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