表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/33

1.猫型獣人で職業はペットであるあたしについて

ふあぁーあ。


あたしは目を覚まして、大きなあくびを1つした。クッションを何枚も重ねた柔らかな寝床でゴロゴロ転げ、指先をペロッとなめて顔をこする。


それから尻尾をパタンと振って今の気分を表現してみた。つまり、何となく不愉快ってこと。


(なんだか暗い女の子だったにゃ……)


夢に出てきたその子は高いところに立って、人生をどす黒く悲観していた。うーん、あたしだってそんなトシじゃないけど(17歳だし)、人生ってそんなに悪いものじゃないと思う。


ま、それも優しいご主人様のお陰だけどね。


あたしは猫タイプの獣人。獣人にもイロイロいて、耳と尻尾だけが獣という人間に近い子もいれば、あたしみたいに獣の血が濃いのもいる。


ペットとして人気があるのは獣の血が薄い方なんだって。でもあたしはあたしが気に入っている。


あたしの自慢は、ふわふわの砂糖菓子みたいなライトグレーの毛皮だ。肩から腕にかけてと、頭から背中にかけてその毛皮が皮膚を覆っている(だから名前もシュクル――お砂糖――ってつけてもらったにゃ)。


顔は人間よりだけど、ビー玉みたいな青い瞳は猫っぽいってよく言われるかな。


あたしはこの毛皮と丸い瞳でご主人様を陥落(おと)した。


ペットショップのケース越しに目が合って以来、ご主人様は何回もあたしに会いに来てくれた。そしてある日ついに、あたしを買ってくれたってわけ。


ペットショップってケースって、人権はどうなってるのかって?


もちろん、あたしたち獣人に人権はない。


でも、そんなのは必要ないんだ。獣人には優しい人間のファンがたくさんいて、あたしたちが何にもしなくても寝床とエサを提供してくれる。


あたしが生まれる前には悲惨な時代もあったそうだけど、今はちゃんと獣人保護法ができていて、街の看板にはこんな貼り紙があるんだ。


『獣人は知性のある動物です。


1.暴力をふるわないようにしましょう。


2.差別用語などは使わないようにしましょう。言葉で怯えさせないようにしましょう。


3.ペットとして売買する際には本動物の同意が必要です。


4.飼育する場合には十分な食事と清潔で暮らしやすい環境を整え、本動物が希望すれば教育を与えましょう


以上のことを破った場合には、法律により20年以下の懲役、または1000万G以下の罰金が課せられます』


ね?


こんなに大事にされているのに、なまじ人権なんて与えられたら面倒なだけにゃ。


働いて税を搾り取られてもまた働かなきゃいけないし、ゴハンも自分で取ってこなきゃいけなくなっちゃう。


てな感じで、人間と獣人はお互いに足りない所を補い合ってまぁまぁうまく暮らしている。獣人に足りないのはもう100%自力で稼ぐ能力だ。いわば甲斐性なし。


人間に足りないのは……うーん、何かなぁ?『なんにもしない』能力かな?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ