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安倍晴明シリーズ  作者: 栞
3/6

第三ノ巻 羅生門の除霊に隠された秘密

〖前回までのあらすじ〗

平安京の陰陽師界でその圧倒的な霊力を勝る陰陽師・安倍晴明

しかしその性格は上の者には外面良く、めんどくさがりの上に

口調は悪い、態度もデカいと裏表の差が激しいのであった。


そんな晴明、内裏の“主上”から除霊相談を多々受ける事が多く

その除霊に自身の“十二天将式神”という特殊能力を持たせた式神を連れ

除霊に挑み、毎回あっさり除霊完了!!


だがここでも晴明の性格である外面の良さが災いを起こし、なんと式神を

連れて除霊したにも関わらず主上には“一人で除霊を行いました”と報告。


その毎回の晴明の言動に業を煮やしたのが“天将式神の羊の神ハイラ”

「俺たちの事も言ってくれなきゃ、もう俺除霊のサポートに行かない」

と大激怒。

おまけに親友源博雅から

『羅生門の除霊をしてほしい』と除霊相談を受けるが除霊を行うにはハイラの力

が絶対的に必要。晴明は自分が何を言っても無駄(反省はしていない)だと

思い同じ“天将式神の兎の神アンチラ”に「お前ハイラ説得して来い」と

放り投げた。

アンチラは晴明に“俺なりの言葉でいいんだな”との問いに“構わない”と曖昧な

返事を返した。


翌日

アンチラはハイラに晴明が“ハイラの能力が必要で頼りにしているんだ”と語るが

ハイラはその言葉に対して“そう言ったのは相手がアンチラだからでしょ”と反抗。

そこでアンチラは渾身の演技と噓八百を並べた晴明の思いを熱く語って説得。


無事ハイラは晴明の除霊サポートをやる気満々となり説得は成功したものの

アンチラの説得した内容に口が塞がらない晴明であった。


一方、羅生門では不思議な女が現れた。頻りに“強き者”と言い続けていた。


≪式神能力紹介≫

まだ登場してない式神の能力は“封印”されてます。

【天将式神四 卯アンチラ】

能力 封印

性格 “智将の式神”と言われ、晴明が初めて生み出した式神

   優しく、晴明と他の式神のいざこざの仲裁に入る事も。

【天将式神五 辰アジラ】

能力 治癒

性格 “晴明のお世話係”晴明に対して過激な態度で接している

   ストレートの長い黒髪をし綺麗な顔立ちをした外見は“女”

   でも実際は“男”

【天将式神七 未ハイラ】

能力 暗闇の場に連れて行く式神

   詳細については封印

性格 子どもっぽい所もある。思った事は直ぐに口に出し反抗的になる事が多い

   が晴明の力になりたいといつも思っている

【天将式神九 酉シンダラ】

能力 飛行/文届け専門式神

性格 水平の服を着た中学生位の男の子。屋敷ではふよふよ浮いているが

   外に出ると白く大きな翼が現れる。尊敬語を使いこなす可愛らしい式神

【天将式神十 戌ショウトラ】

能力 人間から犬になる/文届け専門式神

   脚力が強く、長距離を速く走る事が出来る

性格 人間の時は甘えん坊でやんちゃ、おこちゃま

   夜になると犬になってアジラにナデナデしてもらうのが大好き

背後で威勢のいい物売りの声が響き渡る昼間の都。


「羅生門ですか?」

アジラは不思議そうな表情を浮かべて、味噌屋のおかみを見た。

そしてたった今、お金を払った分の味噌を受け取った。


「そうだよ~怖いもんだね。最近はこの周辺でも悪霊が出るって噂も

多いからね。ここいらの衆も夕方には店終まいしてしまうのさ。


ちょっと前まではそんな事はなかったんだけどね~

あんたたちも気を付けなよ」


アジラは横にいたアンチラを見上げた。

アンチラはアジラをチラッと見ただけだった。


買い物を終え、晴明屋敷に戻る途中アジラはアンチラに問いかけた。

「羅生門の除霊に関して俺は聞いてはいないのだけど、アンチラは

晴明様から何か聞いてますか?」

「一応な。だけど、晴明も詳しくは博雅から聞いてはいないと言っていた。

一昨日(おととい)、晴明が博雅から除霊相談を受けてその返事を昨日ショウトラが

内裏にいる博雅に文を届けたそうだ。

その間に俺はハイラの説得をしたんだけど…」


とその先を言いかけた時、アジラのクスクス笑う声が聞こえた。


アンチラは何とも言えない感じをもった。とにかく、ハイラを必死に

説得した。それに関して言えば自分でも恥ずかしい程に頑張ったと

思っているが…


「ハイラに今朝会った際、アンチラが晴明様がどれだけ自分の事を

“信用して信頼して頼りにしている事を熱く語ってくれたんだ”と

言ってましたから。晴明様の代わりに…と…」

とアジラは言い切ってから、一緒に歩いているアンチラを見ると

アンチラは米を担いでない方の手で目を覆い、真っ赤になっていた。

「因みに、熱く語っていた時のマネまでしてくれました」

アジラはサラリと言う。

「マネ!?」

思わず裏返った声でアンチラは叫んだ。


「ええ」

アジラはアンチラの驚いた顔を見てニッコリ微笑んで早足で歩いて

行ってしまった。


「(もっと違う方法で説得すればよかった)」

そう思ったが後の祭りであった。



その頃の晴明の自室にて

「晴明、晴明、な~晴明、せ・い・め…」

甲高い声が自分の名を何度も何度も繰り返し叫ばれていた。


その声に必死に苛立つ気持ちを抑えながらも筆を持つ手は文を書き続けていた

晴明。しかし遂に大声で

「うるせぇ!今日の文届けは終わってんだろ!!さっさと霊視鏡(れいしきょう)に戻りやがれ」

と筆で部屋の隅に置かれた大きな赤い鏡を指した。


「用があるから、名前呼んでんじゃんか~なのに、晴明が何も言わないからさ~」

プク~と頬を膨らませていたのは、あの銀髪もさもさヘヤーのショウトラ

だった。今日は早めに仕事が終わり、人間の姿で先程から晴明の部屋で

コロコロ横に転がりながら文を書き続ける晴明の名前を呼び続けていた

張本人である。


「なんだ、用って。おれは忙しいんだ。お前の相手なんてしてられねぇーんだよ」


するとショウトラは起き上がって、胡坐(あぐら)をかいた。

博雅(ひろまさ)の除霊の件だよ。あれ、どうなったんだって事。俺、博雅から

文もらって晴明に届けたじゃんか~詳しく書いてあったんだろ?教えてくれよ」

しかし晴明はショウトラの方を見向きもせずに

「あれはお前には関係ない事だ。ハイラだけ連れて行けばそれでいい」


その言葉を聞いたショウトラは眉を寄せた。明らかにいつもの晴明と違う。

いつもなら

“んな、羅生門なんて悪霊のたまり場だろうが。そんな所、除霊した所で

意味ねぇーんだよ。アンチラとハイラ連れてきゃ、なんとかなるだろ”

というだろう。それが“ハイラだけ連れて行く”と断定までしている。


まぁ~その為にアンチラにハイラを説得させたのだから。


「あっそ。それじゃあ、なんかあっても俺知らないからな。

手伝いなんてしないからな」

と霊視鏡に戻る寸前ショウトラは

「晴明の意地悪、晴明のバカ、晴明のアンポンタン!!」

と言いながら光玉になって霊視鏡の中に入って行った。


「ショウトラ、悪いな。今回ばかりはお前に言える事はそれだけだ」

視線を落としつつ、再び筆を動かそうとして止めた。

何かを考え込んだ後

「“シンダラ”出てこい」

晴明は別の式神の名を呼んだ。



「そうなんだよ~晴明様は俺の事すっごい信頼してくれて俺も

頑張らなきゃって思ったんだ」

ハイラはアンチラが言った事を嬉しそうに繰り返し言っていた。


その横で

「ってことは...俺様の出番もあるって事だよな。考え様によっては…」

屋敷の屋根の上で遠くを見ながら、自信満々で口走った者がいた。

風に(なび)く、その腰に巻いたボルドー色の腰布がその者の存在感を

強調させていた。



赤い霊視鏡が光ると中から出てきたのは水平の服を着て茶色のハーフズボンに

同じ色のブーツを履いた中学生程の少年だった。

「シンダラ、登場~」

と宙に浮かびながらニコッとしていた。


晴明は何も言わずにいつも思う事がある。

―どこかで式を生み出す際、占い方向や時期を間違えたな…


シンダラは『十二天将 酉の神』である。

一般的に干支の酉は“鶏”を指すが、シンダラは空を飛べる“鳥”として

晴明は生み出した。なぜなら、シンダラはショウトラ同様に“文届け専門”

の式神だったからだ。ショウトラが行けない距離の場所に文届けをしている。


それを目的として晴明はシンダラを生み出した。

が、どこで間違ったのか可愛らしい式神が出来た。


「何か御用で?」

「用がなきゃ、呼ばねぇーよ。ただでさえ、ショウトラが騒いだ後なんだからな」

「文届けならば、今日の分は終えたはずですけど…」

シンダラは首を左右にコテコテと動かした。


「いや、文届けじゃない。今からアンチラと一緒に羅生門(らしょうもん)に行ってもらいたい」

急に晴明は言い出した。しかし、羅生門の件についてシンダラは知らない。

「羅生門?アンチラと?では、晴明様もご一緒ですか?あっ!?でも…」

シンダラは全く晴明の意図(いと)が見えない。


晴明はシンダラにこう告げた。

「博雅から羅生門にいる悪霊の除霊を頼まれた。だが、今はまだおれは動かない。

実際、除霊する日はまだだ。そこで、少し頼みがある。

アンチラとともに羅生門に行き、現在の様子を見てきてくれ」

「はぁ~様子…と言いますと?」

「どういう状況かって事だ。ただし、絶対に羅生門に近づくな。

羅生門の周囲を一周して帰って来てくれればいい」

「でも、確かあの辺は真っ暗なはずですよ。遠くからじゃ何も見えないと

思いますけど」

「見えなきゃ見えないでいいさ。羅生門に近づくなというのは羅生門に下りる

なって意味もなす。詳しい事はアンチラに聞いてくれ。アジラと出掛ける前に話はしてあるからな」

「とりあえず、僕はアンチラを乗せて羅生門まで行けばよくて羅生門の

偵察みたいな事をしてくればいい感じですか?」

「そう解釈してもらって構わない」


シンダラはこの晴明の言葉を未だよく理解出来なかった。


アンチラがアジラと帰宅した後、晴明はアンチラを自室に来る様シンダラに伝え

来させた。


「シンダラとだろ?」

アンチラは確かに晴明からシンダラと共に羅生門に行く様命令されていた事を口にした。

「でもどうしてアンチラだけなんですか?」

ここでもシンダラは晴明の考えの意図が捉えられないでいた。


「今回は除霊しに行くわけじゃないからな。的確におれに現在の羅生門に

ついて説明できる奴じゃないと困るからって感じだな」


「なら、アンチラしか適任者はいないね」

シンダラはようやく晴明の考えを理解した。

「ところで晴明、この羅生門の除霊に関してもう博雅と連絡はついてるんだろ?」

「まぁな」

晴明は腕を組んだ。

「その事についてはさっきまでここでショウトラが言ってはいたが奴には何も伝えてない」


「それから晴明、さっき聞き忘れた事があったんだけど…」

アンチラが晴明を見つめて言う。何故か、晴明はアンチラから目を逸らした。

その目の動きをアンチラは見逃さなかった。

「何だ?」

そう言った頃には晴明の視線はアンチラに向けられていた。


「その羅生門の除霊は()()()()()()()()()()()()()?博雅じゃないだろ?」

そのアンチラの言葉を晴明は無表情で聞いていた。

「何が言いたい?」

晴明の言葉はいつもの口調ではなく、感情も籠ってもない様に感じた

シンダラ。心配そうに二人のやり取りの顔を交互に見ていた。


アンチラは続けた。

「回りくどいって事さ。

いつもの晴明なら今回の除霊でもなんでも直ぐに終わらせたいだろ?

いつまでも一つの除霊に時間はかけないし、前回の主上の除霊依頼も俺たちの事は別としても

“さっさと終わらせるぞ。めんどくせーから”って言ってたしな。

なのに今回の除霊に関しては、やたら神経質というか…慎重というか…俺的には

腑に落ちない点が多い。

だから、博雅からの相談ではあるけども本当は博雅を通してその先に晴明に除霊を頼んだ相手がいるんじゃないかって思ったんだよ。

晴明のその感じだと知ってる相手だと俺は思う。


そして俺の中で腑に落ちない点としてハイラの事もある。

確かにハイラの能力なしでは羅生門の除霊は難しい。それは俺も分かっている。

だから、俺にハイラの説得を頼んだのも分かる。

だけど、晴明の口からハイラ以外の式神の名は出ていない。

つまり“ハイラだけ連れて行く”って事だろうけど、今までの除霊でそんな事が

あったか?晴明の中で

“絶対に()()()()()連れて行きたくない理由”があるんじゃないのかって思うのさ。

あくまで俺の考えだけど」


晴明は漆机に腕を解くと肘をつき前乗りになった。

「正直な所、おれも羅生門の除霊に関しては博雅に聞く前からその通り。

アンチラの予想通りにな。その相手から頼まれていた。

だがおれ自身その相手が除霊した方がわざわざおれに頼まなくたって出来るからな。

“そんな自分でも出来る除霊をおれに頼む必要はないだろ”と言ったんだ。

そうしたらこう切り返してきやがった。

“式(式神)がサポートしてくれるのであれば俺がやるよりお前がやる方が早い

だろう”ってな。

博雅を間に挟んだのはおれとのやり取りをお前らに知られたくなかっただろうさ。

博雅の文には

“とある方から頼まれた除霊ですが私自身、他の除霊を頼まれております。

羅生門の除霊が出来るであろう陰陽師殿に頼まれたい”と記されていたらしい。

だが差出人の名はなかった為に、博雅はおれの所に相談に来たって事だ。

簡単に話を聞いた時点でも、先程も言った様におれは既に内容は知っていた。

だけど博雅には悪いが“詳細を書いた文を書いておれの所に届けてくれ”って頼んだんだ。

どういう風に相手が考えてるのかって事も含めて知りたかったからな。

まっ、それを読んで確信は得たけどな。だからアンチラの言う様に確かに相手は

“かなり回りくどい”やり方で二重にも重ねて頼んできやがったってこった。

おれが素直に“やる”と言わない事を逆手に取ってな。

博雅が間に入ればおれが“やらない”と言いづらくなると知っての事だ」


晴明は深い溜息をつくと首を斜めに傾けて何かを考えてる様だった。


その時アンチラは晴明の話を聞いてハッと気が付き

「あーなるほど…そういう事か…晴明が“ハイラ”だけにやたら拘っていたのは」

シンダラは首をコテンと横に倒してアンチラの顔を見ていた。

「どういう事?分からないよ」


「晴明の性格を考えてみろよ。シンダラ」

「ん?あー見え張りたかったって事ですね」


シンダラの何気ない言葉に思わず晴明は

「ちょっとは悩めよ!!」

と言ってしまった。実際はそうなのだが...


「って事は、相手も“陰陽師”?」

アンチラは敢えて疑問形で質問した。すると晴明は渋い表情を出し唸った挙句

「大きな括りで言えば“陰陽師”だけど…今はそれが主体じゃないな。だが、

あいつは陰陽師としても一流だ。おれから見てもそう思うからこそ

“だから自分でやれ”って言ったんだ」


「まーそれもそうだろうけど…」

アンチラの言葉に複雑な心境の晴明。

「相手は“式がサポートしてくれれば”と言っている。つまり晴明の式神が

“十二天将式神”であると知っている。

そうすれば、相手が幾ら一流の陰陽師だろうと晴明に頼んだ方が自分が除霊する

より俺たちの能力は個々に違うわけだからサポートさせて除霊させた方が早い

って考えか。

それか俺たちの能力をみたいか…とか色々考えられる要素は幾らでもあるけどね。

そう考えれば“ハイラだけ連れて行く”という事にも繋がるのか」


「その通り。おれはわざわざ相手に自分の式の能力を全て教えてやるほど

優しかねぇーしな」

晴明は目を細めて棒読みで答えた。

「って事だ。シンダラ」

アンチラは自分の背後で浮かんで聞いていたシンダラに目を向けた。

「な~るほど…」

シンダラは腕を組んで首を上下に動かした。

すると組んでいた腕を解いて左手の平で拳の右手でポンと叩いた。

「だけどですよ」

今度はシンダラの質問。晴明は段々うんざりしてきた。

「では、何故そこまで分かっていながら僕とアンチラを羅生門に偵察に行かせよう

と晴明様はお考えなんでしょうか?」


「あーそこは俺も聞きたい所だ。その点も腑に落ちない点だった」

シンダラに向けていた顔を晴明に向けたアンチラ。


すると晴明は先程とは打って変わって真剣な顔で

「奴がもう動いてるからさ。だけど…恐らく完全な除霊はしない。

おれが来るのを待ってる。だからおれは“今は動かない”と言ったんだ。

ここで“しょうがないから”と言って直ぐ除霊に動くと今後いい様に使われる

からな。そういう性格が昔から大っ嫌いなんだ」

晴明の表情は苦々しい表情に変わっていた。




暗闇の中の羅生門に一瞬光が光った。


境内内を誰かが走って行く靴音が響き渡る。

その後ろをぞろぞろと鬼どもが追いかけていく。

『人間だ』

『人間だ』


走っていた者は急に方向を変える。どこからともなくチリーンと鈴の音が鳴る。

小さな音…口角を上げ、指に挟んだ白い札を顔の前まで上げた。

その瞳は紫をしており面白そうに目を細め、冷静な口調で術文を唱えた。

朱雀(すざく)玄武(げんぶ)白虎(びゃっこ)勾陣(こうちん)帝久(ていきゅう)文王(ぶんおう)三台(さんたい)玉女(ぎょくにょ)青龍(せいりゅう)

この悪しきモノどもをこの世から滅せよ」


そう小さな声で言いながらその者は札を投げた。

その瞬間、閃光と明るさを広げ自分を追いかけてきた鬼どもを跡形(あとかた)もなく

消し去った。


だが、まだ奥から湧き出るほどに鬼どもは出てくる。

『人間だ』

『人間だ…喰え…喰え…』

『うまい…うまい…』


その者はその様子を黙って見ていた。動揺もしてはいなかった。

消し去ったところで、再び追いかけて来ることなど分かりきっていた。


と揺らめく尾…金緑色の二つの丸い光が宙で動いていた。

軽く月の光が黒い雲の隙間から漏れた。

そこには巨大な黒猫が(ぬし)を守るかの如くその巨体で囲う様に体を

やや丸め姿勢を低くしていた。

ごろごろと喉を鳴らしていた。その音は雷の轟音(ごうおん)かの様に響く。

「今日はここまでだ。また明日来よう」

とその者は後方に(かろ)やかに飛び上がると、その黒猫の背に乗った。


月の光は直ぐに黒い雲に遮られた。


すると素早く黒猫は羅生門から飛び出して行った。

「晴明よ…早くお前の式の力を見たいものだ」

そう言いながら薄笑いを浮かべつつ、黒猫と共に姿を消した。


【第四ノ巻へ】


こんにちは

安倍晴明シリーズ“第三ノ巻”のご拝読ありがとうございました。


今回のお話しはかなり小難しい内容となっており、中盤の部分で

“真相が!?”という感じで書かれております。

そして、最初の方のショウトラのおねだりゴロゴロもふてくされる部分も

“おこちゃま”だな~と思いつつ、好きなシーンです。


酉の神シンダラが初登場!!

ユーモラスのあるカモメをイメージした水兵さん衣装と可愛らしくも晴明に対して

の尊敬の言葉遣いはギャップがある感じ。


そして最後の羅生門に現れた奴は誰だ~~~!!

書きたいシーンだから書いた~!!!!☆(゜o°(○=(-_-; パンチ

※栞さんからパンチくらった...執筆者


最後になってしまいましたがブックマークありがとうございます。

凄く嬉しいです。


これから更にヒートアップした内容になっていくと思います。

それでは次回第四ノ巻でお会い致しましょう。


栞でした。



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