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92話 物騒な歌

後書き修正

 薄暗く不気味で、更に豪華なところもあるこの感じが気に入ったのか、コルキスは歌を歌っている。


 さっきからひたすらこの螺旋階段を登っているのに楽しそうで何よりだ。


 俺はちょっと疲れてきた。だってこの螺旋階段って大き過ぎるんだよ。


「ひっとりっとひっとりっがぶっつか~れば~♪」


 俺の気持ちとは逆にコルキスはノッてきたのかな?


 歌声がだんだん大きくなってきている。


「どっこで~もか~まわ~ず殴っぐりっ合い~♪」


 ん?


「あっすに~もあ~いつ~にほっうふっくだ~♪ 10人あっつめってぼっこ~ぼこ~♪」


 え? なんだこの歌詞は……ディオスも腕を大きく振って階段を登るコルキスに合わせて羽をパタパタさせている。


  「おい、コル――」


「ほ~うふっくしっちゃう~と止っまらっない~♪ にっくしっみの~連っ鎖おっわら~ない~♪ みっんな~を巻っき込っみだっいこ~うそ~♪ あ、そ~れ♪ あっっっと言~うま~にだ~いせっんそ~♪」


 このコルキスの歌のリズムは俺も良く知ってる。だけど、決してこんな物騒すぎる歌詞ではなかった筈だ。


「くふふふふ。楽しいね、ディオス」


 コルキスはそう言って肩に乗っているディオスに何かをあげている。


 お金を数える時や、グレスをフルボッコにした時も思ったんだけど、メファイザ義母上の教育はいったいどうなってるんだろう。


「あえ? どうしたの兄様?」


 俺の方を向いたコルキスが口をモゴモゴさせながら聞いてくる。


 その瞬間にアトラジェリーランプが俺達の間を通り過ぎた。


 照らされたコルキスを見て、真っ黒い物を頬張っているんだと分かった。


「ん、いや……コルキスが楽しそうで嬉しいなと思ってさ」


「本当に? ぼくも兄様と一緒にダンジョンに来れて嬉しいよ」


 は!? ダンジョンだって!?


「ダンジョンって……ロポリス、聞いてないぞ」


『……』


「おい、ロポリス!」


『何よ、煩いわねえ。ちゃんと言ったわよ』


 いけしゃあしゃあと……聖光属性は清く正しく美しく、1つの穢れもない属性だって言われてるのに、その頂点が息をするように嘘を付くんじゃない。


「言ってない!」


『はいはい。じゃあ思い出すのも、言った言ってないの不毛なやり取りも面倒だから、言ったって事にしといてあげるわ。これでいいんでしょ。まったく、いくつになっても聞き分けのない子なんだからアルフったら』


「なっ……」


 なんて奴だ。然も、譲歩してやったみたいな感じを出すの止めろよ。何1つ譲歩なんかしてないだろ。


「くふっ、くふふ……兄様にはこんな風に言えばいいのかー。ありがとうロポリス、勉強になったよ」


『いいのよコルキス。あとさっきの懐かしい歌ね』


「そうなの?」


『ええ、とっても懐かしいわ。で、アルフだけど、次はこんな下らない事で起こすんじゃないわよ。ふぁ~あ、眠い眠い』


 今の、冗談だよなコルキス……本気だったら兄様ちょっと泣くかもしれないぞ。


 ていうか、ロポリスにやたら畏まってたのに、普通に喋っていいって言われたくらいで仲良くなりすぎじゃないか?


 いや、仲良くなるのはいいんだけどさ……なんかちょっともやっとする。


「兄様、そんなに心配しなくてもいいよ。ぼくやディオスがいるし、大精霊が2人もいるんだから」


 ん? コルキスは俺の表情をダンジョンが怖くて心配していると勘違いしたのかな。


 心配っちゃ心配だけど、コルキスの言うとおりだし――ラズマはまだまだ上の方にいるっぽいけど――安心と言えば安心かな。


 にしてもこの螺旋階段、どこまで続いているんだろうか。


 螺旋階段の内側から顔を出して見上げてみても、果てしなく続いていて心が折れそうになる。


「そんなに体を乗り出さない方がいいよ。たまに、すっごく大きな鳥が通るみたいだから」


 そうなのか? それは危ない、さっさとコルキスの横に戻ろう。


「そうだ。兄様疲れたきた頃でしょ? これあげる、すっごく美味しいんだよ。ぼくと半分こだからね」


 ちょっと照れ臭そうに差し出してきたのは、さっきコルキスが頬張っていた真っ黒いあれだった。


 どう見ても不味そう……だけど、そんな事俺には言えない。


「あ、ありがとうコルキス」


「どういたしまして。くふふふ」


 俺は受け取った謎の真っ黒い食べ物――食べ物なんだよな?――を1口だけ齧った。途端に目の前が真っ暗になり、ゆっくりと体の力も抜けていった。


「あれ? 兄様にはまだ母様のおやつは早かったのかなあ……」


 倒れたアルフを見ながら、コルキスは可愛らしく首を傾げていた。





 ##########





「ラズマのバカバカバカー! 兄様はぼくが1番好きなんだからね!」


『そんなわけない! アルフはボクの恋人なんだからー! ボクとアルフの仲を邪魔するなんて許さないぞ!』


 うーん……騒がしいな。


『目が覚めたの? でも暫くそのままでいるのよ。ラズマとコルキスが喧嘩してて面白いのよ』


 喧嘩してる? いや、まあ……どうでもいいよ。なんだか気持ち悪い。

 二日酔いみたいで、世界がこうガクガクと……うぷっ!


「兄様が吐いちゃったじゃないか! ラズマのせいだよ!」


『煩い煩いうるさーい!!』


「ねえ、止めてよぉ。私のお家で暴れないでよぉ」


『アンタは黙ってなさい』


「うぅ……占い通り今日は最悪の日だよぉ」


 コルキス達に混じって知らない声が聞こえる。けど、今は気にかける余裕はない。


 俺は再び意識を失ってしまった。

~入手情報~


【コルキスの歌】

昔からある世界的に有名な歌。

歌の歌詞は国や地方によって様々だが、誰が聞いても知っていると答えるほど有名な歌である。

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