表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/201

91話 空家へ行こうよ

後書き修正

『あーー!! なにこれ、どういうことなの!?』


 突然けたたましい叫び声が響いてきた。


「んぇ? 何?」


『何? じゃないよ! ボクというものがありながらコルキスとそんなこと……うぅ、モーブやドゥーマトラの話は嘘じゃなかったんだ。浮気なんて酷いよぉぉ』


 この声はラズマか。気持ちよく寝てたのに煩いなあもう。


 俺は顔に当たるふにふにした感触を払いのけ、もう一眠りしようと決めた。


『アルフったら……ちょっと見ない間に大人になったのね』


 今度はロポリスが感慨深そうな声で言っている。


『でもこのままは面倒臭いわね。起きてるんでしょアルフ、ラズマをどうにかして』


 痛い。


 頬っぺたに刺さるようなこの感触はロポリスの箒だな。

 

 はあ、きっとこれで起きないとシャイニングアローで同じ事をされるんだろう。仕方ない、起きるか。


「もう、何だよ。まだ寝てたいんだけ……ど!?」


 目を開けると、四肢を千切られ片目を抉られたような人形が浮かんでいた。

あと、お腹に小龍の腕輪がめり込み、右手部分には箒が突き刺さっている。


 もしやと思って、そんな状態でも微笑んでいる人形に恐る恐る触れてみると、これまでに無いほどの不快な表情を露にする。


 やっぱりこれって感じの悪い人形だったか……あ、歯もないじゃないか。


『さっき泣きながら縋り付くラズマを払いのけたでしょ。その後始末を宜しく。私は寝るから離して』


 ロポリスの入った人形をから手を離すと、そのままソファーまで行き動かなくなった。


 なぜ人形があんな悲惨な事に。ロポリスがああなってるって事は、ラズマは……あれか。


 ベッドから少しだけ離れた床に手足と歯、それに目玉が転がっている。


 微妙に震えているようにも見えるな、はっきり言ってもの凄く怖い。


「あー、ごめんラズマ」


『グズッ……それは何に対してのごめんなの?』


 ラズマにしては珍しくメソメソと泣いている。


「何って、さっき払いのけちゃったみたいだから。痛くなかった……よな?」


『うくっ、えぐっ、アルフのバカー!』


 目玉を中心に手足と歯が浮かび上がり、部屋から出て行ってしまった。なんて気持ちの悪い光景なんだ……うん、外から聞こえる悲鳴は聞かなかった事にしよう。


『ないわー。本当にないわー、アルフ。コルキスとそんな格好で寝てるのに払いのけちゃってごめん? さすがにラズマが可哀想で黙ってられなかったわ』


 可哀想とか言ってるけど、ロポリスの声は楽しそうだな。


 いつもの如く俺の上で寝ているコルキスを落とさないように抱え、自分の体を起こそうとして違和感に気付いた。コルキスが俺の素肌に密着している。


 覗き込むように俺の胸にいるコルキスを見ると、ナイトガウンの中で気持ち良さそうにすやすや眠っていた。


「これは……たぶんディオスだよ」


 コルキスは案外寝相が悪い。


 いつも俺の上でもぞもぞ動いては俺から落ちそうになる。その度にディオスがそっと手助けをしているらしい。


 きっと途中で面倒臭くなったディオスが俺のナイトガウンの中にコルキスを入れたんだろう。


 このナイトガウンはスモルルフェアリーの抜け羽根で作られているから、大きさは勝手に調整されるみたいだし。という名推理をロポリスに伝えた。


『ほーん、いつも一緒に寝てるのね。ま、いいけど。とにかくラズマは頼んだわよ。きっと西の外れにあった古い空家で影属性の魔物に八つ当たりしてると思うわ、ウジャウジャいたし。じゃ、寝るわ。お休み』


 ロポリスはそう言うと、今度こそ動きも喋りもしなくなった。


 俺も面倒臭いから寝たい。しかも魔物がウジャウジャときた。


 心の底から二度寝したいと思うけど、このままラズマを放っておくと後で鬱陶しいだろうし、行くしかないか。


「うーん……兄様もう起きたの? 太陽の気配はまだちょっとだよ」


 とか言いつつ俺を吸血するコルキス。首に走る痛みお陰か目が冴えてきた。


「ラズマがご機嫌斜めで出て行ったんだよ。探しに行くぞ」


「いいけど……兄様、これは何? ぼくに何したの?」


 コルキスは自分の状況を把握すると、悪戯声で訊ねてきた。しかも、グリンホーンフェンリルに不完全変形してだ。


 ふわあああ、耳と尻尾がそんな……うわ、肉球まで………


「くふふ、兄様のその顔気持ち悪ーい。ディオス助けてー」


 ぐはぇ!


 ディオスはコルキスの言葉に反応したかと思うと、即座にコルキスを包み込んで俺をベッドから叩き落とした。


「あ、ディオスってばやりすぎだよー。くふふふふ」


 心なしかディオスが俺をばっちい物を見るかのようにしている。


「兄様、いつまでも床に寝転がってないで早く着替えようよ。ラズマ様……ううん、ラズマを追いかけなきゃ」


「好きで床に寝転がっている訳じゃない。さっきので腰が痛いんだよ」


「本当に兄様はクソ弱いんだから。しょうがないなあ」


 コルキスはやれやれと大袈裟な仕草をすると、また吸血してきた。


 あっという間に腰の痛みは消えたけど、もやっとした気持ちはそのままだ。後でもう1回不完全変形してもらおう。それで許してやる。









 ##########









 俺達はロポリスが言っていた、西の外れにやって来た。


 ちなみに大嫌いニベルを出た時に、ピクシーダンスの効果はコルキスが解除してくれている。


 大嫌いニベルの店主が飛び去るラズマを見て、怯えきっていたのは本当に申し訳なかったなあ。


「ここでいいんだよな?」


『……』


 ロポリスめ、本当に寝てるのかよ。


 ティザーは何だかんだで手伝ってくれたけど、ロポリスにその気は無さそうだ。


「あってるよ兄様。ヒストリアを使いながら来たんだもん。ラズマとグルフナはあの中だよ」


 大嫌いニベルで身支度をしているとグルフナがどこにもいないと気付き、俺は結構慌てた。


 コルキスのヒストリアによると、ラズマが出ていく時に連れ去ったらしいと分かり急いで来たんだけど……。


「あの、中か……」


 コルキスが指差す空家は、建物が密集しているアギルゲットの中にあって、ぽつんと1軒だけ建っている。とても異質な物に見える。


 おまけに朽ちかけの黒ずんだ岩でできていて最悪の雰囲気だ。


「凄く雰囲気のいい家だよね。ぼくこういう秘密基地も欲しいな」


 コルキスは宝物でも見るかのような目で空家を見ている……相変わらずコルキスのいいね基準が分からない。


「そうか」


「早く行こうよ。兄様も絶対気に入るよ!」


 コルキスに手を引かれて入った空家は、予想通り薄暗くて不気味だった。ただ、それ以外は普通で家具も傷んだ様子はなく、蜘蛛の巣なんかもない。


「ラズマ達いないな。もしかして別の所に行ったんじゃないか?」


「ううん、いるよ。暖炉に入って行ったみたい」


 えーっと暖炉……あれかな。


 薄暗い家の中でも特に暗くて見え難い場所に暖炉はあった。


 近付いてみると、俺くらいの体つきならなんとか入っていけそうではある。


 幸い薪の燃えカスも無さそうだ。屈んで進めば問題ないかな。


「あれ? 暖炉の奥は壁になってるぞ」


「あ、奥じゃなくて下だよ」


 下か。コルキスに言われて暖炉内で足元を手で確かめていると、何かが描いてあった。


「暗くてよく見えないな。ロポリス、明るくしてくれない?」


『……』


 してくれないんだな。鞄の中のロポリスはウンともスンとも言わない。分かりましたよ。


 あー、何か明るくなる物ってなかったかな……お、そうだ。


「コルキス、あれ出してくれ。えっと、アトラなんとかっていう……」


「アトラジェリーランプのこと?」


「そう、それ!」


「ちょっと待ってて……はい、兄様」


 コルキスからアトラジェリーランプを受け取って気付く。魔力が必要だったじゃないかこれ。


「あ、悪い。魔力を流してくれないか?」


「しょうがないあなー。兄様はぼくがいないと本当にダメだね、くふふ」


 なんだか嬉しそうに笑うコルキスがアトラジェリーランプに魔力流してくれると、仄かな光を放ち始める。


「ぼく闇属性だから暗い色の光りしか出ないけど、ちゃんと見える?」


「ああ、見える。これは魔法陣みたいだ。これ俺にはどうもできないよ」


「任せて!」


 俺と交代したコルキスは魔法陣に触れると、あっさり魔法陣を起動してくれた。さすがヒストリア持ちだ、万能感が凄い。


「もう1回魔力を流すとこの下に行けるみたいだよ。10秒くらいで魔法陣が停止しちゃうから兄様とディオスもすぐに来てね」


「分かった」


 ディオスも羽を動かして返事をする。


 俺達の返事を聞くと、コルキスはアトラジェリーランプを仕舞い魔法陣に魔力を流した。


 とたんにコルキスが水面に落ちたかのように沈んで行く。


 俺とディオスも続いて行く。数秒だけ水に包まれたような感じがすると、そこは螺旋階段の最下だった。


「この上に行ったみたいだよ」


 下に沈んだと思ったら今度は上に行くのか。なんか変な感じだな。それに暗くて上の方が見えない。


「アトラジェリーランプは出しっぱなしにしておこう」


「うん」


 コルキスがもう1度アイテムボックスからアトラジェリーランプを取り出す。


 さっきよりも暗いけど力強いアトラジェリーランプの光に照らされた螺旋階段は、やたら豪華な装飾が施してあった。


「行こうか」


 俺達は階段を上り始めた。





~入手情報~


【名称】シャイニングアロー

【分類】下級聖光魔法

【効果】☆☆☆

【詠唱】ロポスキリオⅡ型魔法言語/乱文可

【現象】

同じ名前の中級光魔法も存在するが、それは1~10本の矢しか出ず威力も桁違いに弱い。聖光魔法となると、無数の輝く矢を高速で射出し敵にダメージを与える事ができる。間違っても軽々しく目覚まし代わりに使用していい魔法ではない。


~~~~~~~~~


【名称】ナイトガウン

【分類】小さな寝間着

【属性】素材提供者先天属性と同じ属性

【希少】☆☆☆☆

【価格】-

【アルフのうろ覚え知識】

大嫌いニベルのナイトガウン。

スモルルフェアリーの抜け羽根で作られており、肌触りや通気性はとても優れている。着る者に合わせて大きさが自動調整されるが、最大で人間の子供サイズまでしか大きくならない。これを着ると抜け羽根の持ち主だったスモルルフェアリーの先天属性と同じ属性の耐性が少しだけ上昇するが、その為には同一人物の抜け羽根のみを使用して作らなければならない。


~~~~~~~~~


【名称】アトラジェリーランプ

【分類】海月ランプ

【属性】使用者の先天属性に変化

【希少】☆☆☆☆☆

【価格】共通金貨4枚

【コルキスのヒストリア手帳】

発光する海月状のランプ。

22の触手をもつ円盤に透明な半球が着いた形をしている物体が瓶に3つ入ってるよ。魔力を流すと瓶から飛び出し発光、使用者の周辺を浮遊しながら照らしてくれるんだ。使用者の先天属性によって色や明るさが変わる他、このランプに攻撃してきた者にその魔力を触手に纏わせ反撃してくれるらしいよ。持続時間や反撃の強さは始めに流す魔力の量に依存するみたいだね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ