表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/201

83話 いわゆるパラサイト

後書き修正

 慈悲の部屋を出てしばらく進んだ頃、何故かパパルが1人で俺達の所までやって来た。


 どうも様子がおかしい。虚ろな目をして口から涎を垂らしている。


「やっと来たの? 遅すぎるよ」


 俺が困っていると、コルキスが浮かんでいるパパルを階段の角に叩き付けた。


「何やってるんだコルキス!?」


『まーまー、ここはコルキスに任せとこうぜアルフ』


 アクネアは人形の手をパタパタ動かしながら俺を制止した。半分に千切れた人形だからけっこう不気味だ。慣れたと思ってたけど、そうでもなかったな。


「ねぇパパル。いつまでも寝転がってないで早く案内してよ」


 不機嫌な声でパパルを蹴り飛ばすコルキス……理由は分からないけど、いくらなんでも酷すぎる。


 それでもアクネアは俺を制止するのをやめない。


「は……い………」


 コルキスに蹴り飛ばされたパパルはどす黒い血を吐きながら浮かび上がり、どこかへ向かい始めた。


「行くよ兄様」


『早く終わらせんと酒を買う時間が無くなってしまうわい』


 コルキスは俺の手を取りパパルに続いて行き、ティザーは俺の頭の上でグルフナを振り回して急かしてくる。


「コルキス、説明」


「後でね。あんまり時間がないから兄様は何もしないで付いて来て」


『そーそー、これはアルフのお願いを聞いてるからなんだしよ。ま、コルキスはそれだけじゃねぇだろうけどな』


 俺だけ仲間外れみたいで嫌だな。それに俺のお願いでってどういうことだよ。


『ほれ、置いていかれるぞ。走れ走れ』


 ティザーが俺の頭をグルフナで軽く叩いてきた。


「そうは言っても階段が……」


「はぁ兄様は本当に……ディオス、兄様を運んで」


 コルキスの横を移動していたディオスは面倒臭そうな顔をすると、蝙蝠の姿をやめてぐにゅぐにゅした元の姿になって俺の下に滑り込んで来た。


『お、それ楽そうじゃねぇか。俺も頼むディオス』


 俺はディオスに半ば拘束されるように運ばれることになった。








 ########








「え、何あれ」


 パパルを追いかけて階段を上ったり下ったりすること1時間弱、このダンジョンには珍しい広い平場に辿り着いた。


 平場には小さな物置小屋ほどの緑色の気持ち悪い物体やぼこぼこに膨らんだ何かがけっこうな数あった。パパルはその気持ち悪い緑色の1つにしがみついて頬擦りしている。


「……エメラルドサーフェイトモスだよ」


『産卵じゃの』


『やっぱりパパルは駄目だったな』


 俺の知らない魔物かな。モスってことは蛾かなんかだろうけど……それにパパルは駄目とは?


「むう、あれ全部先天属性が風だ。残念だな。お疲れ様パパル。もう死んでいいよ、自爆しちゃって」


 はあ!?


「アッ、あっ、あぇ、アッ、あっ、アッ」


 コルキスがとんでもないで事を言ったけど、パパルは何とも言えない声をあげるだけで自爆なんてしなかった。


 ただ、ビクンビクンと震えながら上半身がこちら側に反り返ったパパルの顔には何本も細い管が突き刺さっていた。


『始めてやがったか』


「ひぃぃぃ!! パ、パパルが!!」


 他のエメラルドサーフェイトモスからも管が伸びてきて、パパルの身体がぼこぼこと膨らんではち切れそうになっていく。なのにパパルが恍惚とした表情なのがまた怖い。


『確かあの状態じゃと、エメラルドサーフェイトモスにされることは何でも強烈な快感になるんじゃったか。哀れじゃて』


「ごめんね――」


 後半がよく聞こえなかったけど、コルキスは悲しそうな声で呟くと、眠らないドラゴンに不完全変身して漆黒のブレスを吐き出した。


『おお! あの時とは桁違いの威力じゃねーか』


『まあ本物にはまだまだ届いとらんがのお。じゃが、あれらを殺すのに魔力を全部使わんでもよいと思うんじゃが』


『優しさだよ、優しさ』


 相変わらず俺は置いてけぼりだよ。全然話に付いていけない。


「ううぅ。兄様、吸血させて……」


 エメラルドサーフェイトモス達を跡形もなく消し去ったコルキスが、不完全変身を解いて近づいてくる。凄く顔色が悪い。


「いいぞ。早く吸え」


 屈んで吸血しやすいように首を出すと、コルキスが物凄い勢いで吸血してきた。


「ちょ、吸いすぎ」


『平気だっての。魔力が底をついてんだから少しくらいサービスしてやれ』


『ふむ、アクネアよ。アグアテスに来てからやけにコルキスに優しいのお』


『兄好きのくせに知り合いの兄貴を殺――』


「アクネア、余計なこと言わないで」


 吸血を終えたコルキスは不満気にアクネアを見た。


「どういうこと? 知り合いって誰だ?」


『……ピポルだよ』


『ほお、そうなのか?』


「ピポルなのか」


「もー! この話はおしまいだよ! パパル以外はさっきの部屋で待つようにしてあるから迎えに行くよ! 急いで!」


 コルキスは怒ったのかちょっとだけ顔を赤くして歩き始めた。


「待てって。急ぐなら飛んで行こう。さっきの慈悲の部屋ってあそこに見えるあれだろ?」


 俺はうっすら見える慈悲の部屋の入り口を指差した。


「……ぼくにはそんな遠く見えないから分かんない。それにここではアグアテス産まれの魔物や特定の存在以外は飛べないの!」


 あ、そうだった。アグアテスって飛行とか浮遊系の魔法やスキルがほぼ無効化されるんだった。


『儂等は飛べるが運ぶのは面倒――』


「早くお酒買いたいんだよな?」


『――じゃが特別に運んでやろうかの。アクネアはアルフを頼むぞ』


 ティザーは然も最初から運ぶ気でした、みたいなことを言ってそそくさとコルキスとディオスとグルフナを連れて行った。


『よし、じゃあ乗れアルフ』


 俺は言われるまま薄く引き伸ばされた人形に乗った。お、えらく固いな。


 このアクネア達が入ってる感じの悪い人形、精霊の力でこんななるんだ。


 伸びた半分だけの顔が怒りに満ちているように見えるのは気のせいなんだろうか?


『さっきのコルキスは辛そうだったな。ピポルとパパルの先天属性が水だったから俺も何となく関係性とか色々分かっちまって。あとよぉ……』


 アクネアは俺を運びながら色々説明してくれたけど、人形が気になりすぎてあまり耳に入ってこなかった。

~入手情報~


【種族名称】

 エメラルドサーフェイトモス

【先天属性】

 必発:風

 偶発:水/氷/影/光

【適正魔法】

 必発:風

 偶発:火/水/氷/影/光

【魔核錬成】

 詳細不明

【初期スキル】

 察知/防御強化/高速吸収/分身/オーバーフロー

【固有スキル】

 燐粉/飛行/産卵/暴食/フェロモン/マザーエクスタシー

【通常ドロップ】

 羽根/燐粉/体液/目玉

【レアドロップ】

 魔核/フェロモン/モスエッグロッド/燐粉剣

【コルキスヒストリア手帳】

①蛾の魔物。

②Aランクの魔物で、パラサイトって呼ばれる小型の寄生魔物だよ。大きさはだいたい2メートルくらいかな。

③固有スキルの燐粉やフェロモンを使って10メートル以内に存在する生物を誘き寄せ偽幼虫を1匹寄生させるよ。偽幼虫は宿主の意識と感覚をそのままに操って、遠方にいる他の生物に接触させてエメラルドサーフェイトモスの元まで連れて来るよう強制するみたい。宿主が他の生物に接触すると、偽幼虫は1度だけ毒を空気中に噴出して宿主とエメラルドサーフェイトモスを仲間と錯覚させちゃうよ。こうして連れて来た生物に吻を突き刺して体液を吸うか、新たに偽幼虫を注入してもっと餌を増やしていくんだって。

④産卵期には獲物に卵を産み付けて生きたまま幼虫の餌にするよ。でも腹部が何倍にも膨れて動けなくなるらしいね。

⑤宿主の感覚はエメラルドサーフェイトモスにも伝わるけど、影響は少ないみたい。

⑥偽幼虫が毒を発した後の宿主は、全てのエメラルドサーフェイトモスに対し深い愛情と執着、強烈な性的興奮と快感を覚えるようになるんだって。こうなるともう助かる術はなくて、繰り返し偽幼虫を注入されるかエメラルドサーフェイトモスの餌になるかしかないよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ