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82話 グリッターソール

後書き修正

「うわっ!?」


「何!? 魔物!?」


「クソッ! こんなときに限ってどうして――おい、やるぞ! ロッシュはフーラとカエンを守れ!」


 切羽詰まった声が聞こえてきて、俺は現実に引き戻された。相変わらず小さな手がまとわりついていて周囲は見えないけど、どうやら転移先で誰かが魔物と遭遇したらしい。


「チクショウ! 攻撃が通じないぞ!」


「何なのよこれ!? 魔法も効かないわ!」


 大丈夫かな。かなり苦戦してるみたいだ。


「なあ、この手が消えたら助けようよ。誰か魔物と戦ってるみたいだ」


 グルフナを口から右手に持ち替えてアクネアたちに訴えた。ていうか、このキモい手は放っといたら消えるんだよな。本当に気持ち悪いから早く引っ込んで欲しいんだけど。


『助ける? ああ……それはいいけどよー、でも今攻撃されてるのは俺たちだぜアルフ。ま、この手が壁になって被害はねぇけどな』


「え、俺たち?」


「仕方ないよ。この手を見たら魔物だと思っちゃうもん。兄様助けてー。くふふふ」


 耳元で悪戯声のコルキスが笑っている。俺には無理だと分かっての発言だ。スルーしておこう。


「えっと、じゃあティ――」


『嫌じゃ。儂はこのおぞましい手にやる気を吸いとられたからの』


 いやいやいや、やる気がないのはいつもだろ。メネメス国では意外と色々してくれてたけどさ……あ、ティザーのやつお酒を飲み始めた。


 そうなるとディオス――は俺の言うことなんか聞いてくれないな。グルフナが任せろって雰囲気を出してるけど、それは無理だろう。


「アクネア」


『コルキスはアルフをご指名だろ』


 何だよ、ついさっき助けてくれるって言ったじゃないか。


「コ、コルキス……」


「もう、仕方ないなあ。じゃあ説明してくるね」


「悪いな」


 コルキスは小さく笑うと、真っ黒な霧になって俺の腕の中から離れていった。


 それにしても説明か。本当に優しくなったなコルキス。少し前まで、攻撃されたら無表情で倍返し以上のことをして「ぼく悪くないもん」と言い放つイメージしかなかったのに、ちょっと感動だ。


「え?」


「ぐあぁ!」


「パパル!? キャァァ!」


「イアまで!? ひぃぃ、こっちに来るな!」


「ロッシュ、私達はいいから逃げて!」


 ふむ……説明、ね。後で説明の意味をよーく言い聞かせておこうか。それと俺の感動を返せ。


 悲鳴が聞こえなくなると、気持ち悪い小さな手は地面に吸い込まれるように消えた。


 目の前に広がった光景を見て、俺は軽く目眩がしたよ。


 周囲が複雑に入り組んだ階段まみれだったからじゃない。それについては何となく予想はしてた。にこやかな顔をでこっちに振り返ったコルキスの足元に、冒険者っぽい人たちが6人もうつ伏せで倒れていたからだ。


「あ、ちょうど手が消えたね。ぼくも終わったところだよ」


 コルキスがやりきった笑顔で手を振ってくる。


「おいコルキス。説明の意味知ってるか?」


「う? うん、知ってるよ。物事がどうしてこうなのかっていう根拠や理由を明らかにすること、だよ」


『うむ、正解じゃ』


 正解じゃ、じゃないよティザー。そこはもうちょっと叱るみたいにさ……まあ俺も人のこと言えないけど。


「何したんだ?」


 うつ伏せの人たちの中には、とても辛そうな呻き声を発している人もいる。


「ダークネスミストで血を奪ったんだよ。動けなくなるまで」


『ひでぇな』


 俺もそう思うよアクネア。これのどこが説明なんだろうか。


「あ、説明は今からしようと思ってたんだよ。興奮してたから一旦落ち着かせなきゃでしょ」


 俺のじっとりした視線に気が付いたのかコルキスは少し慌てて、死体みたく動かない足元のピクシーを乱暴に放り投げると黒髪のエルフに話かけ始めた。


『その状態じゃ話なんか入ってこねーっての』


「いや、それよりピクシーを乱暴に扱いすぎだろ」


「えー? そいつは別にいいでしょ?」


 こんなにもピクシーに当たりがキツいのはピポルのせいだろうな。仲間にならないかってしつこくしてたからなあ。


「よくない。ほら、回復させるぞ」


 確か俺の卵から増結作用のあるブラッドパインもいくつか出てきてたはずだ。使ってあげよう。それからコルキスに吸血させて全員の魔力や怪我なんかも回復させよう。これで血を奪ったことは帳消しにしてもらえないかな。


「うー」


『面倒じゃのう』


コルキスとティザーが不満気な声をあげた。





#########





 俺たちが転移したのはヒウロイト王国のダンジョン、絶望の階段アグアテスの中層辺りだった。


 まあこの前アクネアたちに、アルコルの塔には他のダンジョンに転移するトラップがあるって聞いてたからそんなに驚いてはいない。


 で、今はそのダンジョンの数少ない慈悲の部屋で話をしている。


 コルキスが血を奪った彼等は冒険者パーティーのグリッターソールと言い、6人組のAランクパーティーなんだとか。腕試しにこのダンジョンへ挑んでみたものの、メンバーが負傷して危険な状況になり、この慈悲の部屋へ向かう途中で俺たちと出くわしたらしい。


「結果的に助けてもらったことには感謝する。だが、にわかには信じがたい話だな。新しいダンジョンに聞いたこともない他のダンジョンに転移するトラップとは……」


 パパルと名乗ったピクシーが難しい顔をして呟いた。


 そうそう、パパル以外のメンバーはなかなか個性的なメンバーが揃っている。ダークエルフのイア、エテールメイドのテリンダートとマシュルムのカエン、そして月神族のフーラと箱族のロッシュ。


 本当に凄いメンバーだ。俺、パパルとフーラ以外の種族は本でしか見たことないや。


「俺らはあの子のお陰で回復したし、もうちっとアグアテスを探索しようと思うんだがお前らはどうするんだ? 脱出するんだよな?」


 初めて見る種族をまじまじ見ていたら、パパルが俺の視線を遮るように顔の位置まで浮かび上がって聞いてきた。


「あ、えと、そうだな。俺たちは脱出するよ」


「えーー!? 何でなの兄様!?」


 少し離れた所でごそごそしていたコルキスがディオスと一緒に俺の横まで走って来た。


「こんな所に用なんか無いだろ」


「ぼくはあるもん」


 そう言ってコルキスは頬っぺたを膨らませて睨んでくる。


「遊びたいだけだろ。ここはダンジョンなんだから駄目だ。遊ぶなら外に出てからな」


「さっきは兄様のお願いきいてあげたでしょ。今度は兄様がお願いきいてくれなきゃ、ふこーへーだよ。それに……えっと、不味い血もたくさん吸血してあげたんだから」


 当然だけどディオスもコルキスに賛成してるな。俺とコルキスの会話中もコルキスの肩に乗って、俺に向かって言うこと聞け馬鹿みたいな仕草をしてたし。


「おいおい、不味い血って酷いな」


「食べるものには気を使ってるのに」


「私って血が不味いのね」


 コルキスの不味い血発言でグリッターソールの連中が少しざわついた。女性陣はショックを受け、反対に男性陣は「お前は見るからに不味そうだ」とか「お前よりましだ」などと言って笑い合っている。


『ま、いいんじゃねぇのか。今回はアルフがはっきりお願いしてきたしな』


『そうじゃのう。その代わりアルフよ、交代前にヒウロイト王国の旨い酒をたんまり頼むぞ』


「くふふ、じゃあ決まりだね」


 は? 何で俺なんだよ。ここで遊びたいって言ったのはコルキスじゃないか。


 疑問は解消されず、おまけに反論する隙もなく決定されてしまったよ。はあーあ、ダンジョンなんて危険な場所からさっさと出て行きたかったのに。


「やっぱり俺たちも少しだけここを探索するよ」


 ここであーだこーだ言ってもコルキスが不機嫌になるだけだし、もう諦めた。


「そうか。俺らはしばらく休んでから行く。また町に帰ったら飯でも食おう。いい所に案内してやるよ」


 パパルは爽やかにそう言うと、ふわっと飛んでフーラの頭の上に寝ころがった。


「じゃあ行くかコルキス。パっと探索して脱出するぞ」


「はーい兄様。パパル、後で絶対案内してねー」


 お、意外だ。コルキスはパパルたちと町でご飯食べたいのか。前に雪原の輝きたちと行動して、冒険者と一緒にご飯を食べるのも悪くないって思ったのかもな。


 コルキスを見て微笑ましいなんて思っていたけど、慈悲の部屋を出たとたんに魔物が襲ってきて、俺は慌ててミステリーエッグを発動した。


 だけどコルキスに何もするなと言われてしまった。


 俺はティザーとグルフナと共に、楽しそうに戦うコルキスたちの応援に徹するのだった。

~入手情報~


【名称】ブラッドパイン

【分類】魔法植物

【属性】植物

【希少】-

【価格】共通木貨35枚

【効果】

血のように赤いパイナップル。

甘い密と血を混ぜたような味で、好き嫌いがはっきり別れる魔法植物である。実と果汁には即効性の増血作用がある。また、ありがたいことにこの増血作用で血液が必要以上に増えることはない。


~~~~~~~~~


【ダークエルフ】

黒い肌のエルフ。

エルフより魔力が高いが、体力面で劣っている。見た目はエルフ同様、美しい者が大半である。また、先天属性が他のエルフに比べて影や闇となる場合が多いのも特徴の1つ。とても数が少ない種族でもある。ハイエルフに強い憧れを抱いている。


~~~~~~~~~


【エテールメイド】

空に住まう人魚。

海ではなく空に住んでおり、見た目は人魚そのものだがまったく別の種族である。余程の事がない限り地上に降りることはない為、目にする機会はないと言っていいだろう。また、雷魔法が得意な種族であり美しいものが大好きだが、男女共に服を着る事は大嫌いである。


~~~~~~~~~


【マシュルム】

茸によく似た種族。

個体によって様々な見た目をしているが、マシュルムは皆頭に傘と呼ばれる特殊な器官を持つ。毒に関する固有スキルを持つ者が多く、傘に毒がある個体が多いのも特徴。無毒な傘をは食用として高値で取引されており、無毒傘のマシュルムは一生金に困らないと言われている。数が非常に少ないが長命な種族であり、土や朽ち木があれば身体を短時間で再生できる。季節によって胞子を飛ばす事もある。


~~~~~~~~~


【箱族】

身体を箱状にできる種族。

箱族は箱化という固有スキルを有しており、身体のどの部分でも箱状にできる。箱の中は時間の経過が遅くなり、箱状になった部分は強固な守りを発揮する。しかし、長時間身体を箱状態にしていると元に戻せなくなる。また、アイテムボックスを作る技術が確立される近年まで、荷運び用の生きる箱とする為の箱族狩りという悲しい歴史があり、現在も他種族との関わりを拒んでいる種族である。

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