78話 可愛いドゥーマトラ
後書き修正
ドゥーマトラはアルフたちがまだ塔に居座っている、とダンジョンマスターであるアルコルの報告を聞き様子を見に来ていた。
『ひっっく、ディオスもやるらぁ』
『だのぅ。hブーストを使ったアルフを翻弄しておるわい』
『お陰でぼくはここで不完全投影するだけだよ、つまんないの』
アクネア、ティザー、コルキスは塔の頂上に座ってアルフとディオスの戦いを眺めている。
精霊たちはお酒を飲んでは空き瓶をそこら辺に放り投げ、コルキスは母様のおやつとかいう見るからにヤバい物を食べていた。
「わ、私たちの塔を汚さないでって伝えてきてくれない? それにあの闇臭いおやつも食べないでって……」
2人のいるダンジョンマスターの部屋の壁に写し出された頂上の映像を見て、ドゥーマトラは申し訳なさそうな顔でアルコルに声をかけた。
「もう少し後にしましょうか。何だか面白そうじゃないですか。あ、そうだ、美味しい飲み物が手に入ったんですよ。すぐ持ってきますね」
「え? う、うん。分かった」
アルコルはドゥーマトラの配下という位置付けにも関わらず、あまりドゥーマトラの言うことを聞かない。
元々アルコルはヒュージトライスパイダーの魔核から、ティザーとアクネアによって作られたヒトの形を模したAランクの魔物だった。しかし、今はドゥーマトラによって塔と共に改造と過剰な強化を施され精霊となっている。
ドゥーマトラは初めて自分と同じ属性の精霊を誕生させたことに喜びを感じていたが、どう接したらいいか分からず悩みの種にもなっていた。
一方、アルコルは自分を精霊にまで引き上げてくれたドゥーマトラに絶対の忠誠を誓っているのだが、それを本人に告げる気はなくオドオドする姿を楽しんでいるらしい。
「そ、それにしてもあのリキッドマナストーンは――」
「凶悪な成長を遂げてますね」
アルコルに飲み物を渡されニコリと微笑まれたドゥーマトラが言葉に詰まっていると、彼女が思っていたことをアルコルが言う。
「そ、そう。特にあのアブソリュートトレジャーは恐ろしい……よね?」
「そうですね。強力な暗示は現実のそれと同じ、と言いますから。あ、丁度アルフが暗示にかけられましたよ」
暗示の効果でアルフはディオスの分裂体がダメージを負って消える度に泣き叫びながら、それがいた場所まで駆け付けるようになってしまった。
『あーあー、きたらい顔だれ』
『よかったのうコルキス。アルフにとってお前さんはよっぽど大事な存在なようじゃぞ』
『そうかなぁ。兄様はディオスのアブソリュートトレジャーで……あ、違った。ディオスは消滅する自分の分裂体がぼくに見えるように暗示をかけたみたい。あと、その時の気持ちに慣れることはないって暗示も。くふふふ、ぼくは兄様の大事な存在かぁ』
そう言ってはにかみおやつを頬張るコルキスを見て、ドゥーマトラはドン引きしている。
発狂しそうな勢いで戦う兄を見てその笑顔? こんな弟を持ってアルフも気の毒……。
「そろそろアルフに限界がきそうですね。攻撃する度にコルキスの死体を見せられたんじゃ精神的にボロボロですよ。ディオスも自分の分裂体を攻撃してますし。hブーストで視覚情報に対する反応を強化したことも仇になってますね」
「そ、そうね……あぁ、倒れちゃったねアルフ。あら、これ本当に美味しい」
アルコルに渡された飲み物をずっと持っていたままだったと気付いたドゥーマトラは一口飲んで驚いた。
「お口にあって良かったです」
ドゥーマトラはアルコルの笑顔に一瞬、さっきのコルキスの笑顔と同じ狂気を感じたけれど、直ぐ気にならなくなった。倒れたアルフの映像を見て、アルフの固有スキルが成長していると気が付いたからだ。
「う、嘘でしょ……この短時間でもう?」
「アルフが首にかけているのはコルキスのネックレスですよ。きっとあれのせいでしょう」
「ネ、ネックレス? あぁ、そいえば戦いが始まって少ししてコルキスが霧になってアルフを覆ったとき……よね? えーと、成長期と記憶、それと認知されない……あ、だからアルフは霧に覆われても何の反応もしてなかったのか。へ、変だとは思ったんだ」
「そう思ったのにネックレスを調べなかったんですね」
「うっ……」
アルコルに指摘され恥ずかしくなったドゥーマトラは、手に持った飲み物を一気に飲み干すと、ゴミを捨ててくると言い残して塔の下層へ行ってしまった。相も変わらずドゥーマトラはコミュ障なんだな。まあそういうところが可愛いんだけど……。
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兄様がさっきからずっと部屋の隅っこで小さくなってる。
「はぁ……」
ディオスのアブソリュートトレジャーが効果覿面だったみたいだよ。ぼくが散々慰めてあげたのに、まだ悲しみに囚われてる。
兄様をあんな状態にしたディオスは、我関せずって感じで兄様に近付こうとするグルフナを邪魔して遊んでるし、アクネアとティザーは酔っ払って眠ってる。
「グスッ……うぅぅ……」
また兄様が泣き出しちゃったよ。面倒臭いなぁ。
チラッと兄様の方を見ると、今にも号泣しそうな顔でぼくを見てた。しょうがないなぁもう。本当に面倒臭いけどもう1回慰めてあげようっと。
「兄様、大丈夫? ぼく、ちゃんと生きてるから元気だして」
「ゴ、ゴルギズーーー!!」
兄様が泣きながら抱きついてくる。
はぁ、このやり取り何回目だろうな。兄様との勝負は一応ぼくが勝ったけど、これなら負けてた方が楽だったかも。まぁ悪い気はしないんだけどさ。
アブソリュートトレジャーを発動したディオスは強かった。本当に凄く強かった。そして容赦がなかった。
アブソリュートトレジャーはぼくの血を使ってディオスを大幅に強化するのとは別に、敵に暗示をかけることができる。暗示は同時に2つまでしかかけられないけど、その分常軌を逸した強力さなんだ。
「明日には元に戻ってるといいなぁ……」
兄様は今、アブソリュートトレジャーの暗示から解放されてるはずなんだけど全然そんな感じじゃないんだよね。
大丈夫かなぁ、ぼくヒストリアでアブソリュートトレジャーを確認したとき深く考えなかったけど、本当はかなり危険な固有スキルだったのかも。
「ゴルギズ! ゴルギズーーー!!」
「うんうん、分かったよ兄様。今日はぼくが一緒に寝てあげるからね。だからもう泣かないでよ」
さっきからぼくを抱きしめて泣き続ける兄様の頭をよしよししてあげながらダークドリームの魔法を使った。
そうだ、ネックレスも返してもらっとこうっと。兄様のミステリーエッグが成長すればいいなって思ってたけどそれだけじゃなくて、また厄介な固有スキルが発現しちゃったよ。
「ディオス、兄様をベッドに運んどいて。ぼくはクソ鳥に用事があるから」
ディオスに兄様をお願いして、ぼくはクソ鳥がいる頂上へ行くことにした。
~入手情報~
【名称】美味しい飲み物
【分類】精霊料理
【属性】時
【希少】☆☆☆☆☆
【価格】-
【効果】
アルコルが作る飲み物。
正確には飲み物のような物と言った方が良いだろう。色々な液状のモノが混ざっているらしい。ヒュージトライスパイダーの習性の名残なのかどうなのかは分からない。
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【名称】アブソリュートトレジャー
【発現】ディオス
【属性】無
【分類】強化暗示型/固有スキル
【希少】☆☆☆☆☆☆☆☆
【効果】
コルキスの血を摂取する事で発動でき、自身を大幅に強化できる。また、それとは別に対象に極めて強力な暗示を2つまでかけることもできる。暗示をかける対象が増えるほど暗示の効果は弱くなっていく。また、摂取する血が多ければ多いほど強化効果は高まる。




