73話 能天気アルフと血塗れコルキス
後書き修正
ディオスがいない。
ぼくは嫌な予感がして頂上に戻った。そしたら、あのエルフィンスジャクのロンって奴がディオスを火だるまにして投げ捨てているのが目に入った。
「ディオス!!」
ぼくはディオスの所まで飛んで行こうとしたのに、ロンがチャクラムみたいなのを投げてきた。ヒストリアでしっかり確認すると裂影風火輪って固有スキルだった。
これ、追いかけて来るんだよ。鬱陶しいな!
「何するの!」
「それはこっちのセリフだ。今日だけで何人死んだと思っている」
ロンは意味不明なことを言って、アルコルの塔にくっついてた魔物には目もくれないでぼくに攻撃してきた。
霧になって裂影風火輪とロンの直接攻撃を避けてるけど、このままじゃ不味いと思う。さっきちゃんとヒストリアで見たから分かるんだ。こいつはぼくより強いし聖光魔法を使う。本当なら逃げた方がいい。
だけどこいつはディオスを虐めたんだ。
「絶対許さない!」
魔物がたくさんいるうちになんとか吸血しなきゃ。待っててディオス。こんなヤツすぐにやっつけてそっちに行くからね。
まずは背中を眠らないドラゴンに不完全変身させて、シャドーバットとオンブラマイフだ。夜だからどっちも見えないでしょ、全部当たっちゃえ。
「子供の身体には似つかわしくない翼だな。姿を偽っていそうだな……念の為に聖焰画影剣を出しておくか」
うわっ、あいつが出した剣、凄く嫌な気配だ。聖光と火の魔力でできた剣……光精霊がいるみたいに周りが明るくなっちゃった。最悪だよ、影魔法の威力が弱まっていく。
「ぐっ!?」
ロンがぼくのお腹を殴ったせいで吹っ飛ばされちゃった。ヒストリアで動き出すって分かってたのに、ひとつも反応できなかったよ。
これ、炎纏体術ってやつだ。しかも聖光属性の魔力も込めてあるし裂影風火輪と同時攻撃だったみたいで、背中をざっくり切られてる。すごく痛いしすごく熱い。
「終わりだ!」
「あ”ぁ”ぁ”ぁぁ”あ”う”ぁ”ぁ”!!」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!! 剣が、剣がぁぁぁ!!
「弱かったな。こうも簡単に全身を串刺しにできるとは……つまらん。まあ、雑魚のうちに殺せて良かったと思えばいいか」
嫌だ嫌だ嫌だ!
ぼくは不死になるんだから、こんな所で死ねないんだから!
闇の大精霊様と約束したんだもん、兄様を……ぼくが死んだら兄様がひ………あぁ母様………
「しぶといな」
グエェ! 剣が身体の中で回転……して……る………
「ごの……グゾ鳥がぁ”ぁ”ぁ”!」
殺す! 絶対殺す! 全部ぐちゃぐちゃにして殺してやる! こんな剣なんか、こんな剣なんか……うがぁぁぁ!
「なっ、聖焰画影剣をかき消しただと!?」
はぁはぁ、身体の中が爆発しそうなくらい熱くて苦しい。
頭がぼうっとしてて……あれ、でもなんか凄く早く動ける。傷も塞がっていくし、いっぱい力が出てくる……あ、そうだ。あいつ殺そう、クハハハッ!
「ぐっ! やはり、正体を隠しているな、このダンジョンマスターめ!」
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俺はコルキスの後を追って頂上に出た。
壁面の像が変じた魔物に混じって、コルキスが空中であのエルフィンスジャクと戦っている。
コルキスは相当怒っているみたいだな。あの少しの時間で何があったんだ?
スジャク族は強いからコルキスを止めたいんだけど、卵の無い俺には何もできない。
「ん?」
変だな、アルコルの塔からは話に聞いていた麻痺毒のある糸が出ていないし、戦っている魔物も真ん中の階くらいまでにあった強くも弱くもないのしかいない。
エルフィンスジャクに見つからないように、端まで行って下を見て確認したら、やっぱり上の階の像は魔物になっていない。
「おや、あれは……ディオス!?」
1階下の像にディオスがぐったりした様子でへばり付いていた。エルフィンスジャクにやられたのか、微かに動くだけのディオスはとても弱々しく見える。こんなことは初めてだ。
とにかくディオスを引っ張り上げようと身を乗り出してみたけど、まるで届かない。卵を何個か作れればどうとでもできそうなんだけどな。
「おわっ!?」
魔法でも飛んで来ないかと、戦闘中のコルキスたちを見上げると、いつの間にかグルフナが側に来ていた。
「グルフナ、何でもいいから魔力を出せるか? できればほんの少しの量を何回かに分けて……」
確かグルフナの魔力は1しかなかったはずだ。何とか卵5個分くらいの魔力を出してくれないだろうか。
俺に聞かれたグルフナは、嬉しそうな感じで左右に揺れ始めた。
んー? これは出てるのか? 魔力が少すぎてよく分からないけど、やってみれば分かるかな。
「お、できた。よし、悪いけど魔力が尽きるまで頼む」
7個目の卵を作ったら、グルフナは足元に転がって動かなくなった。
「ごめん、無茶させたな……」
微動だにしないグルフナを掴み、卵を操作してディオスの所まで降りる。
「大丈夫か? 俺に絡まってろ。とにかく上に行かないと。コルキスも心配だし」
弱々しく俺の腹にくっついたディオスを連れて塔の頂上にへ戻ると、魔物はすべていなくなっていた。
コルキスとエルフィンスジャクが一対一で戦っている。凄いなぁ。あのスジャク族と対等に戦ってるなんて。
「お? どうしたんだディオス?」
上を向いてコルキスを見ていたら、ディオスが俺から離れて動き始めた。何かあるのかと思ってついていくと、そこにはおにただしい量の血溜まりがあった。
「なんだよこれ!?」
もしかしてコルキスの血じゃないよな……不安になって上を見ると、コルキスが吹っ飛ばされて眠らないドラゴンの像に激突するところだった。
「コルキス!!」
「他にもいたのか。まあいい、まとめて殺してやる」
本当何があったんだよ!? 初対面の人を殺すとか、ちょっと頭ヤバいんじゃないかこいつ。
「ガァァァァァ!」
どわぁぁっ!
何だ今の!? ブレスっぽかったけどコルキスがやったのか!?
「ドラゴン!? そうか、正体はドラゴンか。ならば私も本気でいかなければ殺られるな。いくぞ!」
スキルか魔法だろう、エルフィンスジャクが羽ばたく度に花びらの様なものが舞っていく。
『馬鹿、避けろよ!』
「アクネア!?」
ぼうっと花びらを見ていたら、さっきまで気配すら感じなかったアクネアに体当たりをされてそのまま上空へ運ばれてしまった。
下に見える塔の頂上から数え切れないほどの火柱が昇っている。離れているのに熱すぎて景色が歪んで見える。
コルキス、大丈夫かな……。
~入手情報~
【名称】裂影風火輪
【発現】ロン・タイヤン
【属性】火/影
【分類】魔力転化型/固有スキル
【希少】☆☆☆☆☆☆
【効果】
魔力を消費して火の魔力が宿った風火輪を作り出し敵を自動追尾しながら攻撃する。また、影を切り裂いてもその本体にダメージを与えられる他、風火輪を用いて大きな魔法陣を描き、強力な火と影の複合魔法を発動させることもできる。風火輪は魔力が無くならない限りいくつつでも作り出せる。
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【名称】聖焰画影剣
【発現】ロン・タイヤン
【属性】聖光/火
【分類】魔力剣型/固有スキル
【希少】☆☆☆☆☆☆☆
【効果】
魔力を消費して聖光と火の魔力が宿った剣を作り出せる。ロンの思考と繋がっており思い通りに操れる。また、手に持って振るった場合、聖焰という激しく燃え盛る聖光属性の炎を放つ大規模攻撃も可能。この剣を用いて大きな魔法陣を描き、強力な聖光と火の複合魔法を発動させることもできる。剣は魔力が無くならない限りいくつでも作り出せる。
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【名称】コロナペトゥルス
【発現】ロン・タイヤン
【属性】火/風
【分類】魔力翼花型/固有スキル
【希少】☆☆☆☆☆☆☆☆
【効果】
発動させると羽ばたく度に魔力を自動消費して朱いの花びらのようなものが無数に舞い散るようになる。その一つ一つが何かに触れるか任意のタイミングで超高温の火柱と化し敵を焼き尽くす。風魔法を使うことで花びらを自在に操ることもできる。さらに魔力を消費すると青い花びらになり、より高火力になるが消費魔力も跳ね上がる。この花びらを用いて大きな魔法陣を描き、強力な火と風の複合魔法を発動させることもできる。また、裂影風火輪と聖焰画影剣を組み合わせた魔法円を描き超強力な聖光、火、風、影の複合魔法も発動できるが、すべての魔力と体力と精神力の9割を消費する。その場合、回復には最低でも3日かかってしまう。
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【名称】炎纏体術
【発現】ロン・タイヤン
【属性】火
【分類】魔法体術型/スキル
【希少】☆☆☆
【効果】
身体の任意の場所に炎を纏わせることができ、そのまま攻撃することで強化された打撃に加え炎の魔法ダメージを与えることができる。その炎に自身の先天属性の魔力を込めること可能。この術によって自らが炎の魔法ダメージを負うことはない。




