72話 とりあえずヒウロイト王国へ行こう
後書き修正
はぁ、こっぴどく怒られたな。
冒険者ギルドのギルドマスターはフラテムに似てたから、上品に淡々と怒られるのかと思ったけど違った。通に怒鳴り付けられて、睨まれて「勝手な事をする奴がこれ以上増えるのは困るのよ!!」なんて言われてもなぁ……はぁぁ。
沈んだ気分でコルキスたちが待っていると言われたギルド職員の休憩室へ入る。
「あ、兄様。遅かったね」
なんとコルキスは女性職員に挟まれてお菓子を頬張っていた。バンタインジュースもたくさん飲んだんだろう、テーブルの上にある空のピッチャーの底に赤い液体が少し残っている。
「あぁ、こってり絞られたよ。コルキスは……楽しそうだな」
「うん、メアリーとランデリンが色んなお話を聞かせてくれたんだよ!」
この2人は、さっき何でも屋アルコルを手伝ってくれた人だな。エルフのメアリーと人間のランデリンはコルキスにメロメロといった様子だ。
「私にもこんな可愛い弟がいれば毎日の激務もへっちゃらなのに。ヘリャトから来た従兄弟も可愛げが無くなってたし、コルキス君と交換できないかしら」
「メアリーは贅沢よ。あなたの従兄弟は格好いいじゃないの。私の弟なんて暑苦しいし、汗臭いし、気が利かないし嫌になるわ。それに比べてコルキス君はいいわぁ、癒される」
部屋に入った俺をチラッと見ただけで、こんな風にコルキスに構い続けている。
「コルキス、そろそろ行くぞ」
なんとなく邪魔し難い雰囲気だったけど、ここで躊躇っては今日も移動できなくなりそうだ。メアリーとランデリンの顔は見ずにコルキスを促した。
「わかった。メアリーもランデリンもありがとね、バイバイ」
「あーん、もうちょっと一緒にいたかったわ。気を付けてねコルキス君、またね」
「また絶対マクルリアの町に来なきゃ駄目よ。お姉さんたち待ってるから」
2人はコルキスにハグをすると、俺には軽く頭を下げて部屋を出て行った。
「良かったな楽しい時間を過ごせて。じゃあ行くぞ」
「兄様、どうしたの?」
コルキスはこてんと首をかしげ、とことこ俺の所ま来る。
『拗ねてんのか? ん、拗ねてるんだろ?』
アクネアは茶化しながら俺の肩に乗って、頬っぺたをつつく。
その通りだけど、何も反応してやらない。
そんな俺を見て、グルフナが微妙な空気を纏いつつ俺にすり寄ってきた。どうしようか迷ったけど、頭部を撫でておいた。ディオスは悪びれる様子もなくいつも通り……まぁコルキスの使い魔だしな。
「ティザー、寝てるのか? 行くぞ」
「イヒヒヒヒ、イーッヒッヒッヒヒ」
おわっ!
ティザーの入っている感じの悪い人形を揺さぶると、人形は不機嫌な表情になり不気味な笑い声をあげた。俺は思わず人形を落としてしまった。
「何だ今の……」
『あー、今ティザーはモーブ様の所に行ってるんだよ』
「兄様、この人形が不気味な笑い声を出すようになったの忘れたの?」
うん、忘れてた。いやだって、あれから何度触っても心を抉る表情をするだけで笑い声なんてあげなかったし。
『俺たちが入ってる間は笑い声を出せないみたいだぜ』
そうなのか。
確か触ると1/3の確率で笑いだすんだったっけ。
「イッヒヒヒヒ、イーッヒッヒッヒヒ! イッヒヒヒヒ、イッヒヒヒヒ、イーッヒッヒッヒッ!」
鞄に仕舞おうと、もう一度触るとまた笑いだした。不機嫌な表情と、不気味な笑い声を出す表情を交互にするから言い知れぬ恐怖を感じる。本当に呪われてるみたいだ。
「なぁ、これ持ってる間はずっと笑ってるのか?」
「……これまで我慢してた反動で、しばらくは触ると絶対笑うみたいだよ」
何て事だ、早くティザーに帰って来て欲しい。笑い続ける人形を鞄に突っ込むと、足早に部屋を出る。受付の横を通った時にランデリンが訝しげにこっちを見ていたけど、気付かない振りをした。そしてお酒を買ってマクルリアの町を出る頃にはもう、日が傾きかけていた。
「兄様、これからどうするの? ミュトリアーレには母様がいると思うよ」
とりあえずマクルリアの町を出て、アルコルの塔の方角に歩いていると、不意にコルキスが切り出してきた。
そうなんだよなぁ。迂回してもいいんだけど、そうなるとヒウロイト王国から船で海を進まなきゃいけない。しかも、シーホールやらクラーケンやらが出る海域を突っ切ることになる。
確か少し前にオドラギクスの目撃情報もあったんだよな。
Aランクの魔物を避けてここへ来たのに、Sランクの魔物の住処に突撃するのは何か違う気がする。そもそも、船を出してくれるかも怪しい。
「それはヒウロイト王国に着いてから考えよう。その頃にはメファイザ義母上も別の場所へ行っているかもしれないだろ」
「どうかなぁ、母様ってミュトリアーレにいる偉い人やヴァンパイアと仲良しだから……」
『ま、何とかなるだろ! ヒウロイト王国からはロポリス様とラズマが来るんだ』
あ、そうなのか?
じゃあ安心だけど、ヒウロイト王国からは辛い旅路にもなりそうだな。情緒不安定なラズマと怠け者のロポリスが一緒だなんて、きっと毎日疲労困憊だ。
「ロポリス様……」
コルキスは少しだけ顔をしかめて呟いた。
「どうした?」
「ううん、何でもないよ。それより、早くアルコルの塔に行こう」
「そうだな」
すぐいつものコルキスに戻ったけどちょっと気になる。もう一度声をかけようとしたのに、コルキスは俺から離れるように街道沿いの茂みに走っていった。
「兄様早く来てー」
俺も夕方にも関わらず人が多い街道を離れてコルキスのところまで駆け寄った。コルキスは「遅いよ」なんて言いながら霧になると、空からアルコルの塔を目指した。
アルコルの塔の周りは村になっていた。
塔を囲むようにいくつもの小屋や家が建っている。そのすべてに明かりが灯っているんだから、結構な人数がいるんだろうな。まさか半日程度でこんなになるなんて思ってもみなかった。
「どうやってこんな数の小屋とかを建てたんだろうな」
ついさっき到着したアルコルの塔の頂上から、地上を見下ろしながらコルキスに聞いた。夜なのに不思議とよく見えるのは、ダンジョンの効果か何かなんだろうか。
「えっとぉ……あ、あの人! あの朱い羽と角が生えてる人がやったみたい。植物魔法で作ったんだね」
朱い羽と角が生えてるのは……あ、あの人か。へぇ、なんか如何にも仕事できますって感じだなぁ。
「あの人ってエルフと獣人の混血か?」
「そうみたい。種族はエルフィンスジャクだって、凄いね」
うわぁ、エルフとスジャク族の混血だなんてズルくないか?
「あぁ! メアリーが言ってたい――」
「コルキス!! あいつこっちを見なかったか?」
「そうかも。もう寝室に行こう兄様」
「だな」
もう少し夜風に当たっていたかったけど、これ以上ここにいるとあのエルフィンスジャクにバレそうだ。
俺とコルキスが寝室に入ると、外から魔物の凄い叫び声が幾つも聞こえてきた。
たぶんあれだ、壁面の像が動き出したんだろう。やっぱりあのエルフィンスジャクに見られてたのかな。
「あ、ディオスがいない!!」
「え? あ、おいコルキス!?」
コルキスはディオスがいない事に気付くと、あっという間に頂上へ戻ってしまった。
~入手情報~
【名前】ロン・タイヤン
【種族】エルフィンスジャク
【職業】族長/冒険者
【年齢】259歳
【レベル】155
【体 力】1887
【攻撃力】4329
【防御力】1463
【素早さ】4019
【精神力】2745
【魔 力】5321
【通常スキル】
炎纏体術/朱雀流剣術/結界術/連撃/消費魔力微減/遠見
【固有スキル】
聡明/飛翔/長寿/自信家/火属性吸収/聖光属性無効化/烈烈息風/聖焰画影剣/裂影風火輪/七星連撃/天煌炎滅陣/コロナペトゥルス
【先天属性】
火/植物/聖光
【適正魔法】
火魔法-特級/植物魔法-上級/聖光魔法-中級/風魔法-中級
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【種族名】シーホール
【形 状】海膜型
【危険度】S
【進化率】☆
【変異率】☆
【先天属性】
必発:水/闇
偶発:氷/雷/風
【適正魔法】
必発:水
偶発:闇/氷/雷/風
【魔力結晶体】
すべての個体に発生/捕食したものに発生させる
【棲息地情報】
マクルリア海域/ヘナイガ大渦周辺/他海域等
【魔物図鑑抜粋】
海に突如現れる黒い穴。
正体は薄い幕状の魔物であり、穴に見える部分は全て口である。一瞬にして半径1キロ程の穴が現れる為、回避は難しい。また、触手の様な無数の舌を使い逃れた獲物を執拗に食べようとする。光魔法や聖光魔法以外ではダメージを与えにくいので倒すのも困難だろう。
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【種族名】クラーケン
【形 状】イカ型
【危険度】A
【進化率】☆
【変異率】☆☆☆☆☆☆
【先天属性】
必発:水/風
偶発:火/氷/雷
【適正魔法】
必発:水/風
偶発:火/氷/雷/影/光
【魔力結晶体】
すべての個体に発生
【棲息地情報】
マクルリア海域/ポロ海域/他海域等
【魔物図鑑抜粋】
大きな海の魔物と言われて真っ先に名前が挙がるのがこの魔物であろう。海底より何の前触れもなく現れ獲物を海に引き摺り込んでしまう。意外にも変異しやすい種であり、クラーケンの先天属性が雷だった場合、逃げ切る事は困難を極める。また、墨には目眩ましの他に幻覚を見せる効果もある。海の魔物は対策が困難という理由でランクが高めに設定してあり、他の大型魔物と比べると弱い部類にはなるが、Aランクなので危険な事に変わりはない。
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【種族名】オドラギクス
【形 状】鯨型
【危険度】S
【進化率】☆☆☆☆☆☆
【変異率】☆☆☆
【先天属性】
必発:水/火
偶発:風/土/氷/闇/聖光
【適正魔法】
必発:水/火
偶発:風/土/氷/闇/聖光
【魔力結晶体】
すべての個体に発生/発光時周辺の魔物にも発生させる
【棲息地情報】
世界中の海回遊している
【魔物図鑑抜粋】
あまりに大きい為、身体が海面に出ていると島と間違えられる場合もある。海中から尾で一叩きされれば、何が起こったのかも分からず海の藻屑となるだろう。また、オドラギクスの吹く潮は大変高温であり、巻き込まれて命を落とす事もしばしばある。強烈な闇魔法や聖光魔法を操るものもいる。進化しやすい魔物とされるが進化先の上位種がなんなのかはよくわかっていない。
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【スジャク族】
神獣朱雀の血を引くと言われる朱い羽と角を持つ鳥獣人。
他の鳥獣人とは一線を画す強さであり、一族が皆聡明である事も知られている。凄絶な火魔法を操る者も多く、怒らせると灰も残らず燃やし尽くされると言われているが、基本的に温厚な種族でもある。




