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71話 何でも屋アルコル再び

後書き修正

 マクルリアの町へ着くと案の定、突然現れた塔の話題で持ちきりだった。道行く人たちの多くが塔の話をしている。


 この町へ来る途中ですれ違った――コルキスに霧にされてたけど――冒険者たちは皆アルコルの塔の調査に行ったんだろう。


 俺たちは騒がしい町中を進み、ピポルたちと待ち合わせをしている冒険者ギルドにやって来た。


「ピポルたちはまだみたいだな」


 冒険者ギルドは昼前なのに人で溢れていて、雪原の輝きを探すのも一苦労だった。まあ結局まだいなかったんだけど。


「ねぇ兄様。ジュース飲んで待ってようよ。ぼくあれ飲みたいなぁ」 


「そうだな」

 

 コルキスがおねだりしたバンタインジュースをもってギルド酒場の椅子に座っていると、自然と冒険者たちの話が耳に入ってくる。当然、話題のほとんどがアルコルの塔だ。どうやら彼らの間では近くの川の名前をとって、ヘパサ川の塔と呼ばれているようだ。



「アルコルの塔だもん……」


 コルキスは足をぶらぶらさせて不満顔をしているけど、誰も知らないんだから仕方ない。


 発見者は遠見のスキルを持った人になっていて、塔に魔物の像が無数にあることからダンジョンではないかと言われているらしい。まったくもってその通りだよ。ティザーとアクネアはドゥーマトラを呼びつけて手伝わせたらしく、塔の内部は俺が見た昨夜よりも複雑で広くしてあるんだとか。


「なあ、かなり危険なダンジョンになってるんだろ?」


『だな! せっかくダンジョンを作るんだぜ? そう簡単に攻略されたらつまんねーだろ。精霊(おれたち)の悪ふざけ満載なんだぜ。ドゥーマトラの管理してるアイテムや何かで、持ち主がもういない物は塔に捨てていいって言うとあいつも乗り気だったしよ』


『そうじゃ、おまけにドゥーマトラの力が色濃く反映されておるからのぉ。あそこに沸いて出る魔物はヒステリックなのが多くなりそうじゃわい』


 寝てるんじゃなかったのかよティザー。ていうかヒステリックな魔物ってなんか嫌だな。


「ドゥーマトラって大精霊なんだよな。なんでモーブやロポリスみたいな扱いじゃないんだ? 言い方は悪いけど、敬意が無いっていうかなんていうか……」


『そんなこたーねーぞ』


『親しみやすい奴なんじゃ、皆が頼りにしておるし……儂はもうひと眠しようかのぁ』


 あからさまに話したくないって雰囲気を出したな、2人とも。まあ、話たくないなら別にいいけどさ。


「兄様、アルコルの塔は凄いんだよ。兄様がちんたらしてるときに聞いたんだけど、中は空間が歪んでて頂上を合わせると201階あるんだって。それにね……」


 コルキスは何故か誇らしげにダンジョンの危険さや特徴を話し始めた。以下、アルコルの塔の特徴だ。


・転移装置まみれ&転移先地面方向無視のせいで必ず迷う。

・20階毎にSランク級のボスがいる。

・魔物はCランク以上しか出ない。

・195階からは高レベルのリキッドマナストーンみたいな凶悪な魔物ばかりいる。

・頂上ではドラゴンの像やディオスやグルフナの像が1体ずつSSランク級の魔物となり連戦連勝しなければいけない。

・眠らないドラゴンの口から出ている水に触れた魔物以外はステータス減少やスキル封印される。


 他にも初見殺しの罠や転移先が別のダンジョンなんていうような酷い仕様もわんさかあるらしい。


 眠らないドラゴンの口から出てる水って入り口の扉に降り注いでたよな。おまけにダンジョンマスターはしばらく(1000年くらい)ドゥーマトラが守るとか……攻略なんて無理じゃん!


 ちなみに、俺とコルキスだけは頂上と200階にある寝室へ空を飛んで自由に行けるんだとさ。他の人たちが飛んで塔に近づくと、装飾で作ったあの像達に攻撃されたり、麻痺毒の含まれた糸で絡め取られるらしい。


「兄様とぼくの秘密基地だね、くふふふ」


「……そうだな」


 秘密基地なんて可愛い言い方をしていい場所じゃない。俺は昨日のうちにティザー達を止められなかった事を心底後悔した。


 それからコルキスがバンタインジュースのおかわりを3回した頃に雪原の輝きがやって来た。


「よう、待たせちまったか?」


「遅いよ」


「悪かったって。そんな睨むなよコルキス。2人も聞いただろ、ヘパサ川の塔のこと。それについて話し合ってたんだ。あ、口に赤いの付いてるぞ」


 ピポルがコルキス口元に付いてるバンタインジュースを拭おうと近付いたけど、コルキスに捕まり思いっきり放り投げられた。


「けっ、ピポルの奴、開き直りやがって」


「まぁまぁダンテ。きっとあれもピポルの作戦なのよ」


「どんなだよ?」


「ええと、コルキスがパーティーに入りたくなる空気作り……とか?」


 そうか。雪原の輝きはコルキスをパーティーメンバーに誘いたいのか。今すぐじゃなくても、コルキスが大きくなったらお願いしてもいいかもな。コルキスの独り立ち先の1つとして覚えておこう。


「で、あんたがジュエルランク商人兼冒険者って奴か?」


 昨日はいなかった男が話しかけてきた。この人はエルフ……いや、エルフと獣人の混血かな。


「ああ、アルファドだ。よろしく」


「ブレインだ」


「私はレギオ、こちらこそよろしく頼むよ」


 レギオは人間か。確かブレインがバロネスピエロでレギオがグラディエーターだっけ?


「早速だがアイテムを見せてくれないか? ジュエルランク商人の扱う物なんてそうそう買えないからな」


 コルキスに投げられたピポルが何も無かったかのような顔をして戻って来た。


 ここではとも思ったけど、ちょうど冒険者がわんさかいるし、ピポルたちの後で彼等にも買ってもらおう。ギルド酒場の主人にこっそり小さ目の魔石を握らせて、アイテムを並べてみせる。


「これはドールフォークっていうんだよ。ピポルにおすすめだよ」


「じゃあ買う」


「ダンテにはこれがおすすめかな」


「買う! コルキス君のおすすめなら何でも買うよ!」


 コルキスはピポルとダンテの相手をしている。


 どうも2人はコルキスに甘いのか、コルキスの言うままにアイテムを買っている。


「目玉商品は……なになに、紅緋月牙鏟、エナジージュボーク……何だこれ?」


「聞いたことのない物だな。しかし、本当にこの値段でいいのか?」


「お礼だからな」


 俺は残りのメンバーを相手に、コルキスに手渡された手帳の通りに説明していく。色々書いてあるから俺でもちゃんとできるぞ。


「ダイロニアチョーカーが魅力的だけど、かぶれやすいのね……」


「ポマエ茸なんてレアドロップ品がある!」


「……ポマエ茸は私の物」


 雪原の輝きたちは時には言い争い、欲しい物をどんどん買ってくれる。


 追加で、メリーさんの羊袋、ガアトチーフ、ジェウパローブ、ギービーバッジなんかも出すと喜んで買ってくれ、ポーション類等の消耗品もかなりの量を買ってくれウハウハだ。


「おい、まだか!?」


「ちょっと待っててー。商品は無くならないから大丈夫だよ」


 雪原の輝きがはしゃいで買い物をしていたからか、途中で他の冒険者も気付き商品を買いたいと言い始めた。狙い通りになってちょっと笑みが溢れる。


 とりあえず雪原の輝きが弟の恩人だと説明して、彼等の後で販売する事を了承してもらった。もちろん、価格についてもだ。


 一部、怒り出したり面倒臭い文句を言うのがいたけど、コルキスが目を見て「待ってて」と言うと、頬を染めて大人しくなった。魅了でも使ってるんだろう。


「いやー、申し訳なくなるくらいの値段だったな」


「しかも良い物ばっかりだったな!」


 雪原の輝きのメンバーが口々に満足の言葉を言ってくれる。俺もアイテムが減って嬉しい。


 コルキスにメンバー入りを断られたピポルとダンテは若干しょんぼりしているけど、あとで将来の話でもしておこう。


「それじゃあ、装備もアイテムも充実したし、予定通りヘパサ川の塔へ行くわよ」


 エリンが意気揚々といった風に言う。


 あそこへ行くのか……知り合いになったんだし、見殺しにするのは気分が悪いな。


「あそこはダメだよ。どうしても行きたいなら、全員がリターンスペルを使えるようにならいとダメ。兄様やぼくでも、すっごく大変で全然進めないダンジョンだったからね」


 お、コルキスがあんなことを言っている。


 少し前までなら「ぼくには関係無いもん」って何も教えなかっただろうに。ティザーの言う通り優しくなったな。


 エリンにどういうことだと詰め寄られたコルキスは、然も朝一で見て来たかのように話していた。


「そうなのか……」


 コルキスの話を聞いて考え込んだピポルは、一先ず作戦を練り直すと言って仲間を連れて冒険者ギルドから出て行った。途端にお預けを食らっていた他の冒険者が押し寄せて来て、ギルド酒場はパニック状態になってしまった。


 騒ぎを聞き付けたギルドマスターが、職員を手伝いに貸してくれて何とかなったけど、ギルドマスターに呼び出しを食らってしまった。


 手伝った職員の賃金と、場所代として売上の2%を請求、さらに1時間も有難いお説教を拝聴させていただいた……ギルドマスターって暇なのか?


 ちなみにコルキスは「だって兄様が……」と目を潤ませ、上手いこと俺に責任を擦り付けやがった。精霊組と使い魔組もコルキスについて行ったのは言うまでもない。

~入手情報~


【名称】アルコルの塔

【種別】マスターダンジョン

【階級】☆☆☆☆☆☆☆☆☆

【場所】メネメス国マクルリア地方 ヘパサ川上流付近

【属性】-

【外観】魔像塔型

【内部】乱脈空間迷宮


【生還率】100%

【探索率】1%

【踏破数】1回

【踏破者】コルキス・ウィルベオ・クランバイア/ディオス


【特記事項】

 探索等級:-

 固有変化:転移装置移動/転移トラップ転移先ランダム変化

 特殊制限:魔法薬使用不可/装備品弱化/ゴミ捨て禁止

 帰還魔法:全属性使用可

 帰還装置:最上階のみ

 最高到達:201階

 安全地帯:眠る兄弟の秘密基地/他多数


【ダンジョン大図鑑抜粋】

特級精霊が作り出し大精霊が手を加えた塔のダンジョン。できたてほやほや。元々は夜営の為に特級土精霊のティザーが作った塔であったが、酔った特級水精霊のアクネアが思い付きダンジョンとなった。外観や内観はコルキス・ウィルベオ・クランバイアの趣味に偏っており、特に内観は非常に不気味で難解なものになっている。さらに大精霊ドゥーマトラがゴミ捨て場としても活用する為、必要以上に危険な改造を施し攻略はほぼ不可能と思われる。部屋数や行き止まりが多く、何度も隠された転移装置を使用し移動しなければならない。また、転移先の地面は重力を無視して側面の壁や天井に固定される場合が多く、どこにいるのか分からなくなる。ダンジョンマスターはコルキス・ウィルベオ・クランバイアとアルフレッド・ジール・クランバイアが混ざり合った姿をしており、塔の名前からアルコルとドゥーマトラが名付た。


~~~~~~~~~


【名前】レギオ

【種族】人間

【職業】グラディエーター

【年齢】25歳


【レベル】28

【体 力】340

【攻撃力】312

【防御力】308

【素早さ】173

【精神力】777

【魔 力】28


【通常スキル】

 剣術/槍術/体術/盾術/ベスティアリイ/トゥラケス

【固有スキル】

 エール/ゲイズオブグラディウス/帰郷願望


【先天属性】

 土

【適正魔法】

 無し


~~~~~~~~~


【名前】ブレイン

【種族】エルフィンホース

【職業】バロネスピエロ

【年齢】126歳


【レベル】37

【体 力】375

【攻撃力】492

【防御力】45

【素早さ】300

【精神力】999

【魔 力】231


【スキル】

 殺害衝動/指示/魔物の知識/幻覚/おどける/テイム/トリッキーファイト

【固有スキル】

 聡明/嘶き/デスキック/ピエロスマイル/ジェノサイドサーカス


【先天属性】

 風

【適正魔法】

 風魔法-下級/火魔法-下級/水魔法-下級/影魔法-下級(条件付きで使用可)


~~~~~~~~~


【名 称】リターンスペル

【分 類】ダンジョン脱出魔法

【効 果】-

【詠 唱】属性により異なる/乱文不可

【現 象】

ダンジョンから脱出するためだけの特殊な転移魔法。すべての属性魔法で習得可能だが、等級にかなりの違いがあるため場合によっては習得できないものもいる。例えば光魔法、影魔法は下級魔法だが、風魔法、雷魔法では中級、水魔法と土魔法では上級、氷魔法と火魔法にいたっては特級魔法に分類される。植物魔法と無魔法では下級魔法より下の基礎魔法の1つである。ほとんどのダンジョンで使用可能とされるが、属性の制限がある場合は合致しなければ発動しない。また、脱出する距離に応じて消費魔力は増減する。


~~~~~~~~~


【名 称】バンタインジュース

【分 類】果汁

【属 性】影

【希 少】-

【価 格】テラテキュラ木貨2枚

【アルフうろ覚え知識】

ブドウみたいな形のバンタインの実を絞ったジュース。優しい甘味と鉄っぽい香りがする。実は黄色いのにジュースにすると真っ赤な血液みたいになる。コルキスがヴァンパイアの好物だと言っていた。


~~~~~~~~~


【名 称】メリーさん羊袋

【分 類】迷宮アイテム

【属 性】3日前の滞在場所で最も濃い魔素と同じ属性

【希 少】☆☆☆☆☆☆☆

【価 格】テラテキュラ金貨451枚

【コルキスのヒストリア手帳】

ひつじが首ったけ(ストーキングメリー)っていうダンジョンの宝箱で手に入る羊の生首が描かれた袋。アイテムボックスから出すと効果が発動するよ。袋からGランク~Dランクの魔物がどんど出てくるんだって。魔物が出てくる30秒前になると「今、あなたのすぐ近くにいるの」って袋の羊が教えてくれるみたい。魔物は15分間隔で出てくるけどそうじゃない時もあるからね。アイテムボックスにしまうと止まるよ。


~~~~~~~~~


【名 称】ガアトチーフ

【分 類】変化手巾

【属 性植物】

【希 少】☆

【価 格】テラテキュラ銅貨30枚

【コルキスのヒストリア手帳】

包んだものをガアト草に変える小さめの布。

この布で包んだものは、食べる場所や時間帯によって効果が変わるガアト草なる薬草になっちゃうよ。寒い場所では1日分の栄養が取れて、暑い場所では一定時間聴力を失うとか効果は様々。ガアトマニアって呼ばれるガアト草の効果を事細かに調べる学者もいるらしいね。


~~~~~~~~~


【名 称】ジェウパローブ

【分 類】隕石服

【属 性】土/氷/光/無

【希 少】☆☆☆

【価 格】テラテキュラ銀貨100枚

【コルキスのヒストリア手帳】

ジェウパ隕石で作られた真っ黒なローブ。

ジェウパっていう空から降ってきた石で作られてるよ。影属性と闇属性の耐性が少しだけ上昇するちょっと感じ悪いローブだね。ジェウパ隕石は柔らかくて布のみたいなんだよ。


~~~~~~~~~


【名 称】ギービーバッジ

【分 類】懐柔装飾品

【属 性】都度、これを見た魔物の好む属性に変化

【希 少】☆☆☆☆☆☆☆

【価 格】テラテキュラ金貨500枚

【コルキスのヒストリア手帳】

魔物が懐くかもしれないバッジ。

安心感を抱かせる笑顔の描かれたバッジだよ。テイム系のスキルや固有スキルを持ったものが装備すると、時々に目が合った魔物に懐かれるんだって。このバッジは通常テイムできないって言われてるダンジョンの魔物にも効果があるみたい。

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