61話 マクルリアの町にて
後書き修正
ヒウロイト王国へ行くためにはレデルトリーン大雪原突っ切るのが最短距離だ。だけど、トロジーやグリンホーンフェンリルが彷徨いてると知ってしまった俺達は大きく迂回して行くことにした。
ティザーもだけど、主に俺が駄々をこねたと言っていいだろう。
『にしてもー、こんな上空を移動する必要あるのかよ』
「本当だよ。寒いよ兄様」
安定のディオススーツ状態コルキスが文句を垂れる。
俺たちはメネメッサから暫く進んだ後、空の高い所を移動している。ティザーに移動できる何かを作ってくれとお願いしたら、面倒臭いと断られたからだ。
だからコルキスにシャドーバットを使ってもらい、作った卵をで移動している。こんなことができるようになったのも、フラテムの教えを守ってきちんと訓練してるからだ。こっそりとな。
実はなんとなく眠ってるコルキスに触りながらミステリーエッグ使ったら発動できたんだよ。それから色々試したら、魔力の宿ったものを触ってもミステリーエッグを使えるって気付いたんだ。しかも消費する魔力は俺が決められる。強制的に魔力を消費させるとか強いよなぁ。まあ、触れればの話だけど。
「確かに寒いけど、我慢できない程じゃないだろ。呪いの人形使いの疑惑が心配だから人目につかずに移動したいんだよ」
『なら馬車でも使えばいいじゃねーか』
「そうだよ兄様」
「馬車だと今日中に次の町につかないだろ。コルキスは寒くて冷たくて痛~い地面で寝たいのか?」
「うー」
アクネアとコルキスはぶちぶち文句しか言わないな。ティザーは爆睡していて会話にも入ってこない。グルフナは俺の背中にぴったりくっついていて、唯一俺の味方だと言わんばかりに震えている……まさか寒いんじゃないよな。
「マクルリアの町は暖かいんだし、少しの我慢だよ。あと、俺のミステリーエッグの訓練も兼ねてるからな。サボらないってフラテムと約束したんだ」
『マクルリアに着いたら買い込んだ酒をしこたま飲むからな!』
アクネアってこんなに酒好きだったけ? 俺達と合流してから酒に対する執着が凄いな。
メネメス国の空は意外と魔物が多い。
ガイラカンは数が少ないって話だったけど、結構見かけるし、他にもスノーイーグルやプラックオーン、シャバグエアなんかが居るな。移動の邪魔になったり攻撃してきたら倒してるけど、それ以外は無視だ。
それと3体以上の魔物と戦闘になるとコルキスが手伝ってくれるけど、そうじゃなければ俺が卵で倒している。コルキス側から来た魔物は倒して欲しいと言っても「兄様の訓練なんでしょ」と冷たくあしらわれてしまうのだ。
そんなこんなで、俺たちは入場門が閉まるぎりぎりで何とかマクルリアの町に到着できた。
「へぇ、ジュエルランク商人か。なぁ俺たち昨日が給料日だったんだよ。何か家族が喜びそうな物を売ってくれないか?」
門で手続きをしていたら何人かの警備兵にそう尋ねられた。
「じゃあホルムの卵とルルタ肉はどうですか?」
話しかけてきた警備兵は蜥蜴獣人だったから、これらお勧めすると思った通り嬉々として買ってくれた。
「ついでにメネメッサで買ったお酒もどうですか? 安くしときますよ」
『それは俺の酒だー!!』
アクネアがちょっと怒ってしまったけど、また美味しいお酒が出るまで卵を作ると言うと納得してくれた。
全体的にかなり安くしたけど、儲けは出た。ミステリーエッグのお陰で元手がかからないってやっぱり良いな。経済学の先生が言ってた適性価格がうんたらでどうとかっていうのは気にしない。
「メネメッサよりかなり暖かいね」
門を抜けて町に入るとコルキスがディオスを脱ぎ、不思議そうにきょろきょろし始めた。
「この町は蜥蜴獣人が多いから、火の精霊にお願いして温めてるらしいぞ」
マクルリアの町に居る代官は必ず火の精霊と契約してるか、火魔法が得意な人がなると、いつだったか見合いに来た時に聞いたのを覚えている。
『宿に行こうぜ! 酒が飲みたい!』
アクネアはぶれないな。
「ぼく、粉雪の眠り亭と同じ位の宿じゃなきゃ嫌だからね」
寒い思いをさせたから少し拗ねてるみたいだ。とりあえず近くの山羊獣人に声をかけて宿を教えてもらおう。
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「やだー! ぼく、ここに泊まるの! もう動きたくないもん!」
で、こうなった。コルキスが駄々をこね始めたんだ。相当お冠のようで絶対動かないぞという態度をとっている。
山羊獣人に教えてもらった宿屋に着くと、受付の蜥蜴獣人の女性にお断りされたのだ。
「生憎ですが、本日は他国の王族が御宿泊するので貸し切りとなっております。まことに申し訳ございません」
「いえ、こちらこそ申し訳ないです。ほらコルキス、そんな事言ったってどうしようもないだろ。他の所に行こう。動きたくないならおんぶしてやるから」
「……やだ」
おんぶに心が揺れたのか、少し考る様子を見せたけど駄目だった。
「……誠に申し訳ございませんが、本日のお客様はクランバイア魔法王国の第2王妃様なのです。如何なる理由であってもお泊めできかねます」
「それ母様だ!」
コルキスがとても嬉しそうな声を上げた。でた、豹変……ていうか第2王妃だって? どうしてこの町にメファイザ義母上が来るんだよ。
「母様……大変失礼致しました! 第2王妃様の御子息でいらっしゃいましたか。本日はお一人と伺っておりましたので、何卒御容赦下さい! どうぞこちらへ」
受付の蜥蜴獣人が青ざめた顔で俺とコルキスを案内しようとする。
『不味いんじゃなかこれ』
「おい、コルキス。ちょっとこっちに来い」
俺は蜥蜴獣人に待ったをかけてコルキスを宿の外まで連れて来た。
「俺が生きてるってバレたら駄目なんだぞ。コルキスだって不死になれなくなるんだぞ」
「あ……」
久しぶりに母親に会えると嬉しそうにしていたコルキスは、俺の言葉を聞いておろおろし始めた。
「とにかく、何とか誤魔化して町を出るぞ」
「……うん。ごめんなさい兄様」
コルキスの身体からしょぼんと音が聞こえてきそうな落ち込みっぷりだ。
『誤魔化すのは止めた方がいいぜ。王族を騙るなんて重罪だぞ』
コルキスの手を引いて行こうとするとアクネアが忠告してきた。そうだった。どんな理由があっても自分が王族だと嘘をつくと、それだけで斬首されかねないんだった。
「どうしよう兄様。ぼく、大失敗しちゃったよね」
半泣きのコルキスが俺の服を不安そうに握ってくる。
「仕方ない、コルキスはここに泊まれ。ただし、俺のことは絶対に秘密にするんだぞ。もし宿屋の人が俺のことを何か言ったら案内してもらっただけだって言えばいいからな」
「うん」
俺は尚も不安そうなコルキスの頭を撫でる。
「俺はこの先もコルキスと一緒にいたいから頑張ってくれよ」
「分かった兄様。ぼく、頑張る。ぼくも兄様と一緒にいたいもん」
コルキスは俺にぎゅっと抱き付いて、可愛い笑顔をみせてくれる。たぶんだけど、モーブは今の状況をどこかで見てるはずだ。何か不味い事になりかけたら手助けしてくれるかもしれない……いや、してくれないかもだ。保険をかけておこう。
「アクネア。悪いんだけどモーブにコルキスを手伝ってくれるよう伝えてくれないか?」
『しょうがねーな。代わりに今日は美味い酒が3つ出るまで付き合えよ』
「分かった。ありがとう」
俺とコルキスの頭を軽く叩くとアクネアはモーブの所に行ってくれた。と、同時にアクネアの出ていった感じの悪い人形が、音も立てず地面に転がった。
~入手情報~
【種族名】スノーイーグル
【形 状】イーグル型
【危険度】F
【進化率】☆
【変異率】☆
【魔力結晶体】
稀に発生する
【棲息地情報】
寒冷地/メネメス雪林/マクルリア平原等
【先天属性】
必発:氷/風
偶発:雷/光/影
【適正魔法】
必発:氷/風
偶発:雷/光/影
【魔物図鑑抜粋】
中型の鳥魔物。
素早い動きや鋭い爪で襲いかかってくる。初級の氷魔法と風魔法を操るが、対空手段があればあまり苦労する事無く倒せるだろう。爪や嘴は投擲武器の先に付けられたり装飾品にもなる。肉は生食可能。火を通すと臭みが強いくなり旨味が薄れる。
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【種族名】プラックオーン
【形 状】羽根蠍型
【危険度】E
【進化率】☆
【変異率】☆☆☆☆
【魔力結晶体】
変異直後から数日間だけ発生
【棲息地情報】
寒冷地/デリプ空域/マクルリア平原等
【先天属性】
必発:風/氷
偶発:土/毒
【適正魔法】
必発:風
偶発:氷/土
【魔物図鑑抜粋】
昆虫の魔物。
遠距離から猛毒を飛ばしてくる。鋭い鋏ばかりを警戒していると、射程距離が長い毒の尻尾で攻撃されるので注意が必要。地上にいるより空を飛んでいる事の方が多い。大きいものだと1メートルになる。
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【種族名】シャバグエア
【形 状】不可視型/気体型
【危険度】G
【進化率】☆☆☆
【変異率】☆
【魔力結晶体】
魔法を使う個体にのみ発生
【棲息地情報】
寒冷地/マクルリア平原/ジョンド氷森等
【先天属性】
必発:氷
偶発:風/命
【適正魔法】
必発:-
偶発:氷/風
【魔物図鑑抜粋】
冷たい空気の魔物。
不可視の身体を持っているが、シャバグエアが居る場所は陽炎のように揺らいでいる為、比較的見付けやすい。普通の火で炙るだけで死んでしまう弱さだが、寝ている時に襲われるとそのまま凍死するので危険。初級の氷魔法と風魔法を使う事もある。変異種の中には体内に侵入し内側から殺したあと、その死体を棲みかにするものもいる。
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【名 称】ホルムの卵
【分 類】魔鳥卵
【属 性】割れば判明する
【希 少】☆
【価 格】テラテキュラ木貨35枚
【アルフうろ覚え知識】
ホルムという警戒心の薄い鳥型の魔物の卵。
蜥蜴獣人の大好物であり、白身と赤身の卵。人間が食べると幻覚を見たり幻聴を聞いたりする。ホルムは毎日数個産卵し、1つが20センチほどの多きさ。炭火焼きの肉みたいな味がするぞ。
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【名 称】ルルタ肉
【分 類】魔物肉
【属 性】ルルタの先天属性と同じ
【希 少】☆
【価 格】テラテキュラ木貨15枚
【アルフのうろ覚え知識】
鼠型の魔物ルルタの肉。
ルルタは体長1メートル~2メートルと小型の魔物で、発達した筋肉を持っている。お陰で過食部が多い。独特の癖があるものの旨味が強く、蜥蜴獣人の御馳走らしい。俺は大韮鰻の白焼きみたいな味だと思ったな。
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【マクルリアの町】
メネメス国にある蜥蜴獣人が多く住んでいる町。
かつて住処を追われた蜥蜴獣人が集まった小さな集落が元になっており、自らの命と引き換えに火の精霊を召喚した蜥蜴獣人のリーダーのお陰で彼らに理想的な環境となっていた。メネメス国が蜥蜴獣人を受け入れた事をきっかけに、少しずつ発展していき今のような大きな町となった。また、この町の代官は必ず火魔法の熟練者か火の精霊と契約している者が就任する
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【山羊獣人】
山羊の獣人。
羊獣人と間違えられると物凄く怒る。角や足にある蹄を使って攻撃する者もいるので気を付けよう。魔法が得意な種族でもあり、毛が黒い者は適正魔法に影魔法を持つ者も居る。山羊獣人のミルクで作ったチーズは癖が強いが好んで食べる者も多い。そのチーズを不味いといっても攻撃される。嘘でも褒めておこう。




