56話 仲直りしたい
後書き修正
ティザーが作ってくれた土魔法の家はとても快適だった。
もし、ここが穏やかな気候の土地ならば。
「外よりはましだけど、寒いね兄様」
「そうだな」
『贅沢言うのお。トロジーは勿論、他の魔物も寄せ付けぬようにしておるのに』
ティザーは呆れた様に言うと酒を煽り始めた。コルキスは未だにディオスを纏っている。さっき何でそんな事をしてるか聞いてみたら、ディオスは氷耐性を持っているから寒さが和らぐらしい。
本当にいいなディオス。
俺のグルフナはずっと空気扱いだ。たまに植物や生き物を見付けては嬉しそうに教えてくれる以外なにもしてない。
「兄様、いつまでも寝てるクソ犬起こすね。コイツ火魔法が使えるから暖炉に火を着けさせようよ」
グレスはもうクソ犬と呼ばれ続けるんだろうな。そして意識を刈り取ったのはコルキスなのにこの言い様。
「そうなのか、じゃあ起こすついでに回復もしてやってくれよ」
コルキスにぼこぼこにされ、俺に雪上を引き摺って運ばれたグレスは今、とっても可哀想な事になっている。
「えー、嫌だよ。影魔法は回復系が苦手な属性だもん。ポーションとかあるんじゃないの?」
『ポーションなんぞ腐るほどあるわい』
ティザーが笑いながら土のテーブルの上にポーションやら食べ物やらを、床に薪やら何やらをドサドサッと出してくれた。
そうだな、ポーションとかどこでも手に入りそうなアイテムは卵からいっぱい出てきたよな。
手伝う気のなさそうなコルキスはあてにせず、暖炉に薪を組み、グレスの回復に取りかかった。
「じゃあ、先にポーションで回復するからその後に目覚めさせてくれ」
「はーい」
手を斜めに挙げてコルキスが返事をする。
駄目もとで聞いてみたら案外すんなりきいてくれた。ならさっきも薪組みをお願いすればよかったかな。そんなことを思いながら、数の多い下級ポーションを無駄に何個もグレスに振りかけた。
『痛々しい傷が治っていくのお』
「本当だね」
まるで無関係のような顔でコルキスがグレスを眺めている。
お前がやったんだよなコルキス。その2面性、ほんと恐くなるよ……。
『もう良いじゃろ』
ティザーが俺を止めコルキスに目覚めの魔法をかけるように言う。
「シャドーベンド」
「え? おい、コル――」
「痛たたたた!!」
身体を仰け反らせてグレスが目を覚ました。いや、覚ましたっていうか痛みで悶え苦しんでる。それもそもはずで、コルキスが目覚めの魔法として使ったのは、影をあり得ない方向に曲げて、その状態を体にも強いる魔法だったからだ。
「止めろコルキス、もういいから!」
「ちぇっ」
ちぇっ、じゃないコルキス。いくらなんでもグレスが可哀想すぎるだろ。あ、でも背骨が折れたら、いらないポーションをさらに消費できたのか。う~む、そういう意図があったかどうかは知らないけど、もう少し様子見してもよかったかも。
「痛たた。あれ、ここは……俺達メネメッサに帰って来たのか?」
グレスが腰を擦りながら辺りを見渡すと俺に聞いてきた。
「トロジー対策で建てた土の家の中だ」
「土の家……? そういえばアルファドの人形は土魔法を使ってたよな。それにしたってトロジーが近付けない家って。魔力が多いんだな……」
グレスは驚いた表情で俺とティザーが入っている人形を何度も見比べる。
「クソ犬、起きたならさっさと暖炉に火を着けてよ。もう薪とか準備してるから。役立たずなんだからこれくらい率先してやってよね」
「クソ犬? おい、それは俺に言ってるのか?」
コルキスのクソ犬発言にグレスが怒りを露にして「グルルル!」と威嚇し始めた。
「あーーもう、コルキスいい加減にしろよ! ムカついたのは分かるけど、やり過ぎに言い過ぎだ」
「だって兄様……」
不機嫌と悲しさが混じったような顔でコルキスが不満を溢す。俺はそれを片手で遮ってグレスに謝った。
コルキスはそれ以上なにも言わずに別の部屋に行ってしまった。ディオスは俺に苛ついている様な仕草をしてたけど、コルキスの後を追っていなくなった。
「まったくコルキスのやつ……あんなだから友達がいなんだぞ」
『友達がおらんのはアルフとて同じじゃろうに』
俺にはいるさ。母上の契約精霊という極めて微妙な関係性の友達だけどな。
自虐は心の中だけに留めて、改めてグレスに暖炉に火をつけるようお願いする。それから土が剥き出しのベッドや椅子に毛布や魔物の毛皮なんかを敷いていった。
そうこうしていると、部屋は少し暖かくなってきた。
「アルファド、どこからこんな物を出したんだよ。あ、いやアイテムボックスってのは分かるんだけど、それにしても量が多くないか?」
グレスがポーションと一緒にテーブルに出していた干肉を齧りながら聞いてくる。
「えっと、メネメッサに来るまでに手に入れた物が沢山あるんだよ。次の町で冒険者ギルドに買い取って貰うつもりだったんだ」
「そっか。まあ2人とも強いから魔物もいっぱい狩ってたんだな。お、こっちの燻製ハム旨いな」
グレスは特に追及してこず、ばくばく肉を食べていく。
「俺、コルキスを呼んでくるよ」
口一杯に肉を頬張ったグレスはフガフガ言いながら頷いた。
実はちょっと気になってたんだ。生意気なコルキスのことだ、少し拗ねてから腹いせに痛そうな悪戯を仕掛けてくると思ってたのに、そんな気配は一向にしない。
「入るぞ」
返事はない。待っててもしょうがないから部屋に入ると、コルキスはディオスの中に入ったまま、何も敷いていないベッドに横たわっていた。
「なぁコルキス、その……さっきはちょっと言い過ぎた、ごめん。ここ寒いだろ。あっちに戻ろう」
いつも一方的にヤられるだけで、まともな兄弟喧嘩なんてしたことない俺は、仲直りの仕方がよく分からない。
おまけにコルキスは俺に背を向けたまま何も言わない。
「コルキスが怒るのも分かるよ。俺もグレスに思うところはけど、さすがにちょっとやり過ぎだっただろ?」
コルキスは微動だにしない。
「俺も怒鳴って悪かったと思ってる……こっち向いてくれよ」
やっぱり変化のないコルキスに触ろうとするとディオスに手を叩かれてしまった。くそ、力込めすぎだろ痛ったいな。いや、でもこれがコルキスの意思表示なんだろうか。
「俺が感じの悪い人形に1人でもいいからジル姉様以外の兄弟と仲良くなりたいってお願いしたの知ってるだろ? モーブに言われたからってのもあるんだろうけど、コルキスが仲良くしてくれて本当に嬉しかったんだ」
正直に言ってみたけどコルキスは相変わらずだ。
「なぁ、今日は一緒に寝るんだろ? 頼むから仲直りさせてくれよ。本当に悪かったから」
まさかディオスに覆われてるから聞こえてないなんて事ないよな。けっこう恥ずかしいんだぞ。これ以上どうしていいか分からずおろおろしていると、ゆっくりコルキスがこっちを向いてくれた。
俺をじっと見ている気がする。
「コルキス、俺って駄目な兄様だけどこれからもずっと仲良くしてくれなか? 正直に言うと既にコルキスがいないと寂しい。もう前みたいに無視されるのは嫌だ」
たぶん、あそこにコルキスの目があるんだろうなって場所を見ながら俺の気持ちをありったけ伝える。
すると凄く小さな声でコルキスが返してくれた。
「クソ犬よりぼくの方が大事?」
「当たり前じゃないか」
俺はもう1回コルキスに触ろうと近付くと、コルキスが勢いよくディオスの中から出て俺に抱き付いてきた。
「ぼく……前は兄様が野垂れ死のうがどうなろうが全然平気だったけど、今はぼくが兄様の1番じゃなきゃヤダ」
コルキスはちょっと泣きながら返事に困ること言ってきた。そんな扱いだったのかよ俺。
「そうか、ありがとう」
他に何も言えずコルキスの頭をしばらく撫でていた。
コルキスが俺を追って来てから、そう時間は経ってないのにどのタイミングで俺がそんな大事になったんだろうか。これが感じの悪い人形の力なのかな。嬉しいけど悪いことしてるみたいでちょっと気が引ける。
コルキスが落ち着くと一緒にさっきの部屋へ戻った。
俺とコルキスを見たグレスは俺達に近付いて来て、色々と悪かったと謝ってきた。それを受け入れ、俺もコルキスもグレスに謝った。
「じゃあ、ご飯にしよう!」
空気も和んだことだし、一緒に食事をすればもっといい感じになるはずだ。
「あ、もう1つ。勝手に食っちまったけど、この肉ってアルファド達のだよな。これもすまねぇ」
ばつが悪そうにグレスが言うけど、なんかもうこんな奴なんだなと俺もコルキスも笑ってしまった。食事の後も話をしていたけど、コルキスが何度か眠たそうに目を擦ったので寝ることにした。
俺たちとグレスの寝室は別々だ。大地の清めというティザーの魔法で身綺麗にしてもう。
大きめのベッドが有るのはティザーが気を利かせてくれたんだろう。ベッドに入ると、コルキスは俺にしがみつきながら直ぐに寝てしまった。
暖炉のお陰か部屋はとても暖かかった。
~入手情報~
【名前】グレス
【種族】狼獣人
【職業】冒険者/餓狼拳士
【年齢】19歳
【レベル】29
【体 力】208
【攻撃力】363
【防御力】142
【素早さ】333
【精神力】19
【魔 力】67
【通常スキル】
餓狼拳/火風爪牙/ハイパワー/ハイクイック
【固有スキル】
獣化/咆哮/魔爪/喰千切り/アランロドゲッシュ
【先天属性】
火
【適正魔法】
火魔法-下級/風魔法-下級
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【名 称】薪
【分 類】永燃薪
【属 性】植物/火
【希 少】☆
【価 格】-
【コルキスのヒストリア手帳】
兄様の作った卵から出てきた薪で、ほぼ永続的に燃え続けるよ。快適な室温保つ効果もあるよ。水をかけたとしてもそれが特級水魔法でもない限り乾けばまた燃え始めるからね。火事には気をつけようね。
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【名 称】超燻製ハム
【分 類】ハム
【属 性】植物
【希 少】☆☆
【価 格】-
【コルキスのヒストリア手帳】
兄様の作った卵から出てきた薪のハムだよ。材料はそこら辺に生えてる木の幹なんだけど、ディナーツリーのチップで燻製されてるんだって。まあまあ美味しい薪ハムだね。
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【名 称】シャドーベンド
【分 類】基礎影魔法
【効 果】☆
【詠 唱】メギヌファリア基礎言語/乱文不可
【現 象】
対象の影を曲げることによって、本体にも同じ体勢を強制できる。影魔法適正があればほとんどの者が使用可能。
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【名 称】大地の清め
【分 類】中級土魔法
【効 果】☆☆☆
【詠 唱】テイザーイル魔法言語/乱文不可
【現 象】
汚れを落としたり軽い状態異常を解除できる。体や衣服の汚れを落とす為だけに使用する者は少ない。




