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53話 アルフの審査

後書き修正

 中庭の中央に着くとアカルさんが周囲に結界を張る。


「兄様がんばれー」


 コルキスがディオスに乗っかりながら手を振ってくる。


 俺が軽く振り返すとアカルさんがにっこり笑いながら言葉を掛けてきた。


「アルファドさん、随分と余裕がおありなんですね」


 何て恐ろしい笑顔なんだ。


「アカルは私より強いんだよー、勝てなくても仕方ないですー」


 そんな、何でコルキスじゃなくて俺の方に強い人が……


「それでは始めますよ。パカル、合図を」


「了解ですー、始めー」


 何とも締まらない開始の合図だ。


「おい、グルフナ!」


 開始の合図と共にグルフナがアカルさんに攻撃した。


 きっとさっき見たコルキスとディオスを真似たんだろう。


 けれど、アカルさんが展開した防御壁にあっさり阻まれる。


 ただひたすらに、防御壁をガンガン叩き付けるグルフナ、とても切ない。


 アカルさんが少し動くと、突然グルフナの全身に罅が入った。


「戻るんだグルフナ!」


 ぼろぼろになりながら戻ってくるグルフナの哀愁が凄い。


「アクネア、頼んだぞ」


『うぃー』


 ふらふら揺れているアクネアに戦闘を任せると、戻ってきたグルフナにリクレイムテラを使うよう指示を出す。


「頑張ったな、でももう少し慎重になろうな」


 自身を修復し始めたグルフナは悲しそうに揺れた。


『やーるろー!』


 呂律の回らないアクネアがアカルさんの防御壁の内側を水で満たす。


『どうらー、ひっく』


 酔っ払っててもちゃんとしてくれてるじゃないか。


 でも、そんなあっさり負けてくれるアカルさんじゃなかった。


 どういうわけか、防御壁内の水が消えたかと思うと俺の真上に出現した。


「うわわわわ!」


『水浴びらー、きもっちいいれー!』


 アクネアは水を防いでくれず、はしゃぎ始めた。


 グルフナもリクレイムアクアを発動させて嬉しそうにしている。


 ティザーは自分だけを守ってお酒を飲み続けていた。


 水に押し潰されてびしょ濡れの俺だけが何とも言えない気持ちになる。


『水浴びでテンスオンあっぷらー』


 俺が立ち上がるとアクネアが酒瓶を振り回してアカルさんに突撃して行った。


 防御壁をすり抜け、酒瓶でアカルさんをガスガス殴る。


「うわー、あのキモい人形凄いですねー、アカルの多重結界を粉々にしてますよー」


 パカルはコルキスを叩きながら興奮している。


 コルキスは迷惑そうな顔で浮かび上がり、パカルから距離をとった。


「良かった。アクネアが何とかしてくれそうだね、グルフナ」


 そう安心していたら俺の周りに防御壁が現れた。


「うわ、何だこれ!?」


 防御壁が俺目掛けて突進して来る。


 咄嗟にグルフナが俺を守ろうとするけど、グルフナには荷が重いだろうな。


 これは負けたと思ったら、地面が盛り上がって防御壁を破壊した。


「ティザー!!」


『アルフの事をすっかり忘れとるのアクネアは。高みの見物といきたかったんじゃがのう』


 やれやれと言いながらティザーが酒瓶をアカルさんに向けると、彼女目掛けて硬そうな岩が幾つも飛んで行く。


 アカルさんの近くに有る防御壁を砕くと、またもや俺の上に岩が現れ降ってくる。


『おうおう、あやつもなかなかじゃて』


 ティザーが降ってくる岩を砂に変えると今度はサンドゴーレムに作り替えアカルさんを襲わせる。


「何だー、ただの餌じゃないんですかー」


 パカルの呑気な声が聞こえてくる。


「アルファドさんもやりますね」


 アクネアの酒瓶攻撃を防いでいたアカルさんが感心したように言う。


「私も頑張りましょうか」


 すると全ての防御壁や結界が形を鋭く変え、俺目掛けて突進して来た。


 さらにアクネアの持っている酒瓶が砕け散り、アクネアが入っている人形がビリビリに破け吹っ飛んだ。


「仕上げましょうね」


 アカルさんの胸辺りに、髑髏が描かれた何かが現れると俺の身体から急激に力が抜けていく。


 ティザーのサンドゴーレムも崩れて砂に戻った。


「何だよ……これ」


『ヌホホホ、面白い固有スキルじゃの』


 立っていられない。


 グルフナはとっくに地面に転がって微動だにしない。


 結界や防御壁が直ぐそこまで迫っているのにティザーは笑ってお酒を呷り、地面に座った。


『よしよし、良い感じれれきらろら』


 ビリビリに破れたアクネアも地面に転がりながら満足そうな声をあげている。


「どこがだーー!!」

 

 俺は死を覚悟する光景に思わずミステリーエッグを発動させてしまった。


 しかし、ミステリーエッグの射程に入る前にアカルさんの攻撃が止まる。


「終わりですー、アカルの勝ちですー」


 パカルが気の抜けた声で宣言した。


「お疲れ様です、アルファドさん。なかなか強力な人形ですね」


 破れたアクネアを拾い、アカルさんが近付いてくる。


 俺はミステリーエッグを解除してアクネアを受けとった。


「うわぁ、酷いなこれ。直るかな……」


『らいじょーぶら』


 アクネアがもぞもぞ動くと、人形は元通り綺麗な右半身に戻った。


「まあまあ、その人形は復元するのですね」


 アカルさんは目を丸くしている。


「キモい人形なのに高性能ですー」


 近くに来たパカルもまじまじとアクネアを見ている。


「では審査は終わりです。疑惑も晴れましたし、これでお2人は冒険者ですよ」


 アカルさんが怖くない笑顔を見せて俺を立たせてくれる。


「疑惑ですか?」


 なんだろう。もしかして俺がクランバイアの王子って疑われてたのかな。やっぱり、俺の見た目は世界中に知れ渡っていたんじゃ……


「そうですー、テラテキュラ王国で呪いの人形使いが現れたんですー、暴虐の限りを尽くしたらしいですー」


「アルファドさんの人形もかなり個性的なので、受付嬢がもしやと報告を上げたんですよ。ですが、アルファドさんは火魔法や氷魔法、奇妙な卵も使いませんでしたし、何より話に聞くほど圧倒的ではありませんでしたからね」


 あ、あ、あぶなーー!!


 さっきミステリーエッグで卵を出してたらと思うとゾッとする。


「ハ、ハハハ……それは良かったです」


「私も暗殺を実行しなくて良かったですー」


 それは本当に良かったです。


「では、この用紙を持って受け付けに行って下さい。お疲れ様でした」


 俺はアカルさんから2人分の用紙を受けとると、コルキス達を連れて受け付けに向かった。


「ねぇ、兄様。さっき疑惑って言われた時、自分の見た目の事を考えてたでしょ」


 隣に来たコルキスが面白そうに聞いてくる。


「な、なんの事だかな」


「ぼく、兄様の表情が読めるようになってきたみたい。くふふふ」


 またも両手で口を塞ぎながらコルキスが笑う。


 悔しいけど、俺はジル姉様以外の兄弟とこんなやり取りができる事が嬉しかった。

~入手情報~


【名 称】防壁操作

【発 現】アカル

【属 性】無し

【分 類】操作型/スキル

【希 少】☆

【コルキスのヒストリア手帳】

防御壁を意のままに動かすことができるよ。


~~~~~~~~~


【名 称】カウンターシールド

【発 現】アカル

【属 性】無し

【分 類】反射型/スキル

【希 少】☆☆

【コルキスのヒストリア手帳】

シールドに触れた魔法攻撃を使用者の頭上に転移させることがでできるよ。物理攻撃の場合はシールドから1メートル以内にいた場合に限って攻撃してきた者に同等のダメージを与えられるみたいだね。


~~~~~~~~~


【名 称】リベンジフォース

【発 現】アカル

【属 性】無し

【分 類】反射型/スキル

【希 少】☆☆☆☆

【コルキスのヒストリア手帳】

アカルが作り出した防御壁に攻撃を加えたものに、その攻撃をアカルのレベル倍にしてを跳ね返すよ。しかも攻撃1発分とか、加えられた全部の攻撃とか、どれくらい跳ね返すかはアカルが選択できるんだって。でも攻撃時に防御壁を破壊できれば無効にできるよ。


~~~~~~~~~


【名 称】クラッシュダウン

【発 現】アカル

【属 性】火

【分 類】殺意型/固有スキル

【希 少】☆☆☆☆

【コルキスのヒストリア手帳】

アカルの半径1メートル以内に存在するものに致命的なダメージを与えるよ。アカルが敵と認識したものにだけに効果があるよ。便利だね。他にも半径10メートル以内の結界や防御壁を敵にぶつける事もできるみたい。


~~~~~~~~~


【名 称】イージスヴァニタス

【発 現】アカル

【属 性】火

【分 類】悪意型/固有スキル

【希 少】☆☆☆☆☆

【コルキスのヒストリア手帳】

アカルの身体に人生の無意味さや、虚栄(きょえー)の儚さ等を描いた胸当てが現れるよ。この胸当てが目に映った者は完全に無力化されるんだって。それだけじゃなくて、この胸当ては強力な物理防御、魔法防御の効果を発揮するらしいよ。でも、アカルのレベル×防御力÷体力以上のレベルの者は無力化じゃなくて、一部のパラメーターや固有スキル等が封印状態になるみたい。この固有スキルの持続時間はアカルの防御力1/100秒間。なにも消費せずに使えるから、長いととるか短いととるかどっちだろうね。


~~~~~~~~~


【名 称】リクレイムテラ

【発 現】グルフナ

【属 性】土

【分 類】修復型/固有スキル

【希 少】☆☆

【コルキスのヒストリア手帳】

土属性のものを自分の修復材料にできるよ。使い終わったものや価値が無いものほど修復効果が高いんだって。


~~~~~~~~~


【名 称】リクレイムアクア

【発 現】グルフナ

【属 性】水

【分 類】修復型/固有スキル

【希 少】☆☆

【コルキスのヒストリア手帳】

水属性のものを自分の修復材料にできるよ。使い終わったものや価値が無いものほど修復効果が高いんだって。


~~~~~~~~~


【名 称】アクネアの酒瓶

【分 類】精霊の鈍器

【属 性】水

【希 少】☆☆☆☆☆☆☆☆

【価 格】-

【コルキスのヒストリア手帳】

特級水精霊のアクネアが飲み干した酒の空き瓶。アクネアの力で異常なまでに強化された恐るべき鈍器だよ。

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