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52話 コルキスの審査

後書き修正

 中庭へ行くと白い毛の羊駱駝(アルパカ)獣人と茶色い毛の羊駱駝(アルパカ)獣人が待っていた。


「そのちいっこい子がヴァンパイアハーフですかー」


「登録用紙は私に下さいな」


 白い毛の羊駱駝獣人は興味深そうにコルキスを見ている。


 茶色い毛の羊駱駝獣人は優しく笑いながら、冒険者登録用紙をコルキスから受け取った。


「私が審査官ですー、宜しくお願いしますー」


「私も審査官でアカルといいます。白い方がパカルですよ」


 白い毛がパカルさんで茶色い毛がアカルさんね。


「ヴァンパイアハーフの審査という事で、たまたまギルドに来てたところを急遽駆り出されました。臨時収入ですー、感謝ですー」


 パカルが飄々としながらお礼を言ってきた。


 ヴァンパイアハーフだからってどういう事だろう。


「コルキスさんはパカルが担当します、アルファドさんは私が担当ですからね」


「あの、ヴァンパイアハーフだと担当が違うんですか?」


 コルキスは気にしてないようで身体をほぐし始めている。


 俺はちょっと気になったから聞いてみた。


「違うんですよー。強い種族の審査はBランク以上がする決まりなんですー」


 へー、そうなんだ。ていうかコルキスって強いのかな。そんなイメージ無いんだけど……


「兄様、ぼくが弱いって思ってるでしょ。言っとくけどクソ弱い兄様よりはましだからね」


 コルキスがジト目で俺を見てくる。


「そうだ! 弱いぼくのために血を吸わせて! 良いよね兄様!」


 コルキスは急に笑顔になったかと思うと、俺の腕に噛みついて血を吸い始めた。

 

「ほぇー、あっちの人間はヴァンパイアハーフの餌ですかー」


「こら、パカル。そんな言い方は失礼ですよ。ごめんなさいねアルファドさん」


「いえ……おい、吸いすぎだって」


 コルキスが多めに血を吸うせいでくらくらする。


 何でかディオスも嬉しそうに羽をパタパタ動かしている。


「けぷっ、あの白いのちょっと強いから。はぁ……やっぱり兄様の血は美味しいな」


 満足感たっぷりの表情で舌舐めずりをしたコルキスは、パカルさんの方へ歩き出した。


 俺もこれから審査されるんだけど分かってるのかよ。


「まずはコルキスさんから審査を始めますね。アルファドさんは休んでいて下さいな」


「ありがとうございますアカルさん」


「あら、冒険者同士は呼び捨てが基本ですよ。私はギルド職員でもあるので良いですけど、気を付けて下さいな」


 アカルさんに注意されてしまった。


 俺は頷いて近くの椅子に座る事にした。


 俺が椅子に座ったのを確認してアカルさんが半球形に結界を張り、喋り始める。


「では、これから審査を始めます。あくまでも模擬戦なので相手を殺さないようにお願いしますよ。それでは始め!」


 開始の合図と共にコルキスとディオスがパカルに攻撃を仕掛けた。


「あ、グルフナどこ行くんだよ」


 ふよふよと浮かびながらグルフナが結界に近付いていく。


『戦いを勉強したいんだろ。過保護は良くないぞ』


 心配する俺をアクネアが嗜める。


「えーと、コルキスさんの戦闘スタイルは、武器の使用はせず肉弾戦と魔法や使い魔を駆使して戦うと登録用紙にありますね。ヴァンパイアハーフの王道といったところですね」


 アカルさんがコルキスの登録用紙を確認しながら、何かを書き込んでいく。


 はっきり言って、俺はディオスだけで勝てると思うんだよな。


「うわっ、この子達早いですー」


 パカルは少しも焦った様子を見せず、コルキスとディオスの攻撃を躱していく。


 するとコルキスは下がり、ディオスを前面に出して攻撃を始めた。どうやらコルキスは影魔法で援護するようだ。


「うひゃー、アカル、このグニュグニュ蝙蝠めちゃくちゃ強いですよー」


 なおも攻撃を躱しながらパカルが中庭を駆け巡る。


 コルキスはディオスの後ろに隠れながら、検討違いな場所ばかり影魔法のシャドーボールで攻撃している。


「あらあら、流石ヴァンパイアハーフですね。パカルの攻撃を(ことごと)く潰しているじゃないですか」


 また何かを書き込んでいる。


 え? パカルって攻撃してるの?


『ひっく、なんだか楽しそうな事をしておるのー』


 突然ティザーが鞄から出て来て俺の肩に座った。


『良い酒の肴じゃわい』


 左半身だけの人形姿で酒瓶をぐびぐび呷っていく。


 うわぁ、人形の顔が完全に泥酔した顔になってるじゃないか、顔半分だけど。しかも俺に触れたから嫌そうな表情も混じってる。


「なぁアクネア、パカルって攻撃してるのか?」


 酒臭いティザーに聞くのはなんか嫌だったからアクネアに聞いてみた。


『何だ、アルフは見えないのか。コルキス達の攻撃を避けながら体毛を飛ばしたり、そこら中に毛を張り巡らせてるじゃないか。まるで蜘蛛みたいだぞ』


「へー、体毛で攻撃してるのか」


 俺には全く見えない。ていうかディオスは手加減してるのかな。もっと凶悪な攻撃が出来そうなのに。


「ちょっと本気を出しますよー」


 パカルが嬉しそうに言うと、全身を光沢のある白い布みたいな物が包み込んだ。


 それを見たコルキスは、テラテキュラの中央都市で見せた蝙蝠の大群を出す。


 俺からはコルキスもディオスも良く見えなくなった。


『ほぅ、コルキスは上手く対応しておるのぉ』


『だな! ヒストリア様様らな!』


 あ! アクネアまでお酒を飲み始めてるじゃないか!


「アクネア、俺の審査もあるんだからあんまり飲まないでくれよ」


『だーいじょうらって!良い感じにやるあらよー』


 呂律が回ってない。


「本当かよ……」


「おやまあ、パカルが押されていますね。8歳とありますが、コルキスさんは将来有望ですこと」


 アカルさんにはどうなっているのか見えるのか。


「今、どうなってるの?」


 俺だけ何も分からない疎外感を払拭したくて聞くと、ティザーが酒瓶で俺の頭をこつこつ叩きながら教えてくれる。


『アルフはもちっと目を鍛えんといかんな。今はあの羊駱駝獣人が物理攻撃を当たらなくするスキルと、魔法攻撃を当たらなくするスキルを交互に使い別けておる。じゃが、切り替えが追い付かんようになってきとるな』


『それだけじゃらいろ。コルキスは魅了を使っれパカルの集中を乱しれるろ』


 集中が乱れてるのはアクネアだろ!


 アクネアが入っている人形の顔も、とろんとした顔と不機嫌顔が混じり始めている。


『それにの、ディオスがコルキスの蝙蝠を喰ってパワーアップしておる。この戦いの最中に成長したようじゃわい。いやはや、無属性のリキッドマナストーンは本当にえげつないのぉ』


 えげつないと言いながら愉快愉快と酒を呷るティザーは、本当に酒臭い。離れてくれないかな。


「コルキスさん、これなら特例が適応になりそうですね。嬉しい事です」


 アカルさんが満足そうに笑っている。


 コルキスっていつもクランバイアの王族武闘会で兄様や姉様に負けてたから弱いもんだと思ってたけど、違うんだな。


 ことあるごとに俺をクソ弱いって言うのも納得っていうか、何ていうか。


『お、決着がついたの』


『もっろ激しくれもよかっらろにら』


 もうダメだ。アクネアが完全に酔っ払ってしまった。


 きっと今は世界が回って見えてるんだろうな。


「2人もお疲れ様でした。コルキスさん、とても素晴らしかったですよ」


 アカルさんは結界解除して2人を労う。


「何でー、私のアヴォイドクロスを知ってたのー?」


 コルキスが右腕を不完全変身させた、ミスリルローズの茨に捕らえられたパカルが悔しそうにしている。


「内緒だよー」


 コルキスがパカルの口調を真似て言う。


「あら可愛いこと。コルキスさんは特例でFランクかEランクで登録になると思いますよ」


「本当に? やったねディオス!」


 コルキスは右腕を元に戻すと、ディオスと嬉しそうに(じゃ)れ始めた。


 そんなコルキスにパカルが「ねぇ何で何でー?」と聞いているけど、完全に無視されている。


 ああいう所、後でコルキスに注意しなきゃな。



「では、次はアルファドさんの番ですね。お手柔らかお願いしますね」


 アカルさんがにっこり笑いながら俺に中庭の中心へ行くよう促す。優しい笑顔だけど、迫力満点で凄く怖い。


 酔っ払ったアクネアは前後左右に揺れている。


 しっかりしてくれよアクネア……俺はバクバク鳴る胸を擦りながらアカルさんに着いて行った。

~入手情報~


【名前】パカル

【種族】羊駱駝獣人

【職業】冒険者/アサシン

【年齢】25歳


【レベル】42

【体 力】712

【攻撃力】639

【防御力】317

【素早さ】1288

【精神力】2020

【魔 力】222


【通常スキル】

 暗殺/一撃必殺/倍速/隠密/投擲/体毛術/暗器使い/毒の知識/身体強化3倍/スパイダームーブ

【固有スキル】

 臭い唾/アヴォイドクロス


【先天属性】

 土

【適正魔法】

 土魔法-下級


~~~~~~~~~


【名前】アカル

【種族】羊駱駝獣人

【職業】冒険者/冒険者ギルド職員/ガーディアン

【年齢】57歳


【レベル】61

【体 力】921

【攻撃力】435

【防御力】2520

【素早さ】532

【精神力】888

【魔 力】511


【通常スキル】

 多重結界術/結界術/強防御壁/防壁操作/体毛術/リカバリーシールド/スタンシールド/カウンターシールド/リベンジフォース

【固有スキル】

 臭い唾/クラッシュダウン/イージスヴァニタス


【先天属性】

 火

【適正魔法】

 火魔法-中級/風魔法-下級


~~~~~~~~~


【名前】ディオス

【種族】リキッドマナストーン

【職業】使い魔

【年齢】4日


【レベル】33

【体 力】403

【攻撃力】2401

【防御力】1352

【素早さ】1077

【精神力】88

【魔 力】4254


【通常スキル】

 甘える/硬化

【固有スキル】

 氷耐性増/魔力栄養化/変形/飛行/無属性吸収/影属性吸収/自然界魔素吸収/物理ダメージ吸収


【先天属性】

 無

【適正魔法】

 無魔法-中級/氷魔法-下級/影魔法-下級


~~~~~~~~~


【名 称】不完全変身

【発 現】コルキス・ウィルベオ・クランバイア

【属 性】影

【分 類】不完全型/固有スキル

【希 少】☆☆☆☆

【コルキスのヒストリア手帳】

これまで吸血したものに変身することができるよ。部分的にだけどね。体の機能とスキルも同じにできるよ。でも固有スキルは再現できないんだ。魔法ぼくと同じ先天属性の魔法なら使えるけど、そもそもぼく影魔法は上級魔法までほとんど使えるからあんまり意味ないんだよね。内緒だけど特級魔法も1つだけなら使えるし。それだけがちょっと不便かな。


~~~~~~~~~


【名 称】アヴォイドクロス

【発 現】パカル

【属 性】土

【分 類】回避型/固有スキル

【希 少】☆☆☆☆

【コルキスのヒストリア手帳】

少ない魔力で物理攻撃か魔法攻撃を完全回避する白い布を1枚だけ出現させるよ。物理回避と魔法回避を同時にできないから、いちいち出し直ししなきゃなのが弱点かな。でも使い勝手の良い固有スキルだと思う。ぼくならもっと有効活用(ゆーこーかつよー)できるのになぁ。体毛が長ければ長いほど大きな布を作り出せるんだって。


~~~~~~~~~


【種族名】ミスリルローズ

【形 状】エリナ型

【危険度】A

【進化率】☆☆

【変異率】☆☆☆


【魔力結晶体】全個体に発生

【棲息地情報】ミスリル鉱山・ミスリル鉱脈付近の森林等


【先天属性】

 必発:植物/土

 偶発:風/火/水/氷/雷/光/影

【適正魔法】

 必発:植物/土

 偶発:風/火/水/氷/雷/光/影


【魔物図鑑抜粋】

ミスリルと同じ性質の身体を持った薔薇型の魔物。

Aランクの魔物であり、倒す為には相応実力が必要。ミスリルの様な身体は、それだけでも非常に強力な武器となるが、先天属性の魔法を纏わせた攻撃は確実に獲物を仕留めると恐れられている。また、先天属性は花の色を見れば判別可能と言われているが、偽装している場合もあるため注意が必要である。


~~~~~~~~~


【羊駱駝獣人】

羊駱駝の獣人。

極めて良質な毛並みを持った獣人で、それを戦いに用いる者もいる。集団で居ることを好むが1人でも問題がある訳ではない。また、異臭を放つ液体を吐き出す事も出来るが暫く口臭が消えない為、あまり使おうとしない。


~~~~~~~~~


【ヴァンパイアハーフ】

ヴァンパイアと人間の混血。

純粋なヴァンパイアには劣るが、凄まじい攻撃力と魔力や強力な固有スキルを持ち合わせておりとても強い。子供の内はどちらかというと人間寄りの成長をするが、青年期になると一気に成長していき他を凌駕するようになる。また、純粋なヴァンパイアとは違い甘えん坊で寂しがりな性質があり1人では生きていく事が出来ない一面も持ち合わせている。


~~~~~~~~~


【クランバイアの王族武闘会】

クランバイア魔法王国で年に1度開催される王族による武闘会。トーナメント形式で戦っていき優勝者には豪華な褒美が与えられる。クランバイア王は不参加だが王妃達は参戦する為、王妃同士の対戦は壮絶な戦いとなる場合がある。また、王子や王女も参戦するが王妃に勝てず敗退していくのが近年の流れである。大変人気の催し物で、国内外から観戦に訪れる者も多い。亡くなったとされる第13王子は参加を許されていなかった。

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