表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/201

50話 僕はカミルだから

後書き修正

 僕とキャリンはご飯を御馳走になり、宿泊している白い砂浜亭に着くと、ヴァロさんが部屋をスイートルームに変更してくれた。


 騎獣のお礼って言っていたけれど、小声で日向ぼっこのお祝いだと言ってくれた。女将さんもにも聞こえていたようで、ウィンクしながら僕の迷いを断ち切ってくれた。


 スイートルームは異国情緒溢れる豪華な部屋だった。僕は完全に舞い上がっていたんだ。アルの国の習慣も考えずに同じ部屋で家族になるのが当然と思っていた。


 とても素敵な部屋、窓から見える絶景、珍しい蝙蝠の大群、これらを愛する人と共有できる事が幸せだった。


 でもアルが戸惑いながらヴァロさんの所へ行った時に気付くべきだった。


 アルが母国の習慣を遠慮がちに僕に伝えてお風呂の約束をすると、いそいそと自分の部屋へ行ってしまった。


 そして約束の30分後、アルは居なくなっていた。ヴァロさんとミシアさんも居ない。キャリンは、ミシアさんが出て行ったアルを追い掛けると言っていたと教えてくれた。


 僕がアルの気持ちを考えていなかったからだ。僕も探しに行こうとしたけれど、キャリンに止められた。


 2時間以上経ってアルが帰って来た。


 アルを見た途端、神官様が暗殺された時の事を思い出してしまい無性に抱き締めたくなった。


 アルを抱き締めて謝っていると、脇腹に強烈な痛みが走った。


 きっと悲しすぎて身体に異変が起きたんだろう。そう思っていたら、小柄な男の子が僕を突き飛ばし喚きだした。


 呆気に取られていると、その子はアルと一緒に部屋に入ってしまった。慌てて追いかけたけれど、何故かドアが開かなかった。


 暫くすると、さっきの男の子が部屋から出て来た。


 その子はコルと名乗り自分はアルの弟だと言う。似ていないのは異母兄弟だかららしい。ヴァロさんとミシアさんの方を見ると、肯定の頷きをした。


「兄様はお前なんかと結婚しない」


 いきなりコルが無表情で言い放った。兄様……アルは身分の高い人間だったのか。結婚しないっていうのはそういう理由なのだろうか?


 でも、アルは僕の事を愛してくれているし、ヴァロさんとミシアさんも祝福してくれている。


 きっとコルはアルが大好きなんだろう。だからそれを奪っていく俺が気に入らないのか。可愛いじゃないか、僕の妹もコルみたいに思ってくれるのかな……僕はコルとも仲良くなりたいと思い、コルに近付いた。


 でもコルはそんな僕の鳩尾をぶん殴ると、影魔法を使って僕の意識を刈り取った。


 翌朝、コルと言い合いになってしまった。突然コルが自室に戻ると、少ししてアルと一緒に出てきた。


 僕は不安を消し去りたくてアルに詰め寄ってしまった。そんな僕を見てアルは不思議そうに首を傾げ、はっきり好きだと答えてくれた。


 言葉を聞くだけで何もかもが満たされた気持ちになる。こういうのがこれからもずっと続くのか。そう考えると、身体の奥から何とも言えないムズムズした物が放たれる。


 それからはコルに何て言われようと、霧されようとも気にならなくなった。


 騎獣の操作講習中に氷の粒が何度も降ってきたけど、それも気にならない。大きなのは少し痛かったけど。


 メネメス国へ出発する日、コルに異変があった。


 使い魔にしたって嬉しそうに言っていたのに、その使い魔に捕食されているような光景を見た時は心底驚いた。


 心配そうにするアルの気を紛らわせようとしたけど無理だった。行く行くは、こういう時でも頼りになる男にならなきゃな。


 夕方になるとコルは起きてきた。物凄く元気で、騎獣専用の部屋を楽しそうに駆け回っている。アルはずっとコルに付きっきりでちょっと妬ける。


 寝る前、軽い冗談でアルに一緒にお風呂に入りたいと言うと、コルと使い魔のディオスが見事な連携で僕を攻撃してきた。


 コルと仲良くなるにはどうしたらいいのかな。


 翌朝、何故かアルの周りをハンマーがふわふわ漂っていた。アルはそのハンマーを大事そうに扱い、労るように話しかけている。それはアルの使い魔という事だった。


 ウェポンゴーレムかアームズソウルかと思ったけれど、違うらしい。名前はグルフナと教えてくれたけれど、詳しい事は内緒と言われた。


 そして、コルがやたらとアルにちょっかいを出している。兄弟の戯れというより、恋人のじゃれ合いみたいに見えて、とてもモヤモヤする。なんで、コルは首や腕に口を付けるんだろう。


「ヴァンパイアの習性よ。ああやって気にった者の血を吸うのが親しみの証なの」


 ミシアさんが教えてくれた。


 それで一層モヤモヤしてしまった。アルも何でもっと強く拒否しないんだ……いや、でもあれは仲の良い兄弟のスキンシップだし。僕にも兄弟と仲良く遊ぶ経験があったら、理解できたのかな。


 コルにもアルにも何も言えないまま、メネメス国へ到着した。


 キャリンとはここでお別れだ。長い付き合いで色々あったけれど、彼女と出会えて僕は幸運だったと思う。僕が思い出を噛みしめながらお別れを告げたのに、彼女は無視してヴァロさんと話を始めた。


 その途中でコルがお腹が減ったと言い、アルの首に顔を近付けた。さらにディオスが2人を覆ってしまい、何をしてるのか見えなくなった。


 キャリンとヴァロさんの話は一切耳に入ってこない。ミシアさんは「あらあら」と呆れるだけで何もしない。グルフナは中に入りたそうにしているけど、それだけ。


 僕はディオスから2人が出てくると、何をしてたのかアルにそれとなく聞いてみた。


「少し血をあげたんだ」


 あっけらかんと首を指差してアルがいう。


「僕はダメなのに……」


 僕の中で何かが切れそうになってしまったけれど、どうにか抑えた。僕は少し傷が残っているアルの首をリッキングリカバリーで治癒すると、話し合う為にコルの元へ行く事にした。


 コルに話しかけたけれど無視される。


 それでも何度か声をかけるとようやく口を開いた。


「お前はもう用済みだよ。だからさっさと消えてよ」


「なっ!?」


 さっきまで楽しそうにアルと喋っていたコルと同一人物とは思えない表情をしている。


「最初に言ったけど兄様はお前なんかと結婚しない。早くこの国へ来るために利用してただけだもん。それにいくらお前が妾時代の相手と兄様を重ねても、それは兄様と関係ない。汚らわしい妄想で兄様を貶めるな」


 何だ? コルは何を言ってるんだ?


 妾時代?


 汚らわしい?


 確かに妾と言われても仕方ない、だけど汚らわしくなんか無い。僕も神官様もお互いを想っていたもの。


 僕はカッとなってしまいコルと喧嘩になってしまった。


 そこへアルがやって来た。


 何か思い詰めている表情をしている。あ、そうだよね……弟と婚約者の喧嘩なんか見たくないよね。


「……ごめん、アル。それにコルも。ついカッとなっちゃったよ」


 アルは黙って首を振ると、話があると言った。


 それからはよく覚えていない。


 ただアルは僕を好きじゃない、ましてや愛しているなんて……結婚なんて絶対しない。それは良く分かった。


 目が覚めると1日過ぎていて、今はお昼前。


 僕のすすり泣く声を聞いて、騎獣管理の職員さんや警備の兵士さんが次々に慰めてくれる。


 けれど結局最後は、今夜どうっていう話をするんだ。


 僕はお世話になった皆にお礼をして、メネメッサの町を後にした。

~入手情報~


【名 称】ウェポンゴーレム

【形 状】殺道具型

【危険度】G~S

【進化率】☆☆☆☆☆

【変異率】☆


【魔力結晶体】すべての個体に埋め込まれている

【棲息地情報】遺跡等


【先天属性】必発:-/偶発:-

【適正魔法】必発:-/偶発:-

【魔物図鑑抜粋】

厳密には魔物ではない。しかし大半が魔物に味方しているため、武器の形をした魔物と定めている。様々な種類の武器を模しており、その殆どが過去の遺物である。強大な力を持つものから、普通のナイフ程度も物までと性能に幅がある。また、その製造方法は失われている。


~~~~~~~~


【名 称】アームズソウル

【形 状】幽体型

【危険度】B~SS

【進化率】☆

【変異率】☆


【魔力結晶体】発生しない

【棲息地情報】遺跡等


【先天属性】必発:-/偶発:-

【適正魔法】必発:-/偶発:-

【魔物図鑑抜粋】

ウェポンゴーレムに封じ込められた疑似生命体。便宜上、魔物として扱っている。ウェポンゴーレムが壊れるとその中から出てくる。ウェポンゴーレムより遥に強く並みの実力では太刀打ちできない。武器や魔法を吸収する特性をもつ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ