3話 父上と2人きり
後書き修正
俺は今ピンチかもしれない。
鑑定が終わった後に俺だけ残されるなんて今まで無かったことだよ。あぁどうしよう、なんて言われるんだろう。
「アルフよ、もっと近くに」
「はい」
父上の座っている所まで歩いて行って目の前で跪いた。よし、先手を打とう。
「父上、申し訳ありません。フレアドラゴンの肉まで用意していただいたのに何のスキルも取得できなくて」
怖くて父上の顔を見ることができない。とにかく謝って許してもらおう。怖くて震えていると父上が立ち上がって俺の後ろに回った。
「アルフ、何も謝ることはない。今更フレアドラゴンのステーキに期待などしておらんかった。ただどうしても確認はしなければならなかったのでな」
よかった、怒ってるわけじゃないんだ。でもならどうして……。
「父上、では何故私の鑑定を最後にされたのですか?」
順番通りにしていれば、俺が何も取得していないことがちょっとは薄れたかもしれないのに。
「それはバドルとの約束でな。アルフの願いを聞き入れフレアドラゴンの肉を購入したのだから、他の王子や王女の願いも聞き入れてくださらねば不公平だと言われてしまってな。バドルは王子と王女皆の鑑定をすること、そしてお前を最後に鑑定することを望んだのだ」
げっ! てことは、父上は20人全員のおねだりを聞く羽目になったのか。
「左様でしたか。私のせいでいらぬ気苦労をお掛けしてしまい重ねてお詫びいたします、申し訳ありません」
「よい、たまには子らの我儘を聞くのも父の勤めだ。それよりもアルフよ。スキルは取得しておらんかったが、火魔法は何か使えたのか?」
「いえ、プチファイアすら使えませんでした」
「そうか……」
え、父上が俺を背中から抱きしめてきた。不思議と力が沸いてくるようだ。
「あの、父上?」
「アルフ、お前が魔法の特訓を毎日しているのは知っている。それが報われないのは辛かろう。だが魔法など使えなくてもお前は私の可愛い息子だ。堂々としておればよいぞ。正直言うとなアルフ、私はお前が1番可愛いのだ。同じ名を与えたことがその証じゃ」
う、、今そんなこと言われたら我慢できなくなるじゃないか。
「ち、父上ぇぇぇ、俺、俺父上に良くやったって言って欲しくてずっと、ヒック、頑張ってたんだけどグズッ、全然ダメでぇぇ」
「おうおう、15にもなってそんなに泣くとは情けないのぉ。しかし、よいぞ。ずっと頑張ってきたのだから今日くらい存分に泣いても良い」
「ぢぢゔぇぇ」
俺は久しぶりに号泣してしまったし、言葉使いも小さい頃のようになってしまった。
「グスッ、父上みっともない姿をお見せしてしまい申し訳ありません。もう大丈夫です」
しばらく父上に抱きしめられながら泣いていたけど、ちょっと恥ずかしくなってきた。
「なんだ、もういいのか」
父上そう言うと俺の前に戻ってきて頭をなでてくれた。
頭をなでられるのも久しぶりだ。相変わらず父上の手は大きいなぁ。なんて思っていると父上は宮廷魔法師を呼ぶと俺に「夕食には来るんだぞ」と言ってどこかへ行ってしまった。
よし、俺も自室に戻るとするか。あ、その前に母上の所にも行って結果を報告しなきゃな。たぶんまた結婚の話をされるだろうけど、今なら笑顔で聞いていられる気がする。
まぁ、絶対に見合いはしないけどな。なんたって俺は理想の愛を手に入れたんだから。
それにしても、ジル姉様はどこへ出かけてるんだろうなー。かれこれ1週間はいないけど何やってるんだろう。
~入手情報~
【宮廷魔法師】
クランバイア魔法王国の王族に認められらた魔法使い。
クランバイア魔法軍に所属しており、日夜魔法研究や鍛練を行っている。騎士の役目も負っている為、剣術や体術等も必須とされている。また、上級以上の魔法が扱える事は前提条件である。




