45話 コルキスが凄く可愛い
後書き修正
今日はメネメス国へ行く日だ。だけど、その前に確認しておかなければいけない事がある。
俺は隣ですやすや眠るコルキスを起こす。
「うーん、ねむい……」
少し舌ったらずな喋り方でコルキスが文句を言ってくるけど、俺1人で確めるのはちょっと怖い。
「コルキス、感じの悪い人形がどうなったか確認しよう」
「煩いなぁ、1人でやってよ。ぼくはディオスと寝てたいの」
コルキスは昨日使い魔にしたリキッドマナストーンに、ディオスと名前を付けてひたすら可愛がっている。ディオスもコルキスに同調したようで、コルキスを自分の身体ですっぽり覆ってしまい動かなくなった。
「仕方ないか……」
俺は窓際に置いてある人形用試験管の様子を伺ってみた。緑色の液体は無くなっている。けれど感じの悪い人形は試験管の中で無表情のまま浮かんでいる。
そっと試験管を傾けて人形を取り出すと、人形はいつも通り嫌そうな顔に変わった。手を離すと可愛らしい顔になる。コルキスの説明だと、何かしらの異変が現れるって事だったけど特にそんな様子はないな。
「やっぱりコルキスに確認してもらうか。起きたら頼もう」
しかし、そんな時間は作れなかった。
ディオスに覆われたコルキスは出発の時間になっても起きてこず、そのままの状態で運ぶ羽目になったのだ。良くない事になったかと思ったけど、ヴァロとミシア曰く何の問題も無いらしい。
「コルは寝てるだけって話だったけど、騎獣を最速にしても大丈夫かな?」
大型グリフォンを模した大人数用の騎獣を慣らし運転していたカミルが、心配そうに聞いてきた。
あれだけ言い争っていたのに、カミルも気になってるんだな。
「あぁ、問題無い」
「夕方には起きてくると思うわ」
「でも、コル君どうしちゃったのかしらね。昨日は使い魔を見つけたって喜んでたのに」
それは俺も気になってたけど、ヴァロとミシアが起きれば分かるって教えてくれない。
「起きれば分かるよ、キャリン」
「リキッドマナストーンを使い魔にしたら必ず起こる事なのよ」
そういうのは予め教えて欲しい。起きたときと全く変わらない状況のコルキスを見て驚いたんだからな。
「リキッドマナストーン自体、まず見かけない魔物だからね」
「使い魔になる事も稀だし、知らないのが普通かしら」
ヴァロとミシアが、時折俺の方へ視線を飛ばしながらキャリンに説明している。
「自動操縦にしたから、このままメネメス国に着くよ。コルが起きるまで空の旅を満喫しようねアル」
カミルは騎獣操縦の魔道具の前から俺の隣にやって来た。
俺達が借りた騎獣専用の部屋は寝室が3部屋とリビングがあり、トイレと浴室付きの豪華な物だ。
コルキスは寝室に寝かせている。
さっきまで俺はコルキスの側に居たけど、放っておけとヴァロにリビングまで連れて来られた。
「アル、そんなに寝室の方ばかり見てないで外でも見たら?凄く綺麗な景色よ」
キャリンが窓の外を指差して言う。
「僕達も何度か見てる景色だけど、毎回見入っちゃうんだよ」
カミルも俺を窓まで連れて行き、あの山はこうだ、あそこの草原はどうだと言っているけど耳に入ってこない。さして仲良くない弟だけど、やっぱり弟だ。俺はコルキスが心配で仕方がない。
俺は上の空でカミルやキャリンの言葉を聞き流すのだった。
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「わー、凄い景色だねディオス!」
コルキスは楽しそうに外の景色を眺めている。コルキスは夕焼け色に染まった景色が特に好きらしい。
ミシアの言った通り夕方前にコルキスが目を覚ました。
リキッドマナストーンのディオスが、コルキスの役に立つ成長をする為に主を調べていたらしい。
それに加えて、短い時間だが特級精霊と本気で戦ったコルキスは成長し、その為に長く寝ていたようだ。
新しい固有スキルも発現したと嬉しそうに教えてくれた。
「アル、取り越し苦労だったみたいね」
元気一杯のコルキスを見て、苦笑いしながらキャリンがお茶を淹れてくれた。
「問題ないって言っただろ」
「なのに心配し過ぎなんだからアルったら」
ヴァロとミシアが若干馬鹿にしたように言ってきた。ちなみにカミルは騎獣の微調整をしている。
「コル、キャリンがお茶を淹れてくれたぞ。温まるから」
俺はコルキスにお茶を渡して一緒に景色を眺める事にした。
「ありがとうキャリン、兄様」
お茶を受け取ったコルキスはキャリンにお礼を言うと、俺にピタッと引っ付いてきた。
「兄様、寝る前に昨日の人形見せてね」
そう言ってお茶にフーフー息を吹き掛けるコルキスは抜群に可愛い。
「それにしてもディオスはえらく主人思いだな」
「そうね、リキッドマナストーンの性質上、予想はしていたけどちょっと上を行き過ぎね」
そう、ディオスは驚きの成長していた。
ずっと特級精霊が 近くに居たお陰で魔素を大量に取り込めたらしい。そして今は大きな蝙蝠の姿でコルキスの背中にくっついている。
ヴァロとミシアを除けばこの中で1番強いだろう。妙に凛々しい顔をしているけど……いいなぁコルキス。
「コル君、どうしてディオスは蝙蝠になっちゃったの?」
「え、だってヴァンパイアの使い魔っていったら蝙蝠だもん。ディオスに夢の中でどんな姿がいいか聞かれたからお願いしたの」
キャリンの疑問に満足そうな顔で答えるコルキス。可愛い過ぎる。我慢出来なくて頭を撫で撫でしてあげた。
「止めてよ兄様」
コルキスが鬱陶しそうに俺の手を払いのける……悲しい。コルキスの背中にくっついているディオスが羨ましい。
「そうだ、アルとコルに話があるんだった。ちょっと寝室に来てくれ」
急にヴァロが立ち上がると俺とコルキスの寝室へ入って行った。なんでかミシアが呆れ顔で早く行けと手を振ってくる。
寝室に入るとすぐさまヴァロに頭を叩かれた。
「何するんだよ」
「お前なぁ、コルキスに魅了されてどうすんだよ。コルキスも、新しい固有スキルが嬉しいのは分かるがアルフで試すな」
え、どうこと?
俺コルキスに状態異常にされてたの?
「ごめんなさい」
ちぇっと口を尖らせるコルキス、超絶可愛い!
「はぁ、アルフは本当に駄目だな」
そう言ったかと思うと、ヴァロは俺の頭にチョップをお見舞いしてきた。
「痛たたた」
「兄様ごめんね」
コルキスは謝ってくるけど……なんだ、このあざとい表情は。コイツ本気で謝ってるのか?
「正気に戻ったみたいだな。それとディオス、お前も補助魔法でコルキスの悪戯を手助けするんじゃない。そこは嗜めてこその使い魔だぞ。俺の知ってる黒猫なんて嫌味しか言わないんだからな」
ヴァロはディオスにもデコピンをプレゼントした。
その後はリビングに戻り晩御飯を食べて風呂に入った。
カミルが俺と一緒に入りたいと一悶着起こしたけど、コルキスとディオスが食い止めてくれた。そういえばカミルは額に傷あてをしてるけど、どうしたんだろう。
そして今、俺は寝室で感じの悪い人形をコルキスに見てもらっている。
「何が変わったか分かるか?」
「えっとね、触った時1/3の確率で不気味な笑い声をあげるようになったみたい」
「それだけ?」
「それだけ」
そうか、あれだけ苦しい顔をさせた挙げ句、不気味な要素を増やしたのか……なんかごめん。
「思ったよりつまらない結果ね」
ミシアが、がっかりしている。
「あ、ねぇアルフ。これも見てもらって」
そう言ってミシアが取り出したのは壊れた筈のエボリューションハンマーだった。
「元に戻ってる……」
「でしょ、さっき人形を取り出す時に気付いたのよ」
確か柄がポッキリ折れて、頭部にも罅が入ってたよな。
「あ、これジャンクソウルが宿ってる」
コルキスが小さく声をあげる。
「そういえば昨日テーブルの上にジャンクソウルも並べてたわよね。その時に宿ったのかしら」
「うん、そうみたい。この子は兄様に感謝してるよ。身体をくれてありがとうって」
ヒストリアってそんな事も分かるのか、凄いな。
それにしても、ハンマーに感謝されるなんて……
「あら、じゃあアルフはこのハンマーを使い魔にすればいいんじゃない? コルキスが使い魔を手に入れて羨ましがってたし」
ちょ、バラすなよ。
「そうだね。エボリューションハンマーの能力はもう無いけど、この子も兄様が好きみたいだし」
確かジャンクソウルってガラクタに宿るんだよな。つまり、こいつはガラクタで……無能で………ダメだ、親近感が湧きすぎて切なくなる。
「コルキス、貸してくれ。こいつは今から俺の使い魔だ。宜しくな!」
こうして俺は何の役にも立たないハンマーを使い魔にするこ事となった。ちなみに、眠る寸前にコルキスがとんでもない爆弾を放ってきた。
「兄様が人形にしたお願いって、ぼくになったね。くふふふっ」
俺は何も言わず熱くなった顔を枕に埋めた。
~入手情報~
【名前】コルキス・ウィルベオ・クランバイア
【種族】ヴァンパイアハーフ
【職業】王子
【年齢】8歳
【レベル】30
【体 力】200
【攻撃力】441
【防御力】483
【素早さ】497
【精神力】46
【魔 力】2620
【通常スキル】
消費魔力減少/影魔法威力増/体術/我儘
【固有スキル】
吸血/霧化/飛行/癇癪/長寿/魅了/不完全変身/聖光被ダメージ増/ヒストリア/オーラ
【先天属性】
影
【適正魔法】
影魔法-上級
~~~~~~~~~
【名前】ディオス
【種族】リキッドマナストーン
【職業】使い魔
【年齢】1日
【レベル】30
【体 力】208
【攻撃力】2311
【防御力】1302
【素早さ】973
【精神力】101
【魔 力】4053
【通常スキル】
甘える/硬化
【固有スキル】
無属性吸収/氷耐性増/魔力栄養化/変形/飛行/自然界魔素吸収/物理ダメージ吸収
【先天属性】
無
【適正魔法】
無魔法-中級/氷魔法-下級
~~~~~~~~~
【名前】無し
【種族】ガラクタハンマー
【職業】使い魔(仮)
【年齢】1日
【レベル】0
【体 力】1未満
【攻撃力】1未満
【防御力】1未満
【素早さ】1未満
【精神力】1未満
【魔 力】1未満
【通常スキル】
無し
【固有スキル】
忠誠/浮遊/生きる心
【先天属性】
無し
【適正魔法】
無し
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【種族名】ガラクタハンマー
【形 状】?型
【危険度】-
【進化率】-
【変異率】-
【魔力結晶体】-
【棲息地情報】-
【先天属性】必発:-/偶発:-
【適正魔法】必発:-/偶発:-
【魔物図鑑新規登録】
壊れたエボリューションハンマーにジャンクソウルが宿った生きたハンマー。非常に脆く壊れやすいが、身体をくれた(本当は壊れたエボリューションハンマーを直ぐ近くに置いただけ)者の為に精一杯生きようと心に決めている健気なハンマー。魔物と武器の性質を併せ持つがウェポンゴーレム等とは異なる新種。すべてにおいて情報が不足している。
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【名 称】感じの悪い人形改
【分 類】生き人形
【属 性】毎日ランダムに変化
【希 少】☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【価 格】時価
【コルキスのヒストリア手帳】
舌打ちドールのドロップ品を、満たされた人形用試験管で改造した人形。触るととっても嫌な気持ちになる表情する人形だよ。元々の見た目が可愛らしいぶんほんっとうに嫌な気持ちになるんだ。めったにないけど、触ると笑顔になって願い事を叶えてくれるらしいよ。でも過ぎた願い事の場合は舌打ちされて無視されて、次から触ろうとすると手を叩かれるようになるみたい。満たされた人形用試験管の効果で、属性が日替りになったのと、触ると1/3の確率で不気味な笑い声を発するようになったよ。




