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41話 モーブは意外と怖かった

後書き修正

 あ、頭が痛い。


 頭の中から何かが飛び出してきそうなほどの酷い痛みと吐き気のせいで、俺はその場に倒れた。


「ん、ううぅ……」


「やっと、正気に戻ったか」

「凄く疲れたわ」


 目を開けるとヴァロとミシアが辟易した顔で俺を覗きこんでいた。それに何かが大量に落ちてくる音がする。ただ、今の俺に2人をや周囲を気遣う余裕は無い。


「コルキス程度に操られてんじゃねーよ」

「そうよ、私達がどれだけ苦労したか。減点10だわ」


「頭、痛い。気持ち悪い……」


 2人が愚痴愚痴言ってるけど、今はこの苦痛から解放される事しか考えられない。


「ったく、いい気なもんだ」

「仕方ないわね、もう」


 一瞬だけ何とも言えない、内蔵がこう、ふわっとすると俺は苦しみから解放された。


「ありがとう、2人共……って何これ!?」


 余裕ができて、回りを見渡すと辺り一面が卵の海になっていた。しかも、ヴァロとミシアの後ろには目を見開いて微動だにしないコルキスがいた。


「何って、アルフがやったんだろうが」

「勘弁して欲しいわよね、どうするのよこれ」


 ヴァロは卵に視線をやり、ミシアはコルキスを見る。確かコルキスが俺の部屋にいて……その後からが全く思い出せない。


「何が……あったのかな?」


 出来るだけ2人を刺激しないように聞いてみた。


「コルキスに操られたアルフが正気に戻るまで、お前の相手をしてたんだよ……」

「魔法は効かないし物理攻撃も卵で防ぐし。おまけに卵は硬くて痛いし散々だわ……」


 2人は俺とカミルのやり取りを盗み見ていたら突然現れたコルキスが俺の首に(かじ)りついたと言う。


 直ぐ様、現場に空間移動したけれど俺とコルキスが霧になって移動して行く。追いかけるヴァロとミシアに、コルキス放った無数の蝙蝠が襲い掛かってきたらしい。2人はぶちギレして、中央都市からある程度離れた森の上空でコルキスに攻撃を開始。


 霧化を解除しコルキスを追い詰め、ヴァロとミシアがコルキスを懲らしめようと強力な氷魔法を何発も放ったところ、俺がミステリーエッグで応戦し始めた。


 さらに蝙蝠はコルキスの影魔法だったらしく、コルキスは蝙蝠を俺にぶつけ異常な数の卵を作った。で、どうやら俺はその卵を操作してヴァロとミシアを襲ったらしい。


 そして、その隙に逃げ出そうとしたコルキスをミシアが氷の口づけで凍結させて確保。コルキスを取り戻そうとする俺が正気に戻るまで、2人が根気強く俺の相手をしてくれ。吸血の強制解除は闇属性か聖光属性のものが行わないと後遺症が残るとかで……。


 こ、これはエライ事をしてしまった。2人に折檻されてしまう。とりあえず謝罪お礼をしておかねば。


「た、助けてくれてありがとう。それにごめん」


「はぁ、とにかくコルキスをどうするか考えるぞ」

「そうね。生かすにしても殺すにしても問題しかないもの」


 できれば生かす方向でお願いしたい。一応弟だし、コルキスは俺の事は無視しかしてなかったし。


「あ、殺さない方向で、お願い……したいなぁ、なんて……ハハハ………」


 恐る恐る言ってみたら、2人に深い深い溜め息を疲れて呆れ顔をされてしまった。


「俺、モーブ様を呼んでくるわ」

「そうね、アルフの為にも。あとこの子も一応は闇の眷属な訳だし」


「お手数おかけします……」


 数分後、ヴァロがモーブと何故かロポリスも連れて戻って来た。


 モーブは俺にミステリーエッグを使わないよう念押しし、全ての卵がすっぽり収まる大規模な結界で周囲を囲った。とたんに物凄い量の魔力が持ってかれてクラクラする。


 あー、これモーブもロポリスも母上とは関係なく来てくれたのかな。倒れそうになった俺をロポリスが支えてくれる。少し楽になった気がする。


「先ずは僕が話してみるから、ヴァロミシアとロポリスはコルキスには何もしないように」


 モーブがいつもとは違うオーラを纏っている。


「はい」

「はい」


 おぉ、ヴァロとミシアが畏まってる。母上に召喚されてる時は、こういう精霊の上下関係ってほとんど見せなかったけど、実は結構きっちりしてるんだな。


「りょうか~い」


 ロポリスはモーブと同じ大精霊だからか舐めくさったような声で返事をした。


「怠いわぁ。モーブ、私の出番は作らくていいからね。メンドイから」


 そしてこの言い様。ロポリスは相変わらずだなぁ。


 モーブがロポリスにおざなりな返事をしてからミシアの氷の口づけを解除する。と同時にコルキスを黒い何かで拘束した。


「起きろコルキス」


 モーブが聞いたことないトーンでコルキスに命令する。ガタガタ震えるコルキス。その見開いたままの目に光が戻ってきた。


 コルキスは目の前に闇大精霊と聖光の大精霊、おまけに氷の特級精霊が居るのを見て、半泣きになっている。メンドイとか言ってた割にロポリスは真面目な顔だ……まああれはフリで何も考えてないだろうけど。


「我が眷属に命じる、お前の目的を話せ」


 モーブに問われてコルキスはゆっくり話し始めた。


「ぼく、あ、わたしはアルフレッド兄様が不死になったと思ったので、それを確かめたくて……」


「確かめてどうするつもりだった」


 モーブは恐ろしい程の圧力(プレッシャー)を放っている。あんなのが8歳の子供に向けられているなんて、コルキスの奴よく耐えられるな。


「不死になる方法を教えてもらいたかったんです。ぼ、わたしはヴァンパイアハーフなのに不死じゃないから……グスッ」


 そんな事考えてたのか。


「アルフはお前の力になれない。お前も確認して分かっただろう」


「はい。アルフレッド兄様は不死じゃなくて、復元で――」


「ねぇ、不死になりたいならモーブに命の女神様を紹介してもらえばいいんじゃない?」


 急にロポリスが話に割り込んできた。いつもみたいに、何かを考えている振りをしてるのかと思ったらちゃんと考えてたのか。


「え?」


 静かに泣き出していたコルキスがロポリスを見つめる。


「そういえば、ロポリスやラズマはアニタ様と親しげだったけど、モーブは命の女神様と仲がいいの?」


 モーブは俺の問いにゆっくり頷いた。


「コルキス、お前は死の女神様が不死をもたらすと考えていたのだろう。だが、それは違う。不死は命の女神様の祝福だ」


 へぇ、そうなんだ。


 確かにアニタ様は祝福イコール死みたいな事を言ってたから、死なないってのは嫌がりそうだよな。


「どうすれば、わたしに命の女神様を紹介して頂けますか?」


 コルキスはモーブに縋る様な顔で聞いている。


 モーブは少し考えた後、ロポリスに何か言うとコルキスに答えた。


「アルフに危害を加えない事、アルフの秘密を守る事、アルフの力になる事。これらをこの先、永遠に守るならばお前が18歳になった時に願いを叶えよう。ただし、命の女神様がお前に不死の祝福を授けるかは分からないがな」


 ……あれ?


 もし、コルキスがこの条件を飲んだら、俺がセイアッド帝国に行く必要は無くなるんじゃないか? だって、コルキスにバレるとメファイザ義母上に伝わって、更にそこから拡散みたいな話だった。


「わかりました。アルフレッド兄様に危害を加えず、秘密を守り、力になると誓います」


「分かった。常に闇と聖光の精霊がお前を見ている。もしも誓いが破られれば、お前の不死という夢は消え去るだろう」


「はい」


 おお!!


「あ、なら俺がクランバイアに帰って良くなるんだよね?」


「それは無理。全世界にアルフは死んだって発表したんだから。王子が生き返りましたなんて、誰も信じないわよ。魔物として処分されるに決まってるわ。それかネクロマンサーに操られてると思われて、面倒臭い団体が魂の解放だって殺しにくるわ」


 ロポリスが怠そうに言ってくる。


 本当にそうなのか? いや、でもロポリスの言う事って当たるんだよな……


「アルフ、帰る云々は置いておいて、今はここに有る卵を全部孵化させなよ。このままにはしておけないよ」


 怖いオーラを消したモーブが笑顔で無茶振りしてきた。


「え、これを全部? 数日かかっても終わらないんじゃ……」


 いったい何個有るのかも分からない。


「ま、頑張れ」

「私達に攻撃してきた罰よ」


 ヴァロは欠伸をしながら、ミシアは冷たく言い放つ。酷い。俺は正気じゃなかっただけなのに罰だなんて。何とかならないかとロポリスの方を見たら、もういなくなっていた。巻き込まれたくなくて逃げたな。


 俺はただただ、愕然とするしかなかった。

~入手情報~


【名 称】不死

【発 現】メファイザ・オ・クランバイア

【属 性】命/闇

【分 類】祝福型/固有スキル

【希 少】☆☆☆☆☆☆☆☆

【効 果】

簡単に言えば自然に死ななくなる。命の女神の祝福で寿命は永遠。怪我や病気も直ぐに治癒する体質。また、どんな種族なのかによって、不死にも様々な種類がある。メファイザの場合、肉体が消滅しても魂がほんの一欠片でも残っていれば瞬時に再生可能。その際、以前より少しだけ強くなる。

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