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40話 キッパリ断ろう

後書き修正

 どうしよう、困ったとヴァロの部屋で行ったり来たりしていたら、鬱陶しいと追い出されてしまった。たぶん、ヴァロもミシアも魔法で俺の様子を伺うつもりなんだろう。わたわたして困っている俺を見て楽しむつもりだ。


 いいだろう。そっちがそのつもりなら、毅然とした態度でキッパリさっぱり断ってやろうじゃないか。


 俺はスイートルームの入り口辺りに置きっぱなしになった荷物を持って、カミルが待っている部屋に戻った。カミルには悪いけど、俺はカミルと結婚する気は微塵も無い。


「やぁ、お帰りアル。早かったね。やっぱり僕と離れてるのが寂しかったのかい?」


 無いんだけど……あぁ、罪悪感が凄すぎる。止めてくれよカミル。なんて幸せそうな顔をするんだよ。


「そ、そうかも。少し寂しかった……かな」


「僕もだよ。さっきは強がってみたけど、1秒でも早くアルに会いたかった。さっきから、時間が進むごとにアルの事をもっと好きになっていってるよ」


 ぐぅっ、今からこの顔を悲しみに沈めるのか。


「アル、こっちに来て。もうすぐ日が沈むよ。凄く綺麗な景色だ、一緒に見よう」


 カミルに呼ばれて俺は窓まで行くと、何も遮る物が無い窓から入ってくる心地いい風が全身を撫でていく。カミルの横に立てば然り気無く肩を抱かれ……カミルって俺より歳下っぽいのに慣れてるよな。前にシルフィが、麒麟獣人は10歳で成人するって言ってたから経験値の差なのかな。


「あのさ、カミル」


「なんだい、アル」


 夕日に照らされたカミルが、幸せそうに俺を見下ろしてくる。


 くっ、頑張れ俺。


「言いにくいんだけど、俺さ――」


「あ、あれ見て! 蝙蝠かな、凄い数飛んでるよ」


 いや、ちょっと今は蝙蝠とかどうでもいい……って本当に凄いな。とんでもない数の蝙蝠が1つの生き物のように、一糸乱れぬ飛行を披露している。本で見た最果ての国に住まうという龍みたいだ。


「凄いなぁ……大好きな人とこんな素敵な部屋に泊まれて、感動する景色を一緒に見てる。僕達、世界に祝福されてるみたいだね、アル?」


「え、あ……えと………うん。そう、かもね」


 無理だーー!


 俺にはこんな幸せ全開の人を絶望させるなんて出来ないよ。せめて、もう少し落ち着いてから本当の事を言った方がいいかな。


「あ、ごめん。アル何か言いかけてたね。何だったんだい?」


「あー、えーっと……一緒の部屋って話だったけど、そういうのは俺の国では正式に結婚して式を挙げるまではダメなんだよ。さっきヴァロに聞いてみたんだけど、そういうのを破ると結婚生活が上手くいかなくなるって」


 何言ってんだよ俺は。


 問題の先送りだってのは分かってるけど、幸せの塊みたいな顔の今のカミル、それにイシトウォーリで見たカミルの悲しそうな顔を思い出すと、どうにも今は言い出せない。


「そうなんだ。一緒の部屋で寝られないのは残念だけど、僕達は国も種族も違うからお互いに歩み寄っていかなきゃいけないよね」


「そ、そうだな」


「なら、せめて太陽が海に沈むまで一緒にいてくれないかい?」


 カミルが肩を抱く腕に少し力を込めて言ってくる。


「わかった……じゃあもう少しだけ」


 後でヴァロとミシアに目一杯、揶揄(からか)われるんだろうな。ていうか、今ミシアが「加点3よ」って言った様な気がした。


 そのまま俺とカミルは太陽が完全に沈むまで何も言わず、その景色をただ眺めていた。


「沈んじゃった。少し寒くなってきたかな。窓閉めるね」


 すっかり影に包まれたカミルがそう言って窓の横にある魔石に触れると、魔法が発動して窓に薄い膜ができた。


「それじゃあ、俺は部屋に行くな。また、後で」


「うん、スイートルームのお風呂って凄いらしいから楽しみだね。一緒に入ろう、勿論ヴァロさんも一緒に。それなら問題ないよね」


 そうだ、お風呂に入りたくてこの宿屋に来たんだった。


「了解。ヴァロにも声かけとく。30分くらいしたら入ろう」


「うん。ねぇアルファド、大好きだよ」


「……あぁ、知ってる」


 俺は、カミルの部屋を出ると、何とか乗り切ったんだと自分に言い聞かせ深呼吸をする。このままヴァロにお風呂の事を伝えようかと思ったけど、少し休みたかった。


 項垂れるような罪悪感を抱えて、俺は自分が使う部屋へ行く事にした。


 日が沈んだせいで部屋の中は真っ暗だ。


「明かりはどこで点けるのかな……あ、ここか」


「くふふふ、アルフレッド兄様み~っけ」


「っ!?」


 明るくなった部屋にいたのは、楽しそうに笑っている末の弟コルキスだった。


「あんなのと結婚だなんて悪趣味だな~兄様って」


 気付くと背後に回っていたコルキスが耳元で囁く。次の瞬間、首に痛みが走ったかと思うと俺は目の前が真っ赤になった。

~入手情報~


【名 称】吸血

【発 現】コルキス・ウィルベオ・クランバイア

【属 性】影

【分 類】吸収操作型/固有スキル

【希 少】☆☆☆☆

【効 果】

血を吸った相手を一定時間意のままに操る事ができる。また、吸血する事によって自身を大幅に強化できるだけでなく、体力や魔力の回復、怪我の治癒も可能。成長すると強力な固有スキルとなるだろう。


~~~~~~~~~


【名 称】霧化

【発 現】コルキス・ウィルベオ・クランバイア

【属 性】影

【分 類】体変化型/固有スキル

【希 少】☆☆

【効 果】

自身を霧状にでき、そのまま行動できる。また、触れた者を2人までなら霧にする事ができる。霧にした者の自由を奪い状態異常を付与する事も可能だが、どのような状態になるかは完全にランダム。成長すると強力な固有スキルとなるだろう。

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