36話 誑かそう
後書き修正
無事、中央都市テラテキュラに入る事が出来た。擦れ違う人達は皆、ヴァロとミアシを見て振り返っている。
王族顔負けの美貌と上品さを惜し気もなく振り撒いてるもんなぁ。
対して俺は今、どこにでもいるような男の姿になってるから一緒にいると逆に目立つ。
周りの視線から、何であんなのが一緒にいるんだっていうのを犇々と感じる。
俺は居たたまれない気持ちを誤魔化す為、早歩きで騎獣の貸出しをしている役所まで行く事にした。
役所の中は大勢の人でごった返していた。
「着いたな、じゃあさっさと申請してこいよ」
「申請したらご飯食べに行くから早くね」
ヴァロとミアシが金貨を取り出しながら俺に申請を丸投げしてくる。
でもさ、俺こういうのやった事ないんだよ。
「あ、あのさ……申請ってどうやったら出来るんだ?」
何だかんだで俺は王子だったから、だいたいの事は使用人や専属メイドのアーシャがやってくれていたのだ。
ここを目指した当初は風精霊のシルフィが、感じの悪い人形の中から指示してくれるものだと思っていた。
「はぁ? そんなの俺達が知る訳ないだろ」
「そこら辺の人に聞けばいいじゃない、とろとろしてるから減点1よ」
冷たいなぁもう。
とりあえずカウンターは混んでるから、誰かに――
「あら? あなた、イシトウォーリの宿屋で私の相棒を誘った人 間じゃない」
「え?」
誰かに話を聞こうとしていたら、イシトウォーリの町で出会ったエルフに声をかけられた。
「あ、あの時の。確かキャリンだったっけ?」
「良かった、覚えててくれたのね」
俺がキャリンの名前を言うと、彼女はエルフ特有の長い耳をピクピクと動かした。
「そりゃあね。えっと、カミルだっけ? 彼はいないの?」
イシトウォーリでキャリンと一緒にいた麒麟獣人の姿がないので聞いてみた。
「え、カミル? カミルなら騎獣の操作講習を受けてるわ」
「そうなんだ」
カミルには悪いことしちゃったから気まずいんだよな。
「ところで、カミルの名前って教えたかしら?」
キャリンがきょとんとした顔で聞いてきた。
しまった……そういえばカミルの名前はウルタウォーリに向かう途中、馬車で追い抜かれた時に聞こえてきたんだった。
「う、うん。イシトウォーリで教えて貰ったよ」
「そうだったかしら」
キャリンは首をかしげて記憶を辿っている。
「誰だ?」
「どこか見覚えのあるエルフだけど……」
どうやって誤魔化そうか悩んでいたらヴァロとミアシが聞いてきた。2人が無遠慮にキャリンを見つめているせいで、彼女の顔が段々赤くなっていく。
「イシトウォーリの町で知り合ったエルフでキャリンっていうんだ。キャリン、こっちの2人は一緒に旅をしてるヴァロとミシア」
「え? あぁ、うん。ヴァロさんとミシアさんね。2人とも凄く綺麗……」
熱っぽい視線でヴァロを見ていたキャリンは、簡単に返事をするとすぐ視線をヴァロに戻した。
当然それに気付いているヴァロは爽やかに微笑むと、キャリンの腰に手を回して彼女を人が疎らな所へ連れて行った。
俺とミシアもその後に続き、少し離れた場所で待機した。
「キャリン、さっき騎獣の操作講習って聞こえてきたけど君も騎獣でどこかへ行くのかい?」
ヴァロが好青年の振りをしてキャリンに話しかけた。キャリンは顔を真っ赤にさせながらコクコク頷いている。
「俺達はメネメス国へ行くんだけど、キャリンはどこへ行くんだい?」
うわぁ、ヴァロの考えてる事が分かった。悪い男だ。
チラッとミシアの方を見ると、ミシアも俺を見てきた。
「ヴァロに任せておけば直ぐに騎獣を借りられそうね、アルフよくやったわ。加点5よ」
ミシアはそう俺に耳打ちすると母上みたく微笑んだ。
「私……いえ、私達もメネメス国へ行く予定なんです」
「そうか、奇遇だね。キャリンはいつ出発するのかな?」
どうしよう、ヴァロの好青年っぷりを見ていると笑いが込み上げてくる。普段と違いすぎてただのギャグにしか見えない。でもキャリンにとっては違うようだ。完全に恋する乙女の顔をしてるよ。
「明日出発です」
「明日か。俺達はさっきこの町に着いたから暫く後になるな。折角キャリンと知り合えたんだし、もっと君の事を知りたかったけど……残念だ」
しょぼんって音が聞こえてきそうなくらい、ヴァロが落ち込んだ表情をする。
「ぶふっ!」
堪えきれず笑いが漏れてしまった。
ヴァロはチラッと俺を見たけどキャリンが気付いてなさそうだ。良かった。
「減点2よ」
ミシアが小声で告げてくる。俺はそれを無言で受け入れた。
「そ、それなら一緒に行きませんか? 私達の騎獣を大人数用に変更すれば明後日には出発できます。今から騎獣の借り受け申請すると7日はかかりますから、それより断然早く行けますよ」
キャリンが早口でヴァロに提案した。顔は赤いし目は潤んでるし、キャリンはもうヴァロの虜だな。可哀想に。
「え、いいのかい? 邪魔にならないだろうか?」
ヴァロはそんな事言われるとは思ってもみなかったって顔してる。ミシア、よく笑わずに見ていられるな。そう思ってミシアを盗み見ると口元がピクピクしていた。
「邪魔だなんてそんな! 私ももっとヴァロさんの事……」
後半は声が小さくてよく聞こえなかったけど、ヴァロがとても嬉しそうな顔で頷いていた。
ヴァロとキャリンがこっちにやって来る。
「アル、ミシア、キャリンが一緒の騎獣でメネメス国まで行かないかって言ってくれたんだ。俺はキャリンと一緒に行きたいんだけどいいかな?」
ヴァロはとてもいい笑顔で聞いてきたけど、その質問もポーズなんだよな。
「うん、いいよ」
「私も問題ないわ」
キャリンには申し訳ないけど、ヴァロとミシア機嫌がすこぶる良くなったから利用させてもらうよ。何かしらのお礼はするから許して欲しい。
「良かった! これでもっとキャリンと一緒にいられる!」
どこの飼い犬だよってくらいの嬉しそうな笑顔。それを見たキャリンもまた嬉しそうだ。本当、可哀想に。
それからキャリンは受付カウンターで騎獣の変更申請をしてカミルの元へ走っていった。
~入手情報~
【名前】キャリン
【種族】スノーエルフ
【職業】冒険者/マジックアーチャー
【年齢】314歳
【レベル】27
【体 力】290
【攻撃力】111
【防御力】81
【素早さ】244
【精神力】74
【魔 力】403
【スキル】
弓術/短剣術/遠視/聞き耳/雪山の知識
【固有スキル】
マジックアロー/マナボウ/氷属性吸収
【先天属性】
氷
【適正魔法】
氷魔法-中級/植物魔法-下級
~~~~~~~~~
【名前】カミル
【種族】麒麟獣人
【職業】冒険者/ファントムフェンサー
【年齢】17歳
【レベル】21
【体 力】199
【攻撃力】310
【防御力】151
【素早さ】322
【精神力】33
【魔 力】104
【スキル】
細剣術/幻術/イリデッセンスファントム
【固有スキル】
誘い受け/ネックアタック/リッキングリカバリー
【先天属性】
雷
【適正魔法】
雷魔法-下級/土魔法-下級




