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35話 本当に呪いの人形みたいだ

後書き修正

「いいかアルフ、あれは俺達の玩具だから邪魔するなよ」

『そうよ、邪魔したら減点10よ。アルフは上の方で見てるといいわ』


 ヴァロとミシアはそう言って冒険者達で遊ぶために行ってしまった。


 俺は巻き込まれたくなかったし2人に文句を言われるのも嫌だから、卵を足元に集め上空に避難した。




 何て言うか、冒険者達が可哀想な展開になっている。


 玩具と言っていたヴァロは頭だけで飛び回りながら氷魔法を打ちまくっている。


 ミシアはミシアで、人形の体には不釣り合いな大な剣と戦斧を氷で作り振り回しいている。


 おめでとう。もう、どこからどう見ても立派な呪いの人形だよ。


「何故だ! 呪い避けの魔法をかけてもらっているのに!」

「聖水が効かないだと!?」

「光魔法で対抗できるんじゃなかったの!?」


 等々、冒険者達は混乱を極めている。


 幸いヴァロもミシアも本当に殺しはしていないようで、気を失わせたあと氷漬けにしていっている。


「本体はあの偽兎獣人だ! アイツを狙え!」


 冒険者の纏め約っぽい男がそう叫んだ。


 止めてくれよ、俺は巻き込まれたくないんだって。


 すぐさま俺目掛けて矢が飛んでくる。俺は出来るだけ小さな卵を動かして矢を落としていく。


「ダメッ、ここからじゃ威力が足りないわ。魔法使い達変わって!」


 良かった。矢だと当たったら死ぬかもしれないけど、ミステリーエッグを発動してる今なら魔法は全部卵になる。


 今度は魔法が幾つも俺に向かってくる。


「なっ、アイツ魔法を掻き消してるぞ!」

「何だって!? マナバニッシュが使えるのか!?」


 マナバニッシュか、距離があるとそんな風に見えるんだな。


 いや、元々俺の周りに一杯卵が浮かんでるから気付かないってのもあるか。


「冗談止めてよ!無属性魔法が使えるなんてあり得――キャッ!!」


 あ、俺に矢を放ったエルフがミシアにぶっ飛ばされた。


「アハハハハハ!」

『フフフフフフ!』


 2人がとても楽しそうに笑ってるよ。本当、楽しそうで何よりだよまったく。


「ヒイッ! や、止めてくれー!」

「イヤー!!」


 ヴァロの笑い声を聞いた冒険者達が恐慌状態になっていく。


 逃げ出す者や諦めて呆然とする者は真っ先にヴァロとミシアが氷漬けにしていく。


 そうでない者も時間の問題だなこりゃ。





「いやー、楽しかったなミシア!」

『楽しかったわねヴァロ!』


 2人はやりきった表情でお互いの良かった所を誉め合っている。


 あーあ、至る所に氷漬けになった冒険者達が転がってるよ。どうするんだよこれ。


「よし、遊び終わったことだしさっさとメネメス国へ行くか」

『そうしましょ、あそこはあそこで面白い物が有るもの』


 俺がどうやってこの状況を隠蔽するか考えていると、2人が勝手に先へ進んで行ってしまった。


 あー、もう知らない!


 俺は考えるのを止めて、神官が作った結界をすり抜けて行った2人を追いかけた。








 アルフ達が立ち去って数時間後、ポトルウォーリの町から駆け付けた冒険者達が見たのはとても凄惨な現場だった。


 こうして偽兎獣人と呪いの人形はAランク案件となり、未解決のまま長い間調査される事になるのだった。







「2人共ちょっと待ってよ」


 俺は今にも中央都市へ飛んで行こうとするヴァロとミシアを捕まえ、街道を外れた近くの森まで連れていった。


「何だ?」

『何よ、早く行くわよ。騎獣の申請には時間がかかるんでしょ?』


 2人は少しムッとした声を出した。


「いやさ、俺はさっき姿を変える魔法を掛けて貰ったからいいんだけど2人はそのままじゃダメだろ」


 自力で動く人形の頭と胴体が町に入るなんて許されないと思う。


「何でだ?」

『このままでいいじゃない』


 訳が分からないみたいな声で聞かれても困る。


「魔物と認定されて攻撃されるって。呪いの人形と偽兎獣人に討伐依頼が出てるんだから。ここで戦いになったら騎獣なんか借りられないよ。メネメス国へ行くのが遅くなっちゃうよ?」


 何とか説得を試みる。


「あー、それは嫌だな」

『そもそも数日待つのだって嫌なのに……想像しただけで腹が立ってきたわ。減点2よアルフ』


 理不尽!! えっと今のでトータルするとマイナス3か。


「もうこのテラテキュラ王国では人形でいられないよ。あれだけ派手にやっちゃたんだ、すぐに情報も伝えられるはずだよ」


 これから暫く人形狩りとか起きそうだよな。


「仕方ねぇなー」

『ちょっと待ってて』


 2人は人形から出てくると、それぞれを俺に手渡した。人形の顔が尋常じゃない不機嫌になる。この表情はさすがに傷付きそうだよ。


「久々にやるかミシア」

「やりましょうヴァロ」


 そういうと2人はあっと言う間に人間に変身した。


 え、そんな事出来たの!? 結構長い間一緒にいるけど、初めて見た。


「す、凄いね。2人とも王族みたいだ」


 息を飲むほどの美しい見た目と醸し出される品の良さ、どこかの国の王族と言われても納得してしまう。いや、俺も王族だけどさ。


「そうだろ? 若い頃のクランバイア王をイメージしたんだ」

「私はジールをイメージしたわ」


 父上と母上、若い頃はこんな感じだったんだ。母上すっごく綺麗だなぁ。


「よし、行くぞ!」

「何ぼーっとしてんのよアルフ、置いてくわよ」


「あ、待って。この人形しまってくれない?」


 人形をミシアに渡すとき、俺はなんとなく人形の頭と胴体をくっ付けてみた。


 すると、驚くことに頭と胴体はそのまま引っ付き元に戻った。


 俺は人形の不機嫌顔がほんの少しだけ改善されたような気がした。

~入手情報~


【名 称】聖水

【分 類】属性水

【属 性】光

【希 少】☆☆☆

【価 格】テラテキュラ銅貨200枚

【効 果】

ピュアという下級の光魔法を何度も水にかける事で作り出せる。上位の聖魔法には1回で聖水を作り出せる魔法が存在し、さらに上位の聖光魔法では水を必要としない。ちなみに、教会がただの水を聖水として称しお布施をふんだくっているという話はどの国でも耳にすることがある。


~~~~~~~~~


【名 称】マナバニッシュ

【分 類】特級無魔法

【効 果】☆☆☆☆☆☆☆☆☆

【詠 唱】-

【現 象】

極めて珍しい無属性の魔法で、対象の魔法を少ない魔力でかき消すことできる。過去の記録や伝承等で確認出来るが、現代で使える者がいるのかは不明。

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