33話 討伐対象になっていた
後書き修正
テラテキュラ連邦王国は歴史的な背景から、複数の国家が同じテラテキュラ王を自国の王としている。ただし、いずれの国も君臨すれども統治せずという原則を貫いているため国王は形式的なものだ。
テラテキュラ連邦王国はテラテキュラ王国、リキュリ国、ヘリャト連邦、メネメス国、ドグレナ国の5ヵ国で、この大陸に飛び地のように存在している。騎獣はこの国々を行き来出来る。
当然他国の領空を飛び越えて行く為、申請手続きの後に許可が降りるまで数日かかるが、歩いていくより遥かに早い。
今回は5ヵ国の中でセイアッド帝国に1番近いメネメス国へ行く。
そんなわけで俺達は騎獣を借りられる中央都市テラテキュラを目指しているんだけど……昨日兎獣人に囲まれたと思ったら、今日は兎獣人を中心とした冒険者達に追いかけられている。
朝の訓練をしていたら突然襲われてしまった。フラテムが一瞬で蹴散らしてくれ、捕まえた1人の冒険者を詰問したところ俺達の討伐依頼が出されていると判明した。
「やっぱり、昨日のあれがいけなかったんじゃない?」
俺は卵を使って自分を飛ばしながらフラテムに聞いた。ちなみに、今日は55メートル間隔で飛んでいる。
「そうね。脅さずきちんと言い聞かせれば良かったのでしょうけど、私も感情的になってしまっていたから……」
珍しくフラテムが落ち込んでいるな。散歩感覚だけど俺を守りながらっていう思いはあったから、討伐依頼が出された事に責任を感じているようだ。
「でも、このままなら追い付かれずに中央都市に着くんじゃない? そしたら、今度こそ無関係を装って過ごそうよ」
「出来れば誤解をといて和解したいけれど今回は仕方ないかしらね。それからアルフ、もう少し高さを抑えて飛びなさい。その方が速く進めますよ」
「分かりました、先生!」
意外とすんなり了承されて嬉しかったけど、移動の仕方を注意されてしまった。瞬間的に卵を動かすから角度調整が難しいんだよな。
夜になり夜営の準備をしていると、フラテムが申し訳なさそうに話しかけてきた。
「アルフ、こんな時に申し訳ないのだけど、そろそろヴァロミシアと交代しなければいけないの」
「え、そうなの!? せっかく卵操作の応用で色々出来るようになってきたのに。最後までフラテムに見てもらいたかったな」
「私もよ。でも他の精霊達が騒ぎ始めているのよ。ごめんなさいね。引き継ぎはしてあるから、続きはヴァロミシアに見てもらいなさい」
うーん、ちゃんとフラテムの合格を貰ってからお礼を言いたかったな。でも、ずっと俺と居るのも問題か。フラテムも大精霊に選ばれる為にやらなきゃいけない事があるだろうし。
「分かった。残念だけど、我儘言っちゃフラテムが困るよね。これで最後って訳じゃないんだし、今度会った時にびっくりさせるから。今までありがとうフラテム!」
俺がそう言うとフラテムは涙ぐんで頭を撫でてくれた。
「夕飯は一緒に食べましょう。ヴァロミシアが来るまでもう少しありますからね」
珍しい。精霊は御飯を食べる必要がないから、いつもは見ているだけだ。でも、そうだな。フラテムと一緒に食べる御飯の味はしっかり覚えておこう。
「じゃあ次に会った時は今日と同じ御飯を作ってよ」
「ええ、アルフが私を驚かす事が出来たら御褒美で作りましょう。しっかり鍛練するんですよ」
「勿論!」
夕飯を食べ終わった後、フラテムと思いで話をしているとヴァロミシアがやって来た。なんだか2人ともワクワクした目をしてるな。
「アルフ、俺達が来たからには楽しませてくれよ」
「そうよアルフ。つまらない散歩だったら直ぐ帰るんだから」
ヴァロとミシアはそう言うとフラテムから感じの悪い人形を受け取った。
「それじゃあフラテム、またね!」
「ええ、体に気を付けるんですよ。また会える日を楽しみにしているますからね」
青い光を残してフラテムは行ってしまった。
なんだか急に寒くなった気がする。
しばらくフラテムが残した光を見ていた俺が振り向くと、ヴァロとミシアが感じの悪い人形の為に氷で豪華なドールハウスを作っているのが目に入った。
そして、1歩踏み出して嫌な事に気付いてしまった。
霜が降りてる……2人は俺より自分達の快適さを優先したようだ。
~入手情報~
【メネメス国】
テラテキュラ連邦王国の内の1国。
テラテキュラ王国から東に国を3つ越えた所にある。標高の高い場所にあり、国を山脈が囲っている。山羊や羊駱駝、蜥蜴などテラテキュラ王国とは違う種族の獣人やエルフが多く暮らしている。
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【名 称】騎獣
【分 類】飛行型ゴーレム
【属 性】核の魔石により異なる
【希 少】☆☆☆☆☆
【価 格】テラテキュラ銀貨5枚~/レンタル料
【効 果】
大粒の魔石を核にした大きなゴーレムで、様々なタイプの魔物を模している。石や金属等で作られる場合が多い。1人乗り用や大人数用もある。大人数用は騎獣に専用の部屋を牽引してもらう為、快適な空の旅ができる。基本的に一般人はテラテキュラ連邦王国間でしか利用できない。世界三大長距離飛行技術の1つである。
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【名 称】豪華なドールハウス
【分 類】氷精霊の工作物
【属 性】氷
【希 少】☆☆☆☆☆☆
【価 格】クランバイア金貨430枚
【効 果】
氷の特級精霊ヴァロミシアが作り上げた大きめのドールハウス。細かいところまで本物の家と同じ様に作られており、雪小人が好みそうな出来映え。高温でも溶けることはない。結界としての機能もついているとかいないとか。




