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32話 兎獣人は怒っている

後書き修正

「いたぞ!!」

「逃がすな!」

「追えー!!」


 俺達は今、兎獣人達に追われている。


 どうやらここ2週間程、例の被り物をして道行く人に話しかけまくったり、魔物を退治をしていたら兎獣人に多大な迷惑をかけていたようだ。


 気持ち悪い兎獣人が得体の知れない卵を押し売りしている。

 気持ち悪い兎獣人が呪いの人形で殺しを働いている。

 気持ち悪い兎獣人が空を……等々、噂が流れていたらしい。


 イシトウォーリの町、ウルタウォーリの町、ポトルウォーリの町と俺達が訪れた町の兎獣人に苦情が殺到したんだとか。ちなみに俺は町ではフラテムに姿を変えて貰っていた。


「だから途中で止めようって言ったじゃないかフラテム」


 俺は追っ手の兎獣人から身を隠し、フラテムに話しかけた。


「目標は卵を上手に操れるようになる事でしょう? それに、兎獣人達はきちんと謝罪をすれば分かってくれますよ」


 感じの悪い人形から顔だけ出したフラテムは真顔で答えた。


 確かに自分でも驚くほど卵を自由自在に動かせるようになった。フラテムのスパルタ指導は伊達じゃなかったよ。


 お陰で短い期間にも関わらず、複数の卵を使った軽業擬きも出来るようになっていた。相変わらず体力が無いせいで直ぐ疲れるけど。


「私もまさか兎獣人に迷惑がかかるとは思わなかったわ。この被り物は兎獣人と似ても似つかないでしょうに。何故こんなことになったのかしら。彼らには悪い事してしまったわね」


 それは俺も思うけど、噂なんてそんなものだろう。話に尾ひれがついていき事実とかけ離れていく。


「さあ、卵をしまったら彼等に謝りに行きますよ。早くミステリーエッグを解除しなさいな」


「俺としてはこのまま姿を変えて無関係を装いたいんだけど」


「駄目ですよ。迷惑をかけたならきちんと謝らなければいけません。ごめんなさいが言える大人になりなさいと、ずっと言ってきたでしょう」


「わかったよ」


 俺は渋々フラテムの言うことを受け入れた。






「観念したようだな!貴様の目的はいったい何だ!?」

「そんな気持ち悪い姿が兎獣人だと!?ふざけるな!?」

「俺達に何の恨みがあるってんだ!?」



 完全武装した兎獣人達が俺を取り囲んで、次々に罵声を浴びせてくる。確かに最初の頃に比べて兎の被り物は擦れたり拠れたりして形が崩れているけど、そんなに気持ち悪いかな。


「あの、俺も噂は聞いてます。ご迷惑お掛けしたみたいで申し訳ありません。でも――」


 頭を下げて謝った後、誤解を解こうと顔を上げると目の前に槍が迫ってきていた。


 死んだかなって思ったいたら、フラテムがそれを結界で防いでくれた。そして、感じの悪い人形に入ったまま俺の手から離れ浮かんでいく。


 そして、顔の高さまでくると話し始めた。


「其方達、この者は謝罪の為に頭を下げたのだ。にも拘らず殺しにかかるとはどういう了見だ?」


 あ、フラテム怒ってるなぁ。でも人形の方は俺から離れられたから可愛らしい顔に戻っている。


「あれが呪いの人形か……」

「なんて禍々しいんだ」

「気を付けろ、呪い殺されるぞ!」


 禍々しいんじゃなくて、フラテムの怒気なんじゃないかな。


「大丈夫だ、俺達はポトルウォーリで大司教様に呪い避けの魔法をかけてもらっている」


「おお、凄いな……」


 兎獣人達はフラテムを無視して人形に攻撃をし始める。


 けれどフラテムがどでかい火の玉を出し牽制すると、蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。


「まったく、なんて乱暴な者達なんでしょう」


 フラテムが火の玉を残したまま俺の所に戻って来た。すかさず表情を険しくする人形にはもう慣れたよ。


「許してもらうんじゃなかったの? 凄い脅してたけど」


「構わないわ。頭を下げたアルフを殺そうとしたのですよ、万死に値するわ」


 それもちょっと極端じゃないかな。思ってても言わないけどさ。ここで否定するとお説教に流れていくと長い付き合いだからよく知ってる。


「そ、そっか。あ、さっきは守ってくれてありがとう」


「当然ですよ。さあ、先を急ぎましょう。ではここからは卵を使って体を飛ばしながら進みましょうね」


 そう言ってフラテムは大きな火の玉を分割してミステリーエッグを使うように言ってきた。


 この移動方法は速く進めるからいいんだけど、ちょっと間違えると怪我するから怖いんだよな。


「先ずは30メートル間隔で行きますよ」


 俺はフラテムに言われるままミステリーエッグを発動させた。






「くそ、何だあの人形は」

「あんなの俺達だけじゃ手に負えないぞ」

「アイツ等が行ったのは中央都市の方だな」

「仕方がない、急いでポトルウォーリに戻って討伐依頼を出そう」



 兎獣人達は全速力でポトルウォーリの町へ引き返して行った。

~入手情報~


【ウルタウォーリの町】

イシトウォーリの町から北へ進んだ所にある大きな町。

湖の中に(そび)え立つウルタクォックという巨大樹を中心に鳥系の獣人と淡水を好む人魚等が多く住んでいる。湖で捕れる淡水魚やウルタクォックの木の実を使った料理が有名。


~~~~~~~~~


【ポトルウォーリの町】

ウルタウォーリの町から北東に進んだ所にある町。

ポトル大聖堂という大きな教会があり、巡礼や観光で人々をが訪れている。最近、無数の蝙蝠が上空を飛んでいき物議を醸した。教会が造るワインやチーズは絶品であり、名産品となっている。また、近くの森では珍しい茸が幾つか収穫できる為、これを使った料理も大人気である。


~~~~~~~~~


【兎獣人】

兎の獣人。

脚力と聴力に優れている。童顔な者が多く可愛らしい外見からアイドル的な人気を得ている種族でもある。ストレスに弱く、その原因を仲間と協力して取り除こうとする。また、兎獣人は性欲が非常に強く大好きなので毎晩そういう行為をしているらしい。

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