31話 不審者になった
後書き修正
お供をしてくれる精霊がシルフィからフラテムに代わった翌朝。フラテムが温かい朝食を作ってくれた。
そこら辺適当なシルフィと違って、フラテムは甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。
「あぁ、温まる。相変わらずフラテムは料理上手だよね」
「シルフィとアルフの事だから、干し肉やドライフルーツしか食べていなかったのでしょう?」
一応イシトウォーリの町で草の瓶詰めを買ったんだけどなぁ。
どうやらフラテムは自分で食材を持って来たらしく、城で食べていた様な朝食を再現してくれている。
「一応、草料理とかも食べてたんだよ。草の瓶詰めも買ったし」
俺はトーストを齧りながらアピールしてみる。
「まぁ、アルフが草の瓶詰めを?少し前までは野菜は嫌いだもんなんて言っていたのに、成長したのですね」
少し前って、それは俺が子供の時……まぁ精霊からしたら10年前とかは、つい最近て感覚なんだろうけど。
「ねぇフラテム、久しぶりにあれやってくれないかな?」
なんとなく子供の頃を思い出し、当時よくやって貰っていた火の玉で動物を表現するやつをおねだりした。
「まぁまぁ、アルフは本当に好きなのね」
クスと笑ったフラテムが幾つも火の玉を作り、馬や熊を象どっていく。俺の魔力が減ったからフラテムも母上に召喚された訳じゃないのか。朝食を食べ終えてもしばらく見ていたら、ふと気になった。
「フラテム、そんなに沢山の火の玉を操るには何かコツでもあるの?」
俺も卵で攻撃するならより多くを操れた方がいいだろう。
そんな考えもフラテムに伝えると、「慣れですよ」と言い切られ今浮かんでいる火の玉を全部卵にさせられた。
俺の魔力使ってフラテムが火の玉を作ったんだからミステリーエッグの対象外かと思ったけど、どうやら精霊が魔法を人の為に使うと消費した魔力をその人から吸収して回復させるという仕組みらしく、問題無く卵になった。
だから、今日俺はミステリーエッグを維持したまま過ごす事になってしまったよ。
全部で50個はあるんじゃないかな。幸い卵の大きさは小さめの物ばかりだから視界の妨げには……なるか。卵には柄もあるから目がチカチカする。
そういえばジル姉様が、フラテムに魔法指南をお願いするとスパルタだって言ってたなぁ。
俺は不安定に浮かんでいる卵をなんとか背後に固めて維持する。
「でもこれじゃあ俺の姿を誤魔化せないよ。魔法は全部卵になっちゃうんだから」
移動しない訳にはいかないから、俺は淡い期待を込めながらフラテムに聞いてみた。
「これを被れば問題ないでしょう?」
そう言ってフラテムはセイアッド帝国で見合いした時のお土産に貰った被り物を手渡してきた。それは可愛くデフォルメされた兎の被り物で、何故かピンクに色付けされている。おぉフラテム、獣人とエルフの国でこれを被れと言うのか。
こうして俺が余計な事を言ったせいで、悪趣味な人形――シップル命名の――を片手に、可愛らしい兎の被り物をした不審者が大量の卵を浮かべながら1人歩くというシュールな絵面が出来上がってしまった。
街道で擦れ違う人は皆、俺から距離を取っていく。当たり前だ。途中で馬車に乗ったキャリンと麒麟獣人に追い抜かれた。
「ちょっと、見すぎよカミル。あんなのに絡まれたら堪ったもんじゃないわ」
キャリンはそう言うと麒麟獣人の首を強引に前へ捻り、馬車の速度を上げて行ってしまったのだ。
また、体力強化が出来ないがお陰で休憩を挟みながら懸命に歩く羽目に。たまにフラテムから卵を激しく操作するよう言われたり、近寄ってきた魔物を卵でボコボコにしたりした。
シルフィが言っていた通り、十分攻撃に使える。嬉しいんだけど、もう少し数を減らしたいな。これは目立つ。いいんだろうか。
日が沈む頃には、魔物に攻撃をした際に壊れたり、操作を誤って卵同士をぶつけて割れてしまったりと卵はだいぶ数を減らしていた。これくらいなら、ぎこちないけど思い通りに動かせるようになってきたな。
そして、夕飯を食べ終わり卵を孵化させているとフラテムが然も決定事項という雰囲気で伝えてきた。
「明日は感情に合わせて卵を動かしてみましょうね。積極的に人に話しかけるのですよ」
と。
正気かフラテム。俺は心底今朝の発言を後悔した。
~入手情報~
【名 称】トースト
【分 類】過剰腹持ち食品
【属 性】植物/聖光/火
【希 少】☆
【価 格】クランバイア木貨50枚
【効 果】
フラテムがこんがり焼き上げたトースト。
実は城の食糧倉からロポリスがガメて来たものだが、フラテムはそうとは知らずアルフの為に持ってきた。聖光と火の魔力を帯びている。食べると魔力を大幅に消費するまで空腹にならないが、血糖値が爆上がりするちょっと怖い効果もある。
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【名 称】兎の被り物
【分 類】下級翻訳具
【属 性】風
【希 少】☆☆☆
【価 格】セイアッド銀貨1枚
【効 果】
セイアッド帝国で一時期流行していた兎の被り物。
可愛らしくデフォルメされた兎が舌をペロッっと出している。ピンと天に伸びた耳だけは妙にリアルな作りになっている。また、熟練の職人が手掛けた物であり、通気性や肌触りはとても素晴らしい。絶版であり入手は困難。被っている間は兎の言葉が半分ていど理解できるようになる。




