1話 秘密の特訓
後書き修正
今日もこっそり魔法の特訓に励む。
午前中は王族に必要な座学、昼からは魔法の特訓というのが俺の日課だ。魔法の特訓は1日も欠かしたことがない。
昼食はSSレア食材フレアドラゴンのステーキだった。
隣国で約400年ぶりにフレアドラゴンの討伐が成されたらしく、俺は父上に頼み込んで買ってもらったんだ。
食べると数日間、火属性の魔法が使えるという素晴らしい食材で、運が良ければ火系のスキルも取得できるらしい。
もし、今日魔法が発動したなら記念すべき火になるだろう、いや日か、ふふふ。
「*****プチファイア!」
…………
「*****プチファイア!!」
「*****プチファイア!!!」
「*****プチファイアーーーー!!!!」
……………………
魔法が発動しない。
やっぱり駄目なのか……。
魔力操作や魔法のイメージは完璧だし、基礎魔法にはさして必要ない詠唱だってちゃんとしてるのにウンともスンともいわない。
魔法のイメージは物心ついた時から何万回も何千万回も繰り返してる。
魔力操作だって自信がある。俺は生後1ヵ月頃には上級魔法使い並みのことを軽々とこなしていたらしい。
歩くよりも喋るよりも早くから体得していた魔力操作、今では父上や母上よりも巧いと自負している……体内循環の方は、だけど。
魔力操作は大きく別けて2種類ある。『体内循環』と『体外循環』だ。
体内循環は身体の内部隅々まで魔力を張り巡らせること。これがスムーズにできないと魔法が安定せず暴発したり威力や効果にムラが出てくる。できないと魔法が発動しない。
体外循環は触れた物にも魔力を循環させ強化するること。単純な魔力だけの障壁なんかも体外循環の応用だったりする。
俺はこの体外循環ができない。でも魔法の発動に体外循環が関係ないのは常識。本当にそうなのか父上や母上にしつこく確認したこともある。
けど魔法を使うときは体内循環しかしてないって言っていたし、実際に見てもそうだった。
念のため上級魔法使いや初心者魔法使いに聞いてもそう言っていた。ついでに基礎魔法しか使えない子供に聞いても同じ答えだった。
俺も魔力の体外循環できてればなぁ。
そしたら魔力は豊富にあるから、武器や魔道具を強化すると結構な威力になると思うんだよ。きっと上級魔法と同等くらいになるはず。もしかしたら特級魔法くらいまでいくかもしれない。
かつては父上も母上も魔力操作の体外循環が最後の希望だと俺に仕込もうとしたけど、俺はどうやってもできなかった。
3年くらい訓練して、俺が魔力の体外循環ができないと確信した父上は、大きくなるまで絶対に身体強化してはならないと契約魔法を使ってまで禁じた。
なぜなら自分の魔力による身体強化は体内循環と体外循環の会わせ技で、筋肉や内臓等の強化と体表を魔力で覆い防御も強化するって技術なんだ。
体内の強化だけだと酷い目にあうからね。
もし体内だけを強化した状態で強い衝撃を受けると、魔力で覆われていない体表を衝撃が伝っていき全身の皮膚表面が吹っ飛ぶ。
体外循環できる人は皮膚が吹っ飛んで剥き出しになった部分が身体の外側、つまり体表で結果的に防御を強化していることになって、衝撃のほとんどは受け流されるか弾かれる。
まぁ、体外循環できる人なら体内強化だけってことはほとんどしないだろうけど。
でも俺みたいに体外循環できない者の場合、皮膚のすぐ下にある魔力は体外に晒されると一瞬で魔素という魔力の素になってしまう。
風船の中に魔素の詰まった風船がいくつも層を作ってる状態みたいなもんかな。
で、皮膚表面が吹っ飛び剥き出しになった部分は魔力で覆えないから衝撃は弾かれずに、身体が外側から少しずつ順番に飛び散っていく。しかも受けた衝撃に魔力が付加されていた場合は最悪なんだ。
衝撃が体内に進むほど身体の周囲の魔素濃度が高くなり、受けるダメージも高くなっていくんだ。とある魔法研究家の魔法書には、初級魔法が中級魔法くらいの威力になったと記してあった。一体どうやって検証したんだろうか……怖っ。
それと身体強化は素早さもにも関係してくる。俺は本気出せばかなり速いはずだ。
ただ本気で動いた場合、身体強化していないと何かにぶつかったとたんグシャッ!
仮に身体強化していても俺は体内しかできないからやっぱり身体は飛散……もしかしたら、周りの人には何かが突然やって来て急に爆発したように見えるかもしれないよなぁ。
高速になればなるほどちょっとした衝撃で大ダメージだから小石や落ち葉ですら危険なんだよ。つまりせっかく素早さのステータスも高いのに全然活かせない、悲しい。
……っと、脱線してきてるな。
とにかく、今日ではっきりしたのはSSレア食材も俺には効果が無かったってこと。
まぁ、母上が召喚してくれたすんごい精霊にお願いしても効果が無かったんだから不思議じゃないか。
とはいえ、期待してなかった訳じゃないからもうヤル気が出てこない。ちょっと気分転換に場所を変えよう。
俺は項垂れ秘密の特訓場所から出ていくことにした。
~入手情報~
【名前】アルフレッド・ジール・クランバイア
【種族】人間
【年齢】15歳
【レベル】6
【体 力】30
【攻撃力】7
【防御力】3
【素早さ】4600
【精神力】1
【魔 力】60000
【通常スキル】無し
【固有スキル】無し
【先天属性】無し
【適正魔法】無し
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【種族名】フレアドラゴン
【形 状】巨体ドラゴン型
【食 用】可
【危険度】SS
【進化率】☆☆☆
【変異率】☆☆☆☆☆
【魔力結晶体】全個体に有り
【棲息地情報】火山地帯の洞窟深部やマグマの中と推察
【先天属性】必発『火』 /偶発『闇・雷・風・光』
【魔法属性】必発『火・風・雷』/偶発『闇・光』
【魔物図鑑抜粋】
超大型のドラゴン。
普段は火山地帯の洞窟の深部やマグマの中で眠っており出会す事はまず無い。最低でも300メートル超す巨体で、凄絶な火魔法や高威力のブレスをこれでもかと使用してくる危険極まりない魔物。また、余りにも高温な身体は近付く者を蒸発させてしまう。故にフレアドラゴンの物理攻撃をただ防ぐなどという選択肢は無く、大幅な距離を取って回避するか特級氷魔法等で熱をどうにかしなくてはならない。一定以上のダメージを受けると、激甚な威力を誇る特殊魔法を使用してくるらしい。空腹になると、他種族の若い雄を好んで食す習性がある。
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【名 称】プチファイア
【分 類】基礎魔法
【効 果】☆
【詠 唱】不要またはラフテム型基礎言語/乱文可
【現 象】
指先に小さな火を灯らせることができる。
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【基礎魔法】
極めて小規模な魔法。
ステータスに存在する適正魔法欄に、何かしらの魔法があれば誰でも使用できる。通常は詠唱不要である。