22話 死んで欲しいって言われても
後書き修正
母上や精霊達と宴会をした翌日の昼過ぎ、俺は勇者に叩き起こされた。
勇者が何か言ってるけど、二日酔いで苦しくて適当に返事をしていたらピュリファイという固有スキルを使ってくれた。
おぉ、あの苦しさと気持ち悪さが一瞬で消えた。
素晴らしい固有スキルじゃないか!
お礼を言おうとしたけど遮られ、突然俺に死んで欲しいと言ってきた。
「え、何言って……」
「第15王子コルキスがヒストリアという固有スキルを持っている。これは鑑定の上位互換で、物や生き物の歴史まで見ることが出来ると国王から教えられた。俺も今朝コルキスを鑑定したが、確かに言う通りだった。つまり、お前の固有スキルを隠し通せない、わかるな?」
「う、うん」
コルキスの奴、レアな影魔法を使うだけじゃなくそんな固有スキルまで持ってたのか。
今は父上が手を打って、早朝にコルキスを母の実家に行かせたらしい。ただし、1ヶ月で戻ってくる。
コルキスは何を考えているか分からない弟だけど、自分の母にはべったりだから俺の事に気付いたらきっとすぐチクるな。
そしてコルキスの母、メファイザ義母上が知ったなら絶対に拡散させるだろう。
王家と自分に利があるなら何事も躊躇しない人だから。他の義母上達と手を結んで俺を決して逃がさないはずだ。
義母上達は強い。戦い的にも、権力的にも。
勿論母上も強いけど、流石に他の義母上が結束したら厳しと思う。
クランバイアの十王妃といえば、その全員が小国の軍隊に匹敵すると恐れられている。
圧倒的な実力は、数の暴力とさえ渡り合える。
俺は母上と義母上達が争っているのを想像して寒気を覚えた。
「……それは分かるけど、俺はまだ死にたくないよ」
当たり前だ、やっとこれからの希望が見えてきたのに。
そもそも俺はまだ15歳なんだ、死ぬには早すぎるだろ。
「あぁ、もっともだな。だから表向きには死んだ事にするんだ。そして俺が知る中で最も安全な国で暮らす。そこならお前が固有スキルをこっそり使っても大きな問題にはならない」
そんな国があるならわざわざ死んだ事はにしなくても――いや、駄目か。こんなんでも俺は王子だもんな。
「一応聞くけど、母上やジル姉様も一緒になんて事は……」
「あるわけないだろ。ただし、1年くらいしたら少しずつ連絡を取れるようにはしてやれる」
そう言って勇者は安心させるように小さく笑った。
「そっか。昨日、帰りの馬車で話してくれたミステリーエッグの危険性はよく理解してる。ただもうちょっとだけ、コルキスが帰ってくる迄はここにいたいよ」
「それは国王の考え次第だ。あとはジール様をどうやって納得させるかだが」
「それは俺がするよ」
「悪いな、助かる。じゃあ、俺は国王にアルフがいつまでいていいか聞いてくる」
勇者は静かに立ち上がって行ってしまった。
俺は少しだけ泣いた後、着替えを済ませ母上の所へ向かった。
部屋を出る時、昨日ドロップした感じの悪い人形を撫でたけど、物凄く不快な表情をされただけだった。
結局俺はコルキスが戻ってくる1週間前まで生きていて良い事になった。
少し時間がかかったけど、母上も渋々納得してくれた。
どうやって死を偽装するかは聞かされていない。ただ、死の女神アニタの指輪を犠牲にしたいと勇者が許可を求めてきた。
俺には必要ないから全く問題無い。
短い間だけど俺は日記を書くことにした。1年間、何度も読み返す為に。
それと念の為、最初の2日間は勇者が城にいる全ての人を鑑定し、鑑定に類似するスキルや魔法を持っていない調べてくれた。
結果、当たり前だけど誰も持っていなかったけど。
そうそう有るもんじゃなないんだよな、コルキスが幸運過ぎるんだよ。まぁ、俺にとっては不幸だったけども。
「アーシャやクライスを見て思ってたんだが、この城にいるメイドや執事は本当に強い奴等ばっかりだな」
なんて勇者が漏らしていた。
3日目からは母上や精霊達、ジル姉様とたくさん過ごした。
1回だけ知らない精霊が交じってたけど、ロポリスやラズマが親しげに話していたから特に気にせず卵を作ってあげた。
良い物が出たからお礼よって頬っぺにキスされた時は少しドキドキしたな。
そうして気付けば、俺の生活は今までで1番楽しいものになっていた。
しかし、そんな日々はあっさり終わりを告る。
コルキスが予定より2週間も早く帰って来たのだ。
たまたま夜空を見る為、外を飛んでいたヴァロミシアが気が付き、ヴァロが慌てて知らせに来た。
片割れのミシアは勇者の方へ知らせに行ったらしい。一緒にいたモーブは母上に知らせに行くと姿を消した。
とりあえず俺は勇者の所へ行った方がいいかな。
それにしてもこんな遅くに帰ってくるなんて、眠気が一気に吹き飛んだじゃないか。
部屋を出てを歩いていると、不意に中庭に植えられた竜胆の花が目に入り俺は足を止めた。
竜胆の花は閉じているけど、月明かりに照らされながら風に揺れている。
いつもそこかしこにあって普段、気にする事はなかったけど、この花もドリアードが手入れしてるんだよな。
あ、あそこにある噴水はアクネアとティザーが作ってくれたんだっけ。
暑い日はヴァロミシアが氷を作ってくれたし、寒い日はフラテムが暖めてくれた。
あの木陰でよくシルフィが筋トレに付き合ってくれたっけな。
あぁ、ロポリスはあのベンチでだらけてたなぁ、いつも表情だけは真面目でさ。
モーブはいっつも愚痴を聞いてくれたよな。俺が泣くと俺の周りを暗くしてくれた。たまに首から上だけっていう悪戯も。
そういやあっちのベンチでラズマに押し倒されたんだよなぁ、あれは怖かった。
今はジンジル兄上とパラミス兄上、それにゴードン兄上の3人が楽しそうにお酒を飲んでいる。
俺にも同い年の兄弟がいたらもっと違う感じだったのかな……
なんて思い出に浸っていたら、俺を見つけた3人が空き瓶を投げてきたのでヴァロに守ってもらいながら足早に竜胆の離宮から離れた。
竜胆の離宮を出ると、ヴァロは父上にもに知らせなきゃと姿を消した。
そして来客用の離宮へ続く廊下に差し掛かった時、後ろからさっきの3人が追いかけてきた。
生意気に睨んでんじゃねぇとか、無能の癖に夜遊びかとか言ってくる。
と、ゴードン兄上が土魔法で俺に足枷をつけた。そのせいで俺はすっ転んでしまった。
そんな俺を見てゲラゲラ笑っている兄上達の声を聞いたのか、こんな時間に何事だとメイドや執事達がやってきた。
「アルフレッド様!!」
俺を見たアーシャが走ってこっちに向かってくる。
立ち上がろうとしていると、俺以外の皆が突然何かに吹き飛ばされた。
「いやぁぁ」
「うぅぅ」
「痛い……」
かなり強いはずのメイドや執事達が血を流して倒れている。
兄上達も同様で、特にパラミス兄上は足がダメな方に曲がっている。
「いったい何が……」
ゴードン兄上は気絶したのか、足枷が消える。
俺はアーシャの所へ行こうと走り出したその時、何故か世界が角度を変えながらゆっくり上に上がっていった。
「イヤァァァァァァ、アルフレッド様ぁぁぁぁぁ!!!!」
「うわぁぁぁぁぁ!!」
どうしたんだろう、アーシャが凄く叫んでるな。他のメイドや執事も絶叫している。
1番近くにいるジンジル兄様は目を見開いて俺を見下ろしてくる。
あ、なんか頭がスーっとする。
なのに首は温かい、なんだこれ。
それにまた眠たくなってきたな、まぁ夜だ……し……
「勇者ぁぁぁぁぁ貴様ぁぁぁぁ!!」
不思議とぼんやりする視界で、アーシャが魔法拳を発動して叫んでいるのが見えた。
~入手情報~
【名前】コルキス・ウィルベオ・クランバイア
【種族】ヴァンパイアハーフ
【職業】王子
【年齢】8歳
【レベル】27
【体 力】170
【攻撃力】411
【防御力】457
【素早さ】466
【精神力】44
【魔 力】2319
【スキル】
消費魔力減少/影魔法威力増/体術/我儘
【固有スキル】
吸血/霧化/飛行/癇癪/長寿/不完全変身/聖光被ダメージ増/ヒストリア
【先天属性】影
【適正魔法】影魔法-上級
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【名 称】ヒストリア
【発 現】コルキス・ウィルベオ・クランバイア
【属 性】影
【分 類】過去視型/固有スキル
【希 少】☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【効 果】
目に見える全てのものを鑑定でき、少量の魔力を消費すれば、それが辿ってきた歴史をも知ることができる。ただし、例外を除き遥か格上の存在については効力を発揮しない。鑑定という非常に珍しい能力の上位互換であり、このような能力を持っているのは極めて稀である。
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【名 称】ピュリファイ
【発 現】音村奏汰
【属 性】不明
【分 類】仮面型/固有スキル
【希 少】☆☆☆☆☆☆
【効 果】
対象の物を何でも浄化することができる。また、その効果範囲は毒や呪い等も含まれ多岐にわたる。対象の何を浄化するかはソウタが選択できる。
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【名 称】ティザーとアクネアの噴水
【分 類】水玉のほまれ
【属 性】土/水
【希 少】☆☆☆☆☆☆☆
【効 果】
土と水の特級精霊が作り上げた特別な噴水であり、この噴水の水を浴びれば美容効果がある。また、噴水本体に触れると魔力が75%回復する。しかし、ジール・クランバイアの血を受け継ぐ者にしか効果は発揮されない。
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【名 称】シルフィの木陰
【分 類】風闇の樹力
【属 性】風/闇
【希 少】☆☆☆☆☆☆☆☆
【効 果】
木、風の特級精霊と闇の大精霊が作り上げた特別な木陰であり、いつでも心地よい風が吹いていいる。風には疲労軽減の効果がある。しかし、ジール・クランバイアの血を受け継ぐ者にしか効果は発揮されない。
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【名 称】ロポリスのベンチ
【分 類】輝く堕落の恩恵
【属 性】聖光
【希 少】☆☆☆☆☆☆☆☆
【価 格】
【効 果】
聖光の大精霊ロポリスが作り上げた特別なベンチであり、ベンチに触れている間は周囲の影響を全く受けなくなる。また、ベンチに触れると絶大なリラックス効果がもたらさせる。しかし、ジール・クランバイアの血を受け継ぐ者とロポリスにしか効果は発揮されない。
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【名 称】ラズマのベンチ
【分 類】三つ巴の癒し
【属 性】雷/火/氷
【希 少】☆☆☆☆☆☆☆
【効 果】
雷と火と氷の特級精霊が作り上げた特別なベンチであり、座った者は目に写る全てに対し、激しい情熱と痺れるような感動を覚えるが数秒で我に返る。また、軽い怪我を全快させる効果もある。しかし、ジール・クランバイアの血を受け継ぐ者とラズマにしか効果は発揮されない。
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【名 称】祝福されし竜胆
【分 類】大精霊花
【属 性】聖光/闇/植物/火/雷/氷/水/風/土
【希 少】☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【効 果】
ジール・クランバイアが契約している特級精霊と大精霊が産み出した特別な竜胆であり、竜胆の離宮のみに存在、常に花を咲かせている。非常に美しく、青、白、紫の花は見るだけで永続的なステータス値微増の効果がある。また、無色透明な物もあり、こちらはジール・クランバイアの血を受け継ぐ者にしか見えないが、魔法熟練度等が増加する。
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【竜胆の離宮】
王子や王女、そして彼ら専属のメイドや執事が住まう離宮。
回廊になっており、広い中庭は王子や王女らの憩いの場となっている。また、様々な場所に竜胆が植わっており、離宮もそれに合わせた色合いとなっている。
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【空き瓶】
同い年の王子達が飲んでいたお酒の空き瓶。
中身は非常に酒精が強いく美味なお酒で、値段も非常にお高い。数日前、国王が第5王子ジンジルにプレゼントしたという。
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【クランバイアの十王妃】
クランバイア魔法王国の国王アルフレッド・デロス・クランバイアの妃たち。若き日のアルフレッド王は異常なモテ男であった。彼は愛する女性を身分種族問わず受け入れ、結果10人の妃と結ばれ、彼女たちと20人の子を成したとされている。また、当時の彼女たちはいずれも各種族の頂点と言っても過言ではない実力をもっており、クランバイア魔法王国をより強国へと押し上げることとなった。アルフレッド王の寵愛を巡り苛烈な争いを繰り広げた時期もあったが、現在は落ち着いているらしい。




