18話 勇者は本当に大変だ
後書き修正
アルフには何とかするって言ったけど、これはマズい。防御結界の展開が少しずつ間に合わなくなってきている。
次に絶対防御が使えるまであと5分……このままじゃ保たないな。
でも、この5分さえ乗り切れば絶対防御を展開中にフェイトオブブレイブの効果がステータスに反映される。そうすれば皆助かる。
なんとしてもあと5分をどうにかするんだ!!
「うおぉぉぉぉぉっ!! 戻れハウヘト!?」
防御結界をしこたま展開させると同時に、さっきから健気にダンジョンコアに1ダメージずつ攻撃を与えていたハウヘトの剣を手元に呼び戻した。
こいつの機嫌が滅茶苦茶悪くなるし、代償がキツイからやりたくはなかったんだけど、そんなこと今は言ってられない。
「永遠に等しき長き時を刻む椰子、其が司りし無限よ、遠き地より我を導きたもう、浅く目覚めよオグドアドハウヘト・オグドアドヘフ!」
ハウヘトの剣が揺らめきながら2本に別れる。
そして黒い輝きを放ちながら変形し俺の両腕に絡み付く。
ぐぅっ……凄まじい力がハウヘトの剣から流れ込んでくる。全身を駆け巡る力が耐え難い痛みをもたらす。と、同時に世界が動きを止めた。俺だけがこの空間から切り離されたかのような感覚に恐怖を覚える。
だが、これでいい。これで助かる……
俺のスキルは時間の制約を受けるものが多い。
なんとも不便だが、この世界に召喚される前にいた世界で時間に厳しく生活していたせいだと言われた。その代わり、効果や威力は絶大だ。
しかし、俺はその制約をなんとかしたかった。レベルが上がるほどその不便さが顕著になってきたからだ。
もしもの時に対処できないかもしれない。それがどうしても嫌だった。
俺を召喚した張本人であり師匠でもあるアイツに相談した結果、嫌々ながらこのハウヘトの剣の存在を教えてくれた。
時間という概念が神格化された2柱の力。
あるいは滅びの後に目覚める8柱のうちの2柱の力。
苦しみ抜いた果てに手に入れたその剣は、その神力で俺の中に流れる時間を一瞬で進める。いや、削り取る。代償は削り取った時間3000倍の長さの命。
だから……
「これで絶対防御が使える!!」
さっき展開した防御結界とこの絶対防御があればイケる。
あと1分でフェイトオブブレイブで俺も強化される。
よし! よしっ!!
ダンジョンコアは相変わらずの猛攻だが、俺が強化されればダンジョンコアの動きを止めることができるはずだ。なんなら封印できるかもしれない。
あと30秒……最初と同じヤバ過ぎる攻撃で防御結界が全部壊された。
あと20秒……今のうちにポーションで色々回復しておこう。
あと10秒……アルフとジルに全力で防御結界をかけよう。
あと5秒……もう1度回復だ。時間がきたら速やかにダンジョンコアを制圧する。
4……3……2……
「ごめーん!! 終わったーーー!!」
いざ反撃だと意気込んでいたら、後ろからジルの叫び声が。
ダンジョンコアも攻撃をピタリと止めた。
俺は絶対防御を維持したまま、アナザーアイの魔法で後方のジルの様子を伺う。ダンジョンコアからも目を離さない。
「思ったより時間かかっちゃった。てへ」
おどけた様子でジルが近付いてくる。前方のダンジョンコアもまた近付いてくる。
戦闘が終わったせいでフェイトオブブレイブも停止してしまった。
最悪なことにジルは絶対防御の内側にいる。もし、これが罠だったら……
さっきとはうってかわって、静寂に包まれた地下4階。
俺は、冷や汗の垂れる音が聞こえた様な気がした。
~入手情報~
【名 称】アナザーアイ
【分 類】勇者魔法
【効 果】☆☆☆
【詠 唱】不要
【現 象】
自分の周囲に魔力で目を作り出す魔法。不可視の目にすることもできるが、消費魔力が跳ね上がる。また、魔力さえあれば何個でも作り出せる。
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【結界】
防御壁や障壁より上位の防御方法。
魔力のみで作る結界と「術」という魔力+何かで作る結界がある。どちらも強固な守りを発揮するが、一般的に術の方が汎用性が高いと言われている。




