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186話 日向ぼっこしよう

本文修正。

 どうしよう。家に集まった人たちは100%苦情を言いに来たに違いない。


 でも怒られるのは嫌だ。しかし逃げようにも面が割れてるからどうしようもない。ああ、誰もが一目で釘付けになるこの眉目秀麗さが今は悔やまれる。


『ふんふふ~ん♪ ねぇねぇアリュフ様。怒りゃりぇたくないなりゃアドイードが解決してあげりゅよ?』


 愉快な鼻歌の合間にしてきたアドイード提案だが、俺はアドイードの解決方法が除草(・・)だと理解したので却下した。


『そうかなぁ~。良い案だと思うけどなぁ~』


 暢気なアドイードは一先ず置いておこう。どうすれば最低限のお叱りで切り抜けられるだろうか。パトロンケイプか逃げられてホッとするかと思ったのにこれじゃあ、あそこにいた方がましだった。


『ほぁっ!? ア、アドイード……役に立たなかた……?』


 げ、アドイードが落ち込んでしまった。な、なんだこの地獄のような愛しさと切なさと心悲しさと……驚愕の罪悪感。悲しくて泣きたくて叫びたくて胸が木っ端微塵になりそうだ。


『げ、元気だせよアドイード。こんなことになるなんて予想できなかっただろ? アドイードは役に立った。絶対にそうだ』


『しくしく……アリュフ様の嘘つき。アドイードわかりゅよ。本当はアドイードに頼りゅんじゃなかったって思ってりゅって。アドイードわかりゅもんぅぅぅ……しくしく』


 おうっ!? 頭をブンブン振り下を向いて泣き出すアドイードが見えた。実際見えたわけじゃないけど頭の中の映像というか、小さなアドイードがとにかく見えた。くぅぅ、尋常じゃない庇護欲が掻き立てられる。なんだこれ。


 だが思考が筒抜けになっている限り、アドイードを慰めるのは不可能だろう。思考が筒抜けってのも良いことばかりじゃないな。


 アドイードは可愛いし好きだ。今度こそ幸せな気持ちにしてやりたいと思っている。だけど今は目の前の騒ぎをどうにかしなくてはいけない。


 ごめんなアドイード。ちょっと放っておくけど、アドイードのことちゃんと大事だと思ってるからな。


『ほわわわ!? アリュフ様がアドイード大好きで世界一大事だって……全存在で1番大好きって思ってりゅ!!』


 そう叫んだかと思うと、さっきとはうって変わってアドイードは嬉しそうに揺れ始めた。それはそれはデレデレした顔で。


 嬉しさに浸って俺の思考が耳に入って……耳? 耳でいいのか? まあとにかく、凄い誇張して捉えたなとか、案外ちょろいのか、という思考はまったく気にしていない様子だ。


 アドイードが喜んでいると分かれば俺も嬉しくなった。気分が少し落ち着いた気がする。すると、やっぱり除草(・・)が手っ取り早く思えてきた。


『ふふふふ~ん♪ふんふふふ~ん♪』


 いや、それどころかアドイードの鼻歌を聞いていると、すべてがどうでもよくなってきた……そうだな、もうテキトーに謝ってやり過ごせばいっか。


 ああ、夕焼けの暖かな日差しが気持ちいいなぁ。なんか知らんがおやつを食べてるような感覚もする。不思議だぁ~なぁ~。


「ふんふふ~ん♪ふふふふ~ん♪」


 いつのまにかアドイードの鼻歌に重ねてメロディーを口ずさむ俺。幸せだなぁ――


『なに暢気に揺れてんのよこの馬鹿!!』


 突然背中に衝撃が走った。


「ちょ、ロポリス様!?」


 ほわぁ……屋根から落ちるとこんな感じなのかぁ。案外風が気持ちいいんだなぁ。


「むぎゅう」


 地面に叩きつけられたのにさほど痛くない。それよりもほわほわした気持ちが持続していて……そうだ、ソファに寝転んで日向ぼっこしよう。絶対気持ちいい。


 目の前でぎゃあぎゃあ喚いてる連中は相当ストレスがたまってるんだろうか。なんて可哀想なんだ。普段から日向ぼっこしてれば、ちょっとゲロに流されたからってイライラしないだろうに。


 決めた。一緒に日向ぼっこしてあげよう。日向ぼっこは最高のあくてぃびてぃだからな。でも屋根の上じゃないから日当たりがなぁ。


 よし、それなら場所を変えよう。うんうん、それがいい。


『「ふんふふ~ん♪」』


「ロポリス様! アルフがご近所さんたちを吸い込んでます!!」


『ああもう面倒臭いわね!! やめなさいアルフ!!』


 んぁ?


 ロポリスの入った人形がバシバシ叩いてくる。そうかそうか。ロポリスも一緒に日向ぼっこしたいんだな。お、ルトルもか。色々言いたいことはあるけど今は忘れてやろう。日向ぼっこに余計な感情を持ち込むのはよくない。


『ちょ、私たちまで吸い込むんじゃ――』


「アルフ!?」


 よ~し、全員吸い込んだな。じゃあ時都ドゥーマで1番夕焼けが綺麗に見える場所、大神殿……は危ないから、夕間暮れ島へ行こう。島の断崖から伸びたクアロニノタス橋もなかなかの景色だかりゃな。

【夕間暮れ島】

夕方にのみ出現する浮遊島。

時都ドゥーマに属する島で、その名の通り日が沈む直前の焼けるような空の色をした島である。その正体は夕焼草という草の色で、実際の夕日に照らされ、絶え間なく吹きすさぶ風に揺れる様は筆舌に尽くしがたい美しさである。アルフお気に入りの神域。本来、一般人が立ち入ることは不可能である。


【クアロニノタス橋】

夕間暮れ島に出現する石橋。

その日の夕方が作る最も美しい景色が維持される僅かな時間のみ、夕日に向かって出現する。日によって形状は変化するが、いついかなる時も橋は空の途中で途切れている。また、夕焼蔓(ゆうやけかずら)という茜色の蔓草が装飾を思わせるように繁茂しており、その神秘的な美しさから世界百景の1つに数えられている。

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