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16話 勇者が大変そうだ

後書き修正

 さっきから変な唸り声を上げながら雷や大きな雹を俺の周りに落としたり、強風や吹雪を起こす人がいる。


 雷が眩しくて目を細めながら見ると、ミラ兄様っぽい人が見えた。


 ちゃんと全部が俺を避けていくから今日は怖がらせたいだけなんだろうなぁ。


「アルフ起きたか! そこから動くなよ、あと固有スキルも使うな!」


 ぼんやり考えてたら勇者の切羽詰まった声が聞こえてきた。


「え……?」


 どうやら俺は寝転がってたみたいだ。


 身体を起こして周りをよく確認してみると、ジル姉様が大きな椅子に座って寝てるし、そこらじゅうが地獄たいな光景になってた。


 鋭い氷の塊や火の塊が飛び交ってるかと思えば風の刃や水の刃が飛んでくるし、地面から雷が飛び出してきたりぶっとい木の根や枝が四方八方から襲ってくる。


「ななななにこれ、どうなってるの!?」


「このダンジョン、ボスはいなかったけどラスボスっぽいのがいたみたいだ!」


 どゆこと?


 あとラスボスって何?


「とにかく、俺が何とかするからじっとしてろ。分かってる思うけど、防御結界が卵がになったら即死だからな! あと絶対にジルを起こすなよ!」


 俺はジル姉様が使ったパープルノヴァの大爆発に巻き込まれて意識を失ってたんだろうけど 、いったい何がどうなってるの!?







 ##########







 入り口と通路に立ってた動く木像を倒して戻ったら、ジルがパープルノヴァを攻撃型で発動させていた。


 攻撃型だとリスクが高すぎるから、自分より強い仲間が近くにいるときか、一か八かのときにしか絶対使わないと言っていたのに。


 しかも文字通り命綱のロープだって防御結界や防御壁が作れないと空中に引っ張られて爆発に巻き込まれるだけだ。


 アルフがいるのにあり得ない。


 爆発前に何とかギリギリでアルフに遠距離防御結界をかけられたからよかったものの、少しでも遅かったらアルフ死んでたな。





 最初に違和感を覚えたのは動く銅像事件を茶化したときだ。


 一緒に旅をしてたときのあの事を掘じくり返すと、いつもは真っ赤になって騒ぐのにさっきは俺を軽く睨んだだけだった。


 巨木へ近寄る途中にも言ってみたけど「もう止めてよ」しか言わなかった。

あんなに恥ずかしい事件だったのにだ。


 次はうるうるウールを俺の物にしたいと言ったとき。


 ジルはうるうるウールをあればある分だけ死に物狂いで確保しようとするのに、あっさり俺の物でいいと承諾した。


 まぁ弟の前ではカッコいい姉さんを演じたいのかと思ってたが、それが間違いだったか。



「ジル、大丈夫か?」


 俺はジルを鑑定しながら聞いた。予想通り何かに操られている状態だった。


 ダンジョンで単独行動させ過ぎたか……産まれたてだからって俺も油断してたな。


「えぇ、なんとか。像がアルフを殺そうとしたからパープルノヴァを使ったのよ。だいぶ体力を使ったから回復してくれないかしら?」


 さして疲れた様子もなくジルが近付いてくる。


「あぁ、それにしても派手にやったな。下手したらアルフも巻き込まれてたんじゃないか?」


「そんなことないわ。きちんとロープを渡してたから」


 操ってるヤツもまぁまぁの鑑定が使えるのか。


 固有スキルは鑑定のレベルがかなり高くないとほとんど情報が読み取れないからな。


 ロープは出せるけど、防御結界や防御壁のことは分からなかったん……いや、違う。この感じはアルフが死のうが生きていようが良かったんだろう。


 それならアルフを助けられたのは幸運だったかもしれない。


「そうか。ならよかった。じゃあ回復させるからな」


 俺は何も気付かない振りをして、ジルの肩に手を置く。回復なんかするわけがない。俺はダークバインドの魔法をかけてジルは目潰しと硬直状態にした。


 とりあえずジルはこれでいい。次はアルフの回復させよう。


 回復魔法かポーションを口移し……いやいや、回復魔法だな。ついでに魔力も回復させとくか。


 こっちは特級マジックポーションじゃないと無理だから、仕方ない仕方ない。


 それにしても、話に聞いていた通りアルフは本当にユウタに似ているな。


 もう少し近くにいてしら――


「ねぇ酷いじゃない。私にも回復魔法をかけてくれないの?」


 なっ!?


 急いで振り返りながら攻撃体勢に移る。ジルがうっすら笑ってやがる。


 俺の魔法がこんな短時間で解除されるなんて操ってるヤツは相当ヤバい。


 2人を守りきれるか……最悪ジルは駄目かもしれない。


「そんなに怖い顔しないでよ、フフッ」


 俺が攻撃するより速くジルが俺とアルフの周りに結界を張った。


 破壊したり強制解除すると爆発するタイプだろう。


 俺もとっさにジルの結界内に俺とアルフを守る防御結界を作る。


「流石ね。判断が的確で素早いわ。しかも結界内に別の結界を作るなんて高等な術で対応するなんて。やっぱり私の期待に応えられそうね」


「何が目的だ?」


 疑問を投げかけると同時に、俺はフリジアランスをジルの後ろに数十個発動し待機させた。


 目に見えず魔力感知もほぼできない強力な風魔法だが、どうするかな。


「ちょっとした取引をしたいのよ。でもその前にその物騒な風魔法を消して下さるかしら? 私も結界は消すから」


「わかった」


 即気付くか。敵は少なくともSランク以上の実力は持ってるな。


「あ、勇者の防御結界はそのままでいいわよ。あった方が安心でしょ?」


 クスクス笑ながらジルが指を鳴らすと床が盛り上がって変型していき豪奢な椅子が生えてきた。


「まさか……こんなことが出来るって、お前ダンジョンマスターか!?」


 ダンジョンの床や壁なんかを変形させられるのはダンジョンマスターかダンジョンコアだけだ。


 くそ……さっき調べたときはダンジョンマスターはいなかったはずなのにどうなってる?


「違うわ、ここにダンジョンマスターはいない。けど、ダンジョンコアが2つあるのよ。珍しいでしょ? そして私はその1つよ」


 ダンジョンコアが2つ!?


 しかもダンジョン外の者に接触してくるダンジョンコアなんて聞いたこがとない。


「色々聞きたいでしょうけど、まず私の条件を言うわ。私はこのダンジョンから出たいの。その為にはもう1つのコアを完全に支配する必要があるわ。それを手伝って。ちなみにもう1つのダンジョンコアは、さっきの動く像を作った分の魔力を回復させてるからしばらく何もしてこないわ」


 椅子に座ったジルが偉そうに言ってくる。


「手伝えばジルを解放するのか?」


「えぇ、解放するわ。ついでにそっちの卵君も何とかしてあげてもいいわよ」


 アルフを?


「どういうことだ?」


「その子、もう1つのコアが同化しようとしてるわよ。既に少しだけ混じって同化できるか試してるみたいだもの。豊富な魔力とその回復力が目当てじゃないかしら」


 同化!?


 ダンジョンコアが人間と同化だと!?


 すぐにアルフを鑑定してみたがそんな情報は読み取れない。


「鑑定したがそんな事にはなってないぞ」


「そりゃ鑑定じゃ分からないわよ、状態異常じゃないもの。過去でも見れるなら別でしょうけど。もう1つのコアがその子に自分を取り込ませる形で同化を試したのよ。そうすればもし拒否反応が出てもコアには問題ないでしょ? 次はその子が取り込まれるわよ」


 どうも信じられない。


「じゃあ、なんでお前には分かるんだ?」


「私達が同じ魔素から発生したダンジョンコアだからよ。卵君の魔力が50000増えて、アイツの魔力が50000減ったのもほぼ同時だったし」


 魔力が50000か。


 確かにアルフのレベルが10になったとき魔力がそれまでより大幅に上昇した。


 それは成長ボーナスみたいな物だと思ってたんだが……


「お前は同化したくないのか? それにさっきの動く像でたちを殺すつもりじゃなかったのか?」


「それは無いわ。私は他の者と同化できないし、ダンジョン内で死んだものを吸収するのは、もう1つのコアの担当だもの。まぁ、言っても信じられないでしょうから私の本体を見せてもいいわ。鑑定したら納得するかしら?」


 ……鑑定か。


 ジルを解放するには、とりあえずダンジョンコアの言う通りにした方が良さそうだな。


「いいだろう」


「じゃあ、そっちに行くわね」


 ダンジョンコアが音を発しながらジルの足元からゆっくり浮かび上がってきた。

~入手情報~


…………。

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