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173話 招待状の差出人

エースの名前をアルフリートに変更。

 パトロンケイプは、最初の部屋で購入した入場券を使って100もある受付から好きなルートを選べる。


 どこから入ってもほとんどの場所を探索できるけど、選んだ受付からでないと行けない場所もないわけではない。


 エリン一家が選んだのは修道院と書かれた受付だった。


「ここから入ると修道士(パトロンモンク)って魔物がたくさんいるんだよ」


「よく仲良さそうに戯れてたりするの、ほんっとにパラダイスみたいな場所なのよ」


「二人とも、はしゃぎたいのは分かるけど修道士以外も出てくるのよ。落ち着きなさい」


 おや?


 唯一、俺とルトルの関係に興味なさそうだったエリンパパのエーカーだけど、どうやらシェリーの口ぶりからして腐った属性持ちなのは妻や娘と同じっぽいぞ。


 受付を通ると、正に修道院という場所にでた。そこは冷たい空気が漂っている灰色を基調とした大きな礼拝堂で、けっこう人がいた。


「いいかい? 改めて確認するけど、僕たちは愛を育んでいる修道士の雰囲気を盛り上げるために演奏するんだ。万が一、修道士に襲われても決して殺してはいけないよ。逃げるんだ。それ以外は皆殺しでいいから」


 全員が受付を通ったあとでキリッとした顔で言ったエーカー。


 さっきまでと全然違う人みたいだ。


「あ、パパは修道士のことになると人が変わるのよ。修道士推しだからね」


 俺の疑問を感じ取ったエリンが教えてくれる。


「あ、そうなんだ……」


 別に知りたくはなかったんだけどな。


「じゃあさっそく、あそこでお祈りしている修道士たちからいくよ」


 エーカーが鼻息荒く進み始めた。


 雪原の輝きのメンバーも武器を手に持ち後に続く。


 え? さっきから人だと思ってたのが修道士なのか……全然魔物っぽくない。どこからどうみても、修道院で生活している人じゃないか。


 種族もいろんなのが交じってて、普通に戦うとなると気が引けるな。


「油断してると背中から心臓を貫かれちゃうよ。ああ見えてAランクの魔物だからね、気を付けなきゃダメだよ」


 そこら辺にいる修道士を見ていたら、コルキスが忠告してきた。


 怖すぎだろ。


「けっこう怖い魔物なんだな……」


 ルトルも若干引いている。


 そうこうしているとエリン一家の準備が整ったらしく、演奏が始まった。


 マジックハープ3台で奏でる曲はどこか物悲しい感じがした。途中から歌も入ってくる。


 近くにいた修道士が集まり、エリン達の演奏に聴き入っている。


『綺麗な曲だね』


 コルキスが感心している。他人を褒めるなんてほぼしないのに珍しい。


 俺も曲は綺麗だとは思う。


 けど、歌はアドイードの方が上手だったなと思ってしまう。訳わかんない歌詞で歌ってたけど、案外ここで歌えばいい結果を残せたんじゃないだろうか。


 ん? よく考えたらコルキスは喋ってない。


『今のはなんだ? アルフ?』


 え、ルトル?


『落ち着いて。これ、パロクペヌタっていうピポルの固有スキルの効果だから。思考が繋がるんだよ』


 コルキスが俺とルトルを見ながら頷く。


『プライベートなことは分からないようになってるから安心していい』


 これはピポルのものだろう。


 他にも色々な言葉? う~ん、ちょっと違う気もするけど、そんなものが頭に続々と浮かんでくる。


『クソッ、コルキス君のことを知れると思ったのに』


 これはダンテのだな。


『俺から100メートル離れると自動的に解除されるから注意しろ』


 ピポルが俺達を見てくる。


『来たぞ、上だ』


 頭に注意を促すものが浮かんできた。ピポルが全員に作戦を伝える。


 皆、できるだけエリン達の演奏を邪魔しないように行動を開始する。


 ただ俺はコルキスに体当たりされて、いきなり戦線離脱することになった。


『ごめん、ぼくと兄様は別行動するね。ルトルとディオスとグルフナは皆のフォロー宜しく!』


『わかった!』


『え、コルキス君!?』


『集中しろダンテ!』


 どうして別行動なんだろうか。とか考えていたらパロクペヌタの範囲から抜けたのだろう、コルキスが声を出して聞いてきた。


「兄様、自分の固有スキルのこと考えないようにできる?」


「ああ、ちょっと無理かも」


「だよね。じゃあ兄様とぼくはあっちに行こう」


 コルキスが俺の手を引いて皆とは逆の方に進み始める。


「くふふ、兄様と2人っきりなんていつぶりかなぁ」


 鞄の中にロポリスとモーブもいるのに……まあ、嬉しそうだからいいか。


 俺はコルキスに連れられて修道院の屋根裏部屋らしき場所を経て鐘楼の天辺まで来た。


「うわ、凄い景色だな」


 外とは時間の流れが違うようで、空が眩しい赤色に染まっている。


「これが夕焼けならもっとよかったのにね。そうそう、ここから見える全部がパトロンケイプなんだよ。ちょっとドゥーマの作りに似てるよね」


 コルキス言うとおり、眼下に広がる景色は、たくさんの建物とそれらを繋ぐ通路が絡みあった迷路のようだった。


『はぁ、やっと身動きとれるわね』


『本当に。あ~、体がバキバキいっているよ』


 鞄からロポリスとモーブが出てきて、わざとらしく柔軟体操を始める。


 人形の体がバキバキってどういうことだよ。


『あのパロクペヌタって便利だけど厄介だね。仲間だと思われたら僕達とも思考が繋がるなんて』


 今日はやけに大人しいと思ってたら、そういうことだったのか。


「で、兄様? ぼくに見せるものがあるよね?」


 コルキスが俺の目線まで浮かび上がって言う。


「見せるもの? 特にないけど……」


『これでしょ。はい、コルキス』


 ロポリスが鞄にしまっていた紙をヒラヒラしてからコルキスに渡す。


「ぼくに隠し事なんてできないんだよ。分かったら今度から隠さず出すように」


 得意気な顔で言うコルキス。


 これはあれだ、宿題をやらずに持って来るの忘れたと言い訳した時のマルニの真似だな。コルキス専属メイドのマルニ……あの怖いお婆ちゃん。


『へぇ、まさかここで皇帝から呼び出しがかかるなんて予想外だね』


 紙を見たモーブが驚いている。


『こっちの動きは把握してるだろうと思ってたけど、どういうつもりかしらね』


 え、皇帝ってあのセイアッド皇帝のオルゲルタ陛下か?


 いったい俺なんかに何の用なんだろう。ていうか――


「生きてるのがバレた!?」


「はぁ。兄様、もっと頭使ってよ。あのクソ勇者がこの帝国に来るよう言ったんでしょ? じゃあ、オルゲルタ陛下が兄様の死が嘘だって知ってるに決まってるよ」


 心底呆れた顔で言うコルキス。


「なんで決まってるんだよ」


「だってクソ勇者はオルゲルタ陛下の皇配だもん。もしかして知らなかったの?」


 なんだって!? 


 そしたら勇者ってとんでもない身分じゃないか。そもそも俺なんかが口を聞いていい相手じゃない……え、大丈夫だったかな俺の態度。


『アルフで遊んじゃ可哀想よコルキス。全部、忘れてるんだから。それも自分の固有スキルで出てきたアイテムを使われて……ププッ、ていうか驚きすぎでしょアルフ』


 ロポリスが馬鹿にしたように笑う。


『ほらほら、今は茜色の魔笛のことはどうすることもできないんだから、皇帝に会うかどうか決めなきゃ』


 なんだなんだ? 詳しく教えてくれよ。俺の記憶ってどういうことだよ。


「その必要はない。アルフはオルゲルタに会うと決まっている」


 不意に男の声が聞こえてきた。


『げっ、何しに来たのよ』


『君の出る幕じゃないんだけどなぁ』


 ロポリスとモーブが凄く嫌そうな顔をする。


「勇者!」


「ミュトリアーレぶりだなアルフ、遅いから迎えに来た。ついでにコルキス、お前の母親には酷い目に合わされたぞ」


 勇者に睨まれたコルキスが真顔になって俺の服を掴む。さっきまであんなに楽しそうだったのに。


『邪魔よ、消えなさい勇者』


「そう怖い声出すなよ。オルゲルタがアルフに会いたがってるんだ。アルフリートの方は別にいいんだが、まだ分離できないんだろ?」


『君の気持ちも分からなくはないけど、ちょっ勝手が過ぎるんじゃないかな? なんなら君を処分してもいいんだよ?』


「できるもんならしてみろよ。それで困るのはお前らの方だろ? それじゃあ行くぞアルフ」


 スッと近付いてきた勇者が俺の手を取ると同時に、空間がぐにゃりと歪む。そしてそれが元に戻ると別の場所、豪華な部屋になっていた。少し離れた場所で女の人が跪いている。


「クソ勇者が時魔法を……」


 何故か一緒に連れて来られたコルキスが驚いたように呟く。


「お久しぶりでございます、アルファド様。久方ぶりにお会いできてこのオルゲルタ、今生の喜びでございます。ですが……余計なモノまで付いて来てしまったようですね」


 そう言って女の人が顔を上げた瞬間、コルキスの頭が吹き飛んだ。


「え?」


 コルキスの血で俺の顔が濡れる。


「さ、ゴミはお捨てになってこちらへ。ささやかですが、お食事を用意しておりますの」


 倒れかかった顔の無いコルキスの体を支えた俺に、立ち上がって優しく微笑んだ女。


 その顔はプフヘネとまったく同じ作りだった。



~~~~~~~~~~


【名前】音村奏汰

【種族】異世界人

【職業】勇者・皇配

【年齢】23歳


【レベル】350

【体 力】32872

【攻撃力】35981

【防御力】50989

【素早さ】27001

【魔 力】92671


【スキル】全攻撃威力増加・被ダメージ軽減・連続攻撃・斬撃数増加・貫通・詠唱破棄・遠隔操作・結界術・体術・剣術


【固有スキル】フェイトオブブレイブ・エターナルペイン・ピュリファイ・スキルブースト・ブラコン・カースチェンジ・時の宝珠・時の剣・成長限界無し・スキル遠隔発動・絶対防御


【先天属性】時

【適正魔法】時魔法・勇者魔法


 //////////


【名前】リリーナ・ロティ・オルゲルタ

【種族】アニタ族

【職業】皇帝

【年齢】123歳


【レベル】303

【体 力】20183

【攻撃力】10982

【防御力】9171

【素早さ】50183

【魔 力】53901


【スキル】権謀術数・統治・威厳・無慈悲


【固有スキル】偽りの仮面・仮面の祈り・仮面の加護・ペルソナクリーチャー・ペルソナエレメント・エンペラーロッド・ネクロラトリー・ネクロシス


【先天属性】死・無

【適正魔法】無魔法・水魔法・雷魔法


~~~~~~~~~~


修道士(パトロンモンク)

パトロンケイプでのみ出現する魔物。

一般の修道士と見分けがつかないAランクの魔物であり、魔法と十字架を使った物理攻撃を仕掛けてくる。基本的に手を出さなければなにもしてこないため、戦いたくなければ素通りすればよい。ただし、どんな行動が手を出したと判断されるかは個体によって様々である。


【アルファド】

アルフの本名。

ジールが父親に内緒でこっそり考えていた名前である。


【アルフリート】

ジールとアルフレッド王の息子。

アルフレッド王の実子にも関わらずミドルネームを持つ唯一の王子。アルフレッド王が最も可愛いいと思う本当の第13王子である。


【偽りの仮面】

リリーナ・ロティ・オルゲルタの固有スキル。

仮面を付けている帝国民のステータスから、先天属性、適正魔法、固有スキルを選びコピー、それらを自在に使用することができる。自分以外にコピーした場合も同様。ただし、その場合はいくつかの固有スキルや、もともとの先天属性などが上書きされてしまう。上書きはコピーを解除すると元に戻る。

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