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172話 皆でお出かけパトロンケイプ

本文ミス修正。

 ロポリスに言われて開催したパーティーは大成功だった。


 急だったにも関わらずエモナさんやシェルをはじめてとした、商業ギルドの職員さんがかなり頑張ってくれた。


 翌日にはテリリ祭なんて名前がつけられ、また来年も楽しみにしてると言われたけど、きっと冗談だろう。それくらい楽しんでもらえたということだ。


 今日はコルキスとルトルと一緒にパトロンケイプへやって来た。


 エリン一家、とくに両親はここで荒稼ぎしているらしく、今日はその護衛だ。


 芸術好きの魔物以外は普通に襲ってくるからな。バトルシンガーは基本的に後衛で仲間を補助する役割だから、そういった魔物からエリン一家を守るわけだ。


 といっても今回はただのお手伝い。雪原の輝きが受注している指名依頼に同行する形になっている。


 パトロンケイプのあるポルテ岬は俺達の住んでいるテリリ地区から魔物鉄道(ドラゴンポポラ)で40分ほど。


 魔石屋とるて駅からパトロンケイプ駅までだ。


 ルギス・テリリ線からドゥーマ中央線を経てポルテ・パトロンケイプ線と2つも路線は変わるけど、乗り換えしないでいいのが嬉しい。乗っているドラゴンが勝手に進んでくれるんだ。


 パトロンケイプ駅の駅長は、第102ドゥーマ公園前駅の駅長のウルムと同じ名前と見た目だった。


 ただ、ここの駅長は新人というプレートを帽子につけていた。


 エリン曰く、各駅に存在する駅長ウルムはそれぞれキャラ分けされているんだとか。


 パトロンケイプ駅のウルムはもうずっと新人で、使えないが可愛くて憎めないという役を演じているらしい。


「ぼくは自力で来れたのに」


 相変わらずドラゴンに怯えていたコルキスが、涙目で抗議してくる。


 ダンテとピポルはデレデレした顔で慰めているけど、止めた方がいい。兄の俺には分かる。そのうち八つ当たりされて酷い目にあうんだと。


 ちなみに俺達は今、パトロンケイプの最初の部屋である、広いロビーで時間を潰している。


 ここで入場券を買わなければ次へ進めないらしい。


 そのため、エリンの父のエーカーが代表でチケット売場の行列に並んでくれている。


 このロビーにはチケット売場の他に、グッズ販売コーナーや飲食物コーナーなどが点在していて、俺達はそういうものを見て回っている。


 基本的に入場券以外は買わなくてもいいけど、一通り見ておいた方がいいんだとか。


 そんな中でも驚いたのは楽器コーナーや画材コーナーといった、芸術関係の道具を売っているコーナーだ。


 どれも信じられないくらい高いが、その全てが魔道具や魔法楽器その他不思議アイテムで、これらのコーナーで買い物をするために訪れる一般人もかなりいるらしい。


 それにこのロビーでは魔物がでない。


「ママ、今日はどんな曲を試すの?」


 店を物色しながらエリンが母のシェリーに聞く。


「実は新作を作ったの。アルフさんとルトルさんが余りにも尊くて。気が付いたら7曲も書いてたのよ」


「やだっ! ママも!? 私も2人をイメージした曲を作ったのよ。甘い曲調のなのに情熱的で激しい部分があって、2人の熱い夜をイメージした大作よ」


 なんとなく耳を傾けていたら知りたくない情報を得てしまった。


 つまり、今日は俺とルトルの曲を何度も聞かされることになるのか……はぁ。


「アルフ、ちょっといいか?」


 俺が少しげんなりしていたらルトルが声をかけてきた。なにやら言いにくそうな雰囲気を醸し出している。


「あの、できればいいんだが、あそこで売ってるアルガっていうのが欲しいんだ。買ってもいいか?」


「え? うん、欲しいならいいんじゃないか? 別に俺に聞かなくても……」


「それはそうなんだが……俺達は婚約してるだろ? これからは色んなことを相談したり話し合っていかなくちゃいけないと思って」


「あ~、なるほど」


 何を買うかって話し合いは重要ってことか。


 えっと、アルガ、アルガ……っと。


「え!?」


 オルゲルタ金貨10万枚!? そりゃ勝手に買うわけにはいかないな。


 ていうか、土地を買ったばかりだしそんな大金ないんじゃ……。


「あ、値段はオルゲル金貨じゃなくて隣のだ」


 隣……あ、そういうことね。


 オルゲルタ金貨10万枚かデニテバルテ金貨1枚で買えるのか。


 しっかし、そんな価値があったのかあの金貨。普通にもらっちゃったけどよかったのかな。あとで改めてお礼を言っておこう。


「アルガってどういうものなんだ?」


「飲むと聖光の魔力を液状にできる。それで弦を作って演奏すると綺麗な音を奏でられるらしい」


 ハープみたいなもんができるのか。


「へぇ~。ルトルってそういうの興味があったんだ。知らなかった」


「……まぁな」


 ルトルが演奏してる姿を見てみたかったし、どんな音がするのか興味があった俺はルトルにデニテバルテ金貨を渡した。


 アルガを買ってきたルトルはさっそく飲んでいる。美味しくはなさそうだ。


「待たせてしまって悪かったね。それじゃあこれを」


 どんな音か聞かせてもらおうと思ったら、エーカーが戻ってきた。全員に入場券と冊子を手渡していく。


「この冊子はパンフレットと呼ばれていて、パトロンケイプではかなり重要なアイテムなんだ」


 エーカーの説明はこう。


 パンフレットには、魔物の情報、コンペティションが起こった場合の課題と審査基準、それの賞金額と副賞のアイテム、といった内容等が事細かに記載されているらしい。


 なんと1冊オルゲルタ金貨11枚。


「このレッスン生募集ってなんだ?」


 マーティが質問する。


「希望すれば魔物がレッスンしてくれるんだよ。僕の場合だと、希望すればハープと歌のね。しかもとんでもなく上手な魔物に。滅多に起きないレア現象だけどね」


 そのまんまなんだな。


「魔物にもよるけど、イラつかせるとあっという間に食い殺されるから注意が必要なのよ」


 全然そのままじゃなかった。すっごい怖いじゃないか。


 俺はレッスンが始まったら絶対希望しなでおこう。そもそも芸術関係はあまり得意じゃない――


「おいコルキス。なんでお絵かきセットなんか持ってるんだよ」


 いつの間にか涙目からいつもコルキスに戻っていて、質問した俺をちょっと生意気そうな顔で見てくる。


「だってぼく、絵が上手だもん。きっとぼくの絵を見せたらアイテムがもらえるよ。クランバイア白金貨1枚なんてすぐ取り戻せる」


 買ったのか!?


 そんな子供しか使わないちゃちなお絵かきセットがクランバイア白金貨1枚とか……う、ちょっと目眩がしてきた。


 これは今夜にでもミステリーエッグで卵を作って、明日にアイテムを売り捌かなくては。それも大量に。


「あと、ミラ兄様にも絵の具を買ってあげたよ。こっちはクランバイア白金貨5枚だったかな。今度会ったらあげるんだ」


 ああああ……散財しすぎだ。


 ミラ兄上は固有スキルを使えば自分で絵の具を量産できるんだから必要ないだろ。


 俺からしたらあり得ない愚行に思える。


「うっは、凄いな。そんな大金をポンと払えるなんて、さすがにジュエルランク商人の弟だ」


 ピポルがやや引きつった顔で近付いて来た。


「まあね」


 コルキスは素っ気ない返事をして、買ったばかりのお絵かきセットで絵を描き始めた。


 と、そこへ1枚の紙が飛んできた。


「なんだこれ」


 《招待状:特別室》


 紙にはそう書いてあり、ご丁寧に地図まで記してある。


「それじゃあ行こうか」


 エーカーの呼びかけで、次の部屋へ移動することになった。


 俺は紙を鞄に入れ皆に付いていった。


【チケット売場】

パトロンケイプの最初の部屋にある販売所。

入場券とパンフレットを販売している。値段は毎日変動するが、入場券が高い日ほど魔物が差し出すアイテムが良いものになるらしい。稀に入場券以外の券を販売している時がある。


【グッズ販売コーナー】

パトロンケイプの最初の部屋にあるグッズ売場。

毎日商品が入れ替わる。パトロンケイプに現れる魔物のグッズが販売されており、本物そっくりのもの、デフォルトされたもの、その他オリジナル商品も多い。たまに魔物の素材が売られている。


【飲食物コーナー】

パトロンケイプの最初の部屋にある飲食物売場。

毎日商品が入れ替わる。飲んだり食べたりすると、音感が良くなる代わりに攻撃力が下がるなど、様々な永続的効果が現れる。パトロンケイプ内では決められた場所以外で飲食すると、 怒り狂う係員(レイジングスタッフ)というめちゃくちゃ強い魔物に襲われるで要注意である。


【楽器コーナー】

パトロンケイプの最初の部屋にあるお店。

様々な魔法楽器を販売している。どれも恐ろしく高価だが、ここでしか手に入らないものも多い。また、メンテナンス実施や不思議アイテムの消耗品も販売している。


【画材コーナー】

パトロンケイプの最初の部屋にあるお店。

様々な画材道具を販売している。すべて魔道具であったり不思議アイテムなため非常に高価である。また、絵の買取も行っている。


【アルガ】

パトロンケイプの楽器コーナーの商品。

一点ものの商品で、飲むと聖光の魔力を液体として具現化可能になる。それを操りハープのような弦楽器を作ることも可能。オルゲルタ金貨10万枚またはデニテバルテ金貨1枚と大変高価。


【お絵かきセット】

パトロンケイプの画材コーナーの商品。

一点ものの商品であり、永遠にお絵かきできるよう、消耗しないクレヨン、色鉛筆、筆、ブラシ、消しゴム、画用紙、のセットが専用の小さな肩かけバックに入っている。画用紙は手のひらサイズだが、望めば大きめの門くらいまでならサイズ変更可能。クレヨン、色鉛筆、筆はそれぞれ1本しかないが、ある程度まで望んだ色に変化する。クランバイア白金貨1枚とお高めである。


【入場券】

パトロンケイプのチケット売場の商品。

これがなければ最初のロビーから次のエリアへ移動できない。日によって値段が変わり、共通銅貨1枚~共通金貨1万枚で購入可能。


【パンフレット】

パトロンケイプのチケット売場の商品。

その日のパトロンケイプ内の情報が事細かに記載されている。例えば飲食物コーナーの商品はこれを見なければ、どれがどんな効果かわからない。もちろん記載されていないことも多いが、あると無いとでは大違いである。オルゲル金貨1枚~50枚の範囲で毎日値段が変わる。





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