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158話 夕暮れのあとはいつも夜

本文と後書き修正。

 寒い。


 無意識に寝具を手繰り寄せようとしてしまう。でも手に当たったのは少し固めの布で、それはバサッっと落ちてしまった。


「うーん……」


 少しだけ体を動かして布を探すも見つけられなかった。このまま二度寝しようかとも思ったが、寒さが半端じゃない。気だるい体を起こして数秒、ここが自室のベッドではなくコルキスの部屋のリビングだと思い出した。


 ルトルはいないし、ロポリスもいない。なんで俺だけソファに放置なんだ。ちゃんと説明して欲しいのに。ルカがマデイルナン大公の妹のルカーナだってことや、マデイルナン公国の滅亡、その国民を皆殺しにすることが全精霊の願いだってことも。


 だいたい、『覚えてないの?』ってなんだ。笛の効果ってどういうことだよ。肝心なことをハッキリ言わないのいい加減止めろよ。


 きっとドリアードも全部知ってるんだろう。いや、あの口振りじゃきっとフラテムもティザーも、アクネアもシルフィもヴァロとミシアもラズマもモーブも、皆知ってるんだ。


「なんだよ、どうして教えてくれないんだよ……つか、本当に寒い」

 

 肌を刺すような凍風に振り向くと、開け放たれたままの扉から微かに橙色の光が差し込んでいた。


 なんとなく、本当になんとなく外に出てみようと思った。


 とんでもない高所にあるこの部屋は、風が吹けば扉へ近付くほどその唸る音が大きくなる。外に出ると、飛ばされそうというほどではないが、気を抜くとバランスを崩しかねない強さの風が、わざわざ時間差を意識したようにあらゆる方向から吹き付けてくる。


 しかしそれが気になったのは一瞬だった。


「わぁ、すご……」


 遥か彼方まで見渡せる空と大地。雲の隙間から降り注ぐ数多の光に照らされる薄霧の廃都は、まるで天に導かれていくかのようだ。


「綺麗だろ?」


 声に横を向けば、すぐそこに薄着のルトルが立っていて、同じ景色を真っ直ぐ見つめていた。


「うん。綺麗だ」


 返事に微笑むルトルの横顔はそのまま風に散っていきそうな脆さが透けている。


「元々ここには展望台があったんだ。さすがにここより低い位置だったけど、夕陽が綺麗な日は家族で眺めるのが決まりだったんだ」


 前を見たまま発せられるその声は限りなく澄んでいて、高所ならではの鳴り止まぬ風の音にかき消されないのが不思議なくらい形が無い。


 空に(あか)が少しずつ混ざっていく。白雲は徐々に黒く染まりながら、ふちだけを眩く輝かせる。


「幼い頃、母上にこういう景色を幸福の饗宴というんだと教えてもらったことがある」


「幸福の饗宴か。なんか良いねそれ」


「だろ。妹のフルアが、じゃああの光は美味しいの? なんて言って皆で笑ったよ」


「ハハ、可愛いな」


「いつか大人になったら、父上や母上のように愛する人と肩を寄せて、静かにこの景色を眺めるんだと信じて疑わなかった。子供ができたら抱き上げて、妹の家族とも……」


 強風に追われ疎らになった雲の輝は茜や黒に呑み込まれ、陽を遮る薄い雲だけがかろうじて金色を保っている。それらは青紫に沈む空をさまよい、幻想のように形を変えていく。


「あの頃に思い描いた未来は何処へ行ったんだろうな」


 そう呟いたルトルは、信じられないほど遠くを見ている気がする。同じ景色を見ているはずなのに、まばたき1つしないその透き通った目には何が写っているんだろう。


「………」


 なにも答えられない。なぜなら俺は、なんだかんだで思い描いていた未来より大きな幸せを手にしている。代わりにそっとルトルへ近付くと、吹き付ける風が少しだけ弱くなった気がした。


『死んでいたのよ、何年も前の今夜に』


『この国は次の満月で滅びるわ』


『ルトルも例外じゃないわ』


『アルフの婚約者は死なずに済む』


 ロポリスの言葉が頭の中でこだましていく。


 何故か心臓がギチギチ痛んで視界が一瞬歪み、ドプンッと真っ暗な水中に落とされたような気がした。頭から何かがサーッと失われて背中がチリチリする。それは失敗してはいけない何かを失敗した時の感覚に近かった。


 既に空は闇に覆われ、夜の使者と言われる一番星すらとっくに弾けたあとだった。薄墨の雲の向こうに箒星が流れ、消えていく。


 ルトルは空を見ながら少しだけ息を吸ったあと、無言で俺の横を通り過ぎてコルキスの部屋へ戻ろうとした。


「結婚しようルトル!」


 知らぬ間に叫んでいた。離れていく手を決して離さぬよう。


 それは突然空に現れた幾重にも重なる赤い魔法陣によって廃都が大爆発するのと同時で、薄霧と雲がすべて吹き飛ばされた異常なまでに澄んだ闇の空には、赫焉の満月が浮かんでいた。


~入手情報~


【名 前】アルファド・アルフレッド・クランバイア(New)

【種 族】不明

【職 業】冒険者/商人/王子

【性 別】男

【年 齢】15歳

【レベル】50

【体 力】100

【攻撃力】10

【防御力】10

【素早さ】50000

【精神力】1000

【魔 力】100000000

【通常スキル】

 無し

【固有スキル】

 孵化/托卵/偽卵/復元/魔力成長率激増/リユロクの魔眼/hブースト/ミステリーエッグ/ハートゲート

【先天属性】

 無し

【適正魔法】

 無し

【異常固定】

 不完全忘却(New)


~~~~~~~~~


【名 前】ルトル・アトゥール

【種 族】タイタン

【職 業】アルフの婚約者

【性 別】男

【年 齢】18歳

【レベル】50

【体 力】149

【攻撃力】55

【防御力】37

【素早さ】44

【精神力】79

【魔 力】85

【通常スキル】

 料理/洗濯/掃除/秘戯/荷運び/サポート

【固有スキル】

 頑丈/強制連結/大人の掟/憎しみの掟/妹思い/プレシャスフィアンセ

【先天属性】

 土/光

【適正魔法】

 土魔法-初級/光魔法-初級

【異常固定】

 奴隷(聖光)


//////////


【名 前】コルキス・ウィルベオ・クランバイア

【種 族】ヴァンパイアハーフ

【職 業】第15王子/冒険者

【性 別】男

【年 齢】8歳

【レベル】50

【体 力】410

【攻撃力】733

【防御力】591

【素早さ】888

【精神力】991

【魔 力】4117

【通常スキル】

 消費魔力激減/闇魔法威力増/亜空間体術/アルコルパペット

【固有スキル】

 吸血/飛行/憤怒/魅了/我儘/不完全変身/投影分身/闇属性吸収/聖光被ダメージ爆増/兄好き/甘えた/ネオイコル(Regain&New)/レミニセンスヘイズ(New)/スプレンダーミスト(New)/ダークネスフォッグ(New)/ヒストリア/オーラ

【先天属性】

 闇

【適正魔法】

 闇魔法-上級

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