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12話 固有スキルを使おう

後書き修正

「いいか、さっきいった通りにすれば大丈夫だからな」


「うん!」


 さっきからソウタがアルフに固有スキルの使い方を教えているわ。私はそれを少し離れた所で眺めながら考えているの。


 ソウタによると、アルフの固有スキルは孵化とミステリーエッグの2つ。


 孵化は魔力を使って卵を孵す事ができるスキルで、ミステリーエッグは他者の魔力とアルフの魔力を混ぜて卵にできるスキルらしいわ。


 私の考えが正しければ、ミステリーエッグはとんでもないスキルよ。


 他者の魔力を必要とするところが、このスキルの最も恐ろしいところね。他者の魔力とはつまり、魔法そのものを卵にされてしまうってこと。


 しかも魔力で強化した物理攻撃を対象とした場合、その強化を無かったことにもできる。


 まぁアルフは弱いから強化を無効化した通常の物理攻撃でも当たっちゃえば行動不能になるでしょうけど。


 ただ、普通の魔法使いが正攻法でアルフに勝つのは難しいわね。負けもしないだろうけど。


 私ならどうやって戦おうかしら……ふふっ、稽古してって言ってたわよねあの子。城に帰ったら手合わせしなくちゃ。


 あぁそうだ、作り出した卵を孵化させることができるっていうのがよく分からないわね。卵なんだからアルフの孵化スキルで孵化させればいいんでしょうけど……何が産まれてくるのかしら。その辺もしっかり検証しておかなくちゃ。


 兄弟の中で1番強くなるのが私の今の目標なんだし、知っていて損は無いわ。


 バドルとべリス以外で私に対抗できる王子や王女が増えるのは困るしね。


 あら、そろそろ試すのかしら。じっくり見させて貰うわよアルフ。ウフフフ……












 大丈夫。俺ならできる。


 フレアドラゴンを倒したあの勇者が固有スキルの使い方を教えてくれたんだ、大丈夫さ。


 まず、勇者とのやりとりで少し分かったことをもう1度確認しよう。


 まず孵化とミステリーエッグ、どちらも使おうとすると魔力の体外循環が自動で発動される。


 あんなに頑張ってもできなかったのになぁ。


 でも身体や物を強化することはできない。


 魔力自体の操作はできるようで、だいたい半径3メートル位までなら、球状に俺の魔力を放出できる。放出できる魔力量に限界は無さそうだけど、それを体内に戻すことはできない。


 スキルを使わなかった場合、放出した魔力は魔素になって霧散するみたいだ。


「アルフ、たぶんミステリーエッグは魔法も卵にできるからプチウォーターで試してみよう」


「う、うん。じゃあ準備するね」


 さっき勇者とやったように意識を集中させる。魔力の体内循環をして頭の中でスキルの名前を呟く。


 よし、いい感じだ。


 俺を中心に2メートル位まで魔力を放出する。


「ソウタ兄ちゃん、いいよ」


「いくぞ、プチウォーター!」


 勇者の指先から水が流れて出てきた。その水が俺の魔力と接触してるのが分かる。接触点で水が留まったかと思うと、俺の魔力がそれを包み込んだ。


 幻想的で不思議な色合いを含だ光を放つと、俺の魔力から切り離されてクルクル回りながら空中に浮かんでいる。


 その状態のままで1~2秒ほどたつと、光を内側に飲み込みむ様に輝きを失っていく。


 完全に光が失われると親指ほどの小さな卵が浮かんでいた。


 卵が浮かんだままだから、まだ何かあるのかと思ってじっとしてたら、勇者とジル姉様が心配そうにしてるのが見えた。


「どうだ、上手くいったか?」


 俺にもよく分からない。


「たぶん、できたと思うと」


「不思議な模様の卵ね」


 これは稲妻柄とでも呼べばいいのかな。


「うん……あ!」


「なんだ!? どうしたんだ!?」


「どこか痛むの!?」


「ううん、そうじゃなくて……この卵俺の思った通りに動かせるよ!」


 浮かんでる卵でジル姉様の顔が少し隠れてたから、邪魔だなって思ったら動かせたよ。


 おぉー、結構遠くまで動かせるな。


「あの卵って孵化させられるのよね?」


 ジル姉様が壁際まで行った卵を見ながら勇者に聞いてる。


「あぁ。卵を鑑定したみたけど、魔力を消費する孵化スキルでのみ孵化可能ってなってるな」


「じゃあアルフの固有スキルは2つで1つなのかしら?」


「そういうことに……なるのかもな」


 勇者の言葉の歯切れが悪い。


 ま、いっか。


「じゃあ、孵化させてみるよ」


 卵を手元まで戻してミステリーエッグを解除した。


「おっとっとっと」


 スキルを解除したら卵も操作できなくなるのか。落としそうになって焦る。


「どうしたの?」


「えと、スキルを解除したら卵も操作できなくなって」


「へぇ、そうなの」


 ジル姉様は少し思案顔になった。


「孵化させてみるね」


「あぁ」


「楽しみね」


 孵化スキルを発動させるとまた卵が光はじめた。


 今度はなんだか妖しい光り方だな。少し卵が震えると殻にひびが入ってきた。


 ん?


 次の瞬間、パキパキッっと音をたてて殻が割れると中から銀色のシンプルな指輪が出てきた。


「指輪……かしら?」


「そうみたいだね。ソウタ兄ちゃん、鑑定してみてくれる?」


 ジル姉様も同じことを思ったらしく勇者方を見た。勇者の表情がだんだん曇っていく。


「えっと、なんか凄いのが出たみたいだぞ。これ死の女神が流した涙から生まれた指輪だってよ」


 死の女神!!? なんて物騒な指輪なんだよ!


「ちょっと、大丈夫なのこれ?」


「ソウタ兄ちゃん、俺触っちゃてるけど平気??」


 死の呪いとかが掛かってたらどうしよう。


「大丈夫だ、心配ないよ。装備すると即死無効になるみたいだ」


「なにそれ、凄く良いものじゃない!」


「よかったぁ……」


 ジル姉様が指輪から目を離さない。


 あ、そうだ。


「さっきのプチウォーターだけど、ソウタ兄ちゃんどれくらい魔力を使ったの?」


「んー、0・5かな」


 そうか。じゃあさっき感じたのと同じか。


「あのさ、さっきプチウォーターを卵にしたときと孵化させたとき俺も魔力を0・5持っていかれたんだ」


「そうなのか。なぁもう1回やってみないか?」


「そうね、少し検証した方がいいと思うわ」


 勇者とジル姉様が俺を見てくる。特にジル姉様が知りたくてウズウズしてるって顔だよ。


「身体に違和感とかないか?」


「大丈夫」


「次は私が魔法使ってもいいかしら?」


 なんだか挑戦的な声だな。


「うん、いいよ。お願い姉様」


 とりあえず指輪を勇者に預けて、もう1度ミステリーエッグを発動させる。


「アルフ、強めの魔法を使うからその気でね!」


 そう言うと斜め上の方へジル姉様が浮かんでいった。


「ちょ、ちょっと待って姉様! 弱いので大丈夫だから!!」


「天が告げる無慈悲な裁き……」


 俺の言葉を無視してジル姉様がヤバそうな詠唱を始めてしまった。


 どんだけ強い魔法使う気なんだよ!


「そ、ソウタ兄ちゃん! ジル姉様を止めてよ!」


「大丈夫だろ。たぶん雷魔法の特級が来るぞ」


 えーーー!? 強めってそういうことなの!?


「ダメダメダメ!! 姉様止めてください」


「全ての願を穿つ……」


 ちょっ、え!?


「アルフ、1500くらいの魔力を放出しといた方がいいぞー」


「そ、そんな……」


 ジル姉様はやめる気は全然無さそうだ。


 勇者も俺から離れ始めた。 なんだよ、さっきまでやたらくっつこうとしてたクセに!


「……に滅びと絶望を!! エクステングウィッシュ!!!」


 あーーーーー!


 俺は慌てて魔力を放出した!



 轟音と爆裂音が繰返し鳴り響き紫電が巨大な剣の形を成して無数に降り注いでくる。


 あぁこの世の終わりとはこういう光景なんじゃないかな。


 怖さに耐えられなくて目をつぶってしまった。


 でも、俺の魔力とジル姉様の魔法が接触している所ははっきり感じる。


「…………に還らん!! タイダルウェイブ!!!」


 まさかの特級魔法の連続詠唱だなんて。


 チラッと目を開けると、もの凄い勢いで波が押し寄せてきた。波っていうかもう海が丸ごと降ってきてるみたいだ。


 その海を切り裂くように雷でできた巨大な剣が次々と襲いかかってくる。


「うわぁぁ……」


 さっきのプチウォーターの時とは違って俺の魔力が勝手に放出されていくと、大きく広がって姉様の魔法を全部吸い込んでいく。


 最後の最後まで魔法を吸い込み終えると、魔力は俺の前で凝縮され不思議な光を放つと卵になった。


 こ、怖かったーーーー!


「ジル姉様、俺を殺す気だったの!?」


 とりあえずスキルを解除して姉様に駆け寄って聞いたよ。

 魔力を使い果たしたのか、地面に手をついて苦しそうにしてる姉様。


「はぁ、はぁ、、そうじゃない、、はぁ、、」


「だ、大丈夫?」


 凄く辛そう。


「ほら、これ飲んでちょっと休んでろ」


 いつのまにか近くに来た勇者が姉様にマジックポーションを飲ませてあげてる。


 姉様は苦しいそうなのに幸せオーラが凄い。


「ソウタ兄ちゃんも! 助けてくれたってよかったのに!」


「それじゃあ検証にならないだろ。アルフなら絶対大丈夫だと思ったんだよ。俺もジルも」


 だとしてもやり過ぎじゃないかな。


「ジル姉様は大丈夫なの?」


「えぇ、魔力を使いすぎただけだから心配ないわ」


 なんだか一瞬睨まれたような……


「今度の卵はずいぶん細長いな」


 勇者が卵を見ながらちょっと驚いてる。


「そうだね。それに蝋燭みたいな模様だね」


「ハハッ確かに。それよりまだ魔力は余裕だろ?孵化させてみようぜ」


 楽しそうだなおい。


「うん……」


 俺は孵化スキルを使った。


 おぉぉぉぉ!?

 

 凄い勢いで魔力が卵に注がれていく。3500くらいが一瞬で持っていかれた。ちょっとフラつく。


「大丈夫か?」


「うん、平気」


 卵は妖しい光を放つとちょうど真ん中が割れた。


 あれ? 何も入ってない……割れた卵を覗き込むと底の方に何かが見えた。


 俺じゃ届かないから勇者に取ってもらった。


 出てきたのは15センチ位の鍵。持ち手側は3角形がいつくも重なった幾何学模様で、差し込む側は3つの出っ張りがあって真っ黒だけど鍵全体に金色の文字らしきものが光ってる。


「これは何? ソウタ兄ちゃん」


「うーんと、この鍵を何かに差し込とそこから商人が出てきて、買い物をしないといけないらしい」


「冒険者や旅人には嬉しい物だね」


「いや、うん。まぁ嬉しいかもな」


 なんだか微妙そうだな。俺なら旅のお供に絶対持っていくけどなぁ。


「アルフ、今のはどれくらい魔力を使ったの?」


「3500かな。ミステリーエッグと孵化を合わせると7000だよ」


「そう……」


 少し落ち着いた姉様は何か考えるように頷いた。


「ジルも魔力を3500使ったんじゃないのか?」


「えぇ、そうよ」


「じゃあ決まりじゃないか?」


「そうね」


 俺もなんとなくわかってきた。


「アルフ、ちょっと休んだらもう1回いいか?」


「うん。あ、じゃあ早速その鍵を使ってみようよ。何か温かいものが欲しいな」


「今は止めとこう」


 俺の提案は勇者に真顔で却下されてしまった。

~入手情報~


【名 称】エクステングウィッシュ

【分 類】特級雷魔法

【効 果】☆☆☆☆☆☆☆☆

【詠 唱】ギロギストⅢ型魔法言語/乱文不可

【現 象】

雷で形作られた大きな剣を無数に降らせ敵を殲滅する。魔力が続く限り、その剣を降らせ続ける事も可能である。


~~~~~~~~~


【名 称】タイダルウェイブ

【分 類】特級水魔法

【効 果】☆☆☆☆☆☆☆☆

【詠 唱】ミュレヴァイア型魔法言語/乱文不可

【現 象】

任意の空間に荒れ狂う海を切り取ったかのような大質量の大波を発生させ、敵を殲滅する。魔法使いによっては、その大波の中に肉食の海洋生物や使い魔を潜ませ、更なるダメージを負わせようとする。


~~~~~~~~~


【名 称】アニタの指輪

【分 類】死の祝福

【属 性】死

【希 少】☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

【価 格】-

【説 明】

死の女神アニタがたった1度だけ死を悲しみ流した涙から生まれたとされる指輪。内側には神の言葉でアニタと彼女の愛する者の名前が刻まれている。装備すると即死無効と自身の全ての攻撃に即死効果が付与される。ただし愛する者とは決して結ばれなくなる。


~~~~~~~~~


【名 称】悪魔と魂の鍵

【分 類】悪魔の鍵

【属 性】無/呪/命/死

【希 少】☆☆☆☆☆☆☆

【価 格】-

【説 明】

真っ黒な鍵に金色の悪魔文字が刻まれた美しい鍵。

どんな物にでも差し込むことができ、鍵を回すと大悪魔の商店が現れる。必ず買い物をしなければならず、代金は寿命。場所や時間によって商品が違う。鍵を差し込んだのが生き物だった場合その生き物の寿命を代金にすることもできるが使用者は強力な呪いを受けてしまう。

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