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133話 勇者の幸運

本文と後書き修正。

 オイラたちはシェムナさんの研究室にやって来た。


「シェムナさん、いる?」


 ドアを開けて中を伺う……うわぁ。つい2日前、綺麗に片付けたのにもう散らかってる。


「いないわね」


「うん」


 あれ? 今、何かがゴソッと動いたような気もするけど……


「そのうち帰ってくるだろ。いつもみたいに使わせてもらおうぜ。にしても汚ったねぇなぁ」


 ランペルは紙類を濡らさないよう器用に移動して、部屋の奥にある椅子に座った。


 シェムナさんが何の研究をしてるのかは知らないけど、研究室にいないこともしょっちゅうある。だから勝手に部屋のも触らなければオイラたちにこの部屋を使わせてくれるんだ。


 談話室で話をしてると他の組の連中がちょっかい掛けてくるから、とても助かってる。たまにだけど勉強もみてくれるし。


「で、秘密の話ってなんなの?」


 ノシャも椅子に座って聞いてくる。ふわっとろ羽ばたいたときに抜け羽が落ちたから拾っておいた。


 オイラは何でも屋アルコルトルの話をした。


「そんなのあり得ねぇって」


 でも、ランペルは全然信じてくれない。そりゃオイラだってランペルやノシャに1日働けば、3人でクランバイア金貨3枚の報酬なんて言われたら笑い飛ばすだろうけど……。


「もしコラスホルトの話が本当だとしてだ、アルフってやつが俺たちをそんな大金で雇ってなんの得があるんだよ。ノシャはどう思う?」


「そうねぇ。あ、もしかして子供しか無理っていう趣味なのかも」


「うげぇ、本当かよ」


 ノシャは分かってるはずなのにランペルに合わせて遊んでる。


「ノシャ……」


「コラスホルトが嘘を言ってないのは分かってるわ。でも、ウチもランペルと同じでその店主は怪しいと思う」


「へぇ、そうなのか? ノシャを疑うわけじゃないんだが、何か証拠になるものはないのか?」


 それならお店で買ったものを……あ、オイラ忘れてきちゃった。


 他に何かないかな。ポケットに手を突っ込むと、アルフさんにもらったお菓子が出てきた。


「今はこれしかないや。アルフさんがくれたお菓子なんだけど、見たことないでしょ?」


 2人がオイラの手に視線を移す。


「いやいや、こんなもんで――」


「ランペルちょっと黙って……」


 ノシャが真剣な眼差しに変わった。きっと見極めを使って確認してるんだ。ランペルもノシャの様子に気付いて静かになる。


「これが何かは分からないわ。でもとんでもない代物なのは確かね。これをもらったの? ただで?」


「そうだよ。もっとあるって言ってた。人形に何か言われて、ケチ臭いとかって言い返してたけど……そんなに凄いものだったんだ」


「人形に話かけるだぁ? ますますやべぇやつじゃねぇかよ」


 それはそうだけど本当なんだよ。


「それがもらえるならウチは行ってみたい。少なくとも損はしないと思うし」


 お菓子を見てから少し考える顔をしていたノシャが口を開いた。


「お、そうなのか? ノシャがそう言うなら俺も行ってみるか」


「よかった。じゃあさっそく行こうよ。この鍵を使えばお店まで転移できるんだ」


 オイラが鍵をドアに差して開くと、ドアの向こうに歪んだ景色が広がっていた。2人が目を丸くしてるや。へへへ、驚いただろ。


「最初からそれを見せなさいよ」


「そうだぜ。そしたらすぐに店の存在は信じたのによ」


 2人に小突かれてから、オイラを先頭にして3人でドアくぐった。




 ##########




 聖女に連れてこられたのは謎の器具や紙の束が散乱する部屋だった。


 ここにはほとんど人が来ないだけでなく、室内とその周辺の情報が外部からは決して分からない魔法がかけられているらしい。隠れるのにはうってつけだと聖女は笑っていた。


 聖女のお陰で傷は完治している。だがアトスに施された封印はそのままだ。魔法王国に潜り込む前、モーブから各王妃について情報をもらっている。そのときアトスの印には覗き見と盗聴の効果もあると言っていた。


 印を消さない限り第13王子に会うのは止めた方が良さそうだが、そろそろ完全に復元される頃だろう。その時は近くにいなければ……。


 聖女はプフヘネと名乗った。彼女との会話で目的が俺とほぼ一致していると判明した。鑑定が使えない今、全てが怪しく思えるが彼女は信用できる。なぜなら――っ!?


「シェムナさん、いる?」


 3人の子供が入ってきた……シェムナは確かプフヘネのお目付け役だったか。


 プフヘネのせいで今は廃人のようになっているらしい。


 こういうときに鑑定が使えれば便利なんだがな。取り合えず魔法で姿を隠しておこう。


「いないわね」


「うん」


「そのうち帰ってくるだろ。いつもみたいに使わせてもらおうぜ」


 コイツらはよくこの部屋出入りしているみたいだな。プフヘネからそんな話は聞いていない。


 ん、どうやら秘密の話をするらしい。


 それは第13王子の店の話だった。コイツ等を雇う……なんでだ?


 それにあのお菓子、鑑定しなくても分かる。世間に広めて良い物じゃない。聖光の魔力が異常なほど宿っている。あんな物を軽々しくガキにやるなんて何を考えているんだ。しかも転移できる鍵まで。


 3人がドアをくぐり消えた少し後でプフヘネが戻ってきた。


「なにこの気配。強い聖光の魔力がついさっきまで放たれてたようだけど……」


 プフヘネは迷うことなく姿を消している俺に詰め寄ってきた。


「たぶん、聖光の大精霊が気紛れを起こしたんだろうよ」


 魔法を解いてプフヘネが持って来た昼食を食べ始める。


「意味が分からないんだけど」


「俺にもさっぱりだよ。まあ、放っておいてもいいだろ」


 釈然としない様子でプフヘネも食事を始めた。


「ねえ、私たちはこれから協力していくのよね? 隠し事は無しにして欲しいんだけど」


「この印を消せたら教えてやるよ」


 アトスの印をプフヘネに見せると思いっきり顔をしかめた。


「最悪。クランバイア第6王妃の印じゃない。私、それのせいで好きな人とのお見合いが上手くいかなかったのよ。まあ、その人はこの前死んじゃったけどね」


 プフヘネはこの印がいかに最悪な物かを語りだした。ついでに見合いの失敗理由や、代わりに婚約したメゴゼック王国の王子の愚痴もだ。コイツの婚約話なんかに興味はないが、印について知っていたのは話が早くて助かる。


「はあ、ご飯なんか食べてる場合じゃないわね。早くシェムナを元に戻さなきゃ」


「なんでだよ」


「シェムナが印を消せるからよ。一時的にだけどね。元々、彼女はここでこの印を消す研究をしてたのよ」


 プフヘネが袖を捲って痣を見せてきた。痣はアトスの印があった場所らしい。シェムナの開発した魔道具を使えば3日~4日で印を無効化できるとプフヘネは言った。但し、定期的に魔道具を使わなければすぐに印は元通りになってしまうとも。


 信じられない幸運だ。


「今すぐ行こう」


「蒼汰は待ってて。ここから出たら印の効果で情報が駄々漏れになるから」


 プフヘネはそう言い残してまた部屋を出て行った。

~入手情報~


【名 前】シェムナ・モリナディ

【種 族】ドラゴヴァンパイア

【職 業】研究者/魔具師/従者

【年 齢】1401歳

【レベル】102

【体 力】1992

【攻撃力】6127

【防御力】3710

【素早さ】2651

【精神力】1844

【魔 力】8981

【通常スキル】

 研究/没頭/解析/魔道具作成

【固有スキル】

 天才/吸血/霧化/飛行/不死/短時間変身/短時間魅了/剛力/煌めく赤き石棺スパークルレッドサルコファガス/反作用カウンター/シャドーライト/ブラッドブレス/ペネデスブラッド

【先天属性】

 光/影/無

【適正魔法】

 光魔法-上級/影魔法-上級/無魔法-中級


~~~~~~~~~~


【名称】見極め

【発現】ノシャ

【属性】氷

【分類】解析型/固有スキル

【希少】☆☆☆☆☆

【効果】

見聞きしたものの真偽が分かる。また、アイテム等にどんな効果があるのかを知ることもできるが、なんとなく分かるというという程度である。鑑定の下位互換とされる固有スキル。

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