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132話 エシェック組

本文と後書き修正。

 昼時を過ぎてもルトルは戻って来なかった。そしたらなんと痺れを切らしたロポリスが自分でオムライスを作り始めたんだ。あのロポリスが、だ。驚愕とはこのこと。しかも食べる専門のグルフナまで嬉しそうに手伝ってたし。


 なんか大量に作ってたから、せっかくだしとコラスホルトも誘ったら、少し恥ずかしそうに頷いた。実は買い物の途中から美味しそうな匂いが気になっていたらしい。へへへ、とはにかむその笑顔はことさら可愛らしかった。


 とはいえこう、連日オムライスをとなると……正直に言おう。俺は飽きている。確かに美味しいけど、こう頻繁に食べるものではないんじゃないかな。


「ごちそうさまでした。オイラ、お金がないから助かったよ」


 口の端にケチャップが付いたまま、コラスホルトが遠慮気味に紅茶へ手を伸ばす。


 食事前、コラスホルトは装備品や日用品、素材がたくさん買えたと喜んでいた。


 テテネという貧しい村出身で学費や寮の家賃は免除されているが、生活費や授業で使用する消耗品等は自分持ちらしい。よく研究員の雑用を手伝って稼いでいるものの、いつもギリギリの生活だと笑っていた。


 う~む、コルキスと一緒に行動するようになって、年下の笑顔に弱くなった気がする。


「しばらくミュトリアーレにいるから、毎日ご飯を食べに来るといいよ」


『やだ、アルフったら節操無しね』


 ロポリスなんか無視無視。


「え? それは嬉しいけど、オイラ毎日買い物はできないから……」


「別に買い物はしなくてもいいよ」


 少し一緒にいただけだけど、健気なコラスホルトの助けになりたいなと思ったんだ。本当はお金を渡したい。でもそういうのは良くないだろうし喜ばないだろう。


 何年か前にこのミュトリアーレの学園で、コラスホルトと同じような子にそうしたら馬鹿にするなと怒鳴られたことがある。


「……それじゃ悪いよ」


『店番をお願いしたら?』


 なるほど。それは良い考えだ。


「じゃあ、店番してくれる代わりにっていうのはどう? 勿論、報酬も支払うよ。えーと……1日クランバイア金貨3枚でどうかな?」


「クランバイア金貨3枚!?」


『相変わらず金銭感覚が狂ってるわね』


 ロポリスが呆れ顔だ。そうだよな、よく考えたら仕事の報酬が手紙用のインクと同額ってあんまりだ。


「ごめん、少なかったよな。じゃあ……」


「違うよ、多すぎるよ! 普通は1日働いても共通銀貨1枚ももらえないよ?」


「え、そうなの?」


 そうなんだ。でも言っちゃったしなぁ。


「え、えっと……こ、この店の仕事は大変だから、それくらいで釣り合いが取れるんだよ」


『そうね、カンコドリが3羽も来るほど忙しいものね』


 うるさいな。あれは脱皮場所を提供しただけなんだよ。場所代きちんともらっただろ。脱け殻という場所代を。


「で、でも……やっぱりもらいすぎだよ」

 

 うう、そんな困り顔をさせたかったわけじゃないのに。少し気まずい空気が漂ってきた。


『もうっ。アルフはいつまでたっても脳足りんなんだから。エシェック組を全員雇いなさい。確か全員コラスホルトと同じような境遇のはずだから。それで報酬の総額がクランバイア金貨3枚、賄いと私のお世話つきよ』


 ん? 私のお世話? 1つ分からないことがあるけど良い案だと思う。ロポリスの提案をコラスホルトに伝えてみた。


「い、いいの? それでも報酬は多いけど……うん、お願いします。今から知らせてくるね!」


 コラスホルトは走って……すぐに止まった。


「ど、どうやって帰ったらいい?」


 そうか。帰り道を用意してなかったな。チラッとロポリスを見る。


『はあ……』


 ロポリスが指を鳴らす、といっても実際は人形の指がふにっと擦れただけだけど、テラスの端に魔法陣が現れた。


『転移系は得意分野じゃないのよね。まあ、あれで地上と行き来できるから』


 ロポリスがそう言いながら俺の頭に乗っかって、髪の毛を引っ張り始める。少し痛いけど今は許そう。


『確か今のエシェック組は3人だから……』


「痛てっ!?」


 なんだいきなり。なんで髪を抜いたんだ。これは許すには痛すぎる行為だぞ。


 ロポリスを掴もうとしたけど、その前にロポリスが髪に魔法をかけた。それはあっという間に小さな鍵になる。


 ま、魔力が……俺の魔力がどえらい量消費された。


『これをドアや窓に差して開けたらあの魔法陣と繋がるから。魔法陣からはミュトリアーレのドアならどこでも繋がるようになってるわ』


「う、うぷっ……分かった」


 軽い魔力酔いを我慢して鍵と魔法陣の説明すると、コラスホルトは緊張気味に魔法陣に立ち姿を消した。


 きっとさっきの恐怖体験を思い出していたんだろうな……あ、買った物を全部忘れて行ってるじゃないか。


 まあ、また戻って来るだろうからこのままでいっか。



 ##########



「わ……凄いや。本当にオイラの部屋に転移してる」


 何でも屋アルコルトルは不思議なお店だった。店主のアルフさんも変わった人で、人形に話しかけたり気味の悪いハンマーにご飯をあげたりしていた。


 ミュトリアーレの学園は身分に関係なく、自由で伸びやかに学べるっていうことになってるけど、実際は貴族様の派閥があったり成績優秀者との格差があったりでそうでもない。


 特にオイラたち出来損ないが集められているエシェック組は白い目で見られてる。でもアルフさんはオイラみたいなエシェック組にも優しくしてくれる。良い人だと思う。


 エシェック組にはオイラの他にノシャとランペルがいる。オイラたちは全員クルムシュ国の出身ということもあって仲が良い。


 ノシャはオイラと同じ貧しいリリア村出身の木菟(ミミズク)族。モコモコした羽と羽角(うかく)がとても可愛い。


 ランペルは侯爵家の6男ていう凄い貴族様なんだけど、実家で問題を起こしてここの学園に放り込まれたらしい。種族は内陸部では珍しい海牛(ウミウシ)族。


 貴族様なのに偉ぶってないし、実家からの支援もほぼないようで、いつもオイラたちと研究員さんの雑用や屋台の手伝いをしてる。ちなみにランペルも寮生でオイラと同室なんだ。ノシャは女の子だから別だけどね。


 確か2人とも午前中は素材集めに行って言ってた。時間的に帰ってきてるはずだけど……談話室かな。


 やっぱり。思った通り2人がいた。隅っこで干肉を食べてるや。オイラだけ美味しいものを食べたから、ちょっと悪い気がしてきた。


「おう、コラスホルト。お前も食うか?」


 オイラに気付いたランペルが干し肉を見せてニカッと笑う。身体が乾かないように薄い水の膜で自分を覆ってるから、手に持った干肉もふやけ気味で、より不味そうに見える。それを見た談話室にいる他の生徒がクスクス笑ってるけど、食堂で食べるよりましな反応だ。


「で? どうだったの?」


 ノシャがニヤニヤしながら聞いてきた。どうせあの滑った紙が誰かのイタズラだと思ってるんだろう。2人は他の生徒と同じで、気持ち悪いって捨ててもんな。


 でもオイラの話を聞くと驚くに違いない。アルコルトルに行った時の顔が見物だよ。


「それについて秘密の話があるんだ」


「なんだぁ? 妙に真剣な顔してるじゃないか」


「もしかして本当にあったの?」


 小声になった2人にオイラが小さく頷と、2人は顔を見合わせてから立ち上がった。


「シェムナさんの研究室に行こうぜ。あそこなら誰にも聞かれないだろ」


 オイラたちはランペルの提案をのみ、行けば必ず仕事をくれる1人ぼっちの優しい研究員さんの所へ向かうことにした。

~入手情報~


木菟(ミミズク)族】

ミミズクの獣人。

羽角という特殊な器官を持っているフクロウによく似た種族である。頭が良く火魔法、氷魔法、風魔法の何れかが得意な種族でもあるが、他種族からは不吉な種族として嫌われている。


~~~~~~~~~


海牛(ウミウシ)族】

ウミウシの海洋種族。

通常はウルユルト群島国といった海洋国家に多い種族である。触角を持ち、地味な色から鮮やかな色をした者や中には光る者もいる。他の海洋種族同様、水魔法が得意な種族でもある。また、他の生物の特徴を1つだけ真似ることが可能なことや雌雄同体であることも大きな特徴である。


~~~~~~~~~


【テテネ村】

クルムシュ国の西にある貧しい村。

近くに小さな森と大きな湖があり、村人は主に漁や採集をして生活している。村共有の小さな畑もある。特産品は何もない。


~~~~~~~~~


【リリア村】

クルムシュ国の北にある貧しい村。

コーンフォレストと呼ばれる、植物と川が円錐形に浮かんいる森の中に存在している。土は最下層にしか存在していない為、村人は狩や採集をして生活している。


~~~~~~~~~


【名称】手紙用のインク

【分類】魔法インク

【属性】影

【希少】☆☆☆☆☆

【価格】クランバイア金貨3枚/1瓶

【ロポリスのため息解説】

魔法王国の王公貴族が手紙をしたためるために使う専用のインクよ。宛先に書かれた人物以外が手紙を読もうとすると目が潰れるの。他にも属性に火があったりすと読んだ後に燃えるとかも指定できるわ。ま、属性によって色々な効果付け加えられるって話よ。但し、属性が多くなるほど高価だし、扱いも難しくなるわ。まったく、アルフの王子的金銭感覚はどうにかならないかしら。ちなみに平民が使うインクはもっと安価で共通銅貨2枚くらいよ。


~~~~~~~~~


【名 前】ノシャ

【種 族】木菟(ミミズク)

【職 業】学生

【年 齢】10歳

【レベル】13

【体 力】142

【攻撃力】51

【防御力】30

【素早さ】67

【精神力】21

【魔 力】102

【通常スキル】

 狩り/料理/見極め

【固有スキル】

 飛行/夜目/聞こえざる音/フェザーショット/シニスターサウンド

【先天属性】

 氷

【適正魔法】

 氷魔法-初級


~~~~~~~~~


【名 前】ランペル・タタン・アオミノ

【種 族】海牛(ウミウシ)

【職 業】学生

【年 齢】10歳

【レベル】21

【体 力】98

【攻撃力】91

【防御力】21

【素早さ】18

【精神力】55

【魔 力】152

【通常スキル】

 解毒/波乗り/触角攻撃/ヒレ防御

【固有スキル】

 刺胞/青い拘り/火属性嫌い/エンジェルシアン/ドラゴンブルー/フィーチャースティール

【先天属性】

 水

【適正魔法】

 水魔法-中級

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