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123話 ヒュブクデールの冒険者ギルド

本文と後書き修正

 これはまた綺麗な景色だな。不謹慎だろうけど、モネールの家を出て思ったのはそれだった。


 壊れた建物には複雑な復元の魔方円が展開され、そこから光の玉が出ている。ヒュブクデールの町には壊れた建物を復元する機能があるそうだ。


 ただし、それは壊れた建物が決められた数に達した場合や緊急事態宣言とやらがされたときのみ。復元は土地の魔力を大幅に消費してしまうため、基本的には個人でどうにかするらしい。


 スラポルタの木によるヒュブクデールの被害は、甚大とまでかいかないもののそれなりに酷いものだったらしい。飛来してきたスラポルタの木の大部分は焼き払ったのだが、全てとはいかず建物を破壊し住民を傷つけたと、ドラゴニュートのカミーユが話してくれた。


『いや~失敗失敗。まさかヒュブクデールでアノアアオムシのソファが流行ってるなんてなぁ』


 ドリアードの白々しい台詞はさておき、俺としてはもう少し魔法円を改良すれば消費魔力を減らせると思うんだ。けど、ああじゃなきゃいけない理由があるのかもしれない。くぅぅ、もっとしっかり調べたいな。


「こっちよ」


 先を行くモネールが振り返った。


 俺たちは今、ヒュブクデールの冒険者ギルドへ向かっている。ギルドマスターであり町の代表者、ヒュブクデール401世と大赤字販売会の打ち合わせをするためだ。


 ドリィアド族については、俺が寝ている間に新たな処罰が決定していた。50年間ヒュブクデールの自然を管理し、9人の魔力のみで今以上の豊かさをもたらすというものだ。


 ドリィアド族は余裕綽々といった雰囲気だった。ちなみに彼ら9人の名付け親はコルキスらしい。


 ドリー、リイア、アド、ドド、ドア、アリド、ドリア、アリア、アドイード。


 ていうかラ行の発音が苦手なのに、名前に多用するなんて嫌がらせっぽいな。本人たちが気に入っているから、何も言わないけどさ。


 今は代表でアドイードが一緒に来ている。仲間に引きずられてはしょんぼりしていたあのドリィアド族だ。


 アドイードはグルフナがお気に入りで、さっきから振り回している。お、蝶々を捕まえたぞ。ご満悦だな。つたたたと走って見せに来てくれる。そうだな、綺麗だな。つか、グルフナの中にはドリアードいるんだけど……まいっか。


 なお、ロポリスはお決まりの鞄の中で昼寝。


「ここよ」


 モネールが立ち止まったのは、開いたり閉じたりを繰り返しながら回転している、6冊の大きな本が浮かんでいる場所だった。それぞれの本が2階建ての家とほぼ同じ大きさだ。チラッと見える本の中では、人が動き回っていたり食事をしている。


「不思議だね~。これどうなってるんだろ」


 コルキスは浮かび上がって、本の周りを飛び始めた。たぶんヒストリアを使っているんだろう。


「どこから入ってもいいけど、ちゃんとギルマスの部屋を指定するのよ。さ、私たちはここから入りましょ」


 モネールがコルキスに声をかけたあと、1番下の本に冒険者登録証をかざした。


 すると本は回転を止め表紙を俺たちに向ける。次にモネールがギルマスの部屋と囁くと、表紙の魔方円が立体的に浮かび上がって俺たちを包む。


 するとどうだろう。あっという間にギルマスの部屋の前に立っていた。扉には《401世ちゃん》と書かれたプレートがかけてある。


「モネールです。何でも屋アルコルトルの皆さんをお連れしました」


 モネールが言い終わるとプレートが静にひっくり返り《入室許可・会話厳禁》の文字が現れた。


 絶対喋るなと言われ入った部屋には、赤ん坊を抱いた細長い本が立っていた。いや、別の俺の目がおかしくなったわけじゃない。本当に手足の生えた2メートルくらいの本が赤ん坊を抱いてるんだよ。


 2メートルの本が赤ん坊を小さなベッドに寝かせ、こっちに向かって表紙を開く。


(今、ちょうど眠ったところなの。声は出さないでちょうだい。私はヒュブクデール401世のお世話係、ホノリウスよ。悪いけどページ(・・・)を移りましょう。そこなら声を出していいから)


 開かれたページにはそう書いてあった。


 そしてまた立体的な魔方円に包まれると、今度は花が咲き乱れる庭園に建つガゼボの前にいた。


 ん? モネールの顔が真っ赤だ。


「モネール、顔が真っ赤だけどどうしたんだ?」


「な、何でもないわ!」


 何でもないって言う割には、物凄く恥ずかしがっている。


「テーブリュと椅子はアドイードが出してあげりゅ」


 ガゼボに駆けていったアドイードが、その中心で踊り始めた。


 あいつ、可愛いな。ほんの少しだけ臭いのは残念だが。


 踊るアドイードの周囲に草が生えていく。それが徐々にテーブルと椅子を形作っていくけど……


「あ、あ……どうしよう。出りゃりぇない、アリュフ様助けて!」


 自分が作ったテーブルの、支えの一部になってしまったアドイードが助けを求めてくる。


「このドリィアド族が離れると、テーブルが支えを失ってしまうわね。あなた、そのままでいなさい」


 ホノリウスが冷たく言い放ち椅子に腰かける。


「ごめんな、あとで出してやるから」


「そ、そんなぁ……」


 アドイードが悲しそうな声を出す。


 打ち合わせ中、テーブルは時々小さく揺れることが多々あった。





 ##########





 打ち合わせが終わりに差し掛かった頃、けたたましい赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。


「誰かしら。隣のページは立ち入り禁止にしていたのに。見てくるから待っててちょうだい」


 ホノリウスが姿を消すと、打ち合わせ中ずっと顔が赤かったモネールがホッとしたように椅子にもたれかかる。


「どうしてそんな恥ずかしがってるんだよ」


「それは私も気になりました」


 ルトルも気になってたのか。


「な、何でもないって言ったでしょ!」


「アドイード知ってりゅよ。ホノリィウスが自分の中身を見せたかりゃ恥ずかしがってりゅの。グリィモアニアが自分の魔書の中身を見せりゅのは普通受粉すりゅ相手だけだかりゃね」


 受粉……なるほど。種族特有の恥じらいってやつだな。


「なにするんだよ! 離してよ!」


 今度はコルキスの叫び声が……まさか赤ん坊を泣かせたのはコルキスだったのか?


「アルコルトルの店主よ。従業員はしっかり管理してくれ。目が覚めてしまったじゃないか」


 コルキスの首根っこを掴んだホノリウスが現れ、さっきとは別人のような口調で言う。


「何やったんだよコルキス」


 ホノリウスに掴まれてジタバタするコルキスに近付く。


「頬っぺたを触っただけだよ」


「本当にそれだけか?」


 俺は微妙に視線が泳いだのを見逃さなかった。


「ちょ、ちょっとだけ吸血もした……」


 あざとい……あざといぞコルキス。その人指し指同士をちょんちょんしながらの上目遣い。だが、堪らなく可愛い!!


『アルフ、魅了使われてるぞ』


「いけない子だ。悪さをしたのに、魅了を使って誤魔化そうとするとは。アルコルトルの店主よ、売値はもう2割安くしてもらおう。それで私の眠りを妨げたことは許す。では、打ち合わせは終わりだ。何かあれば明日までに連絡する」


 コルキスを離したホノリウスが魔方円に包まれ消えた。


 何てやつだ。コルキスを放り投げるなんて許されない暴挙だ。可哀想なコルキスを抱き締めてよしよししてあげよう。


『まったく、コルキスに対してはスライム並の警戒心だな』


 あだっ!?


 グルフナが頭を叩いてきた。


「え、違うよ。アドイードじゃないよ」


「ゲゲウ」


 アドイードとグルフナが必死に否定している。分かってる。ドリアードがやったんだろ。


 俺はあざとい表情をしているコルキスに目線を合わせて叱る。


「コルキス、ヒュブクデール401世は偉いんだぞ。吸血したら駄目だろ」


「偉さでいったらぼくたちの方が上だもん」


 いや、そりゃ王子だからそうかもしれないけど……


「違う、そういうことを言ってるんじゃない」


『アルフの負けだな』


 煩いぞドリアード。


「先に受付のページ(・・・)へ行ってるわよ」


 やや呆れ顔のモネールが俺たちに声をかけて消えた。もちろん立体的な魔方円に包まれてだ。


 そういえば、ホノリウスもページがどうのって言っていたけど、何のことだろう。


 はっ!! それよりもどうやってここから移動するんだ!?


 辺りを見回しても出口は見当たらない。


「もう怒らないって約束してくれるなら、兄様が考えてることの答えを教えてあげるよ」


 クスッと笑ってコルキスが取引きを持ちかけてくる。


 俺に選択肢はなかった。

~入手情報~


【名称】アノアアオムシのソファ

【分類】魔物椅子

【属性】素材となったアノアアオムシと同じ

【希少】☆☆☆☆☆☆

【価格】共通金貨265枚

【アルフの聞きかじり情報】

アノアアオムシを生きたまま加工し作られたソファ。

ヒュブクデールに住まう家具職人のオリジナル家具で、他では真似できない珍しいものらしい。1つ作るのに2~3週間かかるそうだ。シルクよりも滑らかな肌触りに、ぶにゅふわな感触が体を包み込んでくれる。生きてはいるが完全にソファと化しており襲われる心配はなく、餌やり等のお世話も不要。表面が乾燥してくると寿命間近、買い替えのサインなんだとか。ヒュブクデールでは数年前から大流行している。魔法王国の王妃(義母上)たちに献上されたこともある。


~~~~~~~~~


【名前】ドリー

【種族】ドリィアド族

【職業】煌めきの森

【年齢】日替り


【レベル】日替り

【体 力】313

【攻撃力】829

【防御力】771

【素早さ】529

【精神力】2031

【魔 力】902


【通常スキル】交信/歌/踊り/日向ぼっこ/月影ぼっこ

【固有スキル】陽気/無頓着/植物愛/フォレストソーラー/アトゥムシード


【先天属性】植物/光

【適正魔法】植物魔法/光魔法


~~~~~~~~~


【名前】リイア

【種族】ドリィアド族

【職業】潤いの森

【年齢】1歳


【レベル】99

【体 力】971

【攻撃力】日替り

【防御力】108

【素早さ】928

【精神力】日替り

【魔 力】2837


【通常スキル】交信/歌/踊り/日向ぼっこ/月影ぼっこ

【固有スキル】泣虫/心配性/植物愛/フォレストティア/テヌフトリーフ


【先天属性】植物/水

【適正魔法】植物魔法/水魔法


~~~~~~~~~


【名前】アド

【種族】ドリィアド族

【職業】別れの森

【年齢】1歳


【レベル】99

【体 力】381

【攻撃力】377

【防御力】836

【素早さ】687

【精神力】日替り

【魔 力】日替り


【通常スキル】交信/歌/踊り/日向ぼっこ/月影ぼっこ

【固有スキル】気紛/噂好き/植物愛/フォレストブレス/シューノード


【先天属性】植物/風

【適正魔法】植物魔法/風魔法


~~~~~~~~~


【名前】ドド

【種族】ドリィアド族

【職業】隠された森

【年齢】1歳


【レベル】99

【体 力】71

【攻撃力】19

【防御力】日替り

【素早さ】日替り

【精神力】691

【魔 力】1029


【通常スキル】交信/歌/踊り/日向ぼっこ/月影ぼっこ

【固有スキル】熱血/収集癖/植物愛/フォレストベース/ゲブステム


【先天属性】植物/土

【適正魔法】植物魔法/土魔法


~~~~~~~~~


【名前】ドア

【種族】ドリィアド族

【職業】滅びの森

【年齢】1歳


【レベル】99

【体 力】72

【攻撃力】120

【防御力】日替り

【素早さ】263

【精神力】779

【魔 力】日替り


【通常スキル】交信/歌/踊り/日向ぼっこ/月影ぼっこ

【固有スキル】残酷/守護/植物愛/植物憎悪/フォレストグリーフ/セトルーツ


【先天属性】植物/氷

【適正魔法】植物魔法/氷魔法


~~~~~~~~~


【名前】アリド

【種族】ドリィアド族

【職業】豊饒の森

【年齢】1歳


【レベル】99

【体 力】日替り

【攻撃力】120

【防御力】日替り

【素早さ】192

【精神力】733

【魔 力】1018


【通常スキル】交信/歌/踊り/日向ぼっこ/月影ぼっこ

【固有スキル】博識/強か/植物愛/フォレストシュライン/イシスフラワー


【先天属性】植物/火

【適正魔法】植物魔法/火魔法


~~~~~~~~~


【名前】ドリア

【種族】ドリィアド族

【職業】天空の森

【年齢】1歳


【レベル】日替り

【体 力】77

【攻撃力】日替り

【防御力】928

【素早さ】112

【精神力】920

【魔 力】日替り


【通常スキル】交信/歌/踊り/日向ぼっこ/月影ぼっこ

【固有スキル】無口/冷静/植物愛/フォレストサプリケーション/ヌトブランチ


【先天属性】植物/雷

【適正魔法】植物魔法/雷魔法


~~~~~~~~~


【名前】アリア

【種族】ドリィアド族

【職業】葬祭の森

【年齢】1歳


【レベル】999

【体 力】日替り

【攻撃力】日替り

【防御力】日替り

【素早さ】日替り

【精神力】999

【魔 力】999


【通常スキル】交信/歌/踊り/日向ぼっこ/月影ぼっこ

【固有スキル】頑固/寂しがり/植物愛/フォレストレギュレラリティ/ネフティスポレン


【先天属性】植物/影

【適正魔法】植物魔法/影魔法


~~~~~~~~~


【名前】アドイード

【種族】ドリィアド族

【職業】復活の森

【年齢】1歳


【レベル】日替り

【体 力】日替り

【攻撃力】日替り

【防御力】日替り

【素早さ】日替り

【精神力】日替り

【魔 力】日替り


【通常スキル】交信/歌/踊り/日向ぼっこ/月影ぼっこ

【固有スキル】無邪気/うっかり/植物愛/微臭気/フォレストアアル/オシリスプラント


【先天属性】植物/日替り

【適正魔法】植物魔法/日替り

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