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10話 産まれたてのダンジョン?

後書き修正

 ダンジョンに入ると空気が一変した。


 さっきまでは風と日差し心地よかったのに、ダンジョンの中はひんやり肌寒い。


 壁や床は樹皮のようで石みたいなのが埋って微かに光ってる。


 お陰で視界はそこまで悪くないけど、床がでこぼこしてて歩きづらい。


「ソウタ兄ちゃん、ジル姉様は?」


 てっきりジル姉様もすぐ合流するのかと思ったのにいなかった。


「ジルは地下2階を探索するってよ」


「そうなんだ……1人で大丈夫なの?」


 いくら産まれたてのダンジョンだからって魔法使いが1人で探索するのは危険じゃないかな。


「ジルなら問題無いさ。適正魔法全部で特級魔法が使えるんだぜ。それに防御壁も結構固いの出せるしな」


「そ、そうか。なら良かった」


 ジル姉様、そんなに凄くなってたんだ。


 勇者と旅をする前は特級魔法なんて使えなかったのに半年でとんでもない成長したんだな。


「わっ!?」


 窪んだ床に足を取られて勇者にしがみついた。


「おっと、気を付けろ。ここはまだ歩きやすい方だぞ。地下2階からは根っこが至る所にあるからな」



 ちょっと嬉しそうな声で勇者が注意しながら頭を撫でてくる。


 外でやられると嫌だけど、ダンジョンの中だとまあまあ安心するな。





 しばらく歩くと広めの部屋についた。


 部屋の隅っこに1メートル位の茸が3つ生えてる。


「あの茸はぐっすりマッシュルームだ。刺激を受けると胞子を出してくる。吸い込むと眠たくなるから気を付けろよ」


「わかった」

「よし。じゃあ俺が氷でぐっすりマッシュルームを覆うから、丸い隙間から茸を思いっきり突くんだぞ」


「うん」


 難なくぐっすりマッシュルームを3体倒せた。ついでにドロップ品も1つ。

瓶に入った何かだ。


「ソウタ兄ちゃんのお陰で魔物を簡単に倒せるよ。クライスも倒し易くしてくれたけど、今みたいな方が安心してできるね」


「そうか、クライスよりやり易いか。よかったよかった。ドロップ品は眠り粉だな。アルフはアイテムボックス持ち?」


「ううん、俺は持ってない」


「じゃあドロップ品が出たら俺が持っとくな」


「うん、お願い。あ、そうだ。レベル上がってる?」


「まだだな」


「そっか」


 俺達は部屋に隠し扉や宝箱がないか探したあとその部屋を後にした。


「……なぁアルフ。お願いって言うときはソウタ兄ちゃんとセットにしてくれないか?」


 通路を歩いていると勇者がまた妙な事をいい始めた。


「なんで?」


「その方が嬉しいからだよ。頼られてるって感じがする」


「気が向いたらね。あ、そろそろ次の部屋が見えてきたよ」


 勇者とは1日しか一緒にいないけど、こういう頼みをあっさり聞くのは良くないと学んでる。


「チェッ」


 残念がる勇者だけど、絶対そう思ってない。


「お、部屋から魔物が出てきたな。ゴブリンがスライムを追いかけてるみたいだ。さっきと同じようにするから」


「わ、わかった」


 またあっさり魔物を倒せたな。


「ねぇソウタ兄ちゃん、魔物を氷で覆うときにダメージも与えてるの?」


「あぁ、瀕死になるくらいまで削ってるよ」


「そ、そっか。ありがとう」


 やっぱりか。どうりで簡単に倒せると思ったよ。


「アルフ、さっきのでレベル上がったみたいだぞ」


「本当? やった! ありがとうソウタ兄ちゃん!!」


 嬉しくて笑顔でそう言うと勇者はだらしない表情になった。


 せっかくの顔が台無しだな。


「それにしてもアルフの魔力の上昇率はえげつないな。1レベルで10000も上がるなんてな」


「ずっとそうだよ。皆も異常過ぎるって言ってる。あと宝の持ち腐れってのも」


「そんなことないよアルフ。孵化のスキルって魔力を結構使うみたいだから、ちょうどいいんじゃないか」


「そうかな」


「そうだよ! それに新しい固有スキルも魔力使うタイプかもしれないだろ? そしたら魔力があって良かったって思うさ」


「う、うん……」


 勇者は励ましてくれるけど、しょうもない固有スキルだったらどうしよう。


 通常、孵化のスキルは養鶏とかで重宝されるけど、それ以外ではカススキル扱いだし。


 しかも俺は魔力を使うタイプの固有スキルだから余計に……


「さ!張り切っていこうぜ!!」


 ぽんっと背中を叩いて勇者がニッと笑いかけてくる。


 爽やかすぎて風が吹いてきそうだよ。


「うん。とにかくあと2レベル上げてどんな固有スキルかちゃちゃっと確かめよう!」

 

 次の部屋の魔物をを倒すともう下に降りる階段があった。

 

 やっぱり産まれたてだから小さいんだな。


 俺が階段を降りようとすると、慌てて勇者が腕を掴んできた。


「な、何!?」


「この階段は罠なんだよ。本物はあっち」


 階段が罠!? そんなの聞いたことがない。


 勇者に案内された所は隠し扉になっていてそこから地下に行けるようになっていた。


「いや、絶対あの罠に引っ掛かるよね。あれって引っ掛かったらどうなるの?」


「下の階に落ちるだけだよ。結構痛かったなぁ」


「あ、引っ掛かったんだ」


「そりゃあな。あの罠はズルい」


「アハハハ」


 勇者でも罠に引っ掛かったりするんだ。ちょっと親近感が湧いたな。


 そんなこんなで地下2階に着いた。この階では魔物にまったく遭遇しなかった。


 きっとジル姉様が全部倒したんだろう。


 最後の部屋に着くと、姉様が念入りに壁を調べているところだった。


「ジル姉様!」


 俺が声をかけると、バッと振り返ってキッと睨んできた。


 え、どうしたんだろ?


「ソウタ様、ソウタ様は階段の罠のことを御存知だったのかしら?」


 妙に優しい口調で言いながら俺達に近付いてくる。


「ん? あぁ、まぁな。でもジルなら気付くかなって思ってさ」


 勇者は悪びれる様子もなく笑ってる。


「気付くわけないでしょ!! あんなの反則よ!!」


 え? え? え?


 ジル姉様が他人にこんな口調で話すなんて初めてだ。


「ハハハ、悪い悪い。確かに反則だよなー、あんな罠」


「もう! 笑ってないで私に回復魔法かけてよ。ちょっと足を捻っちゃったんだから」


「わかったよ……ほら!もう大丈夫だろ」


「ふふっ。やっぱりソウタの回復魔法は心地いいわ。ポーション使わずに待っててよかった」


 勇者って回復魔法も使えるのか。


 それに姉様、あんなに勇者と打ち解けてるんだな。なんか俺以外にあんな感じなのちょっともやもやするな。


「あ、そうだ。アルフはレベル上がったの?」


「うん。1つ上がったよ」


「そう、良かったわね。ところでソウタ、このダンジョンって産まれたてって言ってたわよね?」


「あぁ」


「それって本当? あれから宝箱を2つも見つけたんだけど、どっちもかなり価値がありそうなんだけど……鑑定してみてくれない?」


「わかった」


 姉様勇者が鑑定スキル持ってるの知ってるんだ。 

 

 一緒に旅してたんだから当然か……。


 姉様がアイテムボックスから2つのアイテムを取り出して床に並べた。うっすら緑に光る半透明の杖とキラキラした光りの輪。


「なんか凄そうだね」


「でしょ? ねぇソウタ、何か分かった?」


「あぁ、こっちの杖は植物魔法が発動する魔道具で、こっちの光る輪っかは装備すると浮遊魔法の効果と簡単な光魔法が使えるみたいだな」


 どっちも凄いな!!


「やっぱり。こんな浅い階層で手に入る代物じゃないわよね」


「そうだな……どうなってるんだろう」


「ねぇ、その光の輪っかって俺が装備してもその効果あるのかな?


「いや、どうかな。装備してみるか?」


「いいの!? やった!!」


 じゃあ早速装備してみよう。


「どうアルフ、光魔法使えそう? 浮遊魔法は?」


 …………


「ん、んー。駄目みたい」


 なんだ、やっぱり駄目かー。


「そう、しょうがないわね」


「アルフ、落ち込んだならいつでも俺の胸に飛び込んでいいんだぞ!」


 勇者がバッと両手を広げてこっちを見ている。


「まぁ、ソウタったら優しいのね」


 いや、違うな。


 勇者は自分が満足したいだけだよ、ジル姉様。


「せっかくだけど遠慮しとくよ。あとこれもジル姉様に返しとくね」


 光の輪っかを姉様に返しつつちょっと勇者から離れた。


「それで、このダンジョンのことだけどどうするの?」


「国王様に報告して管理してもらえばいいんじゃないか? 浅い階層で良いものが手に入るダンジョンなんて国の財政がもっと潤うな」


「そうね。きっと父上も喜ぶわ」


「とりあえずアルフのレベリング終わったら、ここは荒らされないように封鎖だな」


 ヴーーーン・ヴーーーン・ヴーーーン


 突然変な音が聞こえてきた。どうやら俺の後ろから聞こえてるみたいだ。

急いで振り返ったけどそこにはもう何もなかった。



「嘘っ!? 今のダンジョンコアじゃない! 凄い、私初めて見たわ!!」


「まぁ、狭いダンジョンだからな」


「え、なに? さっきの変な音ってダンジョンコアだったの!?」


 くそぅ、俺も見たかったよ。


「まぁ、運が良かったらまた見れるだろ。じゃあちょっと気になることもあるけど、最下層まで行ったらすぐ引き返す。これから遭遇する魔物は全部アルフは倒す。それでいいか?」


「えぇ、それでいいわ。2人が魔物を相手にしてる間に私は宝箱探し励むわ」


「う、うん。俺もそれでいいよ。ソウタ兄ちゃんもジル姉様もいるから大丈夫」


「ソウタ兄ちゃん……?」


「よし、じゃあすぐに行こう。ここの階段は罠じゃないからな」


 そう言うと勇者はさっさと階段を降りて行った。


 俺も急いで勇者に付いていった。

~入手情報~


【名 称】眠り粉

【分 類】胞子

【属 性】ぐっすりマッシュルームの先天属性と同じ属性

【希 少】☆

【価 格】共通木貨2枚

【説 明】

ぐっすりマッシュルームのドロップ品。吸い込むと眠たくなってしまう粉。


~~~~~~~~~


【名 称】草木の杖

【分 類】魔法杖

【属 性】植物

【希 少】☆☆☆☆☆

【価 格】共通金貨391枚

【説 明】

魔力を消費することで植物魔法が使える杖。

先天属性が植物の者はこの杖を吸収し、自身の植物魔法を強化することもできる。


~~~~~~~~~


【名 称】下級天使の輪

【分 類】頭飾り

【属 性】光

【希 少】☆☆☆☆☆☆

【価 格】共通金貨520枚

【説 明】

キラキラ光る小さな光輪。

装備すると浮遊魔法が発動できる。また、光魔法も下級までなら使えるようになる。先天属性が影属性や闇属性の場合装備できない。


~~~~~~~~~


【名 称】ダンジョンコア

【分 類】迷宮核

【属 性】不明

【希 少】☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

【価 格】時価

【説 明】

魔素の濃い場所で稀に自然発生する魔力の塊。ダンジョンの核としての機能をもつ。自我をもつものも多い。ダンジョンコアが原因で発生するダンジョンをコアダンジョンと呼び、コアが破壊されない限りダンジョンは永遠に成長していく。ダンジョンコアはダンジョン内を移動し続けているため、発見するのは不可能に近い。


~~~~~~~~~


【名 称】魔法剣

【発 現】クライス・ハウデル

【属 性】無し

【分 類】魔法武装型/固有スキル

【希 少】☆☆☆☆☆

【効 果】

自身の魔法を剣に変化させることができる。変化させた剣で攻撃すると攻撃が当たった瞬間にその魔法と同じ威力や効果が現れる。剣は自身のレベル1/10回攻撃すると消える。1日の間で自身のレベルと同じ回数までは魔力を消費せずに発動できる。剣を元となった魔法に戻すことはできない。


~~~~~~~~~


【名 称】魔法拳

【発 現】アーシャ・ムンク

【属 性】なし崩し

【分 類】魔法倍化型/固有スキル

【希 少】☆☆☆☆☆

【説 明】

自身の魔法を己の身体に纏わせ攻撃することができ、魔法単体として与えるダメージより4倍の威力になる。また、魔法を拳のみに纏わせた場合の威力は7倍。攻撃するごとに発動させる必要がある。1日の間で自身のレベルと同じ回数までは魔力を消費せずに発動できる。


~~~~~~~~~


【種族名称】ぐっすりマッシュルーム

【先天属性】必発:土/偶発:水

【適正魔法】必発:-/偶発:土

【魔核錬成】詳細不明


【初期スキル】突進・菌糸・苗床

【固有スキル】眠り胞子


【通常ドロップ】眠り粉

【レアドロップ】魔核・ふかふか傘


【鑑定情報】

ダンジョン生まれの茸型魔物。

50センチ~1メートル程の大きさで、刺激を受けると眠気を引き起こす胞子をバラ蒔くGランクの魔物。レアドロップのふかふか傘が割りと美味しい。


~~~~~~~~~


【種族名称】アーティファクトゴブリン

【先天属性】必発:土/偶発:火・水・風・氷

【適正魔法】必発:-/偶発:土・火・水・風・氷

【魔核錬成】詳細不明


【初期スキル】威嚇・叫び・とびかかる

【固有スキル】強制繁殖・悪臭


【通常ドロップ】-

【レアドロップ】魔核・体液


【鑑定情報】

ダンジョン生まれの亜人型の魔物。

緑色の小柄な魔物だが、人間を軽く殺す腕力を持っているEランクの魔物。ゴブリンといえば人間の感覚では醜く汚い魔物だが、実際は非常に可愛らしい種類も存在する。残念ながらこのゴブリンは大変醜い。なお、ゴブリン族という人間に近い種族とは全くの別種である。


~~~~~~~~~~


【種族名称】アーティファクトスライム

【先天属性】必発:植物・無/偶発:-

【適正魔法】必発:-/偶発:-

【魔核錬成】詳細不明


【初期スキル】蠢く

【固有スキル】触手・消化


【通常ドロップ】粘液

【レアドロップ】魔核・とろみのある種


【鑑定情報】

ダンジョン生まれの不定形の魔物。

ジェル状の身体を持っており、何でも消化して栄養にする事ができるGランクの魔物。スライムといえば非常に弱い個体が多いの特徴だが、ダンジョン生まれのスライムの場合は異常ともいえる強さの個体が存在するため、注意が必要である。また、大変進化しやすい魔物であり、多くの上位種が確認されている。余談だが、魔法王国ではダンジョン外の通常種が駆け出し冒険者に追いかけ回されている様子が初夏の風物詩となっている。スライム遊び、という魔法王国特有のちょっこ危ない子供の遊びも存在する。

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