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112話 ベッドの上で

後書き修正。

 虚しい冷静さに背中を押され脱衣場に出るとコルキス様がいた。使い魔のディオス様が服を脱がせているということは、これから入浴するのだろう。


「申し訳ありません。私のようなものが先にお湯を頂いてしまいました。すぐに張り替えます」


 跪いて謝罪する。


「そんなことしなくていいよ。ルトルは兄様の恋人になりたいんでしょ? じゃあ行く行くはぼくの義兄様になるってことだから……その、いいよね?」


 コルキス様が指を動かしモジモジした様子で聞いてくる。


 凍てついた心の持ち主という噂とはかけ離れた姿だ。それに改めて言葉にされると羞恥で顔が熱くなる。


「はい、許されるなら――うっ!?」


 こっちは噂通りか。返事も待たず首に齧りついてきたコルキス様が吸血していく。


「けっぷ……うん、思った通りルトルの血は美味しいね。合格だよ。あの麒麟獣人とは大違い。ね、ディオス」


 麒麟獣人?


 誰と比較されたのか分からないが、合格というのはつまり……


「あ、そうだルトル。兄様ってね、とある麒麟獣人の男にしつこく結婚を迫られて困ってるんだよ。ぼくも守るけどルトルも守ってあげてね。兄様って浅はかだし雰囲気に流されやすいところがあるから」


 なんだと?

 

 そんな迷惑男がいただなんて。きっとアルフ様は優しいから断りきれないんだろう。


「その麒麟獣人ってね、カミルっていうんだよ」


 その名前を聞いて一瞬身体が強張る。


 いくらなんでもそんな訳が――


「確かフルネームは、カミル・ニア・マデイルナンだったかな。あ、でも今はただのカミルか。ルトル、もしそいつが兄様に近付いたら気を付けてね。お願いだよ」


 カミル・ニア・マデイルナン!?


 まさか、そんな……俺たちを奴隷に落としたアイツの異母兄弟。前マデイルナン大公の実子にして愛人、そしてあのクソ爺の孫。


 なにより俺たちを不幸のどん底に叩き落としたあの暗殺事件の原因。


「どうしたの? そんなに歯を食いしばるのはよくないよ?」


 コルキス様が頬を擦ってくれる。アルフ様同様なんてお優しい方なんだ。


「あのね、ぼくしばらくディオスとお風呂で遊んでるから。たぶん2時間くらい。さっきも言ったけど兄様って流されやすいんだよ? あ、でも純潔だから安心してね。じゃあ頑張ってねね」


 コルキス様はニコっと笑い、急かすディオス様を連れて浴場に入って行った。


 なんてことだ。せっかく収まっていた燻りが戻ってしまったじゃないか。流されやすい……はたしてこの甘い誘惑に乗ってしまっていいのだろうか。



 ##########



 コルキスとほぼ入れ違いでルトルが出てきた。風呂上がりって雰囲気変わるよなあ。


「こっち来てルトル。アグアテスで作った卵を孵化させたんだけど、何か欲しい物ある?」


 何個か良さそうな物が出てきたからルトルにもあげたい。買い物じゃないけど、友達とこうやって物を選ぶってやってみたかったんだ。


『私は頭を取りに行ってくるわ。モーブったら気が利かないんだから』


 一眠りしたロポリスがそう言って姿を消し、俺が座っているベッドの上に頭の無い人形が落ちる。アイテムを並べた所にだ。気が利かないのはロポリスも同じじゃないか。


「欲しい物……私は、その…………特にありません」


 正面に来たルトルが視線を落として言う。


 遠慮してるな。


「本当に? これが気になったんじゃないの?」


 ルトルの視線の先にあったのは胡座をかいた俺の足の上に置いていたアームバングル。


 確かザディア=ルフレンっていうんだっけ。ルトルがお風呂から出て来る前にロポリスが全部アイテムを見てくれてたんだ。最初に欲しい物を選ぶ権利と引き換えにな。ったく、半分以上持っていくんだもんなあ。ルトルと違って遠慮が無さすぎるよ。


「え? あ、いえ……」


 まだ顔が赤い。出てくるまで時間がかかったし、やっぱりのぼせたんじゃ……


「ルトル、座ろう。顔が赤い。のぼせてるんじゃないか?」


 俺の左隣を叩いてベッドに座るよう促す。


「ですが主のベッドに座るなど――」


「主じゃなくて友達な! ほら早く」


 しぶしぶといった感じでベッドの端に座るルトルだけど……そんなに離れて座ったら話し難いじゃないか。


「しょうがないな。グルフナ、頼む」


「ゴゲァ」


「なっ!?」


「ふっふっふっ、俺から離れられると思うなよ」


 グルフナにお願いしてルトルを隣まで引っ張ってもらった。触手なんて可愛くないと思っていたけど、便利だよこれ。


「……い」


「え、何?」


 本当はちゃんと聞こえていたけどハッキリ言って欲しくて聞き返した。


「何でもありません」


 ちぇっ。まあこれからに期待だな。


「じゃあ、とりあえずこれはルトルのな。つけてあげるよ」


 ザディア=ルフレンは咆哮する2体のドラゴンが尾を絡ませていて、それぞれの目に紫色の石が嵌め込まれている。


「似合う似合う」


 筋肉質なルトルの二の腕にぴったりだな。主張はしてるけどめちゃくちゃ派手って感じじゃないしかなり良いと思う。


「あの、これは普通のアームバングルなんでしょうか? アルフ様の卵からは特殊な効果の物も出てくると」


 あ、そうだった。


「ごめん、これマジックアイテム。病気に罹らなくなるんだって。あと――」


「そ、そんな凄い物を頂くわけには!」


 まだ最後まで説明してないのに凄い勢いで拒否するじゃん。


「いいって、遠慮はなしなし。でもそうだな。あげる代わりに俺のも何か選んでほしいかな。できれば身に付けるやつ」


 今回は割りとアクセサリー系の装備品が多く出てきた。俺じゃ使えない物も多いけど、ルトルが選んでくれたものなら何でも大事にするぞ。なんたって友達に選んでもらう物なんだから。


「……分かりました。それでは、こちはどんな効果がある物でしょうか?」


「どうしてこれ?」


「っ……それはアルフ様に似合いそうだったからです」


「じゃあこれにするよ、お揃いだし。つけてくれる?」


 ルトルが指差したのはガイアル=トルナリム。ザディア=ルフレンと同じくドラゴンをモチーフにしたアームバングルで、ルトルの目と同じ色の石を抱え込んだドラゴンの形が格好いい。


「ちなみにこれ、ルトルのアームバングルと同じ卵から出てきたんだよ」


 まさかこれを選ぶとは思わなかった。自然とアームバングルを撫でてしまう。


 くぅぅ友達とお揃いとか最高だな。やってみたかったことが1つ叶ってめちゃくちゃ嬉しい。


「他には?」


「もう十分すぎるほどです」


 そうは言うけどルトルの視線は右斜め下。どれだぁ~?


「本当に? 今、何か見てなかった?」


「い、いえっ……」


 ルトルが上擦った声で否定する。そして膝を抱えて座り直す。お風呂でもそうだったけど、膝を抱えて座るのが癖なんだろうか。


「そうか。じゃあ片付けるよ?」


「はい」


 小さく頷くルトル。


 ロポリスが戻ってきたらドゥーマトラの所に預けてもらおう。それまではテーブル上に置いとけばいいか。


「あれ? どこ行くんだ? ルトルは俺と一緒に寝るんだからな」


 同じベッドでゴロゴロしながら寝落ちするまで語らう。これぞ友情って感じがして堪らない。だからベッドから降りようとしていたルトルを引き止めた。


「一緒に!? それは、もしかして……」


「あ、ルトルも同じこと考えてた? 瑠璃色の魔法使いと大岩の巨人っていう物語で友達同士がベッドで語り合う場面があってさ、ずっとやってみたかったんだよ。ルトルも読んだことあるんだな?」


「は、はい!」


 おお、やった! 光の粒を放つ笑顔だ!


 ルトルも俺と同じで語らえるのが嬉しいんだな。どこか余所余所(よそよそ)しかった雰囲気も少し和らいだ気がする――

――。


#########


「あ~あ。兄様の鈍感さは罪深いよね」


 1人眠りこけた兄様をヒストリアで見て呆れ果てた。兄様はあの物語の下巻を読んでないからあんなことも平気で言えちゃうんだろうな。


 ディオスも同じ気持ちだったのか激しく肯定してくれた。


 生殺しにされたルトルは今、トイレに籠ってる。


「それにしても兄様は虫に好かれやすいんだから。でもちゃんとぼくがプチって潰してあげるよ。安心してね」


 ちょっともったいないけど。


 ぼくはどうすればあの厄介な()()()()()()を消せるのか考えながら、兄様を吸血した。

~入手情報~


【名称】ザディア=ルフレン

【分類】架空竜輪

【属性】土/聖光

【希少】☆☆☆☆☆☆

【価格】-

【ロポリスの暇潰し解説】

①:ザディアドラゴンとルフレンドラゴンという架空のドラゴン2体を模したアームバングルよ。

②:両ドラゴンの鱗と牙で作られてるわ。

③:両ドラゴンの魔力結晶体の欠片が目に嵌め込んであるの。

④:病に罹らなくなり装備前に罹っていた病も完治する優れものね。

⑤:装備者の魔力で染め上げることができれば、Aランク以上の魔力結晶体を犠牲にして一定時間だけ分裂し両ドラゴンに変じられるようになるわ。

⑥:最初の装備者の専用アームバングルになるのよ。


~~~~~~~~~


【名称】ガイアル=トルナリム

【分類】架空竜輪

【属性】土/死

【希少】☆☆☆☆☆☆

【価格】-

【ロポリスの暇潰し解説】

①:ガイアルドラゴンとトルナリムドラゴンという架空ドラゴン2体を模したアームバングルよ。

②:両ドラゴンの骨と額にある小さな宝玉で作られてるわ。

③:両ドラゴンの魔力結晶体の欠片が目に嵌め込んであるの。

④:先天属性が土、死のものとあらゆる相性が良くなるわよ。

⑤:一度でも装備するとこれを外しても身体の相性に対してだけは抜群の効果を発揮し続けるわ。

⑥:装備者の魔力で染め上げることができれば、Aランク以上の魔力結晶体を犠牲にして一定時間だけ両ドラゴンのブレスが使い放題になるわ。

⑦:最初に装備した者とその直前にこれを触った者しか装備できないのよ。


~~~~~~~~~


【名称】大人の掟

【発現】ルトル・アトゥール

【属性】無し

【分類】供物型/固有スキル

【希少】☆☆☆☆☆☆☆

【ロポリスの暇潰し解説】

①:願いを叶える固有スキルよ。

②:何かを耐え忍び続けることで効力が増していくの。

③:心の底から何かを願うと自動で発動し、これまでルトルに関わった誰かの命と引き替えにその願いを成就させるわ。

④:耐え忍ぶ事柄が深刻でなかったり期間が短ければ願いは中途半端にしか叶わず、引き替えにする命の数も増えるのよ。

⑤:もし他人の秘密を暴露すると98%の確率で壮絶な不幸に見舞われるけれど、2%確率で大きな幸運に恵まれるって効果もあるわ。

⑥:ルトルと秘密を明し合った者はこの固有スキルによって命を引き替えにされにくくなるわよ。

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