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8話 勇者は離れたくない

後書き修正

 結局今日はレベリングに出掛けられなかった。


 長風呂したせいで身体が怠いよ。


 夕食まで自分の部屋でダラダラしようと思ったのにずっと勇者が居座っている。


 相変わらず距離感がおかしい。


 俺のベッドで寛ぎながら、読書中の俺の髪をクシャクシャといじってくる。


 普段は微笑みの絶えないアーシャがずっと無表情でなんか怖い。


「なぁアルフ、俺今日からここで寝るからな」


「無理」


「大きいベッドなんだから大丈夫だろ」


 そういうことじゃないし、いい加減どっか行って欲しい。


 話に聞いてた『勇者様』のイメージと全然違う。


 ジル姉様はこの人のいったいどこに惚れたんだろうか。


「お2人は随分と仲がよろしいんですね」


 勇者を見ながら考えてたら、アーシャが聞いたことないトーンで声をかけてきた。


「そうなんだよ! さっき風呂で話したら凄い打ち解けてさ。俺達気が合うんだよ。な、アルフ」


「そうでもないよ」


「そんな悲しいこと言うなよー。風呂ではあんなキラキラした目で俺のこと見てたじゃないか」


「まぁそれはそうだけど……」


 それは固有スキルのことと鑑定スキルのことを知ったからだ。


 その後の話が無ければ勇者様ってやっぱり凄いなで終わってたけど、あの4時間で勇者がいかに変な奴かが分かったよ。


「アルフレッド様、よろしければ東の塔のお部屋を整えて参りましょうか?」


「頼むよアーシャ」


「では勇者様はご希望通りこのお部屋でお過ごしください。アルフレッド様、枕や室温のご相談もありますのでご一緒にお願い致します」


 さすがアーシャ!


 俺の気持ちをよく分かってくれてる。


「わかった。それじゃあソウタ兄ちゃんは俺の部屋で寝ていいよ」


「では参りましょうアルフレッド様」


「うん」


 読みかけの本をベッドに置いてアーシャに近付く。


 ふっ、残念だったね勇者。この部屋は好きに使えばいいよ。


 君が旅だった後、俺は別の部屋を使うことにするから。


「そうか。まぁアルフも夜は1人になりたいよな。男は1人でこっそりヤることあるもんな」


 勇者がクククッってニヤつきながら言ってくる。


 そりゃ今日は魔法の特訓してないから夜にこっそりするつもりだけど……バカにしてるのか?


 勇者なら笑わないと思って風呂で話したのに、裏切られた気分だ。


「「魔法の特訓のことバカにしてるのかよ!」」

「「アルフレッド様はそんなことなさいませんわ!」」


 アーシャと声が被った。


 え? と思ってアーシャを見るとは真っ赤な顔をしている。


 アーシャも一瞬俺を見ると目を游がせて「あ、あの、魔法!? やだ、私ったら……失礼致します!!」って言うと走って行ってしまった。


「アハハハハハ!!」


 勇者が大声で笑い始めた。


 え、何? 何がおかしかったの?


 アーシャ、何故か恥ずかしそうだったけど魔法の特訓のことは知ってるよな。


 どういうこと?


「アハハハハハ! アーシャとか言ったっけ? あいつ面白いな」


「……何がだよ。あと魔法の特訓のことバカにするなよ。いつか使えるようになるんだからな!」


「違う違う。俺が言ったのはアレだよアレ。15歳ならヤってるだろアルフも」


 本当に何の事を言ってるんだ?


「アレって何だよ。異世界には15歳になったら1人で夜にやらなきゃいけないことがあるのかよ」


「したこと無いのか? これだよ」


 勇者が右手を丸めて上下に動かしている。


 俺もつられて同じように右手を動かした。


 全然分からない。


「この手の動きが何なんだ?」


 俺がそう聞くと、急に真顔になった勇者が小声でなにかブツブツ言ってる。


 何だかよく分からないけど、バカにした訳じゃないならいいや。


 俺もアーシャの後を追おう。


「あ、アルフ。俺1人で寝ると寝不足で明日のレベリングに行きたくなくなっちゃうかもなー。誰かと一緒に寝ないと熟睡できないんだよ俺」


 何だって!? それは駄目だ!!


 勇者の睡眠とかはどうでもいい。


 けど、レベリングは俺1人じゃ頑張っても1レベル上がるかどうかも分からないよ。


 あと少しで新しい固有スキルが手に入るって分かってるのにそんなの嫌だ。


「それは困る。約束したんだから寝不足でも付き合ってもらうからな」


「じゃあ一緒に寝てくれ。寝不足だとちゃんと手助けできなかもしれない。アルフが怪我するのは避けたいから万全の体調で明日を迎えさせてくれよ」


 うーん、誰かと寝るのはあんまり好きじゃないんだけどなぁ。


 でも固有スキルの為だし、しょうがないか。


「わかった。じゃあ俺はあっちの長椅子で寝るから」


「えぇ? ベッドで寝ようぜ」


「くっついてくるから嫌だ」


「くっつかないなら問題ないんだな」


「いや、そういうわけじゃ……」


「くっつかない。約束するよ」


 本当かなぁ?


 キリッとした目で言ってくるのがなんとも胡散臭い。


「約束破ったらもうソウタ兄ちゃんて呼ばないからね」


「くっ……分かった」


 やっぱりか。


 後でドリアードにお願いして見張ってもらおう。


 勇者って本当の弟にもこんなにベタベタしてたのかな。さぞや鬱陶しがられただろうな。


「それじゃあ俺はアーシャにやっぱりソウタ兄ちゃんと寝るって言ってくるから」


「俺も付いて行く」


「別に来なくていいよ」


「アルフとちょっとでも長く一緒にいたいから行く」


 俺はちょっとでも離れたい。


「…………はぁぁ」


 いちいち反応してたら疲れるだけだな。


 それに、そういうことはジル姉様に言ってあげて欲しい。きっと喜ぶよ。


「アルフ行くぞ。さっさと済ませてまたまったりしようぜ」


 俺はもう何も言わず頷いて勇者とアーシャを追いかけた。

~入手情報~


【1人でこっそりヤること】

秘密の作業。

こっそりなので何の事かは個人の想像により異なるだろう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] はじめまして。 主人公に好感が持てるのがいいですね。 勇者のキャラクターも面白い。 こういう個性が物語に深みを与えていると思います。 [一言] 今後も頑張ってください。
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