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第五話  精霊は獣気を嫌う



「【青龍第二門(オステン・ツヴァイ)鏡反響(きょうはんきょう)】【朱雀第二門(ズーデン・ツヴァイ)走狗颯(そうくそう)】【白虎第二門(ヴェステン・ツヴァイ)堅鉄拳(けんてっけん)】【玄武第二門(ノルデン・ツヴァイ)硬装甲(こうそうこう)】」


 微量の獣気を常に放出し続けることで周囲の動きを敏感に察知することができる「鏡反響」、脚に獣気を纏って機動力を強化する「走狗颯」、拳に獣気を纏って攻撃力を強化する「堅鉄拳」、体表面と内臓に獣気を巡らせて防御力を強化する「硬装甲」。


 四つの獣術を同時に使用し、戦いに必要な能力を底上げする。


「四方の型か。獣戦士ならともかく、武器(エモノ)を持つ俺たち獣騎士が使うようなもんじゃねえだろ」


「獣騎士? ……ああ、俺は刀を抜く気はないぞ。徒手格闘なら、四方の型が一番だからな」


「刀を使わねえだと? ふざけてんのかてめえ」


 クラウスが額に青筋を立ててにらみつけてくる。

 よっぽど腹に据えかねたのか、元々鋭い目つきが怒り狂う獣のようになっている。


「別にあんたを見縊っているわけじゃない。ただこの刀は、俺にとって命にも代えがたいものなんだ。あんたの馬鹿でかい獣術で傷でもついたらと思うと、とてもじゃないが使えない」


「実戦で使えねえ刀なんざ、なまくら同然だろ」


 納得がいかず、不満と怒りが滲むクラウスの声音。


「そう殺気立つなって。代わりと言っちゃなんだが、面白いものみせてやるから」


 目を閉じて精神を研ぎ澄ます。

 「四方の型」を維持するための分を残して、ありったけの獣気を咥内に集めていく。


「【麒麟第零門(ツェントルム・ヌル)霊号令(れいごうれい)】!!」


 蓄えた獣気を一気に吐き出すと、藍色に淡く光る玉状のものが次々と出現し、シュンジのもとへ次々に寄ってきた。


「これは……ロートシュヴェルトの……!」


「"虚ろなる空を満たす非有を以て命ずる。我は(きのえ)の風を(もと)め、汝は(きのと)の刃を(たま)う。歳星・緑鱗・涙の薬指。錫の弓矢で天空を射よ"」


 藍色の光――精霊が、霊唱による命令を受け、寄り集まって一つの塊に変化していく。

 完成した霊弾を宙に浮かせ、いつでも発射できるように狙いを定めた。


「どうだ? なかなか面白いだろ」


「……精霊は獣気を嫌う。本来なら獣術使いは霊術を発動することができねえ。その常識を覆す唯一の術が、『霊号令』……」


 クラウスはふわふわと浮かぶ霊弾を一瞥し、


「確かにおもしれえ……! 色々と気になることはあるが、今は全てどうでもいい! 目の前の強敵(てめえ)を切り刻み、俺様の強さを証明すること以外はなあ!! ――【朱雀第二門(ズーデン・ツヴァイ)走狗颯(そうくそう)】!」


 「走狗颯」で脚力を上げたクラウスの突進が迫る。凄まじい速さだが、「鏡反響」のおかげで見切れないものではない。


 上段からの斬り下ろしを難なく避けると、間髪を入れずに水平に薙ぎ払う一閃が撃ち込まれる。

 バックステップでかわし、即座に前進に切り替えて無防備な体に打撃を放つ。

 左手に拳が払われたところで、剣を持つ右手を狙い蹴りを放つと、クラウスは後ろに跳んでシュンジから距離をとった。


「"青嵐ノ風弾"!!」


 剣の間合いを外れたところで、先ほど作った風の霊弾を射出する。


 持つ獣気のほとんどを使って発動した霊術だ。いかに強力な獣術であろうとも容易には打ち払えず、また避けられるような速度でもない。


「ちっ……!」


 クラウスが舌打ちする。

 霊術を生かされないよう接近戦に持ち込んだところを、上手く捌かれてしまったことが頭にきたのだろう。


 苦々しい顔をしたクラウスの眼前に、吹き荒れる暴風を一点に凝縮したような風の霊弾が迫る。


「クソが……!!」


 荒れ狂う風の塊が炸裂し、砂を巻き上げ、地を削り、木々をなぎ倒す。

 辺り一帯は大型の台風に襲われた後のような状態で、その中心にいたクラウスはひとたまりもないだろう。


「死んではいないと思うが、流石に今のは効いただろ」


 半ば勝利を確信したところで、もくもくと立ち昇る砂煙の中に直立の人影を認める。


「……おいおい、勘弁してくれよ」


 砂煙が晴れると同時に現れたのは、少しのダメージを負った様子もなく仁王立ちしているクラウスの姿だった。

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