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アセント 天使の右腕、炎の子  作者: 山彦八里
<1章:孤児院の天使>
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プロローグ

『――私は天使です。そして貴方は手違いで死にました』


 背中に羽の生えた金髪の天使(自称)は開口一番そう言った。

 そりゃそうだよね、と僕も納得することしきり。

 なにせ、マンションの七階にトラックがぶっ飛んできたのだ。これが手違いでなければなんだという話だ。


『つきましては、貴方には異世界に転生していただきます』

「普通にこの世界じゃ駄目なんですか? 復活でもいいですよ?」

『天使は間違えないものです』


 てんし の リコールかくし!

 人生で一番聞きたくない転生理由だった。いや、もう死んでるけど。

 しかしまあ、こちとら天涯孤独、友人のひとりもいない侘しい人生だ。

 偶然で死んでしまったのなら諦めはつく。世界レベルで飛ばされるのも仕方ない。


「それはそれとして、詫びチートはいただけますか?」


 詫び、それは現代に復活したワビ=サビの文化だという。

 風の噂では、ゲームに不具合があると詫び石なるものが貰えるらしい。

 ならば、手違いで死んだ僕は詫びチートを貰える筈だ。貰えるまで粘れば絶対貰える筈だ。


『詫び……地上にはそんな文化があるのですね』

「御一考いただけませんか?」

『粗品でよろしければ』

「もうひと声! こっちは手違いで死んだんですし!」

『私の権限で可能な範囲でどうにかしてみましょう』


 おおう。この曖昧かつ絶対に謝罪しないスタイル、天使(自称)とか言っときながらクレーム慣れしてるぞ。色々大丈夫か。天国も大変なんですね。心中お察しします。


『ご配慮痛み入ります。他に希望はありますか?』

「兄弟がいるといいですね。一人っ子だったので」

『……どうにかしましょう。他、必要な措置は施しておきますので、あまりすぐには死なないでください』

「長生きすればそれだけ発覚が遅れますもんね」

『その通りです』


 ふむ、このくらいわかりやすい方が一周回っていいかもしれない。

 人生に高望みしすぎてもいいことがないのは身に沁みている。

 少なくとも、魔王倒せとか無茶振りされるよりは楽に生きられるだろう。長生きさせたいなら送られる異世界もきっと平和に違いない。平和だといいな!!


『では、転生の儀式に入ります。目を閉じてください』

「よろしくお願いします」

『……私が言うのもなんですが、第二の人生は健やかに過ごせるよう祈っております』


 目を閉じる寸前に見た天使(自称)の表情は穏やかで、優しいものだった。

 琥珀色の瞳を細めた、男でもどきりとしてしまうような、慈愛に満ちた表情だった。

 ……なんだ、そういう顔もできるんじゃないか。

 最初からそういう顔してたら天使だって信じたかもしれないのに。変なところで律義な天使(自称)だ。


「……ところで、その手に持ってる粘土的なサムシングはなんですか?」

『ちゃんと目を閉じてください。失明しますよ、眩しいので』

「アッハイ」

『では、現し身の作成を……性能は可能な限り上げて……詫びチートに私の魔技(マギ)を……あっ』

「あって言った!? 今、あって言いましたよね!?」

『気のせいです。しかし、外見がこれではさすがに……』


 ちょっと待って。もしかしなくてもそれ僕の体造ってるよね!? こねこねしてるよね!?

 外見にそこまで注文付けないけど、生きていくのが辛いまでいくと死んじゃいますよ!?


『仕方ありません……現し身は月曜の天使(ガブリエル)に……見た目は私を模して……勝手に腕を増やさないよう見張りを……はて、翼は要るのでしょうか……』


 こわい。聞こえてくる天使(自称)のひとり言がこわい。

 果たして僕はまともに転生することができるのだろうか――――――。



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