表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

状況を整理しよう

「------------」


凛とした、透明感があるのに芯が強く通っている声が私を抜けて空に響く。

いや、正確に言えば空から・・・地の底に雷が走ったような声だ。それは成熟した女性を思わせる。


緊張しきり、体が思うように動かない体に鞭を打って目を開ける。

槍のような棒を片手に持つ彼女は翼を付ければ天使のような人だった。

槍を老人に突き、何かを言いつける彼女。

震えなら私はそれを見る。あまり頭が回らない。


彼女が槍を上に向け、何かを言い怒鳴った。

一瞬で槍先が丸くなり、光った。

足元から変な光が出てきたあの時を思い出し、咄嗟に目を瞑る。


なんだよ。なんなんだよ。

さっきから光ってばっかり、気絶してばかりで私はただの天手古舞。

必死に動かない足を動かして逃げようとしたあの時を思い出す。

これじゃあ、本当にいつ死ぬかわかったものじゃない。

光から顔を背き、前髪で少しでも遮るようにと下を向く。

不思議な浮遊感と、何処かを強打したような感覚に、私はまた眠ってしまった。



***



体全体が打ち付けられるような感覚に目が開く。

眠る前の状況も忘れて思いっきり頭を上げると鈍い音と呻き声が2つ重なり、私は後頭部を抑える。


それで学校帰りの出来事から放火された火を思い出し、鶏顔負けの悲鳴をあげて後ずさると背中がどこかにぶつかり、私は踞る。

全身打って頭打って背中打つって....すごい焦ってんな私。


痛みが若干引いてきた頃、そういえば誰か居たなと目を開ける。


宝石のように硬そうな印象を持つ深青の髪をセンター分けにしたあの時の青年が目の前でただただ私を見ている。

猫のように丸い黒色の瞳孔に、髪色と同じ吸い込まれそうな青。髪も目も緑色の灯に照らされ水晶のように反射している。

顔は歪んではいない、しかしどこか親密感を漂わせる顔立ち。綺麗だがイケメンの類には入らないだろう。


ジーっとお互いがお互いを見た後、彼は私が背中をぶつけたらしい机の上を手で探り、紙を私に渡す。

この人は私を打たないのかなと内心安心しながら、渡された折り畳まれた紙を開く。

そこにはアルファベットが並ばれていた。

教科書のように綺麗な字が筆記体で長々と書かれている。

この字は彼が書いたのだろうか。だとしたら凄い。男の人なのに字がとてもうまい。いや、男性だから下手というわけではない。

しかし、ある程度読めるが所詮学生だ。1部の単語が読めない。

彼此5分程費やして文を解読させていくと、ふとおかしいと違和感を感じた。


恐らく帰り道のあの光も、あの時の彼女がだした光も信じがたいが魔法だ。まず目の前の彼も髪色が変だし、瞳孔も異常に丸く大きい気がする。これを見れば魔法という概念が存在するファンタジー世界だと餓鬼なら信じ込むだろう。ただしゲーム好きやファンタジー漫画好きに限る。


ファンタジーなのに、なぜ私が嫌で世界の共通語でもある英語がこちらにも存在するのだろう。

ああ、もっとちゃんと勉強しておけばよかったな。そうすればここの人たちが言ってる事が分かったかもしれない。

(まずあれが英語なのか、恐怖で震え切った私には理解する術もなかったのだろうが)



頭がこんがらがってイマイチいま自分が置かれている状況が理解できない。

まずは、なぜ私が一角であるだろう1つの部屋で、この男性と一緒にいるのか。理由はわからないのは当然なのでとりあえず成り立ちを考えよう。


私は学校から帰っていた。

何処へ?家へだ。

その帰り道で何かに躓いた。

何が?知らん。

取り敢えず、私はそれで何に躓いたのか見ようとしたのだ。多分。

そうしたら足元が光り、まるで水面に一滴朝露を落としたかのように、波紋が広がるようにそれ(・・)も広がった。

その光が余りにも眩しかったから、私は目を閉じた。

よくよく考えれば、私は彼処で意識が飛んでいたかもしれない。光っていただけだからもしかしたらただそこでずっと待っていたかもしれないが、その時何を考えてきたのか覚えていないので、失っていたのだろう。


それで、目覚めたら大衆に晒されていた。

その時もチラチラ深青の髪色やフードやスキンヘッドや緑髪やら見えていたが、私は気にせず殴られた。そして逃げる。

そしてまた殴る。


その時の金髪の人達の()を思い出し、手を強く握った。

震えていたのだろうか、肩にそっと布を掛けられる。

続けよう。


目が覚めたら、棒に縛られていた。

個人的には火あぶりにするなら十字架にして欲しいのだが、おそらくあれはただの棒だ。立てかけた棒を横にすればモ◯ハンお馴染みあの曲が流れ私はこんがり肉にされるだろう。「上手に焼けました」という女性の声と共に。


そうして火が放たれ、危うく日の下に晒された吸血鬼よろしくな状況になりそうになったとき、水が空から降ってきた。雨ではない。水だ。

そして女性の声が聞こえ、気づいたらここ。

ここまでで私が気絶した回数おそよ3回。1日で気絶した回数にしては多い。きっと気絶している合間の時間が短かったからなし得たのだろう。


思い出したことで、目立つ疑問点を幾つか。

まず1つ

私が帰り道に遭遇したあの光は魔法陣の物か。

そして2つ

何故わざわざ呼び出してまで殺そうとするのか。

3つ

あの人間でない生命体はなんだ。

髪色は....触れないでおこう。魔法が存在する世界に髪色が黒や金以外のものがあるというのは相場で決まっている。

4つ

深青の髪の彼は何者か。

これは身の安全を確保する為だ。ゲームでも漫画でも奴隷というものが存在する。まあ、奴隷の扱いによってだが、彼が奴隷商人やハンターとなると困る。黒髪も案外ファンタジーでは珍しいと私の相場で決まっている。

イイ値で売れるに違いない。

5つ

...私がいま身につけている服は制服ではない。

一体誰が着せたのか。

....彼じゃないよな?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ