こんなことされる覚えはない
耳元で壁を強く殴った音がひびく。
まだ痛みが残る目を無理やり開けて、状況確認を図る。
灰色の地面、視界の端に私が読んでいた攻略本やバックが見える。
空はとてもいい青色で、雲もいい感じに流れている。太陽が見えない方向に向いているのが幸いだ。しばらくは直視したくない。
未だぼやける目を閉じて、ぐったりしていると、蹴られたような酷い痛覚が背中から身体中に広がる。
体が空高く舞い、また落ちたようで叩きつけられた。
...何か聞こえる。
何を言っているのだろう。まだ状況整理が出来ない。
疲れた体に鞭を打って立つと、俄かに信じがたい光景が広がった。
少し擦り切れてしまった制服姿の私を囲み見つめる人々。
その容姿はアメリカ人のような顔で、白い肌に金髪が見渡す限りに広がる。
長いスカートのワンピースのような服を身に纏うご婦人、籠を背負い斧を背負い、まるで畑帰りのような男。
皆が足を止め私を見つめている。
私の警報がけたましくなる。
今すぐここを離れろと、早く逃げろと。
何処へ逃げるのだ。私はこの人たちを知らない。
私は、石レンガでできた道がある土地など知らない。
....拉致されたのか。この場所に。
じゃあ拉致した人は誰だ。
さっき私を蹴った人か。それかまた別の人か。
見ている人々は私を睨み、ただ見る。
私は唖然と立ち竦むと、今度は頭に衝撃が来る。
耳元でバキリと骨がなる音が聞こえ、私はバランスを崩す。
なんとか立ち続け、殴った相手を見る。
2mはあるんじゃないかと錯覚するほどの巨体。筋肉をムキムキに膨張させ私を笑う金髪の男。
圧倒的に強いであろう相手に、私は恐怖した。
ここで死ぬのか。
ここにいる誰もが私を睨む。青色の目が私を警戒し刺し親の仇のように憤怒しただ見つめる。
悪くなる視界に、頭がガンガンと早鐘を打つ。
震える手足を無理に動かし、唯一隙間の空いているその人混みに駆ける。
倒れないように足を必死に地面につけて目的地もなく走る。
どうしてこんな目に合うのか。私が何かしたのか。いいや、何もしていない。少なくとも殺されるような殺意を向けられる筋合いはない。
両親がヤクザとかではないし、裏商売をしているというわけでもない。
かくいう私も平凡だ。
ちょっと18歳未満なのに6時になってもゲーセンに浸って青少年健全育成委員会とかそんな感じの人たちに声をかけられたくらいしか罪はない。罪かどうかはあやふやだが。
それぐらいしかしていない。
誰かにぶつかり、尻餅をつく。
ああ、終わったな....
胸元を掴まれ、持ち上げられる。そして頬を殴られた。
さっきのムキムキな男ではないようで、さほど痛くない。痛いのは変わらないが。まだマシだ。
もう動く気力もない。頭から血が垂れ、背中は強打し痛くて立ち上がれない。
そっと目を閉じて、されるがままになる。
お腹に殴られ地面に叩きつけられ、口の中は変な味がし意識が朦朧としてきた。
ああ、さよなら私の人生。